[072] 2000年 7月 1日(土)
「親子それぞれのカメラ」
先日購入したミノルタα−9000、なかなか楽しい。テスト撮影が済んだ後も、空シャッターを切ったりAFを動作させたりして遊んでいる。
さすがにAFは正確で速い。・・・それ以前のものに比べれば、という話なのだが、これは驚異的なことなのだ。
我輩は「キヤノンFD35−70mmf4AF」を所有していたのだが、あれは2〜3回に1度くらいしか合焦しない。
まるでゼンマイ仕掛けのようにゆっくり回るピントリングは、考えも無しにただ前後に動き、たまたま画像のコントラストが高い位置に来ると、そこで停止させる。α−9000のように、ピントのズレ量を推測し、一気に合焦点までモーターを駆動するというようなことはできない。
合焦サインも、今時の「ピピッ!」という切れの良い音ではなく、「ピュイ〜ン」という気の抜けた音が出る。たまに、思いっきりピンボケなのに「OKだよ〜ん」と言ってくるようなウソつきレンズだった。
それから比べると、α−9000のAFは隔世の感がある。TTLによってAFが可能だというだけで、まさしくショックだったわけだ。
α−9000、プロ用として造られたというだけあって遊び甲斐があるのだが、それと同時に「これがプロ用か?」と思わせるようなこともかなり多い。
まず、中古カメラ店を巡ると、とにかく液晶のトラブルの多い個体が目に付く。たった10〜15年でこうなるのでは、過酷なプロの使用に耐えられるとは思えない。「初期のAFだから仕方がない」と思えるようなところであれば許せるが、液晶表示などAFとは関係無いだろう?
それから、シャッターボタンが重い。いや、クリック感が強いと言ったほうがいいのか。カクンと落ち込む感触は、まるでゲーム機のボタンのようだ。シャッターボタンにクリック感が必要なのかは意見が分かれるだろうが、デリケートな撮影では気になりそうだ。
そして、グリップ部のラバーが変だ。一見、黒光りするようなテカテカ感があるが、布で強く拭くと、光沢のない通常のラバーっぽくなる。そして布には黒い汚れが付着する。発売から15年経っているため、ラバーが劣化したのだろうか。まあ、当時の新素材を採用したんだろうな。経年変化など考えず、新しくて便利だという理由だけだったのかも知れない。プロ用という意識があったのか疑問を持つ。
他にも小さな点は色々あるが、やはり全体的に、「すぐに故障しそうだ」という印象を拭えない。この印象は、小さな点の積み重ねなのか、あるいは無意識に感じるような見えない部分のことなのかは分からない。
とにかく、興味深いカメラであることは確かだが、コイツに一生を託すような気にはならない。
ところで、我輩は去年の夏、20年ぶりくらいに父親に再会した。
(まあ、いろいろ事情があるのだが、それは本題ではない)
それまでの我輩にとって、父親とは恐くて厳しい存在という記憶しかない。弱音を吐けば、すぐに頭をハタかれたものだ。
そんな父親が、再会の場に持参したカメラが「α−9000」だった。
「おいおい、そんな軟弱なカメラを持ってくるなよ」
口では言わないが、正直、そう思った。父親は息子には厳しかったが、カメラには甘いのか。
あろうことか、我輩のF3HPを見るなり、「もっとええカメラ買えよ」などと言いおった。何も言えん。ただ、笑うしかなかろう。
我輩は、カメラに甘くはない。
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