[079] 2000年 7月 8日(土)
「カメラマンとデザイナー」
カメラマンとしての立場から見た場合、「デザイナー」というのは許すべからざる存在として映ることがあるらしい。
我輩はこのことを何かの雑誌で読んだ。写真雑誌だったか、デザイン雑誌だったかは覚えてはいない。
しかし、かく言う我輩自身も、そのことを実感することがあったので、ここに書いておこうと思う。
我輩は以前、会社の業務で、マルチメディアCD−ROMの制作として「江ノ島電鉄(江ノ電)」を取材していた。数ヶ月に渡る取材もほぼ一段落した頃、そろそろCD−ROMのフロントカード(音楽CDで言うジャケットのこと)用の写真を撮ることにした。CD−ROMというのは、書籍と違い、実際に購入してパソコンで再生させるまでは内容がよく判らない。そのため、フロントカードの写真は気合いを入れて撮らねばならぬ。
CD−ROMに収められた画像は最大でも640×480ドットの大きさしかなく、35mmカメラでも十分だ。しかし、フロントカードの印刷物として使うならば、やはりブローニーサイズのフィルムを使ったほうが良かろう。我輩は、6×6判のカメラを三脚に据え、暑い湘南で汗を拭(ぬぐ)いながらシャッターを切った。
その後、出来上がったポジのうち1枚を採用することになり、印刷会社に渡した。通常、デザインはサービスでやってくれる場合が多い(もちろん印刷会社にもよる)。
本来ならば自分でデザインをするところだが、我輩はその時ちょうど忙しさの頂点にいたため、デザインは任せることにした。まあ、印刷関係の専門家がやる仕事だからと安心したのがいけなかった。
後日出来上がったものを見て愕然とした。せっかく細部まで緻密に描写したはずの写真が、全体にキャンバス地の模様をかけられていたのだ。これでは、35mmカメラで撮影しても同じだ。あの苦労は何のためだったのだろう。しかも夏のイメージに繋がる青い空が多少カットされている。
結局、やり直す時間と費用が無く、そのまま通してしまったが、そのことは今でも悔やまれる。プライベートな時間を使ってでも自分でやるべきだった。
これは、カメラマンとデザイナーとのイメージの違いが引き起こしたトラブルである。今回、カメラマンが顧客側でもあるという特殊な例だが、やはり普通のカメラマンでもプライドを持って仕事をしているはずだ。
「苦労して撮影した渾身の1枚を、訳の分からないデザイナーごときに好き勝手に切り刻まれてたまるか。」
このように思ったとしても不思議ではない。
だが、カメラマンとデザイナーは、どちらも「良いモノを作りたい」と願っている。目的は一緒なのだ。しかしそれゆえ、両者のイメージにズレがあれば、かえって敵対関係となりうる。それは、イメージの疎通がうまくいっていなかったことによるのだ。我輩の場合、相手は会ったこともないデザイナーだった。
しかしこの一件で、デザイナーを名乗るヤツはどうもウサン臭く見えて仕方がない。特に、いかにもデザイナーだという外見であれば尚更だ。
・・・こういうのは、「トラウマ」と言うのか?
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