2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[366] 2002年08月14日(水)
「当たり前の幸せ」

我輩がパソコンで写真を取り扱うようになったのは、Windows3.1を導入した頃だった。
当時、パソコンと言えば「NEC PC98シリーズ」が主流で、我輩も98(キュッパチ)を使用していたのだが、ハードディスクやウィンドウズアクセラレータ(ビデオボード)を搭載していないMS-DOSタイプであったため、拡張して何とかWindowsが使えるようにした。
スキャナだけならばMS-DOSにて使用可能ではあるが、MS-DOSでは16色以下の色しか表現出来ない。写真画像を取り扱うならば、Windowsの導入は不可欠だった。
(参考:雑文233

当時、まだカラースキャナが高価で、エプソンの最も安いフラットベッドスキャナでも6万円くらいした。解像度も300dpiと低いものだったが、サービスサイズのプリント写真を取り込むにはそれで充分だった。
そのうち、ポジフィルムを取り込みたくなり、別売りオプションの透過原稿ユニットを買い足した。
だがやはり読み取り解像度が低いため、35mmフィルムは使いものにならず、ブローニーフィルムがかろうじて取り込めた程度だった。

そんな時、写真をデジタル化するサービス「Kodak Photo-CD」を利用してみた。35mm判ポジ数枚をCDに書き込んでもらったのだが、その仕上がりには感動を覚えた。今までのスキャナ画像とは一線を画すクオリティにデジタル写真の可能性を感じ、我輩の向上心に火を付けた。
ただし、Photo-CDの最高画質16BASEではパソコンのメモリが足りず、表示すら不可能であった。まだ高価だったメモリをボーナス払いで増強したのはこの頃だった。SIMM-32MBを15万円にて購入したのは我輩の執念である。

しかし、Photo-CDは納期が1週間かかるうえ、それなりの費用が発生する。単価が安くとも、まとまった数ともなれば負担を感ずる。何とか自分で写真を取り込みたいのだが、フラットベットスキャナではもはやクオリティ的に満足出来ぬ。
そこで、フィルムスキャナを導入することにした。これで大量に写真を取り込めば、そのうちPhoto-CDでの単価を下回り、元を取ることが出来よう。

最初のうちは昔撮った写真を取り込んでいたのだが、ネガフィルムではなかなか調整が難しく、思ったような色にはならなかった。
この問題は何台もフィルムスキャナを購入するうちに解決されたのだが、この苦労がネガを使うことを完全に止めるきっかけとなった。
(参考:雑文252

ところで、一般的なフィルムスキャナでは35mmフィルムしか取り込むことが出来ない。そのことについては仕方無いことだと理解していた。しかし、無意識に35mmカメラを選択することが多くなったのは、「ブローニーフィルムはスキャン出来ない」という潜在意識が大きく影響していたように思う。
ネガフィルムを止めた時のような明確な意志が働いたわけではなく、次第に疎遠になっていったという感じだった。

しかしながら、ブローニーサイズの写真というのは圧倒的に情報量が多い。このフォーマットを利用出来ないというのは何とも残念な話。
本来、クオリティを優先する場面では中判カメラを使うところであるが、その場合、デジタル画像を断念せねばならない。従って多くの場面では、デジタル化の可能な35mmフィルムを選択せざるを得ない。つまり、妥協を強いられるのである。

最初のうちはその妥協も受け入れていた。そして、このままのスタイルが続くように思われた。 ところが、秩父線各駅写真別府地獄巡りの写真などの撮影では、記録として残すことを最優先に考えた結果、情報量の多い中判カメラを使うことにした。デジタル化による二次使用を考慮せず、映像の保存という第一目的を考えたのだ。

ブローニーフィルムに記録された写真には、隅から隅まで眺める楽しみがある。眺めるたびに新しい発見がある。スライドプロジェクターで投影したダイナミックな描写は、35mmでは味わえぬ感動がある。その気にさえなれば、全体像を見ながら同時に木々の葉の数まで数えられる。パソコンのディスプレイには出来ぬ芸当である。
恐らく、一枚の写真を眺める時間は、フィルムサイズが大きいほど長くなろう。鑑賞時間の長さは愉しみの時間の長さでもある。ディスプレイに表示された写真を次から次へと慌ただしく見るのとは次元が違う。
今回、結果的に200本近くのブローニーフィルムを消費するに至った。実際に採用するカットはその1/4程度であるが、それでも、鑑賞するネタに困らないほどの大量の写真に、心が躍る気分である。

そうは言っても、やはりデジタル化が可能であればそれに越したことは無い。デジタルデータがあれば、そこからプリント写真が起こせる
トランスパレンシー(透過原稿)な写真を鑑賞するには、ある程度の準備が必要で若干の手間がかかる。また、それが原版であるが故、取り扱いにも細心の注意が必要となる。そこで、気軽に閲覧する用途としてのプリント写真もあればと思い始めたのである。
最近はインターネット経由でも写真焼付けを受け付けているので手軽だ。

そんな時、ヤフーのオークションで格安のブローニー対応フィルムスキャナを見付けた。ポラロイド製「Polascan45」というもので、シートフィルムの4x5サイズまで読み取れる。
それまではニコン製のブローニー対応フィルムスキャナがいくつか出品されていたのは知っていたが、性能的なバラツキがあるとのインターネット情報が気になり腰が引けていた。
今回、そのポラロイド製「Polascan45」を18万にて落札、例によって臨時収入にて購入したのである。高いと言えば高いが、定価80万円以上のものであるからと自分を納得させた。

念願であった、ブローニーフィルムのデジタル化。
35mmフィルムに縛られる必要が無くなったことは、やはり歓迎すべきことと言える。撮影内容に応じて35mmフィルムとブローニーフィルムを使い分けるのは当たり前のこと。その「当たり前」が可能になったのだ。

中古のスキャナということで、内部がホコリまみれで画像も白内障のような滲みがあったが、ミラーなどの光学系を掃除することにより、本来の性能に近付けることが出来た。まだ画質に100パーセント満足というわけではないが、ブローニーフィルムを心おきなく使えるというのは幸せなことだと改めて思う。

当たり前の幸せが、今やっと実現した。