2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[233] 2001年02月23日(金)
「初心者に与えるもの」

我輩が初めてパソコンを購入したのは、社会人になってからしばらく後のことだった。
当時、我輩の信念として、「自宅ではパソコンをやらない」と誓っていたのだが、業務上何かと不便なことも多くなり、そういうわけにも行かなくなった。

さて、それまでは、職場にあるパソコンをただ使っているだけだった。パソコンの機種はそれぞれ微妙に違うが、当時主流のMS-DOSレベルではスペックの差は問題ではなく、使う立場としてはそれほど機種を意識する必要も無かった。

しかし自分で購入するとなると、値段や将来性が気になる。話題のウィンドウズにも、そのうち対応出来るようにもしたい。
もちろん、このような漠然とした要求だけでは、どんな機種が適しているのかということには結び付かない。
自分にとっては意味不明な「SX」やら「DX」などの性能を比べるのは難しい。当然、ハードウェアの知識のある者に「おすすめ」を選んでもらいたいと思うようになる。

そこで、我輩はショップの店員に選んでもらうことにした。
店員は我輩の用途と予算を聞き、それに適合するパソコンを選んでくれた。我輩の使いたいOCR(文字認識)ソフトがウィンドウズ版しか無いらしいので、ウィンドウズをインストール出来るようにハードディスクとマウスを取付け、メモリも増設することにした。

当時の選択肢は、ソフトの互換性や周辺機器の問題から、どう考えてもNECの98シリーズ以外に無かったが、それでも多くの機種が用意されており、我輩1人で選ぶには荷が重い。同じ98でもマウスのコネクタはいくつか種類が違うため、周辺機器を買うにも店員のアドバイスを必要とした。

さて、このようにしてパソコンを導入したわけだが、実際にウィンドウズを動かしてみると、どうもモノ足りない。その原因は表示色にあった。このパソコンは標準状態では16色しか表現出来ないのだ。
もちろん、エディタやOCRソフトを使うには何の問題も無い。しかし、ちょっとお遊びで画像を表示させようとすると、かなり悲惨な色となる。
どうやらウィンドウズを使って256色以上の表示をさせるには、「ウィンドウズ・アクセラレータ」という増設電子基盤が必要らしい。

我輩は、自分の機種に適合するアクセラレータ・ボードを雑誌で研究し、今度は自分で選んで購入した。結果は、たいへん満足出来るものだった。

これをきっかけにして、我輩は自分の必要な部分から知識を押し広げて行った。それは、雪に埋もれた木々が、自分の周りから雪を解かして行くかのように、少しずつ、そして確実に広がって行った。



また長い前置きになってしまったが、これは初心者の気持ちを知るための貴重な記憶である。
初心者は知識が少なく、やりたいことはあっても、それに必要なモノを具体的にイメージ出来ない。だから、知識のある者にアドバイスを求める。

普通ならば、後で買い換えたり買い足したりしないで済むように「大は小を兼ねる」的な発想で選びたくなるものだ。だから、初心者の第一声は「何が一番いいの?」となる場合が多い。
だが、それにどう答える?

カメラの場合、「プロが使うハイエンドカメラ」という意味なのか、「搭載機能の数が多い」という意味なのか、「あなたにとって一番適している」という意味なのか、解釈の仕方によって適合機種が激しく変わってくる。

そこで初心者ということを考慮し、「あなたにとって一番適している」というカメラを考えることにする。
手掛かりを求め、「何を撮りたいのか」と訊ねてみるが、ただ漠然と「写真をやりたい」というだけの者もいる。そういう場合はイライラさせられるかも知れないが、自分を抑え、何も言わずにコンパクトカメラを薦めようか。

だが、何もイメージが無い割りに「一眼レフがいい」などと言う場合には、オート専用機にしよう。まあ、最近はフルスペックが当たり前であるから、純粋なるオート専用機は無いかも知れないが、シャッターを押すだけの異常に軽いカメラを選ぶといいだろう。

これなら、初心者でも扱える。簡単で軽いということは、「何のイメージも持たない今のあなたにとって一番適しているカメラ」と言えるだろう。

もし、これでずっと不満無く使っていられるようであれば、その人間はその程度の要求しか無いということだ。マニアでも無い限り、内蔵ストロボや付属のズーム1本で十分。コンパクトカメラと同等な写真が撮れ、しかも一眼レフというステイタスも味わえる。

しかし、もしこれで不満が出るようであれば、その時は初心者に考えさせるきっかけとなる。我輩がウィンドウズを16色で動かすのに我慢出来なかったように、コンパクトカメラと同様な写りに不満があれば、それをきっかけにして原因を知りたいと思うようになるだろう。

大事なのは、「本人が困ること」だ。「問題を意識させること」だ。
最初から手取り足取り教え込み、何の要求も無いのに親切心から「ここはこうするといい」、「このアクセサリが便利だ」などと先走って教えても、初心者にとっては難しく思うだけ。本人がそれでいいと思うなら、そっとしておけばいい。上級者が自分のイメージを押し付けるのは感心しない。

我輩は、初心者とは「自分一人では勉強できないレベル」と解釈する。
ここで言う「自分一人で勉強」ということの意味は、「人に聞かない独学」ということでは決してない。自分の要求を、自分自身で具体的に掴めるか掴めないか、それが初心者とそうでない者とのボーダーラインだと見る。

自分の要求することを具体的に掴み、自分の意志によって上級者のアドバイスを取り入れる。そうやって選んだカメラやアクセサリは、多少重かろうと、多少高かろうと、多少使いにくかろうと、それは自分が納得することなのだ。

自分の要求を具体的にイメージ化させるために、初心者にはとにかく写真を撮ってもらうのが大切だ。何も考えずに撮ってもらい、そして、困って頂く。
困らなければそれでいいし、困ればそれについて考えるきっかけを与えることになる。

もちろん、初心者に困ってもらうためには綺麗な写真を見せる必要もあるだろう。「どうして自分の写真はこのようにキレイにならないのか」と思うようになったらシメたもの。

もし、初心者に最初からフルマニュアルカメラを薦めると、「失敗しない」ということだけが目的となる恐れがある。その結果、単純に露出やピントが合ったということだけに気を取られ、真の目的を失わせることとなろう。
写真にイメージを持った初心者であればフルマニュアルカメラも効果的だが、そうでない限り、フルマニュアルカメラを薦めるのは無謀だと言わざるを得ない。

まずは自分を知ってもらうこと。これこそが、初心者に一番必要なことだ。