2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[865] 2016年08月25日(木)
「残業のせい」


我輩は現在事務職なので、月末月初は伝票締め切りに追われるため残業時間が増える。
それは毎月恒例なのだが、今年の5〜6月は会社統廃合で基幹システムが変わったことで全社的な大混乱があり、残業が特に多かった。

他の者たちは22時近くまで平気で残業しているが、我輩は通勤時間が長いので、それくらいの時間になると終電を意識して焦る。
そんな時に、「もし歩いて帰ると1時間近くかかるからなあ」などという会話が聞こえると「そんなに近いんなら毎日歩けよ」と思ってしまうのだが、下っ端社員の立場では何も言えぬ。

作業中、焦りや疲れや無力感が重なると、ある意味「どうにでもなれと」いう気持ちになる瞬間がある。
6月末日がちょうどそんな状態で、「この残業代をパーッと使ってやれ」となり、Web画面上でクレジットカード決済の注文ボタンを押した。
そこで購入したものは、COSINAから発売された超広角レンズ「10mm F5.6」。実売13万円とかなり高く、とても残業代では賄えぬものだが、そこまでは頭が回らなかった。

<発作的に購入した超広角10mm>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
発作的に購入した超広角10mm

さて、ここでフィルム時代を振り返ってみると、我輩の常用レンズは長らく24mmだったことを思い出す。
一般的に「広角レンズといえば28mm」という時代、それよりも広い画角ということで選んだ。それは単焦点レンズのため大変コンパクトで明るく、Nikon F3に装着するとまとまり良く手に馴染んだ。
広角の度合いも程良く、ちょうどフィルム粒子の情報量と広角の情報量とがマッチしていたように思う。

一時期、自宅新築時に建築記録用としてTOKINA製の超広角17mmを購入したこともあったが、せっかくの超広角の情報量が35mmフィルム上で再現しきれていないように感じた。
だからこの17mmは、それ以降活躍することはなく、24mmが常用レンズであり続けた。

だが時代が変わり、デジタル一眼レフの稼働率が増え、高画質なNikon製ナノクリスタル「AF-S Nikkor 14-24mm F2.8」(参考:雑文643)を購入したことで事情が変わった。
このレンズは四隅までクッキリと描写出来るためにフルサイズの「Nikon D700」を調達したほどだが、画面を等倍で眺める広角の面白さは格別だった。

<AF-S Nikkor 14-24mm F2.8>
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AF-S Nikkor 14-24mm F2.8

しばらくこのレンズは活躍してくれたのだが、せっかくの高性能な超広角レンズも「D700」の1,200万画素ではその真価が発揮出来ない。細かいところを見ようと拡大してみても、粗いピクセルが邪魔をする。
そのことは当初から分かっていたことだったが、Nikonがしばらく1,000万画素台を越えるカメラを出さなかったのでどうしようもない。

その後、画素数では少し上のマイクロフォーサーズカメラ「OLYMPUS OM-D E-M5」と超広角ズーム「Panasonic 7-14mm F4.0(換算14-28mm)」を導入し、感度さえ上げなければフルサイズに劣らぬ画像が得られることを確認。しかも強力な5軸手ブレ補正が利用出来るので歩留まりは高い。
コンパクトでありながら画素数も画質も劣らぬならば、こちらを使うようになるのは自然の流れ。

<Panasonic 7-14mm F4.0>
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Panasonic 7-14mm F4.0

それからまた時代が変わり、Nikonからもようやく高画素機が出てきた。そして同時に、SIGMAには12mm始まりの超広角ズーム「12-24mm F4.5-5.6」があることを知った。
広い画角を高画素で写し取ると、一体どんな世界が見えてくるだろうか?
我輩は早速、このレンズと2,400万画素の「D600」を導入した。

<SIGMA 12-24mm F4.5-5.6>
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SIGMA 12-24mm F4.5-5.6

ところがマイクロフォーサーズのコンパクトさに慣れてしまった身には、フルサイズ一眼レフのカメラボディと超広角ズームレンズの組合せは大きな負担であった。

言っておくが、「コンパクトさに慣れた」とは言っても、ひ弱になったというわけではない。マイクロフォーサーズのシステムは、通勤カバンにメインカメラを常備し、必要な場面でスナップするという新たな活用法を可能にした。言うなれば新しい価値である。
せっかく得た新しい価値を、ここでまた失いたくはない。

そもそも、せっかくの2,400万画素機「D600」の導入であるのに、マイクロフォーサーズの1,600万画素との比較では、数字ほどの大きな違いは無かったと言う点も誤算だった。

結局のところ、それまでどおりマイクロフォーサーズのほうをメインとして使い続け、フルサイズ12mmのほうはいざという本番に備える機材となった。
要するに、せっかくの最強機材もその活躍の場は少なく、戦力温存という形で備えるだけであったのだ。

しかしこの状態が続くと、せっかくの「D600」を活用せぬまま価値だけが下がっていくので、ひとまず現金化することとしてボディのみを売却した(参考:雑文812)。 12-24mmレンズのほうを売却しなかったのは、いつかこのレンズを活かす超高性能Nikon製カメラが手に入った時に備えたからであった。

それからしばらくして、OLYMPUSの使いにくさに堪忍袋の尾が切れ(参考:雑文854)、コンパクトなフルサイズミラーレスカメラである3,600万画素の「SONY α7R」、続いて4,200万画素の「α7RII」を導入した。
広角レンズとしてはSONY製のレンズでは最も広角な「FE 16-35mm F4.0」を選択。これまでの14mm画角と比べて少々後退してしまったが仕方無い。

<FE 16-35mm F4.0>
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FE 16-35mm F4.0

だがフルサイズフォーマットのミラーレスカメラなので、マウントアダプタを介せば例の「12-24mm F4.5-5.6」が使える。もちろん、大きなレンズだというのは以前から変わらず、しかもAFが使えなくなるのが痛いが、いざという時に12mmの超広角撮影が出来るという保険にはなる。

それにしても、こういう位置付けのズームレンズというのは広角端でしか使わないもの。超広角を欲して使うレンズなのだから当然そうなる。
逆に言えば、もしコンパクトな12mmの単焦点レンズがあればそれで済むということだ。だが都合良くそんなレンズなど無いのだから仕方無い。Canonからも「EF11-24mm F4L USM」という挑戦的な超広角ズームレンズが出たが、これもまた大きく重い。こういうのはズームレンズでしか出ないのだろうか?

そんな時、COSINAから単焦点10mmという驚きの超広角レンズが出てしまった。最初、APS-C用かと思ったが、まさかのフルサイズ用とのこと。
確かに単焦点のコンパクトな超広角レンズは欲しかったとは言うものの、ここまで極端な超広角でなくともなあ・・・と頭を掻いた。

しかもこのレンズはMFレンズだった。
よく世間では「被写界深度の深い広角レンズにはAFは不要」という意見があるが、聞きかじり意見もいいところ。実際には、広角レンズほどMFが難しいものは無い。ピントが合っているように見えて合っていないというのは広角撮影でのよくある失敗。
まあ、COSINAは少量生産でニッチを狙うので、他のレンズメーカーのような開発コストはかけられないのだろう。

それでも、何よりコンパクトであることに心が動かされた。これならば、同じくコンパクトなフルサイズミラーレスボディと組み合わせて日常携帯出来そうに思う。
幸い、手持ちのカメラは4,200万画素もの高画素機。このカメラを活かすのはこのレンズしか無く、そしてこのレンズを活かすのはこのカメラしか無いのではないだろうか?
もし画角が広過ぎる場面があったとしても、高画素機ならば少々のトリミングにも耐えられるはず。

ただ、実売13万円という価格は高い。
しかも購入を検討するための参考となる作例が少な過ぎるので、このレンズが常用に出来るほどのものかが判断出来ない。つまり、特定の撮影条件でなければ満足な画質が得られないなどのクセがあるかが心配だった。
そういうわけで、一度は購入を見送ったのである。

けれども冒頭に書いた通り、結局は乱心により購入したわけだ。
その行動が正しかったのかどうか、それは次の雑文にて作例を挙げながら結論を出してみたい。