2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
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 FM10
 FE10
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カメラ雑文

[017] 2000年 4月27日(木)
「一期一会」

大学時代の4年間、我輩は裏千家茶道の修行を行っていた(笑うでない)。そこで教えられたのは「一期一会(いちごいちえ)」の精神だった。茶道では、この言葉は人への接し方を悟らせるための教えであり、出会いというものが偶然の重なりであるということを肝に銘じ、1人1人が心を込めて点前(てまえ)を行う。
戦国の世、明日の命も知らぬ武将が、狭い茶室で人と出会い、そして別れた。それだからこそ、再会を果たした喜びというのはまた大きい。
我輩は武将の気持ちの百分の一も知ることは出来ないが、1つの小さな再会を果たした出来事を大切に思い、ここでそのエピソードを書く。

大学時代は、やはり我輩も金銭的な余裕はあまり無かった。理学部の人間であったため、平日はアルバイトなどに十分時間を取ることが出来なかったから仕方が無い。
当時、我輩の主力機はキヤノンAE−1プログラムだった。ファインダースクリーンにカッターでスジを入れ、3分割黄金比率のオリジナル方眼マットを装備していた。
しかし、未熟な我輩は、最新式のAFカメラが欲しくなり、少ない休日はアルバイトに励んだ。そして、少しでも安く買えるように、手持ちのキヤノンAE−1プログラムを下取ってもらった。

ある時、大学の和室にて、ある飲み会が催された。我輩と先輩は、撮影係としてカメラを持参していた。我輩は最新AF機、先輩はMF機。しかもそれはAE−1プログラムだった。

「先輩もAE−1プログラムですか。自分もこの前までAE−1プログラム持ってましたよ。」
「いいなあ。君は最新式か。」
「じゃ、ちょっと交換して撮ってみましょうか。」

我輩は久しぶりにAE−1プログラムを手に取った。手放して数週間程度だったが、やはり懐かしい。ふと、ボディナンバーが目に入った。サラリと読めた。普通なら、途中でつっかえるような長い番号の羅列が、前にも読んだことがあるように読むことができた。まさかとは思いファインダーを覗いてみると、そこに見えたのはまさしく黄金比率の方眼マットだった。そう、これこそ手放したAE−1プログラムだったのだ。
我輩は、再会の喜びとともに、先輩のような人格者の手に渡ったことに対しても喜びを感じた。同様に再会を果たしたとしても、もし別の者によってAE−1プログラムが痛めつけられていたとしたら、このような喜びは湧いてきたりはしなかったろう。

狭い地域の中では、そういった偶然も十分あり得るエピソードだったかも知れないが、普通は下取りに出したカメラの行く末を知る機会はまずない。それを思えば、このエピソードは我輩にとって貴重なものだった。