「欲しいモノが無い」ということを以前書いた。しかし、無い物ねだりは多い。
もし手に入るなら、新品のニコンFA、ニコンFE2、ニコンF2、キヤノンAE−1P、ペンタックスMX、ペンタックスK2DMD、オリンパスPEN−FTが欲しい。新品から使い込みたい。
しかし、そのためには元値の何倍もの金を積まねばならない。いや、そもそも未使用品がこの世に存在するのかさえも分からない。これは悲劇だ。
時とは、一方向にしか進まぬ不可逆なものである。誰にもどうすることもできない。
少年時代に手が届かなかったカメラを、成人となっていざ買おうと思ったら、すでに生産中止・・・。笑えぬコントだ。
我輩はこの悔しさを十分に味わっている。だからこそ、ノアの箱船よろしく、重要と思われるモデルを新品で収集・保管しているのだ。これを今やらなければ、後でまた悔しい思いをすることになる。単なるコレクションとは意図が違う。「FAゴールド」や「F3AF」を手に入れないのは、使わない(使えない)ことが現時点で分かっているからだ。コレクターなら手に入れるんだろう?
以前、人気のポケットコンピュータ、ヒューレットパッカードのHP200LXが生産中止になった。その通達が出された時、なんと駆け込みで4台の新品を購入していった者がいたという。なんでも、「自分が一生使える分を確保した」のだという。さすがだ。「モノ好き」と言われようとも、彼は自分の価値判断で行動した。自分の一生を任せることのできる機械には、いくら金をかけても構わぬ意気込みだ。
今頃になって「復刻版ニコンS3」を四十数万円も出すなどというのは、さすがに呆れる。それならば、なぜオリジナルの時に新品で買っておかなかった?そのほうがずっと安く済んだんじゃないのか?そして、復刻版が出るか出ないかに心惑わせることも無かったろうに。
生産終了して初めて、その魅力に気付いたのか? それとも、たまたま借金漬けで手も足も出なかったか?
「ニコンF3」は、数十年後に「20世紀の名機」として復刻版となって甦るかも知れない。しかし同時に、そんなものは出ないかも知れない。出たとしても、数百万はするだろう(インフレもある)。そんな、先の分からないことを前提とするよりも、少し無理して自分の好きなカメラを、今のうちに確保しておくほうが良いと考える。そしてそれは、決して今使ってはならない。保存食を今食べないのと同じことだ。今使いたいカメラは、別に買ってそれを使い潰すのだ。最後に新品が控えていると思えば、いくら生産中止となろうとも、本気で使えるだろう?
そのための金を惜しむようでは、カメラごときに一生を任せることなど無理な話だ。それができなければ、せいぜい、他人の手によってカドを取られた中古を買うか、常に最新型を消費し続けることだ。
備えあれば憂いなし。
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カメラの長期保存についての問題点は、明日の雑文で考えることにする。
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