我輩が中学生の頃、当然ながら気軽にカメラ機材を買うことは出来なかった。
祖父のレンズシャッター機「キヤノネット」や家族共用の「ピッカリコニカ(C35EF)」を使っていたのだが、なかなか思い通りに写すのは難しい。ファインダーで見たとおりに写らないのである。
そのうち、中古の「Canon AE-1」を手に入れた。我輩初の一眼レフカメラであった。
1万5千円もしたが、小遣いやお年玉などで貯めた全財産をつぎ込んで手に入れた。ただ、残念ながらレンズに回す金は無かった。
(参考:
雑文085「想い出のファインダー」)
しかし、一眼レフのカメラボディだけでも手に入ったことの意味はとてつもなく大きい。
これさえあればどんな撮影にでも対応出来ると思った。なぜならば、フィルム面に導かれる光がファインダーでも確認出来るからだ。つまり、ファインダーと撮影レンズが別々になっているこれまでのレンズシャッター機とは違い、ファインダーで見たそのままが写真に写せるのである。
さて、交換レンズがすぐには手に入らなかったことから、レンズを外したカメラでシャッターを切ることに違和感を感じなくなった。
かつて雑文に書いたような「手写(てしゃ)リング」や「根性ティルト」などの撮影法も、何かあるとすぐにレンズを外してしまうクセを持つ我輩独特の撮影法である。(参考:
雑文339「根性」)
まさに、貧乏の成せる業(わざ)と言えよう。
ここでまた一つ、レンズ外しの撮影術を紹介したいと思う。
名付けて、「逆さ手写リング」。
これは、広角系レンズを前後逆にすると接写能力が向上するという原理を利用している。つまり、バックフォーカス長と撮影距離が逆転してしまうほどのレンズ繰り出しを必要とする近接撮影においては、むしろレンズを逆さにしたほうが無理が無いという考え方である。これを実現するためのアダプター(一般名称:「リバースアダプター」)も、メーカーによっては用意されていることがある。
我輩の場合、これを手動で行う。