2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[717] 2011年02月12日(土)
「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その4)」


科学の基本とは、「実験」と「観察」である。我輩は子供の頃、そのことをカール・セーガン博士のテレビ番組「COSMOS」から教わった。
「実験」により物理現象を限られたエリア内で再現させ、「観察」によって何が起こっているのかを情報収集する。それはつまり、事実の積み重ねが科学そのものであることを意味する。

その後、大学に入り、4回生で化学科の研究室に入った。
そこで学んだことは、「実験」を行なうには「仮説」が非常に重要であるということだった。

実験とは、そもそも仮説を立証するための検証手段である。仮説無き実験など実験の意味を成さぬ。
事前に思い描いた仮説の通りに現象が起これば仮説が正しいということになるし、違う結果が出れば仮説が誤っているということになる。
正しいと確認出来た仮説は定説となり、誤っている仮設は修正されて再び新たな仮説が立てられる。それ故、仮説を如何に立てるかということが重要となってくる。

だが、仮説を打ち立てるのは非常に難しい。トンチンカンな仮説では、実験結果が得られても何も結論を導くことは出来ない。
ある意味、仮説を立てるには洞察力や直観力が必要だ。我輩はこの能力に欠けていたため、研究室では非常に苦労させられた。だからこそ、身に染みて感じる我輩の教訓となっている。

エジソンは言っている。
「天才とは、1パーセントの霊感と99パーセントの汗である(Genius is 1 percent inspiration and 99 percent perspiration)」と。
この言葉は、「天才とは常人には出来ないほどの努力をしているものだ」という意味に聞こえるが、我輩はエジソンが「100パーセントの汗」とは言っていないことに着目したい。これはむしろ、1パーセントでも霊感、つまり、ひらめき的な仮説が無ければダメだということを言いたいのではないかと我輩は考える。

化学者アウグスト・ケクレがベンゼンの六員環構造を夢の中で思い付いたのは有名な話。
もし、その夢の中でのひらめきが無ければ六員環構造は思い付かなかったわけであるし、またこれまでの努力が無ければ1パーセントのひらめきに意味を見出すことなど出来なかったであろう。そういう意味で、この例は「1パーセントの霊感と99パーセントの汗」という意味を良く表わしていると言える。

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先日購入した「PENTAX K-x」について、AFが後ピン傾向にあったため、デバッグモードにてAF合焦点を調整し、本来のシャープな映像を得ることが出来るようになったわけだが、今一度風景などの遠景を撮って再度確認したいと思っていた。
そこで、動植物園での豚児撮影練習の際に、我輩も「K-x」のテスト撮影を行ない、その結果、ピントは極めて良好であることを確認した。

ところ画像をよく見ると、別の問題点に気が付いた。
広角15mmレンズ(換算23mm)で撮った写真を見ると、ピントが良好なのは画面中央部のみ。周辺部は完全にピンボケとなっている。
レンズの収差の問題なのかと思ったが、しかしそれにしてもここまでボケているというのは尋常ではない。

<周辺部のピンボケがヒドイ (円内は原寸切り出し)>
周辺部のピンボケがヒドイ (円内は原寸切り出し)
[PENTAX K-x/15mm] 2011/02/05 13:18

もしこれがレンズキット付属のズームレンズであれば、「まあこの程度の性能か」と思うのだろうが、単焦点レンズであるから到底納得出来ぬ。
試しに、同じ風景にて絞り値を変えて何枚か撮影してみたのだが、少々絞り込んだくらいでは周辺部がシャープにはならない。
それでもF11くらいに絞ると改善されることは確認出来たのだが、F11を常用絞り値とすることはいくらなんでも厳しい。

やはりこれは、何かの不具合によるものか?
だとすれば、原因はカメラ側なのか、あるいはレンズ側なのか?
原因を探るには、1つ1つ仮説を立て、それを確かめるべくテスト撮影する必要がある。

たとえば「レンズの収差が原因かも知れない」という仮説を立てるならば、それを確かめるために絞り値を変えて撮影してみることになる。
最初に立てた仮説がまさにレンズの収差かどうかを確かめるものだったわけだが、収差の問題ならば少し絞ればそれなりに効果が出るもの。しかしテスト撮影ではそれが認められないのでちょっと様子が違うようだ。

今度は、この15mmレンズを別のカメラボディ「*ist DS」に装着して撮影してみた。このレンズが問題であるならば、「*ist DS」で撮っても同様に周辺部がピンボケとなるだろう。
だが、その仮説は裏切られた。「*ist DS」では、ごく普通に写っている。
「*ist DS」は600万画素と「K-x」の半分なので、もしかしたらボケが目立たないのかと思い目を凝らして画像を見たのだが、やはり周辺部も普通に解像しているようだ。

ならば、「Kーx」側の問題か。
しかし周辺部だけがピンボケしているというのも妙な話。
ボディの問題かという仮説を確かめるため、今度は別のレンズ「18-55mmズーム」を「K-x」に装着して広角側で撮ってみた。もし「K-x」側の問題ならば、レンズを換えても同様の現象が起こるだろう。

しかし、「18-55mmズーム」で撮ると何も問題無く写った。周辺部までシャープである。
我輩は、頭を抱えてしまった。
カメラボディの問題か、レンズの問題か、その絞込みすら出来ない。

そこで、周辺部ピントがボケているという事実から、イメージセンサーが微妙に傾いているのではないかという仮説を立てた。もしかしたら、イメージセンサーを駆動する方式の手ブレ補正機能の不具合によるものではないか。
この仮説は、「18-55mmズーム」ならば普通に写るという事実を説明出来ないのだが、それでも何か手掛かりを掴むため、手ブレ補正「あり」と「なし」で撮り分けてみた。
結果は、何も変化無し。手ブレ補正機能は何も影響を与えていないようだ。

これまでのところ、カメラとレンズ、個別には問題無さそうに見えるのだが、ある特定の組み合わせではうまくいかない・・・ということか?
こうなったら、カメラとレンズを両方ともメーカーに調整してもらうしか無いのか?
しかし単品では正常そうに見えるので、ヘタに調整されると他の組み合わせで影響が出るのではないかと心配になる。

ここまで来ると、もう手詰まり状態。
「K-x」で何度撮っても、15mmレンズは周辺部がボケボケなのは変わらない。
困った・・・。

そこでふと、1つのひらめきがあった。
周辺部のピントがボケているのであれば、逆に、周辺部にピントを合わせると中央部はどうなるだろう? ピントをズラすことになるのだから、ピントが合っている中央部が今度はピンボケになるに違いないが・・・。
何の根拠も無いただのひらめきであったが、とにかく試してみた。

すると、なぜか中央部から周辺部にかけて、全面シャープな映像が得られたではないか。
だとすれば、原因は単純にAFピント合わせのズレということになる。それはつまり、最初に行なったデバッグモードによるピント調整が引き起こしたということだろう。
早速、デバッグモードでズラしたピントを元に戻し、改めてAF撮影してみた。その結果、先ほどと同じように全面シャープな映像が得られるようになった。

しかし、問題はまだ残っている。
なぜならば、デバッグモードで最初の状態に戻したわけであるから、最初にピントが甘いと感じた室内撮影、つまり近距離撮影ではピントがまた甘くなっているはずなのだ。

ところが驚いたことに、改めて試し撮りした室内写真ではピントが正常になっていた。購入当初は何度やっても甘いピントだったのに、それが嘘のように解消されているではないか・・・。
結局のところ、デバッグモードによる最初の余計な調整が原因だったことになる。

残念ながら、どうしてこのような現象が起こったのかという理屈までは分からないが、とにかく不具合を起こしている原因まで辿り着けたことで問題解決出来たことは良かった。
やはり仮説が的確でないと苦労する・・・。

というわけで、ようやく本格使用が出来るようになった「PENTAX K-x」だが、次回は、我輩所有のデジタルカメラでの画質比較をし、今後の運用の参考にしたいと思う。

(その5へ続く)
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イラスト提供:シェト・プロダクション