「書棚の本を全て廃棄してパソコンに収める」
これが、我輩が最初にパソコンを導入した理由である。当時購入したのはMS-DOSしか動かないパソコンだったが、理想は高かった。
本を紙資料をスキャナで取り込み、マルチTIF化して分類整理する。このことは、今までにも雑文にて何度か書いた。
(参考:
雑文024「カタログ処分」、
雑文403「健全な平衡状態」、
雑文411「スキャンシステムの更新」)
電子化することのメリットは、画面上での管理しやすさと省スペース化である。
元々、情報というものに物理的な大きさは無い。あるのは、情報を収める媒体の大きさだけである。よって、媒体の密度が高ければ高いほど、情報の占める大きさというのは小さくなる。
パソコンが十分に小さく容量が大きければ、書斎の本が手元に納まるということも夢ではないのだ。
いったん電子化してしまえば複製も簡単で、バックアップさえ正しく行なわれていれば、持ち歩いたデータが消えようとも問題無い。
しかしながら、デメリットももちろんある。
まず、紙媒体の一覧性が失われ、1画面ごとにしか見れない。ページをバラララーっとめくって気軽に探すにはパソコンの処理スピードが遅すぎる。
また、画面の解像度が低いため(100〜200dpi)、画像を拡大したり縮小したりという余計な操作が必要になる。そもそも、細かくスキャンするとデータ量が膨大になるため、ある程度のところで抑えねばならず、そうなると情報量やクオリティは原版には及ばない。つまり、いくら拡大しても求める情報が得られないこともある。
さらに、複数の書類を並べて表示することが出来ない。もちろん、ディスプレイの中で複数の書類を並べられなくもないが、それではかなり狭苦しい。紙資料ならば床に広げて見ることが出来る。
そして決定的なデメリットとして、パソコンが無ければ見られない。それはつまり、パソコンが動作するための電源が得られない場合も同様である。小さなノートパソコンを持ち歩いていたとしても、バッテリーが数時間しか保たないのでは使えない。
我輩は、これらのメリット/デメリットを検討し、それでもなお電子化にはそれまでにない大きなメリットがあると判断した。
当初は、スキャンした後は紙資料のほうは廃棄する予定であったが、電子化することによるデメリットも無視出来ず、クオリティを重視するカラー刷りの本などは電子化しても原本は捨てられずにそのまま保管している。
結局のところ、「書棚の本を全て廃棄してパソコンに収める」という最初の理想は高すぎた。
もし、この理想にこだわり過ぎていたら、大事な物を失うところであったと思う。
確かに、原本を捨てても惜しくないもの(毎月増える雑誌や文字だけの本など)ばかりであれば問題無いが、そうでないものもやはり多い。
理想は理想としてあるが、現実的な運用として便利さとクオリティは別に考え、大事な資料は電子データと紙媒体の両方で行くことにした・・・。
さて話は変わり、我輩はデジタル写真については昔から積極的に導入してきた。
雑文473「現実を見ろ」にも書いたように、「タムロンフォトビクス」の頃から、写真の電子化には執念を燃やしていたのである。
我輩はこれまでフィルム(主にポジ)の高画質について強調してきたため、電子写真については否定的だと思われているかも知れないのだが、振り返ってみると、デジタル写真を含む電子写真の歴史は、我輩の歴史でもある。
これまでいくつのデジタルカメラを購入してきただろうか。
(参考:
雑文470「次のデジタルカメラ(前編:それまでの遍歴)」)
しかし現在、写真の原板を無くすことは出来ないという結論に至っている。それについては、これまで何度も書いてきた(参考:
雑文473「現実を見ろ」)。
ただし、そのことがデジタルカメラを蔑(さげす)むことには繋がらない(デジタルカメラ至上主義そのものを否定することはあるが)。
我輩は、デジタルカメラのメリットである大容量メモリに支えられた大量撮影枚数、パソコンとの親和性、即時性などを積極的に利用しようとしているが、デメリットまで受け入れるつもりは毛頭無い。
先日も、豚児を連れて観光地に行った際に、最新デジタルカメラ「Nikon D200」を使ったが、これは当然ながら中判カメラ「BRONICA SQ-Ai」のサブカメラとしての位置付けに過ぎぬ。
多く撮れない中判では記念になる重要なカットのみを押さえておき、デジタルカメラでそれを補完するように撮るのである。
その役割分担は実に明確で、迷いは全く無い。
・・・銀塩カメラのみではない。デジタルカメラのみでもない。
両方を適材適所で使い分けることにより、初めて互いのデメリットが消滅するのである。それはまさに、資料の電子化の時と同様。
もちろん、それによってメリットのほうに多少のロスが出るのは仕方無いが、現実的な運用を考える限り最善を求めるにはこれしか無い。