デジタルカメラを露出計代わりにするというスタイルは、フィルム現像前に出来上がりイメージが事前に把握出来るという点で非常に有用である。特にストロボ撮影では、瞬間光の確認が出来るのが有り難い。
(参考雑文:
347・
348・
349)
我輩はそれまで、失敗の許されない撮影では+-0.5EVの範囲で段階露出を行っていたが、先日の大撮影会(参考雑文:
451・
466・
467・
479)では撮影ペースの関係上、いちいち段階を切るヒマが無く、露出値を一意に決定するためにデジタルカメラを用いた。
結果は完璧であった。
その完璧さゆえ、
雑文479では単体露出計を携行せずデジタルカメラのみに頼り、予想外のバッテリー切れにより測光手段を失うという苦いエピソードとなったわけだ。
当初、
雑文284「EOS-D30の野外テスト」でも書いたように、直射日光によって見え方が左右される液晶画面の頼りない表示では露出は確認出来ないと考えていた。
しかし、そんな液晶でも手をかざして見れば案外露出が分かる。液晶パネルの明るさが足りなくとも、階調が読めれば適正露出が読み取れるのだ。
特に最近購入したNikon COOLPIX5400では、この液晶パネルの特性上、むしろ強い直射日光に当たったほうが画像もよく見える。この点は、最近のビデオカメラの液晶パネルも同様。
(※ただしCOOLPIX5400では、不思議なことにISO100のフィルムに対してISO50の設定がちょうど良い。)
それにしても、最近のデジタルカメラにはヒストグラム(輝度分布図)表示という機能があるが、あれを利用して適正露出を知ろうとする者もいると聞く。しかし、それが我輩には理解出来ない。
確かに、デジタル写真での露出確認にはヒストグラムは有効である。白飛びや黒潰れが無く収まりの良いデータは、後でパソコン上でレタッチするには都合が良い。明るさや色調などレタッチで自由に調整出来るものの、いったん白く飛んだり黒く潰れてしまった階調はいくらレタッチしようとも復活出来ないのである。そのため、自ずと白飛びや黒潰れに神経質になる。
しかしここで言うのは、デジタルカメラをリバーサルフィルム用の露出計として用いるということである。
言うまでもなく、リバーサルフィルムでは現像後に原版を修正することは不可能。そのため、撮影する時点で表現したい部分をキッチリ収めねばならぬ。そういう意味では極端な話、主要被写体以外が白く飛ぼうが黒く潰れようがどうでも良い。主要被写体に露出のセンターがキッチリ決まれば、それで写真が生きる。
しかしそうなると、ヒストグラムではなかなか適正露出を読み取ることが難しくなる。
もちろん、写真全体を人間の目で見た上でヒストグラムを読まねばならぬということは、ヒストグラムを使う者ならば誰もが理解している。我輩がいちいち言うまでも無い。
ただそのためには、どういった画像がどういう形のヒストグラムになるのかという経験を積むことが不可欠となる。
しかしそのような努力をするのであれば、普通にスポットメーターを使ってポイントを拾っていくほうが確実ではないか。何しろスポットメーターならば、自分がどこの光を拾ったかということが明白である。ヒストグラムを見ながら「グラフ上のこのピークは、画面上ではこれに相当するのか?」などと推測しなくとも良い。
そもそも、ヒストグラムの横軸はEV値の幅を表すものではなく、撮影した画像の明るさの幅を256等分(0〜255)して並べたものであるから、自分のデジタルカメラのCCDの受光幅が何EVの範囲を持つのかを知っておかねば、リバーサル撮影用としてヒストグラムを読み取る意味が薄れる。
現実の風景は、フィルムの露出寛容度(ラチチュード)をはるかに超える。デジタルカメラであれば尚更。
そのため、白く飛ばすところは飛ばし、黒く潰すところは潰すことになる。表現したい部分だけがラチチュード目一杯に収まればメリハリの利いた画像となる。
(※たとえ技術改良によりCCDやフィルムのラチチュードが広くなり明るいところから暗いところまで描写出来るようになったとしても、それはコントラストが低下して眠たい画像となるだけ。表現したい部分に割り当てられる輝度幅が狭くなるのであるから当然。ただし先に書いたように、レタッチソフトで後処理することが前提であるならば有益。)
例えば人物の場合、顔の描写がデジタルカメラの液晶画面にて調子良く再現されれば、他の部分が白く飛んでいたり黒く潰れていても適正露出と判断出来る。露出のセンターを捉えることが出来れば、それ以外の部分はフィルムのラチチュードに任せておけば良い。案外、フィルムでは白飛び・黒潰れとならないことも多いのだ。
しかしヒストグラムから読み取ろうとするなら、ヒストグラムのどこが顔の部分であるかという推測をせねばならなくなる。推測であるから外れることもあろう。
面倒だからとズームアップして顔の部分だけのヒストグラムを取るならば、それはすなわちスポット測光しているのと同じ。これまたヒストグラムの必然性が無い。
せっかくデジタルカメラを露出計として使うのであれば、得られた画像をそのまま見てイメージを掴み、即座に本番撮影にとりかかりたい。
これは理想論ではなく、我輩は現にその方法で実績を積んでいる。
我輩は、デジタルカメラを露出計として使い始めてから、定常光とストロボ光のミックスを積極的に行うようになった。見た目だけで自然な光量比を見付けることが可能なためである。さすがにそれはヒストグラムからは読み取れない。
そして、巧く調節出来たデジタルカメラの画像を眺めながら、安心感を持ってリバーサルフィルムの上がりを楽しみに待つのである。