2000/04/05
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表紙

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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[828] 2014年11月07日(金)
「動画で縦位置撮影」


我輩が最初に電子画像に取組み始めたのは1980年代であった。
「電子画像」と大げさに言ったが、それはすなわちアナログビデオに他ならぬ。

当時、まだビデオカメラは高価であったため、我輩は「タムロン・フォトビクス」というものを購入した。それは例えるならばOHPに似た機器で、セットした写真フィルムをCCDで取り込んでビデオ信号に出力することが出来る。言い換えれば、フィルム用に特化した接写装置。

その接写レンズ部は取り外しが可能で、我輩は代わりに一眼レフ用のレンズと手鏡を組み合わせ、手写リング(参考:雑文633)の技術によって部屋の風景をビデオ撮影することに成功した。
これは言うなれば、「手製アナログ電子スチルカメラ」であった。

<タムロン・フォトビクス>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
タムロン・フォトビクス
「末廣クラシックカメラ博物館」にて撮影

残念ながら、このカメラは1台にまとめられた装置ではなく、記録用のVHSビデオデッキとモニタ用のブラウン管、そしてフォトビクス本体と交換レンズに分かれているため、屋外で使うことは到底不可能だった。
ただそれでも、実証実験として電子写真というものが実現可能であり、現像処理を経ずに撮った写真がその場で確認出来る有用性を体験出来た。

それからしばらく経って、1990年代半ばになってデジタルカメラが登場した。
当時のデジタルカメラはNTSCビデオカメラのイメージセンサーの流用から始まっており、当然ながらその解像度はビデオカメラと同じく25〜35万画素であった。

だから我輩などは、「どうせ画質が同じならば、わざわざ静止画しか撮れないようなデジタルカメラを買うよりも、動画も撮れるデジタルビデオカメラを導入し、そこからパソコンにキャプチャして静止画を切り出せば良い」と考えた(参考:雑文470)。そんなに安くない値段なのに静止画しか撮れぬデジタルカメラを買う意味が見出せない。

早速、デジタルビデオカメラを使って当時まだ結婚前だったヘナチョコ妻をポートレート撮影したのだが、人物なので縦位置撮影となる。ビデオカメラを縦位置で撮影するのはやりにくく、また傍から見れば珍妙な撮影風景であったろう。
しかし、実際に外に持ち出せる装置として電子写真撮影装置が得られたことは我輩にとって画期的だった。
そして何と言っても、撮った動画から一番良いタイミングの1カットが得られることが一番のメリットでもあった。もしスチルカメラでこれを実現させるには、30コマ/秒で連続撮影せねばならぬ。しかも無制限に。

ただ、ビデオカメラではシャッタースピードを自由に変えられないという制限はある。
言うまでも無いことだが、動画はそのフォーマットごとに1秒あたりのコマ数が決められており、それは「フレームレート(=fps/frame per second)」と呼ばれる。
例えばフレームレートが30fpsの場合、1秒間に30コマの静止画が表示されるということになる。1コマあたり1/30秒の時間配分ということになろう。

これは何を意味するかと言うと、1コマが1/30秒の枠を越えてしまうと30fpsのフレームレートが維持できなくなるということ。
だからこの場合、1コマのシャッタースピードを単純計算で1/30秒よりも長くすることは出来ない。つまりこの動画からは、例えば1秒などという長時間露光の1コマは得られないということになる。

しかし当時は、そんなことは問題にならなかった。と言うのも、ビデオカメラだけでなく、デジタルカメラのほうもシャッタースピードが自由に選べなかったからだ。

その後、安価で高画質なデジタルカメラが出たことにより、ビデオからのキャプチャは意味を持たなくなった。メガピクセル100万画素の画像は、ビデオ画像では得られないものであった。
そしてこの瞬間から、デジタルカメラは本当の意味でビデオシステムから分岐し、独自の進歩を始めた。

しかし2011年になってから状況が変わった。テレビ放送がハイビジョン画質の地上波デジタルへと切り替わったのである。
この変化は、テレビ放送の規格が変わったことによる半強制的なものであり、移行しない者はテレビが観られなくなる。従って、ハイビジョンテレビ(1920x1080ドットの液晶パネル)の環境が全国的に整うことになった。
これに伴い、ビデオのほうもハイビジョン画質が当たり前となり、もはやスタンダード画質(SD画質)のビデオカメラは用無しも同然である。

ハイビジョンビデオを静止画キャプチャした場合、約200万画素相当のデジタル画像が得られることになる。
しかしこの時点では既に1000万画素のデジタルカメラは一般的だったので、わざわざ200万画の低画質なキャプチャ画像を得る意味は無かった。

ところがここ最近、4Kテレビやら8Kテレビの話が出るようになった。
4Kテレビは3840×2160ドットで約800万画素の解像度、そして8Kテレビは7680×4320ドットで約3千300万画素の解像度になるという。4Kはともかく、8Kに至っては現在ハイエンドなデジタルカメラでもなかなか実現されない高解像度であるだけに、そこからの静止画切り出しは大きな意味を持つことになる。

問題は、テレビ放送の8K化が実現するかどうか。
我輩の個人的な気持ちとしては、「つい最近地上波デジタル化によりハイビジョンテレビに切り替わってテレビを入れ替えたばかりだというのに、もう4Kや8Kなどの新規格に移行するのか?」と疑問に思うが、国が政策として推し進めているようなので恐らく実現するだろう。いくら抵抗しても意味は無い。抵抗すれば単純にテレビが観られなくなるだけ。
そして、いったんテレビ放送が4Kや8Kの規格に切り替わった時、4Kや8Kの閲覧環境が一般家庭に整うことを意味する。当然ながら、ビデオ環境もそれに対応したもので塗り替えられることになる。

現在、我輩がメインで使用しているデジタルカメラはマイクロフォーサーズ機であるが、これは1,600万画素が最高値であり、今の様子ではこれ以上画素数が増える気配は無い。そのため、もう少し画素数が欲しいと思う場面では少々困っている。

そんな時、もし8Kビデオカメラが出たならば、その動画から静止画を切り出すことによって3千300万画素の画像が得られることになる。
もしそうなれば、かつて我輩がビデオカメラで縦位置撮影したことがここでまた再現されることになろう。それは、我輩にとってはビデオカメラではなく、デジタルカメラとなるのだ。

もちろん、「そんな時代にはデジタルカメラのほうも高画素化され、3千万画素など珍しくもなかろう。なぜわざわざビデオからキャプチャするのか?」という意見もあるかも知れない。だがデジタルカメラの画素数増加は単純な話ではない。抵抗する者も多いからだ。「ノイズ特性が低下する」とか「大きなファイルサイズを扱うことになって効率が落ちる」というのが主な理由である。
しかしビデオカメラのほうはそんな問題は、無い。繰り返しになるが、テレビ規格の移行は半強制的なのだ。

ところで、動画切り出しについての問題はどうだろう。

現在、Panasonicでは4K動画が撮影可能なデジタルカメラのPRとして「4K PHOTO」というキーワードを用いている。高解像度の動画からタイミングの良い1コマを切り出すというコンセプトのようだ。

しかしながら、現在ではデジタルカメラであっても自由にシャッタースピードを変えることが出来るようになった。スローシャッターばかりでなく、バルブ撮影さえ可能である。そんなデジタルカメラに対しビデオカメラのほうは、フレームレート内でシャッタースピードは変えられるものはあるが、依然としてフレームレートを越えたスローシャッターは選べない。これは動画であるから原理的にどうしようもないこと。

だが我輩は、新たな可能性を考えている。
たとえフレームレート内に収まるよう1コマ1コマのシャッタースピードに限界があったとしても、複数コマを取り込んで動体の移動分を画像処理によって流すことにより、長時間露光の効果を得ることが出来るのではないだろうか。そうなれば、1秒間の動画(30fpsの場合30コマ分)を使って1秒のスローシャッター写真を生成出来ることになろう。

<動画からスローシャッター写真が生成可能となる>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
動画からスローシャッター写真が生成可能となる

現に、MPEGのような動画圧縮技術では、コマ間圧縮を行うため、複数コマにまたがる動きの情報を得て重複する画像の記録を省いている。それはつまり、動いている部分とそうでない部分の切り分けが可能だということであり、そのような合成ソフトがあながち夢物語ではないということを示している。

もしかしたらそんなソフトウェアが既に存在しているのかも知れないが、我輩が探した限りでは見付からなかった。しかし存在していなかったとしても、動画からの切り出しが盛んになれば、いつか必ず登場するに違いない。

それが実現した暁には、ビデオカメラには縦位置グリップを付けてもらいたいと願うばかりである。


(※今回の雑文はビデオの可能性を示したものであり、我輩が本気でスチルカメラの代わりが出来ると思っているわけではない。なぜならば、ビデオではX接点が取れないのでストロボ撮影は不可能だからだ。ストロボ撮影割合が極めて大きい我輩にとって、これは致命的である。)


<2015/01/11追記>
動画ファイルからスローシャッター画像切り出しについて、Adobeの「After Effects CC」というソフトで「ピクセルモーションブラー」(参考リンク:
Adobeサイトの解説動画という機能で実現出来るらしい。ただし、そのソフトは所有していないので詳しい仕様は分からない。
しかし今気付いたが、こういう処理は露光蓄積の忠実性はどうなっているのだろう?
実際のスチル撮影の場合、当然ながらシャッタースピードを遅くすると写真としては明るくなる。これは、Ev=Av+Tvという写真の大前提。
だがこのソフトの機能名は「ブラー」、つまり「ボカし」という意味なので、単なる擬似的なエフェクトにとどまるという疑いが濃厚。要するに、今流行のイメージフィルターみたいなものか。もしそうだとすれば、写真の客観性や正確性はますます失われ、写真というものが単なる画像処理の副産物に成り下がる恐れがある。
仮にそのソフトの機能名が「ブラー(ボカし)」ではなく「コンポジット(合成)」であればまだ希望が残っていただろうが・・・。
まあいずれにせよ、我輩はストロボ撮影が不可能な「4K PHOTO」など全く興味も無いがな。