2000/04/05
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表紙

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2.用語集
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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[267] 2001年05月27日(日)
「年の差」

我輩とヘナチョコ妻との年の差は7歳。
この差を大きく感ずるならば、まだ若い証拠である。これから年齢を重ね、互いに100歳と107歳になったとしたら、その差をほとんど感じなくなるに違いない。いつまでも不変である年の差は、全体から見た割合が年々小さくなっていくのである。

さて、前回の雑文では、レンズの焦点距離について意識したわけだが、遠近感については文章で簡単に流してしまった。しかし後で読み返してみるとなかなかイメージ的に理解しづらい面があるように感ずる。
そこで、今回は図を盛り込んで遠近感について解説しようと思う。

以下の図は、レンズの焦点距離を変えずに撮影距離だけを変えた場合のケースである。
図を簡単にするために、ここでは凸レンズの代わりにピンホールレンズで示した。ピンホールカメラでは、ピンホールからフィルム面までの像点距離が焦点距離となる。
また撮影距離の問題では、カメラやレンズ鏡胴の厚みは考慮しないこととした。

<撮影距離可変・焦点距離不変>









距離aと距離bの差は小さく見える

人物が一定の大きさになるようにトリミングした写真









距離a’と距離b’の差は大きく見える

人物が一定の大きさになるようにトリミングした写真

このケースでは、当然ながら、撮影距離に応じて被写体のフィルム上の倍率は変化する(像の倍率=像点距離/物点距離)。
しかし、人物の大きさが同じ大きさになるようにトリミング拡大すると、遠距離からの撮影と近距離からの撮影では、明らかに遠近感が異なることが判る。

これは年齢差と同じ原理で、撮影距離が十分に長ければ、背景までの距離「a」と人物までの距離「b」との差が無視できるようになってくる。反対に撮影距離が短ければ、「a’」と「b’」との差は無視できないほど大きな距離と感ずることになる。
これが遠近感の本質である。全ては、差が全体に占める割合の問題なのだ。

次に、撮影距離は同じままで、レンズの焦点距離を変えて撮影した場合を考えてみる。

<撮影距離不変・焦点距離可変>










人物が一定の大きさになるようにトリミングした写真










人物が一定の大きさになるようにトリミングした写真

先程と同じように、人物の大きさが同じ大きさになるようにトリミング拡大してみるが、遠近感については全く変化が無いのが判るだろう。これは、レンズの焦点距離が遠近感に全く変化を与えないことを意味している。


ここでの例は「人物」と「背景」の2点を画面に入れたケースを扱ったわけだが、この2点を奥行きのある物体の端と端に置き換えても理解が広がるだろう。
写真に現れた物体の遠近感による歪みとはすなわち、撮影距離の近さが生み出すものに他ならない。


年齢差(遠近感)を感じさせたいならば近付き、年齢差を感じさせたくないならば遠ざかる。それが写真手法の基本である。そのために必要となるのが、レンズの焦点距離の選択によって適切な像面倍率を調節することである。
厳密な遠近感のコントロールをするには、まず撮影距離を決めるのが先となる。これで遠近感が一意に決定される。そして、その距離で最適な焦点距離のレンズを後から選ぶのだ。
もし、レンズを決めた後に撮影位置を変えるならば、その時点で遠近感はデタラメになる。
もちろん、実際の撮影では選択出来るレンズに限りがあるだろうから、遠近感のコントロールはアバウトにならざるを得ないだろう。しかし、現在は像面倍率を自在に変化出来るズームレンズという強力な武器があるのだから、まず自分の意志を以て撮影距離を決め、それに応じたズーミングで倍率調整を行えるはず。
たまたまその場所にいて、動くのがイヤだからズームで調節する・・・少なくともそんな使い方は止めた方がいいぞ。それならまだ単焦点レンズのほうが撮影位置を調節しなければならない分、遠近感の勉強にはなる。

年の差、意識せずとも忘ることなかれ。