2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[794] 2013年05月17日(金)
「PENTAX Qの価値を無理矢理考えてみる」


デジタル一眼レフカメラがまだ高嶺の花だった頃、我輩は10万円以下で買えるコンパクトデジタルカメラ「OLYMPUS C-2020Z」を使ってテーブルトップスタジオ撮影をしていた。なぜならこのカメラには、テーブルトップスタジオ撮影には欠かせぬ外部ストロボ用シンクロターミナルが備わっていたためである。

<OLYMPUS C-2020Z>
OLYMPUS C-2020Z

本格的カメラということの定義については幾つかの要件があるが、その一つに「外部ストロボが使えるかどうか(シンクロターミナルあるいはホットシューの有無)」というものがあろう。普通のカメラは内蔵ストロボを備えているものだが、それは正面からしか光を照射出来ないし、光量調整はオートのみでマニュアル調整は不可能(※)である。
だからこの要件で言えば、この「C-2020Z」は本格的なカメラに近いと言えた。
(※内蔵ストロボでもプラスマイナスの調整は可能だが、それはAEに基づいたプラスマイナス補正のためカメラ側の判断で勝手に発光量が変わってしまい、露出を固定するという意味では使えない。)

<C-2020Zで撮影した外部ストロボ写真>
(※画像クリックで横1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
C-2020Zで撮影した外部ストロボ写真
C-2020Zで撮影した外部ストロボ写真

ただ、いくらシンクロコネクタがあるとは言っても、この「C-2020Z」はやはりコンパクトデジタルカメラ。電動ズームはちょうど良いところで止めるのが難しく、AFはシャッターを切るたびに測距やり直しとなり、場合によってはピントが合わない。これは非常にもどかしい。

もし「C-2020Z」のレンズが外せるならば、より踏み込んだ撮影が出来ただろうし、余計な苦労もしなかったろう。MFレンズやマクロレンズ、好きに交換すれば済む話。もちろん、工夫もせず簡単に解決出来るわけではないが、それなりに手を施せばそれが結果となって現れるという意味では、コンパクトカメラであってもレンズが外せるほうがより面白いカメラとなったはずだ。

当時としては、レンズが外せるデジタルカメラは一眼レフタイプだけであった。そういうものはボディのみで60万円くらいで図体も中判一眼レフカメラ並みであり、とても個人で購入出来るものでは無かった。単にレンズを外したいだけなのに、そのような大げさなカメラしか選択肢が無いのか。

我輩はすべてのコンパクトデジタルカメラのレンズが外せるようにしろと言っているわけではない。1機種でもレンズが外せるコンパクトデジタルカメラがあればと望んだに過ぎぬ。それさえあれば、後は我輩の技量で何とかする。それで上手く撮れなければ、それは我輩の責任。

結局のところ我輩のその要求は、デジタル一眼レフカメラが大幅に値を下げたことにより収まった。「Canon EOS D30」の中古を20数万円で手に入れることが出来たのである。わざわざコンパクトタイプのデジタルカメラにレンズ交換式などを求める必要も無くなった・・・。


あれから10数年、デジタルカメラの市場も大きく様変わりした。
今ではデジタル一眼レフカメラであってもエントリークラスであればレンズキットで10万円以下、型落ちになると5万円以下のものすらある。かつては技術的に実現性を疑われた35mmフルサイズでさえ、アマチュアが買える価格帯で登場している。

コンパクトデジタルカメラについても、一眼レフタイプに匹敵する大きさのイメージセンサーを搭載したモデルが次々に発売されている。撮影条件さえ良ければ、デジタル一眼レフカメラと同等な、いや、場合によってはそれ以上の画質が得られる。

また、「ミラーレス一眼」と呼ばれるカテゴリも出現した。
これは「ミラーレス」という名前のとおり、一眼レフカメラからミラーボックスを除いた形態であり、そういう意味では一眼レフ形式をルーツとする派生形と言える。イメージセンサーの大きさもデジタル一眼レフカメラに準じており、決してコンパクトデジタルカメラをレンズ交換式にしたものではない。そのため我輩などは、ボディサイズの大きな一眼レフタイプからコンパクトなミラーレスタイプに移行し、デジタルカメラのメインとして使い始めたほど。

そんな中、PENTAXからコンパクトデジタルカメラと同サイズ(1/2.3インチ)のイメージセンサーを搭載する「PENTAX Q」というミラーレス一眼カメラが登場した。

<最小ミラーレス一眼カメラ「PENTAX Q」>
最小ミラーレス一眼カメラ「PENTAX Q」

イメージセンサーが小さいだけのことはあり、カメラとしての図体もかなりコンパクトである。ただしマウント部分の写真をよく見てみると、必要以上にイメージセンサーが小さいようにも思える。このマウント径ならばもう少し大きなイメージセンサーを採用出来たろう。なぜにこんなに小さなサイズとした?

<マウント径を同じ大きさに揃えた場合のイメージセンサーの比率の違い>
マウント径を同じ大きさに揃えた場合のイメージセンサーの比率の違い

それでもなぜか、この「PENTAX Q」は我輩に訴えかけるものがある。去年の正月に危うく衝動買いしそうになったがかろうじて価格で踏み止まったことは雑文737でも書いたとおり。
それがここにきて「PENTAX Q」の値段が下がってきたようで、当時は4万5千円だった単焦点標準レンズキットが今なら3万円で手に入るようである(共に最安値での比較)。そのため我輩の迷いも再燃することとなった。

ただし理屈で考えるならば、今の我輩が「PENTAX Q」を購入する必要性は無い。
もし、小さなボディサイズでそこそこの画質を得たいというニーズを持っているならば、我輩の場合はマイクロフォーサーズカメラによりそれを満たしている。「Panasonic GF3/GF5」はかなりコンパクトなカメラとして使えるので、イメージセンサーの小さな「PENTAX Q」を使ってわざわざ画質を下げる意味も無い。
それなのに、この「PENTAX Q」を買うための理由を色々と探している自分に気付いた。これほど気になるのは一体どうしてなのか。

「PENTAX Q」にはかつてのポケットカメラ「PENTAX auto110」の面影を感じたことも否定しないが、改めて考えると、この「PENTAX Q」はコンパクトデジタルカメラがレンズ交換式になったものと思えて仕方無い。
昔、コンパクトデジタルカメラ「C-2020Z」で自由の利かなかった撮影が、ここにきてようやく「PENTAX Q」の出現で自由が利くようになる。そんなところに心動かされているのではないだろうか。
そうであるならば、「PENTAX Q」のイメージセンサーが極小であることが、我輩にとって重要な要素だということになる。

現在、フルサイズデジタルカメラを所有している我輩としては、「PENTAX Q」の画質がそれに匹敵することは考えられないし、仮にそんなことがあったとしても心情的に受け入れにくい話。
だがそれと同時に、「PENTAX Q」を使いこなしてフルサイズデジタルカメラに匹敵する画を撮ってやる、という気持ちも湧いてくる。
これほど複雑で葛藤に満ちた心境も無かろう。

買う気持ち半分の状態で改めて調べてみると、現在は「PENTAX Q」の後継機として「PENTAX Q10」が出ていることを知った。
「PENTAX Q10」ではカラーバリエーションが増えており、ボディ色と革張りの組合せパターンは100種類にも上る。これはこれで楽しそうだが、このカラーバリエーションを実現させるためにボディ材質がプラスチックになったというではないか。「PENTAX Q」が金属製だけに残念。
もっとも、「PENTAX Q10」は出てから間も無いのでまだ値が下がらず、どのみち購入対象とはならない。

というわけでやはり「PENTAX Q」なのだが、このカメラのレンズキットのうち、標準単焦点(01-STANDARD PRIME)レンズキットよりも標準ズーム(02-STANDARD ZOOM)レンズキットのほうが5千円ほど安いようだ。出物も標準単焦点01レンズキットのほうはあまり多くない。
だが単焦点01よりもズーム02のほうは全長が少々長く、せっかくの「PENTAX Q」のコンパクト感が失われてしまう。だから今回狙うのは標準単焦点01レンズキットのほうを前提としている。

Webショップでは何度も購入をためらった。注文ボタンを押そうとしたがなかなか押せない。
コンパクトなサイズを購入動機としたかったが、「LUMIX GF3/GF5」よりも小さいことは小さいだろうが、比較画像を見てもそれほど違いを感じない。こんなものだったか? あるいは現物を手に取って比べると「GF3/GF5」よりも小さく感ずるのか? その点がかなり心配で、思い切りが付かない。
やはり、現物を目の前にしないと購入の決心がつかない。

会社帰りにPCデポに寄ってみたところ、ショーケースに入っている標準単焦点01レンズキットのホワイトボディが展示品ということで2万9千円の値が付いていた。やはりコンパクトなところが魅力的だと再確認した。ホワイトボディの佇まいも上品で、選ぶとしたらこの色であろう。
2万9千円は相場としては高くはないが、展示品ということを考えると安くもない。完全新品の通販品と同程度の値段なので、そちらを選ぶほうが良いのではないだろうかと迷った。そのためこの日は買う決断が出来なかった。

結局のところ、3度会社帰りにPCデポに寄り、最後に思い切って買ってみることにした。
ショーケースの横に置いてある箱に「箱をレジにお持ち下さい」というラベルが貼ってあったのでその箱を持って行った。すると、「現物は箱の中に入っている」とのことで、そのまま会計となった。ショーケースのあのカメラはこの箱の現物じゃないということか。
会計時、念のために「展示品とあるが、自由に手に取れる環境での展示か?」と確認したところ、「ショーケースの中に入れていたのでほぼ未使用状態」という返答を得た。

帰宅して早速箱を開けると、なんと、カメラ本体とレンズが入っておらず、付属品のみだけの状態。一瞬、我が目を疑ったが、やはりあのショーケースに入っていたものがこの中身だったに違いない。
慌ててPCデポに電話をかけた。時計を見ると、PCデポの営業時間を30分過ぎている。今日はダメか・・・?
だがしばらくすると電話に店員が出たので経緯を説明すると、確認後折り返すとのこと。10分ほど待っていると電話がかかってきて、現物があったのでこれから我輩の自宅まで現物を届けに来ると言う。それはまあ当然のことだが、しかし電話で自宅の場所を説明するのも難しく、こちらも家を出て途中まで迎えに行く必要があった。

ようやく手にした「PENTAX Q」のホワイトボディ。レンズマウントも小さく緻密感溢れている。まるで、「PENTAX LX」のファインダーシステムのバヨネット部分のよう(知る者はあまりいないだろうが)。

せっかくのレンズ交換式なのだから他のレンズも欲しいところだが、欲しいと思うようなレンズが他には無い。
標準ズームはその長さのため当初から避けているし、広角単焦点と望遠単焦点そして魚眼はMF専用のトイレンズで実用にならぬ。また、最近発売された望遠ズームはあまり使い道が思い付かない。

考えた末、魚眼レンズの「03-FISHEYE」を追加することとした。実売9千円と安いので、遊びで持っていても良かろう。

<購入したPENTAX Qと交換レンズ>
購入したPENTAX Qと交換レンズ

また、NikonFマウントレンズが使えるマウントアダプタも購入した。
「PENTAX Q」はイメージセンサーがかなり小さいので、マウントアダプタで他の交換レンズを流用してもどれもが望遠寄りとなって用途が限られる。しかしマクロレンズを使えば用途が広がるはず。

<マウントアダプタを介してマイクロニッコールを装着>
マウントアダプタを介してマイクロニッコールを装着

では早速、フルサイズカメラ「Nikon D600」との比較をしてみたい。
これまで行なった比較はあまり差の無いカメラどうしが多かったが、今回はイメージセンサーの大きさが大幅に異なるカメラどうしの比較。これほどの違いが無ければ比較も面白くなかろう。我輩としては結果が楽しみである。予想通りの結果となるのか、あるいは予想を裏切ってくれるのか。

まずは、両カメラの撮影範囲を下記に掲載する。

<両カメラの撮影範囲>
両カメラの撮影範囲

「PENTAX Q」は01標準レンズ、「Nikon D600」はMF24mm単焦点レンズで撮影した。
もちろん、この大きさの画像では画質の違いは全く伝わらない。
あくまでもここでは画質を見るのではなく、両カメラの撮影範囲を確認しておきたい。と言うのも、「PENTAX Q」は1,200万画素だが「Nikon D600」は2,400万画素なので、ピクセル等倍での比較で大きさを揃えるために被写体のサイズを撮影時に調整しておいたのである。

さて、次はいよいよ、等倍比較を行う。
もちろん、画像が大きいためそのまま載せることは出来ず、部分的に切り抜いた。

<等倍切出し比較>
(※画像クリックでより広範囲な等倍切出し画像が別ウィンドウで開く)
PENTAX Q(等倍切出し) Nikon D600(等倍切出し)

どちらもISO200での撮影だが、当然ながらフルサイズカメラには画質は敵わない。それは比べるまでもないこと。
だがそうは言っても、事前に予想していたほどの違いが無いのには驚いた。もちろん背景のボケの違いはレンズの違いなので当たり前だが、ノイズ感としてはあの小さなイメージセンサーのものとはとても思えない。

また、イメージセンサーの小ささから背景がボケにくいと言われるが、それなりに主要被写体に接近すればボケてくれる。もちろん主要被写体が小さい場合に限るわけだが、それは理屈としては雑文582「小さなCCDで撮影するということ」に述べたとおり。

<接近すればそれなりに背景ボケは出る>
(※画像クリックで横1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
接近すればそれなりに背景ボケは出る
[PENTAX Q/8.5mm F1.9/ISO200] 1/50秒 F2.2


次に、低照度下での手持ち撮影を試してみた。
やろうと思って挑戦したわけではなく、購入直後は昼間にテスト撮影する暇が無く、会社帰りに夜の駅を撮影しただけのことであった。
小さなイメージセンサーゆえに最初から感度を上げるつもりも無くISO200のままとしたのだが、恐らくブレによって見るに堪えない画像となるだろうと予想した。何しろ、同じ条件でマイクロフォーサーズの「OLYMPUS E-PM2」と「Panasonic 12-24mm F2.8」の組合せでもブレは抑えられなかったのである。「PENTAX Q」ごときがクリア出来るはずは無かろう。

ところが結果を見て驚いた。1/4秒のシャッタースピードでありながらもブレが認められないのだ。
確かに「PENTAX Q」にはセンサーシフト式のボディ内手ブレ補正機能があるが、あのような小さなボディにそれほど高等な機構が組込まれているとは思えずバカにしていた。

<1/4秒でブレ無し>
(※画像クリックで横1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
[PENTAX Q/8.5mm F1.9/ISO200] 1/4秒 F1.9

手ブレ補正については、マウントアダプタを介してNikonのマクロレンズを装着した場合でも大きな効果があった。

手ブレ補正の具合を見るために、これまで最強と思っていた「OLYMPUS OM-D E-M5」の5軸手ブレ補正との比較をしてみる。
完全にブレが補正されてしまう撮影条件ではボーダーラインがどこにあるのか分からないので、ここではギリギリブレるシャッタースピードとした。条件を揃えるため「OM-D E-M5」は背面ライブビュー撮影である。また「PENTAX Q」は望遠レンズが無いので、マウントアダプタを介してマイクロニッコール55mmを装着している。

<等倍切り抜き比較>

今まで強力な手ブレ補正機能を持つ「OLYMPUS OM-D E-M5」を絶賛してきた我輩だが、この結果を見ると、率直に「PENTAX Q」の手ブレ補正能力は凄いと思った。何しろ、換算300mm近い望遠をライブビュー状態で保持している。背面液晶を見るとブルブルと揺れが止まらないので、さすがにこのシャッタースピードでのブレ補正は無理だろうと思いながらシャッターを切ったのだが・・・。

まだ試してはいないが、超望遠レンズを使っての撮影でも意外に実用的かも知れぬ。マウントアダプタを使えば換算係数は5.5で、例えば300mmレンズが1,650mmにもなる。


さて、高感度のノイズ耐性はどうであろう。
もちろん、強力な手ブレ補正とF1.9の開放F値のレンズのため無理に感度を上げなくとも使えることは分かったのだが、感度を上げざるを得ない場合もある。それは被写体ブレを防ぎたい場合である。

ある時ステージ公演を観に行ったのだが、当日は撮影禁止であろうと思っていたので特に撮影機材を持って行かず、ただ念のために「PENTAX Q」をズボンのポケットに入れていた。
ところが実際には撮影自由とのことで、急遽「PENTAX Q」を使って撮影することになったのだが、さすがに手ブレは補正出来ても被写体ブレは補正出来まい。そういうわけでISO400に上げて撮ってみた。

結果は、極小イメージセンサーとは思えぬほどの低ノイズだった。
確かにそれなりのノイズ感はあるが、想像していたよりもずっとノイズが小さい。イメージセンサーのサイズを考えると、驚くべき結果と言える。

<ISO400でもそれなりに使える>
(※画像クリックで横1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
ISO400でもそれなりに使える
[PENTAX Q/8.5mm F1.9/ISO400] 1/125秒 F2.8

かつて、大きなイメージセンサーのデジタルカメラが高価だった時代に「PENTAX Q」のようなカメラがあったらどんなに良かったろう。当時は画質が悪いのは極小イメージセンサーの限界だと思っていたのだが、その限界は本当の限界ではなかったことになる。
このようなポテンシャル(秘めたる真の能力)を持つカメラならば、我輩も腕の振るい甲斐があるというもの。手をかければそれだけ応えてくれるだろう。マイクロフォーサーズやフルサイズとの棲み分けを考えると、あまり結果が良過ぎても困りものだが、画素数が少ないので遊びが本気になることはあるまい。


ところで9千円で購入した魚眼レンズのほうだが、こちらの描写はどれほどのものか。
魚眼を含む広角レンズ全般についての我輩の位置付けは、「情報量を詰め込む」ということである。遠近感を誇張したり、歪みを楽しんだりする趣味は基本的に持っていない。そういうわけで、遠景を主体に広い景色を撮ってみた。

このレンズはMFなので、非一眼レフカメラで使うには少し面倒臭い。拡大ライブビューでピントを合わせたつもりだが、結果はあまりスッキリしない。絞り込もうにも絞りが存在しないのでこれ以上は手を施せない。
「しょせんトイレンズ、こんなものだろう」と、ある意味納得した。

だがその後何気なく接近撮影して驚いた。
遠景とは比べ物にならないくらいシャープで目の覚める描写が得られたのである。これは恐らく、一時期流行ったペットの鼻デカ写真を撮るために近距離の描写に主眼を置いた設計なのだろうかと想像する。
それならば、我輩もその特性を活かして接近戦でこのレンズを活かしてみようか。

<魚眼レンズで接近撮影をしてみた>
(※画像クリックで長辺1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
魚眼レンズで接近撮影をしてみた
[PENTAX Q/FISH-EYE3.2mm F5.6/ISO200] 1/30秒 F5.6
魚眼レンズで接近撮影をしてみた
[PENTAX Q/FISH-EYE3.2mm F5.6/ISO200] 1/125秒 F5.6
魚眼レンズで接近撮影をしてみた
[PENTAX Q/FISH-EYE3.2mm F5.6/ISO200] 1/25秒 F5.6


さて最後のテスト撮影で、いよいよテーブルトップスタジオを試してみようと考えた。
「コンパクトデジタルカメラであっても、レンズ交換出来るならばこういう撮影も出来るのだ」ということを示したいと思い、マウントアダプタを使ってNikon製MFレンズに換えた。粘度のあるMFの感触がピント位置を固定してくれるので撮影し易い。外部ストロボのシンクロ接点はホットシューから取る。

ところが、シャッターを切っても外部ストロボが発光しないではないか。
「PENTAX Q」はボディ側にフォーカルプレンシャッターを持たず、レンズ側にシャッターを持つレンズシャッター方式である。だがトイレンズシリーズ(03-FISHEYE、04-WIDE、05-TELEPHOTO)ではコストダウンのためかレンズシャッターは搭載しておらず、それらのレンズを装着するとイメージセンサーによる電子シャッターでの撮影となり、その場合は純正ストロボ以外の外部ストロボでは光らない。これはつまり、物理的なシャッター機構が無いためX接点を物理的に叩くことが出来ないからであろう。純正ストロボのみ光るのは、コンピュータを介すことによりデジタル通信で発光制御をしているものと推測する。

したがって、マウントアダプタを介してNikon製マクロレンズなどを装着すると汎用の外部ストロボが使えず、テーブルトップスタジオ撮影は出来ないということになる。
だから「PENTAX Q」でのテーブルトップスタジオ撮影を考えるならば、レンズシャッター(物理シャッター)を持つ「02-STANDARD ZOOM」か「06-TELEPHOTO ZOOM」が必要となろう(01-Standardはテーブルトップスタジオには広角過ぎる)。
だがどちらのレンズも実売価格約2万円で、遊びのためとしては少々投資が過ぎる。これ以上金をかけるならばマイクロフォーサーズやフルサイズのレンズに費やしたほうが良い。残念だが、このカメラでのテーブルトップスタジオについては深追いは止めておくべきか・・・まあ、そのうちこれらのレンズが中古で安く手に入ることを祈ろう。そういう意味では、今後の可能性として期待を残すことにしたい。


以上が今回のテスト撮影で得た結果であるが、全般的に画質に関しては褒めるしか無い。
ただし、ノイズが少ないとは言うものの、等倍で見ると微妙に眠たい画となっている気もする。小さいフォーマットゆえに回折の影響が出たか、レンズの分解能が足りなかったか、あるいはカメラ内のノイズ処理でディテールを失っているのかも知れない(RAWデータにもノイズ処理されたデータが乗っているのかは未確認だが)。

そうは言っても、画質がこれ以上良くなってしまうと、メインで使っているマイクロフォーサーズの立場が無くなるのでそれも困る。だから画質としてはこのフォーマットの限界ということであれば我輩にとって都合が良い。
このカメラは我輩にとっては真面目に運用を考えるようなカメラではないし、仮に真面目な運用を求めるならば、そもそもこのカメラを買わなかったはず。遊びとして楽しんでこそがこのカメラの存在意義であろう。

ちなみに我輩の場合、遊び的な楽しさを感ずるのは、そのカメラの性能の限界ギリギリまで引き出すことが出来た時である。
もしこれが遊びではなく結果が全ての撮影であれば、撮影中に限界に達してしまうようなカメラは危なっかしくてとても使えない。出来れば性能に余裕のあるカメラを選びたいもの。
その点、「PENTAX Q」は遊びのためのカメラとして買ったのであるから、限界まで能力を引き出すのが面白く、それこそ腕の振るい甲斐を感ずる。ちょっとでも気を抜くと満足な画質が得られず、常に全力を求められるカメラ。逆に言えば、全力を投入すればそれなりに応えてくれるというのが良い。

それから、マイクロフォーサーズではミニチュアを動かす模型趣味的な面白さを雑文751にて書いたが、「PENTAX Q」では更にそれ以上のミニチュア模型的存在感があるのが楽しめる。
模型の場合でもプラスチック製よりダイキャスト製が嬉しいもの。「PENTAX Q10」より「PENTAX Q」を選んだ理由がここにある。


最後に、「PENTAX Q」の使いにくい点を少し挙げておく。
お遊びカメラとは言え、使い易さは遊び易さでもあるから、それを指摘することに矛盾は無いはずだ。

まず、電源スイッチが良くない。
電源スイッチがボタン式なのは良くある方式だが、スイッチを切ろうとボタンを押しても画像記録中(メモリ書込み中)はスイッチが切れない。いや、画像記録中に本当にスイッチが切れてしまうと画像が失われるので困るが、普通のカメラは画像記録中に電源ボタンを押せば画像記録が終わった時点で自動的にスイッチが切れるものだ(操作予約)。しかしこのカメラは、画像記録が終わらないと電源ボタンの操作を受付けないので、記録が終わった頃合いを見計らって改めて電源ボタンを押す必要がある。
話に聞くと大した問題でもないように思うかも知れないが、実際に使っているとイライラさせられる。スイッチを早めに押してしまったことに気付かずポケットの中で電源が入れっ放しになっていたりもする。

それから、背面液晶画面に映る画像があまりパッとしない。
そのせいで、撮影時は上手く写っていないように思ってガッカリすることが多い。しかし自宅パソコンで画像を開いてみると、予想外の高画質に驚く。
まあ、結果オーライで良いのだが、撮影時のモチベーションが下がるのは面白くない。