先日、究極の買い物、「ニコンF3H」の購入を果たしたことを書いた。
我輩のカメラ装備の中で、コイツは「旗艦」という位置付けとなった。当サイトの「我輩所有機」コーナーで先頭に掲載しているのは、その現れである。
戦艦大和は、旧日本海軍の連合艦隊旗艦だったが、徹底した秘密主義と戦力温存のために、せっかくの活躍の場を永久に失ってしまった。
我輩のF3Hも、まさかそのような運命を辿るのだろうか。
まあ、カメラであるから、「魚雷を19本も受けて撃沈」ということは無いにしても、やはり活躍の場を失うということは十分あり得る。しかし、未来のことは誰にも判らぬ。戦艦大和にしても、誰が「使わない戦艦」として建造しようと思ったろうか。結果としてあのような無念な最期を遂げたとしても、当事者たちは、その場その場の最善を尽くしたろうと思う。
そう思うと、我輩の「とりあえず保存」という判断も、正しいことなのかは判らないが、少なくとも自分では正しいと信じている。そして今はまだ、使う時期ではない。
では、F3Hの使い道として、どういうものが考えられるだろうか。果たして一般人に必要なカメラか。
F3Hの超絶性能は、完全なるオーバースペックかというと、そうとも言えない。秒間13コマの性能は、確かに撮る対象を選ぶだろう。しかし、1コマ撮りの撮影でも十分な恩恵がある。それは、テンポの良さだ。
我輩が初めてF5に触れた時、「やはりプロ用は違うな」と感じた。それは、巻き上げの早さだった。巻き上げが早いということは、シャッターを切った次の瞬間には、すでに2枚目の用意が出来ているということを意味する。普及機ならば、しばらく巻き上がるのを待たねばならない。
「大げさだ」と思われるかも知れないが、ポートレートや動物の写真を撮るときには重宝する。ほんの一瞬の表情の変化を捕らえるには、迅速なスタンバイが必須なのだ。
F5でも軽い感動を覚えるくらいなのだから、F3Hの感動は推して知るべきだ。
F3Hには、「6コマ連続撮影で止める」という機能がある。あまりに早すぎて、一気にフィルム1本くらい撮り尽くしてしまうからだ。これは、アサルトライフル(突撃銃)の「3点バースト機能」に似ていて面白い。
※3点バースト=
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兵士がパニックに陥って銃の引き金を引きっ放しにした際、フルオートの銃では数秒で全弾を撃ち尽くして敵の餌食になってしまう。3点バーストでは、引き金を引いたままであっても一度に3発までしか連続発射できない。
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この、F3Hの「秒間13コマ」の連続撮影能力を体験すると、通常のF3+MD−4では物足りなくなる。要するに、テンポが遅く感じられるのだ。実質的な速度は実用的なのだが、人間というのは、便利なほうに慣れてしまう。
しかも、F3Hの素晴らしさは、通常のF3+MD−4と同じ大きさにまとまっているということだ。当然、モータードライブの電池の数も同じである。決して、カスタム的な「建て増しスタイル」ではない。
ただ、固定式ハーフミラーのため、外部露出計を使いにくいという欠点もある。レンズからの光が
100%フィルムに届く訳ではなく、一部の光がファインダー光学系へ振り分けられるのだ。・・・その程度ならば、露出計の補正によって解決できるのだが。
F3H、いつか、ポートレートや動物写真に使うことを楽しみにしている。
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雑誌で見るF3Hは、どうも2バージョンあるようで、初期のもの(シリアルナンバーから推測)は巻き上げレバーが省略されており、イルミネータースイッチも赤いボタン式ではなくスライドスイッチになっている。シャッタースピードダイヤルの文字は白一色で、闇夜で青く浮かび上がる夜光塗料が塗られているらしい。
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