2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
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カメラ雑文

[451] 2003年11月06日(木)
「大撮影会」

●それまでの経緯

我輩は、独身時代に何度か横浜のほうで撮影会に行ったことがある。
こじんまりとした撮影会で、モデルは1人、参加者3〜4人。主催者O氏が街でスカウトしてきた素人女性を皆で囲んで撮るという、極めてアヤシイ内容だった。
当時はインターネットはおろかパソコンやウィンドウズすら普及していない時代であるから、撮影会の案内は月に1度郵送されてくる封書のみ。そこには当月の撮影会開催予定が、当時のワープロ特有のギザギザ文字で印字されており、別紙として参加予定のモデルの写真がモノクロコピーで添付されていた。


<再現イメージ>

モノクロコピーの写真は中間調が失われているため、白く飛んだり黒く潰れたりしてモデルの顔がよく分からないこともあった。
しかしそこに想像力を働かせてモデルに会うまでイメージを膨らませたりしたものだった。
素人モデルということもあり、気に入ったモデルを見付けてもなかなか二回目以降の縁が無いことが多かったのは残念だが、東京に出てきたばかりで知り合いも少なかった当時の我輩としては、写真そのものよりもそういう活動自体が楽しかった。
人数が少なかったため、参加者たちとも名刺交換などやった。そう言えば主催者O氏にも色々とお世話になったものだ・・・。

またその頃は、カメラやレンズを新規購入した時に機材のテストとして、大手写真サークルの主催する撮影会にも参加した。そこは会員でなくとも受付で2〜3千円ほど払えば参加出来るのが手軽だった。
モデルは10人以上、参加者は100人を越えた大規模なもので、様々なモデルをハシゴして新しいカメラやレンズのテストをしたことを思い出す。
それはつまり、雑文154「女は好きか」で言うところの<カテゴリ2>の写真を撮っていたことになるか。

それらの写真(ポジ)は今も手元にあるが、ひとまとめにして箱の中で眠っている。他の写真のようにバインダーファイルには整理していない。
なぜならば、それらの写真にはあまり愛着を持っていないからである。
やはり女を撮るからには、それが気に入った女でなければ写真的価値を自分自身が見出せまい。ましてや趣味の写真ならば。

一方、我輩がヘナチョコ妻と出会ったのはヘナチョコがまだ30代半ばだった。
その頃はヘナチョコもそれなりに化けていたものだったが、写真を撮ることはあっても撮影会とは違いスナップに終始するため、雑文154「女は好きか」で言うところの<カテゴリ3>の写真ばかりである。
当然ながらストロボ光直当てで、柔らかい光など望むべくも無い。確かにナマナマしさはあるものの、そういった写真ばかりでは、せっかく機材を揃えても意味が無い。こんな写真などコンパクトカメラでも十分撮れよう。


<まだ30代半ばのヘナチョコ>

今となってはヘナチョコも40代となり、中判のクオリティで撮影すると逆効果となりどうにもマズイ。しかも夫婦という緊張感の無い関係により、下手に注文を付けるとすぐにヘソを曲げ、場合によっては日常生活に支障をきたすことによりモデルとしては扱いが非常に難しい。

ところで5年くらい前には、勤務先に友人Mという遊び人の女性がおり、顔とスタイルが良いので時々モデルになってもらっていた。まさに雑文154「女は好きか」で言うところの<カテゴリ1>の写真で、なかなか撮り甲斐のある存在と言えた。
残念ながら我輩とは性格が全く違うために恋愛関係とはなり得ない存在だったが、友人としてはノリが良くモデルとしても積極的だった。
ところが遊び人のくせに結婚などして退職してしまい、それ以降は1回くらいしか撮影していない。
最近連絡を取ったところ、離婚・再婚・出産と立て続けのイベントに忙しそうであった。まさにMらしい人生で笑ってしまったが、子育てというのは当分の間大変であるから、もはや撮影は無理だなと悟った。
(誘えば来るだろうが、さすがに子連れ・旦那連れでは撮りにくい)


<友人M>


●出会い

そんな時ふと、インターネット上であるポートレート写真が目に止まった。ある撮影会で撮られた写真だった。
「こ・・・、このモデルは・・・?」
そのモデルは、見れば見るほどELT(Every Little Thing)のボーカルの持田香織にそっくり。
ここでモデルの名前を出すと、検索に引っかかり所属事務所からクレームを付けられる恐れがあるため、ここでは仮に「H嬢」と呼ぶことにする。

以前、雑文087「モデルにするなら」にて「持田香織のようなクセのあるモデルを緊張感を以て撮りたい」と書いた。
(こんな書き方をすると持田香織に失礼かも知れないので、持田本人には内緒にしておいてくれ。)

H嬢はさすがにキャンペーンガールというプロらしく、写真に写っている表情やポーズは絵になっている。笑顔も良く写っている。だがそれだけに、緊張感のある写真という観点で見れば、全く反対の位置にある。

そうは言っても、複数の撮影者を相手にする撮影会であるから仕方無い。一対一の撮影ならば妙な注文も言えるだろうが。
まあ、気に入ったモデルさえ見付かれば、気長に撮影会に参加すればそのうちふとした表情を狙えるチャンスもあろう。
そもそもモデルがいなければどうしようもない。まずは、モデルが見付かって良しとしよう。

撮影会の日程をホームページ上で確認すると、ちょうど一週間後の週末に開催されるものがあった。H嬢を含めて4人のキャンペーンガールが参加する。1部〜4部まで分かれ、1部は野外、2〜4部はスタジオでの撮影となるそうだ。
早速、事務所に電話して予約を入れた。1部の野外は天候など不確定な要素があるのでパスし、2部〜4部のスタジオ撮影のみで申し込んだ。電話のついでに疑問点も幾つか確認した。
それによると、撮影距離はおおむね3メートル、光源はデイライト、4人いっぺんに撮影するのではなく、2人ずつ交互に入れ替わり着替えをするとのこと。

ポートレートはクオリティを優先させたいため、今回は是非とも中判にて撮影したい。望遠レンズによるアップでの撮影も当然考えているので、一眼レフ形式の「BRONICA SQ-Ai」を使うことになる。
レンズは望遠180mmと広角65mmを持って行くことにする。

ところで、フィルムは120フィルムで12枚撮り。これで何枚も撮影するとなればかなり厳しい。NewMAMIYA-6のようなカメラでは35mm判と同様な形式でフィルム交換は迅速に行えるが、BRONICAのようなフィルムバック形式のものはそれなりに時間がかかる。
あらかじめフィルムを装填しているフィルムバックを複数用意しておけば、フィルムバックを交換するだけで次の撮影に移ることが可能なのだが、1つあたり12枚撮りと少ないのは致命的。下手をすれば、撮影会の間ずっとフィルム交換に忙殺されることにもなりかねない。

「待てよ、120フィルムではなく220フィルムならばどうだ?」
220フィルムであれば、66判で24枚撮りである。もし2つのフィルムバックを使えば、48枚の撮影を連続して行える。35mmカメラであれば巻き戻す時間が必要になるが、BRONICAだとフィルムバックの中枠だけを交換すれば10秒もあれば良い(もちろんモータードライブによる給送前提)。

BRONICAはもう生産中止であるから、中古でも程度の良い物を手に入れるなら今しか無かろう。この際、良い機会であるからと、220フィルムバックを2つ中古で購入した。まとめて3万5千円だった。
フィルムは馴染みのKodak EPPにしようかと思ったが、なぜか220フィルムではE100Gのほうが安かったためこれを3パック(15本)購入した。

さて、カメラのファインダーはウェストレベルではマズかろう。ウェストレベルタイプはファインダー倍率は大きいものの、モデルへの視線が送れないため、この場合は不適当である。45度プリズムファインダーも微妙であるから却下。結局、通常のプリズムファインダーで行くことにした。

モータードライブ、望遠レンズ、プリズムファインダーを装着したBRONICAは、かなりの重量となり手ブレが心配になってきた。
スタジオで定常光での撮影は、どれくらいの露出だろうか?
ブレ防止として色々と考えたが、今回はテーブル三脚(ミニ三脚)を自分の胸に押し当てて使うことにした。


●撮影会当日

撮影会当日、天候はそこそこだった。
まあ、我輩はスタジオ撮影のみの参加であるから雨でも問題無いが、1部の野外で雨に降られてはモデルたちもあまり良い気がしないだろう。

初めての場所ということもあって時間を見誤り、スタジオ入りしたのはギリギリだった。
中に入ると、複数の視線を受けた。参加者らしき者たちが15人ほどスタジオの隅に座っている。我輩は勝手が分からずにいたが、受付の時間になったらしく受付の者が現れ、そこで2部〜4部の参加費1万9千円を払った。この値段でも、事前予約・3部通しの割引価格なのだが、やはり高いな。しかし4人のモデルで15人の参加者では、これくらいの金額でないと元が取れないのだろう。

受付を済ませた後、我輩は皆の居る場所に行き、早速カメラのセッティングを始めた。チラッと見ると、皆は35mm判一眼レフやデジタル一眼レフを持っていた。どうやら、中判は我輩一人らしい。
フィルムは事前に装填しておくとクセが付くので撮影直前に装填することになる。その場でモーター巻き上げしていると、ジャガジャガと凄いモーター音が響き渡る。気まずい・・・。

さて、しばらくするとモデル4人が現れ自己紹介を始めた。
それが終わると2人が残り、撮影が始まった。H嬢は次になるようだ。ちょうど良い。最初に露出を計っておき、H嬢の登場に備える。
露出は、ISO100のフィルムで1/30秒・F4.5・・・か。この絞り値は、我輩の望遠レンズの開放値であり、これ以上絞りを開けることが出来ない。1/30秒ではブレが怖いが根性を入れて何とかしよう。

実は、220フィルムの他に数本の120フィルムとそのフィルムバックを持って来た。というのも、120フィルムで試し撮りをしておき、そこで露出の過不足が判明すれば、本番のフィルムの現像時に増減感にて調整するつもりである。

スポット測光で露出を計り、念のためにデジタルカメラで撮影して確認した。そして120フィルムにて数枚撮影。それが済むともうやることが無い。H嬢が出てくるまでの間、カメラバックの置いてあるところへ戻り、床に座って一人で待った。

モデルの2人は、広いスタジオの中のそれぞれ別の場所に分かれてポーズをとっている。そしてある程度時間が経つと、2人は場所交代をする。
その後、次の2人と交代するというパターンであった。

ようやくH嬢の二人組に入れ替わった。
我輩はカメラを首にかけ、早速シャッターを切った。
「バシャンギャイーン!」
もの凄い音だった。
周りの静かな撮影音に混じって我輩のワイルドな音が響く。注目度はバッチリか・・・と思ったが、H嬢は我輩の騒音にもめげず、皆に対して均等に目線を送っている。くそ、さすがにプロだな。

しかししばらく撮影していると、H嬢が視線を送ってくる時間が少しずつ長くなってきた。
これは我輩の想像に過ぎないが、我輩が他のモデルを全く撮っていないということにH嬢は気付いたのかも知れない。
我輩の騒音が大きいため、そのことに気付いても不思議ではないだろう。
いくらプロのモデルであろうとも、自分だけを撮っている人間がいると分かれば、少しはサービスしたくはなろう。それが人情というもの。何しろ、我輩以外の撮影者は皆、複数のモデルを掛け持ち撮影しているのだ。

まあ我輩も、フィルムの余裕さえあれば撮影したいと思うモデルは他にも1人いた。だが今回は、フィルムの余裕が全く無い。1部ごとにフィルム消費上限を決めて計画的に撮影しているのであるから、最初から他のモデルを撮影する余力が無いのが実情。

しかしよく考えると、H嬢は(持田香織もそうだが)目線を横に向ける顔に強い特徴があり、それがなかなか良い。単純に我輩に視線が送られても写真的にはあまりメリットは無いと気付いた。それに気付くのが遅れてしまえば、同じような写真ばかりで味気なくなるところだった。
我輩は、他に視線を送るタイミングでもシャッターを切るよう努めた。H嬢はさぞかし気が散ったろうと想像する。何しろ、横でバシャンギャイーン!バシャンギャイーン!と音が鳴っているのだから。

そうこうしているうち、2部は終了した。
時計を見ると、なぜか15分ほど早く終わった。なぜだ・・・、フィルムが事前の計算よりも余ってしまった。
不思議に思っていると、モデルたち4人は受付のテーブルの前に並んで座り、撮影者たちがその前にモデルごとに4列に並んだ。我輩がふと周囲を見渡すと誰もいない。撮影者は皆、受付のほうに並んでいるではないか。
「な、なんだなんだ?!」
我輩は一人取り残され狼狽(うろた)えた。
見ると、皆はグラビア雑誌や前に撮影したであろうプリント写真などを手にして、モデルたちのサインをもらい始めた。
「サイン会か! い、いくら何でもそこまでミーハーにはなれん。相手は二十歳前後の小娘だぞ・・・。」
H嬢は最近19歳になったばかりと聞く。

だが冷静に考えれば、この撮影会のモデルはそこそこメディアに取り上げられる有名人である。最近テレビでの活動が活発な吉岡美穂なども、キャンペーンガールとして撮影会によく登場していたというから、この中から第二の吉岡美穂が現れても不思議ではない。そういう意味から、今のうちにサインをもらっておいて損は無いとも言える(我輩は関心無いが)。
今までの撮影会とは違い、まさにビッグな「大撮影会」であった。

サイン会が終わるとしばらく休憩時間となった。
次の3部まで皆と同じように床に座っていると、入り口から2人入ってきた。そのうち1人は鼻ヒゲと丸メガネとタートルネックの出で立ち。画家かと思えるその風貌に、「このスタジオに出入りするプロカメラマンなのか?」と思った。しかし受付で金を払っていたので、一般参加者らしいと分かった。我輩はその男に"アーチスト"と名を付けた。


続いて次の部が始まった。モデルたちは水着で現れた。
今度も同じように2人ごとに撮影が行われた。そして我輩も、先程と同じようにH嬢のみを撮影した。今度はサイン会の時間を見込んで撮影ペースを上げた。

見ると、アーチストがモデルに接近し、「はい、じゃあ軽く横を向いてみようか」とインスタント写真を撮っていた。指示の仕方に貫禄があり、タダ者ではない雰囲気を醸し出している。
インスタント写真のカメラ名は分からなかったが、スプリングカメラを大きくしたような、蛇腹の目立つカメラだった。
アーチストはピールアパート(peel apart)式のフィルムをバリッと剥がし、写真の出来具合をフムフムと確認。まるでプロのアーチスト系カメラマンの雰囲気。
しかし本番撮影用はなぜかNikonのAFカメラ(F100?)で、アーチストな外見とのギャップを感じた。彼ならば二眼レフが似合いそうに思うのだが。

そうこうしているうち、3部も終わった。1時間近くだがあっという間に感ずる。
やはりこの後もサイン会が行われた。
驚いたことに、アーチストもサイン会に並んでいるではないか・・・。我輩はその貫禄に一目置いていたのだが、結局はミーハーだったか。
今度のサイン会でも、我輩は一人でカバンの場所に座って待っていた。

最終の4部。
モデルたちはレースクィーンの格好で現れた。
4人ともなかなか格好良く、それぞれ撮ってみたいと思ったが、フィルムの制約があるため断念した。それに今さら他のモデルを撮ってH嬢の心象を悪くしたくない。
他のモデルを撮ることは普通の行為なのだが、それをしなかった者が急にそうなると、裏切ったかのように見えるだろう。

それにしても、どうもライティングが良くない。壁面に影が2つも映ったりするのは序の口。明るい表情のモデルに意味ありげにタングステン光を当てたり、硬い光で照らして影を強くしたり・・・。ひとことで表現すれば、「奇をてらっている」とでもいう感じか。まさか、スタジオマンの練習なのか?
そう言えば、毎度のサイン会の時に我輩はライティングしているところをジッと見ていたのだが、どうも試行錯誤の時間が長く、その場で適当にやっているように感じた。もし事前にライティングが決まっているのならば、すぐに組み立てることが出来るはず。
まあ、我輩を含めて皆がモデル目当てであるから、参加者主催者双方にこだわりは無いのかも知れないが・・・。

4部が終了した後、我輩はスタッフに「自分のホームページで写真を掲載して良いか」と尋ねた。そもそも個人のホームページでH嬢の写真を見て知ったのだから、出来ないことではあるまい。
すると、掲載する写真を審査して許可を出すとのこと。そうだろうな。有名人の卵であるモデルたちであるから、パンチラ・ムネチラの写真など撮られて掲載されてはモデルのイメージが傷付く。そうなれば商品イメージを重視するCMなどへの出演の道が閉ざされてしまう。


後日、フィルムを現像してみて驚いた。
なんと、ほとんどのカットが微妙にブレていた。
「あんなに気合いを入れたのになぜだ・・・?!」
よく見ると、被写体ブレと手ブレのミックスされたものだった。やはり、1/30秒では無理があったか・・・。
室内ではストロボしか使わない我輩にとって、ブレは初めての経験だった。

予定では、採用カットは200枚得られるはずだったが、結局30枚にとどまった。露出は全て完璧だったものの、ブレていれば使えない。本当に悔しい。
・・・まあ今回は、モデルが見付かったということで良しとしよう。

ちなみに、今回掲載しようと思う写真は20枚。その写真を主催者に申請して許可を得、我輩の写真掲載サイトにて公開する予定。
ただし、ここで撮影会を特定されると雑文の内容ゆえ苦情が来る恐れもあり、期待させておいて悪いのだが写真掲載サイトへのリンクは当サイトからは当面行わない方針。