2000/04/05
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表紙

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2.用語集
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カメラ雑文

[719] 2011年03月01日(火)
「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その6)」


昔の雑文にも書いたように、大学時代、我輩は茶どころとして有名な城下町である松江市に住み、裏千家作動のサークルに所属していた。
そこで最初に、一期一会(いちごいちえ)という言葉をまず教わった。

今この瞬間というのは、たった一度きりのもの。
今日、何気なく話をして分かれた人。その人にはもう、未来永劫会うことが無いかも知れない。
後になって振り返り、「ああ、あの日が最後に会った日だった」と思い返すこともあるだろう。その最後の日に、自分はどういう気持ちでその人に接し、どういう態度でもてなしたかを思い出せるだろうか。あるいは悔いを残していないだろうか。
そういった悔いを残さぬために、普段から人との出会いと別れを大切にすること、それがすなわち茶道の教えである一期一会の精神であると我輩は解釈する。

出会いと別れのシーンは、人に限るものではない。
例えば、手にしたその茶碗は、広い世界の中でたまたま居合わせた、まさに偶然によるもの。その偶然に素直に感動し、別れを惜しむ。
それと同じく、茶菓子や床の間の花、灰形など、全てに於いてこの組み合わせは一瞬のものである。

そういうわけで、我輩が写真を撮ることについては、一期一会の意識が影響しているのではないかと思うこともある。
二度と出会えぬ光景を残しておきたい。だから、写真を撮る。いつでも撮れるよう、常にカメラを持ち歩く。

ただしこれは、本来の茶道の精神から言うと、どう考えても邪道と言わざるを得ない。
「二度と見られないと思うならば、悔いの残らぬようその瞬間を大切に過ごせ」というのが、一期一会の精神に沿うものであろう。それなのに、写真に撮ったことで安心してしまい、その瞬間をいい加減に過ごしてしまえば、本末転倒と言わざるを得まい。
そのことについては、雑文534「本物をジックリ見ろ」にも書いたことと関連するかと思う。

だが我輩は、邪道を邪道と知りつつ、敢えて写真という道具を使い、目の前の光景が消えぬうちに写真画像として定着させ手元に持っておきたいという欲求をどうしても捨てられぬ。
食べてしまえば無くなってしまう菓子や料理をいとおしく思い、せめてカメラの中にその影を投影させ、保管し続けたいと思うのだ。

ところで、菓子と言えば職場で配られる土産物の菓子。
もらったその場で食すのが我輩の流儀であるから、その前に写真に撮るようになった。

ところがここで問題が発覚した。
手持ちの広角レンズ15mm(換算23mm)では、かなり接近せねば大きく写せない。そうなると、照明の位置によっては自分の影が覆い被さる。
かと言って、もう1本の望遠レンズ70mm(換算107mm)では最近接撮影距離が70cmと遠く、机の上にあるものを撮影するにはイスから立ち上がってカメラを構えねばならず、職場の中で撮るには少々大げさにも思う。

その場は仕方無く、菓子を置いた厚紙を傾けて自分の影が落ちぬよう接近し15mmレンズで撮影した。

<菓子を置いた厚紙を傾けて撮影>
菓子を置いた厚紙を傾けて撮影
[PENTAX K-x/15mm] 2011/02/10 14:04

それから別のケースとして、料理を撮る場合もレンズの問題があった。
知人に招待され、少々高級なレストランにて食事をする機会があったのだが、これもまた、15mm広角レンズで接近する以外に方法が無く、意図する範囲を越えて遠近感が強く出てしまった。
(※遠近感は撮影距離の問題=参考雑文267「年の差」

<前菜を撮影>
前菜を撮影
[PENTAX K-x/15mm] 2011/02/08 18:56

これらの問題は、簡易的なドキュメントスキャナとしての利用にも関わる。
コピー機を使って紙を消費するまでもないような些細な資料や回覧物など、サッとカメラで撮ってしまいたいのだが、今のままではなかなか難しい。
結局のところ、我輩の現在の運用では、ちょうど良い焦点距離が抜けていると判った。

あらためてPENTAXのレンズラインナップを見てみたところ、35mm(換算53mm)くらいがちょうど良いかと思った。35mmならば等倍マクロレンズが用意されているので、これを使えば少々のことがあっても用が足る。

いやそもそも、カメラに付属していたキットズーム「18-55mm(換算28-84mm)」を使えば最初から問題は無かったはずだ。いくらコンパクトな単焦点レンズであろうとも、その数を増やしたところでズームレンズの利便性に匹敵するわけではない。

だが、なぜかこの「K-x」にはズームレンズを着けたくない。
これは、フルサイズデジタルカメラ「Nikon D700」では感じないような不思議な感覚である。

「D700」の場合、標準レンズなどのコンパクトな単焦点レンズを装着すると、非常に頼りなく感じて落ち着かない。
我輩の中では「D700」武器と同じ位置付けで、命を預けることの出来るアサルトライフル(突撃銃)のようなもの。このような性格のカメラでは、ズームレンズで最大限に"武装"しておきたい。

ところが「K-x」では、コンパクトな単焦点レンズを装着すると頼もしく思える。これなどはまさにサイドアーム(護身銃)の位置付けと言えよう。
コンパクトで常に身に付けておけるということが、存在意義である。

<D700はズームが、K-xは単焦点が似合う>
D700はズームが、K-xは単焦点が似合う

ただそれにしても、これから35mmレンズを購入するとなると、幾つか問題がある。

まず、金の問題。
「DA 35mm F2.8 Macro Limited」を手に入れるとなれば、中古で3万5千円ほど。気軽に買える値段ではない。
確かに、ロシア製ティルト&シフトレンズを売却したことで買えないというわけではないが(参考雑文715)、だからと言って浪費を続ければいつかは無くなる。資金の流出は最小限にせねばならない。

それから、単焦点レンズが3本にもなると、運用が難しくなる。
常に携帯するという性格のカメラであるから、レンズが3本になると、それらのどれを選んでカバンに入れるかということを考えねばならない。

金の問題については、色々と悩んだが、マップカメラの下取りサービスを利用することにした。下取りに出すのは、「OLYMPUS OM-4」である。
以前、マルチスポット測光用として「OM-4」と「OM-4 Ti」を購入したわけだが(参考:雑文635)、「OM-4」のほうはその仕様として電池消耗が激しく、もっぱら「OM-4 Ti」のほうを用いていた。恐らく、「OM-4」のほうは今後も使うことはあるまい。
結局のところ、「OM-4」は約1万円で査定され、ペンタックス35mmレンズのほうは2万5千円程度で手に入った。

<かくして単焦点レンズが3本となった>
かくして単焦点レンズが3本となった

単焦点レンズが3本になったことについて、今回購入した35mmレンズは携帯に必須としても、さすがにそれに加えて2本のレンズを常備するのは無茶かと思う。
重量や容積の問題としても、これ以上増えるともはや負担であろうし、レンズ交換時、カバンの中でまさぐる手に2本のレンズは迷いの元。
基本となるレンズが35mmと中庸なだけに、もう一つを選ぶのがまた難しい。
結局のところ、35mmレンズのほうに望遠撮影の性格をカバーさせ、広角15mmとの2本体勢でカバンに常備させることとした。

35mmレンズの活用については、ちょうど飲み会があったので使ってみた。
等倍で接写が出来るということがその場で話題にもなるし、料理を撮る際にも、自然な撮影距離で行える。フルサイズ換算で53mmと標準域なため、目で見たままの自然さが良い。

<飲み会の場にて>
飲み会の場にて
[PENTAX K-x/35mm] 2011/02/23 19:39

我輩は、PENTAX-Kマウントでは、等倍撮影可能なシグマ製MF50mmマクロレンズを持っている。
焦点距離の違いやAPSサイズ専用ということもあり、比較すると今回の35mmマクロのほうがコンパクトになっている。これで等倍撮影可能なのだから、利用価値はそこそこ高いと言えるだろう。

ただし、35mmという焦点距離のせいで、等倍となる最近接撮影では被写体にかなり接近せざるを得ず、ワーキングディスタンスがほとんど取れない。伸縮式の内蔵フードを引き出すと、それに被写体を密着させた状態が最短撮影距離となるほど。
そうなると、等倍を必要とする撮影の際には、照明に気を付けねば被写体がレンズの影を被ってしまいかねない。もちろん、フードを伸ばした状態では真っ暗となる。

ここでは、等倍の試し撮りとして、まずはパソコンディスプレイの接写を行なった。ディスプレイならば発光しているため照明が不要なので都合が良い。
絞り設定は開放f2.8とした。

<等倍接写 (開放絞り f2.8)>
全体画像
等倍接写(開放絞り f2.8)
原寸切り出し (黄色囲み部分)
等倍接写(開放絞り f2.8)
[PENTAX K-x/35mm]

これを見ると、液晶パネルの細かい格子の縦横のラインが真っ直ぐに写っているのが判る。このことから、歪曲が少ないように思う。

それにしても、デジタルカメラではフィルム撮影とは異なり、パソコンディスプレイ上では細部が拡大されて見えるので、液晶の発光セルが一つ一つ見えて面白い。等倍表示しても開放絞りとは思えぬクッキリとした写りが予想外であった。
もちろん、周辺部は少々光が滲んではいたが、原寸で見て初めて気付くのであり実用上気になるレベルではない。しかもそれは絞ることで改善された。

次は、カメラの電子ダイヤルエンコーダーパーツを等倍接写してみた。
ここでは、被写界深度による違いを強調するため、敢えて対象物に対し角度をつけている。

まずは、開放絞りf2.8での撮影。ちなみに、光源はストロボを使っている。

<等倍接写(開放絞り f2.8)>
等倍接写(開放絞り f2.8)
[PENTAX K-x/35mm]

これでは少々ボケ過ぎで、何がなんだか分からず、あまりよろしくない。
そこで、ストロボの出力を上げ、最小絞りf22に設定して撮影したのが次の写真である。

<等倍接写(最小絞り f22)>
等倍接写(最小絞り f22)
[PENTAX K-x/35mm]

これは、等倍接写したものを縮小処理をしているわけだが、それでもこの大きさに写るのだから、等倍撮影の威力が分るというもの。
もちろん、等倍撮影が必要なシーンは多くないとは思うが、いざとなればこのような撮影も出来るというポテンシャル(秘めたる力)があるということは、心理的にも心強く、携帯する意味が大いにあると言えよう。

さて今回、少々35mmレンズについての記述が多く、他の2本の用途についてはほとんど触れなかったので最後に書いておくことにする。

中望遠70mmレンズ(換算107mm)については、今回35mmマクロが加わったことにより、入れ違いでカバン常備機材からは外れてしまったが、恐らく目的を以って撮影に望む際に必要になるレンズかと思う。背景をボカして撮影する、いわゆる"一眼レフらしい描写"を期待する時には欠かせぬものとなろう。

<中望遠70mm>
中望遠70mm
[PENTAX K-x/70mm] 2011/02/05 12:33

ただ、本当に描写を重視する際は「Nikon D700」を用いるはずであるし、さらに本気撮影では645判や66判を投入することになるわけで、そのあたりの使い分けは、少々微妙なところ。
軽量機材を必要とする場合でも、「LUMIX DMC-GF1」も選択肢に入ってくるので、出番はあまり無いかも知れない。

広角15mm(換算23mm)については、最初はピントがおかしいかと思われたのだが(参考:雑文717)、調整を経て今では好調である。
画面周辺部の白っぽい色の境目では少々色ズレが見られるが、RAW現像時に簡単に補正出来るので実用上問題無い。
この色ズレの修正は、カメラ本体で自動処理も可能なのだが、処理に時間がかかるせいで1枚撮影ごとに待ち時間が発生することから、我輩はこの機能はOFFとしている。

<15mmで撮影時の色ズレ (原寸の2倍拡大)>
色ズレ未修正
色ズレ未修正
RAW現像で色ズレ修正
RAW現像で色ズレ修正
[PENTAX K-x/15mm]

15mmは広角なだけに被写体にグッと寄らねばならないが、記録写真として全体像が分るように写す用途にはとても良い。また、ノーファインダーで撮影するにはこのレンズでなければ難しい。
コンパクトなカメラとレンズの組み合わせでのノーファインダー撮影は、これまでに得られなかった画像を得ることになり、今後も写真撮影の楽しみを広げてくれよう。

<ノーファインダーで背後撮影>
ノーファインダーで背後撮影
[PENTAX K-x/15mm] 2011/02/20 14:14
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イラスト提供:シェト・プロダクション