2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
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5.カメラ雑文
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7.テーマ別写真
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カメラ雑文

[579] 2006年08月11日(金)
「バカにしていた」

バカにしていると、たまに見落とすものがある。

例えば、ニコンの一眼レフカメラ。
ニコンの電子ダイヤル(コマンドダイヤル)は回しにくい。そういう思い込みがあった。確かに、F5やF6、そしてD1系やD2系などは、どれもこれもダイヤルの感触がかなり悪い。これは事実である。
高級機でさえこうであるから、普及機は推して知るべし・・・と思っていた。
ところが、ニコンの場合はD70などの普及機のほうが比較的ダイヤルの切れが良いことが判った。安っぽい感触ではあるが、動作そのものは確実。

「どうせニコンのカメラだろう?」とバカにしていたため、気付くのが遅れたのである。


さて、パナソニックから新しいデジタルカメラが出た。
名前は、「LUMIX L1」。
カタログには"プレミアム一眼"と書かれている。しかし、自分でプレミアムなどと言うのはプレミアムではない証拠。第一、パナソニックは家電メーカーであり、カメラメーカーではない。
「プレミアムとは笑わせるなあ、所詮はナショナル製だろうが。」

昔からカメラを作ってきたメーカーには、カメラに関する思想とノウハウがある。プロを始めとしたユーザーの声をフィードバックし、理想のカメラを追求してきたのである。電子化やデジタル化は、あくまで理想のカメラを製品として具現化するための手段に過ぎない。

ところが、デジタル時代にになって参入してきた家電メーカーにはカメラ造りの歴史が無い。それ故、電子的な性能向上ばかりを追い求めてきた。
確かに、個々のデバイスとしては高機能・低コスト・コンパクト化を果たしただろう。しかしカメラ全体のバランスが整っているかと言えばそうでもなかった。
結局は、部品の寄せ集めに過ぎぬ。

とにかく我輩は、昔からパナソニックのカメラが好きではなかった。
なぜなら、テレビコマーシャルに我輩の嫌いな浜崎あゆみを使っていたからである。たかがコマーシャルとは言えども、印象の悪さが製品にまで染みこんでしまっているのだ。

「家電メーカー」+「浜崎あゆみ」という最悪のイメージ。それが、我輩のパナソニック製デジタルカメラに対する強烈なイメージだった。
だからこそ、雑文482「今さら」でも書いたように、ダイヤル式を採用したデジタルカメラを発売しても素直に喜ばなかった。
強烈なマイナスのイメージを払拭出来るほどの魅力が無いのである。
「この程度なら、フィルムのカメラでも同じだな。今さらこんなもの買うわけが無い。」
そういうわけで、パナソニックのカメラには全く触れる機会も無く、最近はどのような製品があるのかさえ知らなかった。

そんな時、雑文578「SONY α100」で書いたように、「SONY α100」の調査をすることになった。
面白いことに「SONY α100」は家電メーカーSONYがコニカミノルタのカメラ技術を導入して作られたものであった。購入予定が無くとも興味深い。

「同じ家電メーカーのパナソニックも、SONYみたいにどこかのカメラメーカーと組んだほうが良いんじゃないか?」
そう思い、パナソニックの展示カメラを見てみた。


手に取ってみると、レンズが異様にデカい。
「また奇をてらったカメラを作りやがって。レンズがデカければ迫力が増すとでも思ったのか? だいたい、値段が異常に高い。どういうユーザーをターゲットとして考えてるんだ? 我輩には全く想像がつかん。」


ところが、ふと手元のダイヤルが目に入った。
「・・・? なんだ、このダイヤルは?」
シャッタースピード刻印のそれぞれの間に指標が2つずつあるのが見える。
「これはもしかして・・・。」


それはまさに、中間シャッタースピードの指標であった。

我輩は以前、雑文310「シャッターの誤差」で次のように書いた。
ダイヤルに全てのシャッター表示を刻印せずとも、中間シャッター部分には軽いクリックストップを設けていれば事足りるように思うが〜(略)

これは、カメラメーカーに対する我輩なりの要望でもあったのだが、結局のところ、カメラメーカーからは製品として出なかった。そもそも、ダイヤル式のカメラそのものが存在しない。

ところが、思いがけず家電メーカーであるパナソニックから中間シャッタースピードを搭載したダイヤル式カメラが登場してしまったわけである。
今までバカにして全くマークしていなかったメーカーだけに、ショックも大きかった。
1/3段の刻みは細か過ぎるとは思うが(それだけの精度が出ているのか疑問)、今までに無かった改良だけに存在価値は非常に高い。ライカなどのアンティークカメラに似せただけの安易なものではなく、きちんと現代風に実用出来るレベルに高めているところが素晴らしいのである。

また、旧くて新しい機能として、ダイヤルと絞りリングそれぞれのAマークによって露出モード切り替えが簡単に出来る。絞りリングを廃止しようとしてきたカメラメーカーとは対照的。
カメラメーカーがそれまで培ってきたシンプルな使い易さを捨ててスパゲティ症候群(参考:雑文134「スパゲティ」)に陥る中、家電メーカーのパナソニックがシンプルな使い易さを獲得しつつあるというのはまさに皮肉と言えよう。

カタログによれば、シグマやオリンパスフォーサーズシステムの交換レンズが使えるようであるから、もしかしたら双方で技術交流があったのかも知れぬ。
いずれにせよ、今まで真面目に見ていなかった我輩には知る由も無い。

今まではバカにしていたパナソニックのデジタルカメラ、少しは目を向ける価値があるかも知れない。