2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
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10.アンケート
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カメラ雑文

[843] 2015年05月31日(日)
「デジタルでのモデル撮影会(4)〜試練〜」


●モデル撮影で何を求めるか

我輩は、モデル撮影がスムーズに行えるよう、モデル嬢とのコミュニケーションが必要であろうと考えた。そのためのツールとして5年前にブログも開設したことは前にも述べている。
しかし我輩にとって、モデル撮影はモデル嬢と仲良くなることが目的ではない。それは単なる手段に過ぎぬ。
我輩が最終的に何を得たいもの、それは他でもない「自分自身の探求」である。

一般的に、「女性写真は天使に見えるよう写すべし」という不文律があろうかと思う。つまり、美しく写すということ。
もちろん我輩も、女性写真は美しく写したいとは考えるが、方向性が世間一般とは完全に異なる。
我輩は女性写真に無味無臭な天使を求めているのではなく、生々しい存在感のあるリアルな女として写したいと思っている。

そのための要件として幾つかあるが、それらには我輩の強いこだわりがあり、例えば「毛穴までしっかり描写する鮮明さ」もその1つで、わざわざ鮮明さを失わせるソフトフォーカス撮影など何の価値も見出せない。

また「肌の色」にも強くこだわり、たとえ雰囲気満点の夕陽の中でモデル嬢を撮るとしても、夕陽の色カブリは許さない。もしそのような状況で撮ることがあれば、モデル嬢にはストロボ光を当てて正しい肌色が出るよう対処するだろう。夕陽の雰囲気をブチ壊す不自然な仕上がりになろうとも、要件を満たすことを優先する。

とは言うものの、自分が自分自身を全て知っているわけではないこともまた事実(参考:雑文816)。
モデル嬢の選定、コスチュームの選定、本番撮影、そして出来上がった写真の結果判定、それらを通して初めて自分の趣味、嗜好、性癖に気付くことも多い。そしてその気付きを次の撮影に反映させ、更に精鋭化させていく。
そのサイクルを繰り返すことによって未知なる自分を暴く探求行為こそが、我輩がモデル撮影をする目的と言える。

●新しいモデルの発見

さて前回の団体撮影にて、お気に入りモデルを増やすことはなかなか難しいことを実感した。宣材写真やブログ掲載の自撮り写真は実物を表していないことが多い。
もちろん、参加回数を増やせばそれなりに当たりが来るかとは思う。下手な鉄砲、数撃ちゃなんとやら。
とは言っても金や時間に限りがある以上、無制限に参加は出来ない。事前にリサーチを重ねた上で「このモデルならば間違いない」と確証を得ることが肝要。

今のところ、お気に入りモデルは最初に撮影したR嬢のみだが、もう少し背の高いスタイルの良いモデルも見付けたいと思っていた。
そんな時、別の撮影会スタジオのウェブサイトに掲載されたモデルの画像を見てピンと来た。モデルの名前はF嬢としておく。

そこに載っているF嬢の画像は、本来ならば可否を決められないほどの小サイズであり、しかもバストアップのみ。しかしながらどうしても気になって仕方無く、モデル名で検索したところ、数は少ないものの、過去の撮影会でカメラマンが掲載したものが見付かった。

一般的に、女性写真では撮影カットによって顔が違って見えることはよくある。場合によっては同一人物だとは思えないことも珍しくない。
髪形や化粧、そして服装の違い、あるいは同じ撮影日であっても表情や光の具合によってもガラリと変わる。撮る時にはそういった変化が面白いとも言えるが、モデル選定時には判断を迷う。

今回検索で見付けたF嬢の写真は、この例にもれず幾つかの顔を見せていた。しかしどの顔も我輩の趣味に合致するので驚いた。こういうことはあまり無い。
しかも手足が長くスタイルが良い。そして何よりシャープな目がセクシーで、笑顔が大変良かった。「ツボにハマる」という言葉があるが、今回まさにそういう感じがする。

なお、そのスタジオは初めての参加なのでどういう撮影形態なのか調べてみると、広いスタジオ内で10人ほどのモデルそれぞれを囲んで撮影となるらしい。参加費は1時間6千円だが、4時間参加では1万円(1時間あたり2千5百円)と割安になる。

またモデルの中で特定の1人だけを1対1で撮影したい場合にも対応しており、その時は参加費1万円を払えばモデルを指名して占有することが出来、1対1で1時間撮影可能になるとのこと。我輩のターゲットはF嬢1人に定めたので、今回1万円を出すこととする。

ただし1対1撮影を事前予約するには枠を2時間分で確保せねばならず、1時間としたい場合は当日受付のみとなる。金の乏しい我輩は当然ながら1時間のほうだが、もしF嬢が人気を集めて事前予約が入ってしまうと我輩はF嬢を撮れないということになる。
不謹慎ながら、F嬢がそれほど人気を集めないことを願った。

●撮影計画

撮影サンプルやスタジオの写真を見ると、スタジオは外光がよく入る明るい場所のようだが、それでも我輩はストロボにこだわる。そこにあるがままの光源を使うことは、自分のコントロール出来ない要素を増やすことに繋がり、結局は行き詰まって面倒なことになるからだ。

前回の1対1撮影で投入したバンク(ソフトボックス)では設置上の失敗があったが、今回は設置方法を改善して撮影に臨む。これでどれくらい効果が上がるのかを見てみたい。
また環境光として全体を弱く照らすバウンス用の1灯と、モデル嬢背後から直光を与える1灯を加え、灯数としてはいつもの3灯にまとめる。

カメラは、標準ズームと望遠ズームをそれぞれ装着したOLYMPUSのカメラ2台「E-M1」と「E-M5 Mark2」を用意することとした。「E-M5 Mark2」のほうは縦位置にてフリーアングル撮影出来るので、縦位置を多用するモデル撮影では有用であろう。縦位置グリップも装着しておく。

<E-M5 Mark2とE-M1> (装着レンズは逆)
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
E-M1と並べた状態

ただし「E-M5 Mark2」はシンクロスピードが1/250秒と少々遅いのでメインカメラとせず、当日は使用頻度が低いと思われる望遠ズームのほうを装着しておく。

スタジオのアクセスについて、埋め立て海沿い地区のせいかスタジオ周辺は自由に駐車可能とのことで、迷うことなくクルマで行くことに決めた。

●撮影当日

当日は少々雨が降っていたが、クルマでスタジオに横付け出来るならば何ら問題無い。
少し早めに到着し、スタジオ周辺にはクルマが何台か停まっていたので空きスペースに駐車。雨がまだ降っている。

車内でしばらく待っていると、モデルや関係者、そして参加者らしき人々が入ってきたので付いて行った。
広いスペースには、モデルを含めた多くの人間が待機しており、最初は誰が主催者なのか分からなかったが、1人それっぽい人物を見付けたので近付いていくとやはり主催者だった。

我輩は初めてであることを告げると、主催者は「お目当てはいますか?」と尋ねた。我輩はすぐさま「F嬢を1対1で撮りたいんですが」と言って1万円を払った。
主催者は、モデルたちがたむろしているほうへ我輩を連れて行き、「F、指名入ったから一緒に衣装決めをよろしく。」とF嬢に託した。
我輩はそこで初めてF嬢を目にしたわけだが、想像以上に背が高く、手足が長く見えた。生身の人間ではなくマネキンかと思ったほど。これは素晴らしい。
ただ、化粧が濃く年齢が高めに見える。まあ、下品な感じにはなっておらず、むしろ上手いほうではある。

F嬢は、我輩を連れて少し離れた別の部屋へ案内した。
我輩は歩きながら世間話的な話題で打ち解けようと思ったのだが、F嬢はなんだかボーっとした感じでやけに反応が悪く会話が続かない。ちょっと困ったなと思ったものの、まあ撮影を始めれば変わるだろうと深く考えないことにした。

衣装はモデルそれぞれに私服を持ち込む形式のようで、F嬢は着替え室から2着ほど持ち出してきて「こんな感じのがありますが・・・」と我輩に見せた。しかしイメージが合わず、それならば今着ているものが良い。
それを伝えると、F嬢は初めて笑顔を見せて「分かりました」と言った。何とも笑顔がかわいいではないか。これは期待出来る。

その後、皆が集まっているスペースに戻ると、ちょうど撮影時間となったようでモデル単位で散らばった。2階にもスペースがあるので2階へ移動する組もある。そして広い部屋のそれぞれの一角で撮影が始まった。
我輩は1対1の撮影であるが、少々出遅れてしまい、空いている場所をこれから探すことになる。だがその時立っていた場所が雰囲気の良い一角だったので、そこで撮影することとした。

なぜこの場所だけ空いていたのかその時は気にしなかったが、後から考えれば、その一角だけは外光がほとんど入らない状況だったからだろうか。それは逆に、定常光の影響を極力排除しようとする我輩には最適であった。

取り急ぎ、自前のバンクを組み立てた。前回バンクを使った時には縦位置のセッティングを誤ったので、今回は上手くセッティング出来たと思う。
バンク以外の2灯は、機動性を考えて1本のポールスタンドに2灯を設置。1灯は上を向けて天井バウンスにより弱い環境光を作り、もう1灯は逆光気味の直光とする。

<1本のポールスタンドに2灯を設置>
1本のポールスタンドに2灯を設置

もう撮影時間は始まっているので、F嬢をイスに座らせてテスト撮影を行なう。ライトの微調整を完了した後、改めて撮影を始めた。
F嬢が無表情だったので、とりあえずはそのパターンで数枚撮る。無表情でも我輩のイメージに合うが、手をダランとさせているのでまるで人形のように見える。そこで、次に笑顔の状態をお願いした。やはり笑顔が良い。

ところが、数枚撮ると笑顔がスッと消えて素の顔に戻る。仕方無いのでそのまま撮り、しばらくしてまた笑顔をお願いした。
だが笑顔は2〜3枚しか撮れず、またすぐに無表情に戻ってしまう。いやそれだけならばまだしも、時々けだるそうによそを向いたりする。不機嫌そうな表情も何度か出た。撮影中の会話も全く乗ってこない。だんだんと言葉が続かなくなってきた。

嫌われたのかとも考えたが、初っぱなからこの調子なので嫌われる理由が分からない。変なことを言った記憶も無いし、いや、そもそも会話自体が少ない。

この日まで何度かモデル撮影してきて、初対面でもそこそこ打ち解けて撮れる自信みたいなものが出来てきたのだが、それは大間違いだった。
当たり前の話、会話は相手が受け応えして初めて成立する。これまではモデルに助けられていたのだ。そのことを、F嬢を相手にして初めて気付かされた。

前回の撮影会ではしゃべりっぱなしだった我輩が、今回はもう、ほとんどしゃべれない。ただ単に、指示するだけの言葉しか出てこない。
この場の空気が非常にツライ。
しかしライティングとしては良いカットが得られている実感がある。

ところで撮影しているこの場所について、スペースとしては広くはないものの、角度を変えると別のシーンが演出出来る場所で、3パターンくらいの撮影が出来るのが良かった。ライティングもパターンごとに組み直して変化を付けた。

しかしそれにしても、モデルが手強い。我輩1人では手に余る。
しばらく撮って「そろそろ1時間経つだろう」と思って時計を見れば、まだ45分しか経っておらず残り15分もあるではないか。時間が経つのが非常に遅く感ずる。今までの撮影とは全く逆。
正直言って、もう撮るのをやめたくなってきた。頑張って2万円払って2枠予約しなくて本当に良かった。
それでも、1万円払ったことを考えると、この1時間、最後まで撮るしかない。

やがて長い長い修行のような時間が終わり、ようやく腕時計の時報が「ピピッ」と鳴って1時間が経ったことを知らせた。
周囲を見渡すと、他の撮影組たちも終了といった様子で、2階の撮影組たちも下に降りてきた。
我輩は心の底からホッとして、「もう1時間経ったみたいだね」とF嬢に声を掛けた。するとF嬢は「え? あれ? ・・・終わったんですか?」と辺りを見渡した。まるで長い眠りから目を覚ましたかのような言葉に、我輩は違和感を感じた。

その後F嬢はどうすれば良いのか分からない様子でしばらく辺りの様子をキョロキョロと窺っているようだった。だが我輩自身、ここは初めての場所で勝手が分からないし、これ以上F嬢に関わる気力も無かったので、そのまま自分の撤収作業に集中し、早々に部屋を出てクルマに戻った。
どうやらこの時間で撮影を終えるのは我輩1人のようで、人けのない駐車スペースで運転席にもたれてつぶやいた。
「今後F嬢をモデルにするのはやめよう・・・。」
事実上の敗北宣言であった。

●撮影結果

撮影結果を見てみたところ、発色がすこぶる良い。
ストロボ撮影のせいであることは間違いないが、それでもここまで発色が良いのも初めてだった。それはまるで料理のように、色だけで"美味しそう"に感ずる。

ライティングについても立体感があり、ゴマカシや強調が何も無く、肌のシットリした肉感的存在感がリアルに表現されていた。非常に満足に思う。この結果であれば、1万円払って苦行の撮影をした甲斐があったというもの。

<肉感があって良い>
肉感があって良い
肉感があって良い

ただ残念なことに、後半の写真を見ていくと立体感は弱くなっていた。恐らく、カメラの背面液晶表示が硬調であることから惑わされ、立体感を弱めるライティングに調整してしまったのかと思う。もったいないことをした。

なおピントについては、顔認識モードによって目にピントが来ているのは当然であるが、顔認識されなかったカットもあったようで、その場合は当然ながら通常のフォーカスエリアのほうにピントが合っている。それについては今後の反省点となろう。いくら機械任せとしても、顔認識しているかどうかの確認はすべきだった。
だがあの時は、そういうところまで気が回らなかったというのが正直なところ・・・。

いずれにせよ、ピンボケカットが大変悔やまれるほどに今回のモデル嬢とライティングは良かった。いつもならば軽微なピンボケであっても容赦無く削除するのだが、今回ほど削除に悩んだことは無い。
結局、縮小処理すれば十分に見られるような軽微なピンボケカットについては消すことは出来なかった。

この微小なピンボケカットを心置きなく削除するためには、またF嬢を撮るしかあるまい。
撮影時の悪夢が甦るが、これは神が与えたもうた試練かも知れんな(ダジャレ失敬)。

さて最後となるが、今回の撮影写真を別のウェブサイトに掲載したのでこの雑文からリンクする。
この雑文上で写真を直接表示しない理由は、今後のモデル撮影に不都合があろうかと考えたため。それゆえ、別サイトとして分け、この雑文の記事が直接写真と関連を持たない一方通行リンク状態とした。