2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
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カメラ雑文

[778] 2012年11月05日(月)
「再び、北海道車中泊の旅(6日目−10月4日)」


写真というのは、ゴチャゴチャ写るのが醍醐味である。(参考:雑文081「写真の情報量」雑文445「蔵王のお釜(2)」
撮影時には意識しなかったものが、その後の意識の変化や知識の追加そして時間の経過により、同じ写真でも違って見えることは良くある。

地質写真などでは、撮影時には不勉強でとりあえず全体を撮っただけだったが、後になって細かく見ていくと、色々と重要なものが写り込んでいることに気付いたりする。
そういう場合、元の写真にどれだけ細かく描写されているかが重要となる。拡大していくと、フィルムの粒子やデジタル画素のピクセルがそれ以上の接近を阻むことは多い。いくら、ゴチャゴチャ写るのが写真の醍醐味だと言っても、それには限度がある。
やはり、撮影しているその場で発見をし、近付いてみたりズームするなどして詳細に撮影出来ればそれに越したことは無い。

「蔵王のお釜」の場合、頑張れば自宅千葉から日帰りでの撮影は可能である。そのため、前回撮影した写真の中で気になったところは、また後日改めて調査・撮影することが出来る。
しかし北海道ではそうはいかない。行き帰りだけで合計2日必要で、費用もかなりかかる。気軽に何度も行ける場所ではない。

そういう意味で、調査・撮影の対象について事前に予習しておくことは重要である。
今回、そのための資料が手に入ったのだから、それを基にして本日の撮影に活かしたいと思う。

さて、この日の朝、目が覚めると、外の景色が妙に白かった。ガラスに水滴が付いている。
見ればそれは結露であった。
ガラスを拭いて改めて空を見ると、少し雲が多いものの晴れの雰囲気である。これならば撮影にも適していよう。

時計を見ると6時過ぎ。
いくら快晴であってもこの時間では陽が浅過ぎる。撮影にはあと2時間くらいは必要だろう。
とりあえず、朝食のサンドイッチを食べながら、朝の行動を考えることにした。

この日の予定として、昨日下見した金比羅火口の「有くん火口」と「珠ちゃん火口」に逆ルートからアプローチし、次に金比羅火口展望台に登って俯瞰しようと思う。
また西山火口の散策路も、前回とは反対側から歩いてみたい。
そして最後に、有珠山外輪山を歩いて火口の様子を観察しようと思う。

ちなみに、金比羅火口展望台のほうは通行料として千円かかる。高いな。
もしかしたら、「蔵王山頂ハイライン」のように早朝は料金所の係員がおらずフリーパスになっているかも知れぬ。もっとも、早朝は撮影に適さないので、下見くらい出来れば良いと考えた。

よし、今行ってみるか。
運転席に移り、西山火口方面へクルマを走らせた。そして金比羅火口展望台へ登る砂利道に入った。ここまでは入れるようだ。
しかし、坂道を登り切ってみると、料金所ゲートが封鎖されていた。
まあ、これは想定内。

<金比羅火口展望台のゲート>
金比羅火口展望台のゲート
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 06:39

今登った砂利道を降り、ふもとにある西山火口散策路北口駐車場にクルマを停め、しばらく待機した。
空を見ると、だんだん雲が流れて青空の割合が増えてくる。もう少し時間が経てば、撮影日和となろう。

ただ、ここで何もせず時間を潰すのも無理があるので、ちょっと考えた。
火山地形を調査・撮影するには光の条件が重要なのは間違い無い。銀塩フィルム撮影が主であり、良い発色で適度なコントラストが期待出来るのは、快晴の光が必要。
しかしそれ以外の対象物ならば、それほど気にしなくとも良かろう。デジタルカメラでの撮影が主であれば、パソコン上で調整すればそれなりに見られるようになるはず。

そこでまず、西山火口散策路を歩いて災害遺構を見ていくことにした。前回3年前とは反対側からルートを辿るため、クルマを走らせ南口駐車場へ行くことになる。
試しに行ってみると、そこはクルマ1台停まっていない広大な砂利敷き駐車場だった。特にラインが引かれていないので、どこにどういう向きで停めれば良いか迷う。

<広大な南口駐車場>
広大な南口駐車場
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 07:57

とりあえず、他のクルマが来ても邪魔にならなそうな隅に停め、外に出た。目の前には、噴火で被災した旧洞爺湖幼稚園が見える。
近付くと、建物が微妙に傾いていることが分かる。それを眺めていると、自分が傾いているように錯覚してフラフラしてくる。

我輩は過去にも廃墟の撮影などをしたことがあるが、そういうものは時間の流れで自然に崩壊していく様子を見せていた。しかしこの旧洞爺湖幼稚園は、天井や壁面にボコボコ穴が開いており、これまで見てきた廃墟とは全く異なる。

<被災した旧洞爺湖幼稚園>
(※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
被災した旧洞爺湖幼稚園
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 08:07

ジオガイドブックによればここでの見学ポイントは幾つかあり、火山弾の直撃を受けて破損した遊具もその1つである。
見たところ、当たった火山弾の大きさに比べてその破壊力はかなり大きかったようだ。物凄い衝撃を想像させる。

<火山弾の直撃を受け破損した遊具>
火山弾の直撃を受け破損した遊具
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 08:09

それから、園児が遊ぶひょうたん池も見学ポイントである。
ここは地殻変動により傾いた様子が、水面の傾きで知ることが出来る。これが元々水平の地面に作られたというのだから信じられない話だ。数千年の単位でならまだしも、みるみるうちに地面が盛り上がっていくというのはなかなか想像しにくい。

<地殻変動で傾いたひょうたん池>
地殻変動で傾いたひょうたん池
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 08:12

有珠山は、噴火前の兆候が過去の例に倣った挙動を示すことが多いため、予知が比較的容易であるという。そのため2000年の噴火では、噴火前に住人の避難が完了し、人的災害は無かったとのこと。それだけが幸いである。もし犠牲者が1人でもいたならば、このような見学路としての整備が実現したかは分からないだろう。

幼稚園を抜けて道に出ると、立派な道路に出た。いや、"立派だった"と過去形で言うべきものである。地殻変動のため、今は道路全体が波打ってあちこちにヒビが入っている。そして車線の半分は雑草に覆われて幅が狭く見えた。

<かつては立派だった道路>
かつては立派だった道路
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 08:16

ジオガイドブックによれば、地殻変動は局部的に隆起することで地面が曲げられ、その結果、表層では圧縮する部分と伸張する部分があるという。誌面には、圧縮されて曲がってしまったガードパイプが紹介されていた。
歩きながら見ていくと、確かに同じように曲がったガードパイプが幾つか見付かった。

<圧縮され曲がったガードパイプ>
圧縮され曲がったガードパイプ
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 08:19

もし何も考えずに歩いていたとしたら、これらは単に「破壊されたガードパイプ」という目でしか見られなかっただろう。噴石による破壊であろうと、地殻変動による破壊であろうと、ひとまとめに「火山活動で破壊された」という認識で終わってしまい、それ以上の深い理解も無く撮影対象となるだけだ。
そしてその写真を見る時も、「火山って怖いね」などという薄っぺらい感想にとどまるに違いない。

これは、あくまでも「自然」の姿である。
普段我々は「自然を大切にしよう」などと "上から目線"で言い放つことも多いが、自然は単に自然法則というメカニズムに従って自動的に動いている機械装置(※)である。その動きがたまたま人間を始めとした生物の生育に適していただけのこと。
(※この機械装置のエネルギー源は、地中の熱や太陽からの輻射熱、そして天体相互の潮汐力などである。)

自然災害については身近な機械を考えれば理解出来る。機械の上に迂闊に物など置いたりすれば、その機械の動きで転倒・破損したり挟まったり、あるいは熱で発火したりすることは理解出来よう。 我々は地面という機械の上に乗っているのだから、それがどんなメカニズムで動く機械なのかを理解しなければ怪我をしてしまう。どこが危険でどこが安全か、何をして何をしてはならないのか。それを理解することが、地質学を始めとした科学であると我輩は考える。

そんなことを考えながら、ふと、手元の「OM-D E-M5」を見て驚いた。なんと、アイピースの接眼目当てが無いのだ。
ハッと下を見たが、そこには落ちていない。振り返ってみたものの、岩石散らばる荒れた道なので分からない。下を凝視しながら歩いて行かなければ探せないだろう。

それにしても、一体いつから無くなっていたのだろうか。ここでの撮影は、背面液晶画面(正確には有機ELだが)でのビュー撮影だったので、アイピースのほうはほとんど気にしていなかった。

散策途中なので、この場から引き返すわけにもいかず、とりあえずはこのまま先を進むことにして、戻り時に探そうと思う。

<接眼目当てが無い>
接眼目当てが無い
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 08:27

少し進むと、道路が高く隆起した地点にさしかかった。ここは、以前来た時にはアスファルトの断片が上に載っており道路の隆起を象徴していたのだが、今回見るとそれが無くなっていた。

<隆起した道路>
隆起した道路
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 08:31
<前回(2009年)訪れた時の隆起した道路>
前回(2009年)訪れた時の隆起した道路
[Canon EOS 5D Mark2/24-105mm/ISO100] 2009/04/27 16:31

せっかくの象徴が失われたことにより、傍目にはただの丘にしか見えなく残念に思う。風雨で落ちたのかとは思うが、目立つ存在で、しかも人の目があまり無いことから、まさかどこかのバカちんが面白半分でやったのではないかと少し思った。

しばらく進み、展望台のところまで来た。すると、人の話し声が聞こえてきた。見るとツアー客らしき団体が向かい側からやってくる。聞こえてくる言葉は中国語だった。現在、中国全土が反日運動で染まり、「愛国無罪」の名の下、日本企業が襲撃され略奪が行われているというのに、嫌いな日本によく来る気になるものだ。

ところがそれに加え、中国人たちの後方から小学生の団体が登ってくるではないか。
これほどの大人数がこちらへ向かってくるとすれば、先ほど落とした接眼目当てが踏まれたりあるいは拾われたりなどしてしまう。そうなると、見付かるものも見付からなくなろう。

<団体見学の小学生が来た>
団体見学の小学生が来た
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 08:53

我輩は来た道を引き返し、先ほど接眼目当てが無くなったことに気付いた地点まで後退し様子を見た。
見ると、中国人ツアー客らは展望台のところまでで引き返しいなくなった。恐らく向こう側の北口駐車場のほうにバスが待っているのであろう。小学生の団体もそうであれば、特に焦ることも無い。

ところが小学生の団体は、展望台を越えてこちらにやってくるではないか。
マズイ、これはきっと、バスが南口駐車場に先回りして待っているのだ。小学生が通った後は草木も残らぬだろう。いや、そこまで大げさではないが、接眼目当てに関してはそういう表現が当てはまる。

我輩は慌てて、地面に接眼目当てを探しながら道を戻った。
ところがどうしたことか、絶対どこかで見付かると思ったにも関わらず、接眼目当てはなかなか見付からなかった。そしてとうとう、旧洞爺湖幼稚園のところまで来てしまった。ここは雑草が多く、もしこの辺りで落としていたとしたらもう見付けることは難しい。それでも、歩いたところを思い出しながら探したが、結局見付けられず幼稚園を出てきてしまった。

もしかしたら、クルマの中で落としている可能性もある。クルマに戻って全ドアを開けて探してみるか。
そう思ってふと駐車場のほうを見ると、駐車場には恵庭交通のバスが4台停まっていた。背後に迫る小学生集団を待っているバスに違いない。
ただそのバスは、我輩のクルマのすぐ隣に停まっており、助手席側のドアが少ししか開けられない状態となっていた。これほど広大な駐車場でわざわざこのような停め方をするのは、意図的な嫌がらせか、余程のバカちんかどちらかしか無い。
まあ、運転手の顔を見ると分かるようにバカちんなのだろう。

<恵庭交通のバカちん>
恵庭交通のバカちん
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 09:14

結局、全ドアを開けて探すことは諦め、その場を後にした。
先程は散策路を途中で引き返したので、今度は反対側から散策路に入ろうと思い、北口駐車場に戻ることにしたのだ。

途中、展望駐車スペースが見えたのでちょっと寄ってみた。
そこからはさきほどの散策路展望台が見えている。その脇から噴気が湧き上がっており、それが逆光気味のせいか白く目立っていた。

<展望駐車スペース>
展望駐車スペース
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 09:26

その後、北口駐車場にクルマを停め、改めて西山火口散策路を歩いて行った。3年前に来た時と同じ経路だが、夏草が伸びているので災害遺構の見通しが悪くなっている。
以前来た夏草の無い季節では車道の先でまで見えていたのだが、今回はもう緑しか見えない。

<北口駐車場側から見る災害遺構>
北口駐車場側から見る災害遺構
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 09:39

しばらく西山火口散策路を進むと、先ほどの展望台が見えてきた。今はもう集団はおらず、数組の観光客しか歩いていなかった。ただし我輩のように1人というのは全くいない。

ここでは、ジオパークガイドの示すポイントを探してみた。
「火山噴出物による堆積の断面」、「断層から突き出た水道管」、「取り残された重機」などであるが、その中でも「取り残された重機」については教えられなければまず見付けられないポイントであった。と言うのも、これはある限られた地点からしか見えないところにあるからだ。

<隠れたポイント>
隠れたポイント
[LUMIX DMC-GF5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 09:56

さて、展望台のところで妙な音に気が付いた。
道路の谷を挟んだ山側には、昨日下見した金比羅火口へ繋がる散策路があるのだが、その方向から重機が動き回る「ブォーン、ブォーン」というエンジン音が聞こえてくる。まさか、何かの工事中で通行不可か?

とりあえず、こちらの散策路は両側から攻めて全経路が繋がったので引き返し、いったんクルマに戻る。
陽がだんだんと高くなり、撮影条件も整ってきた。青空がキレイで良い天気。1日辛抱した甲斐があった。そろそろ金比羅火口のほうに行ってみようかと思う。昨日の下見では、靴の裏がツルツルで滑り易く難儀したため、この日はトレッキングシューズを履いて行くつもりである。

クルマのドアを開けると、もう既に車内は温室状態で熱気が襲った。全ての窓を全開にし、運転席のドアを開けたまま横に座って厚手の靴下とトレッキングシューズを履いた。
ザックを背負っても良いかも知れないが、どちらかと言うとハイキング的なコースなのでそこまでする必要も無かろう。撮影のためならば、背中に背負うザックは撮影のたびに降ろす必要があって大変なのだ。通常のたすき掛けバッグならば、カメラの出し入れに面倒は無い。

今日は、昨日の下見とは反対側の入り口から入ることになる。だから初めて歩く道なのだが、先ほどの重機の音が気になる。近付いていくと、通行止めのような看板が見えてきた。そこには、「大型車両通行止」と書かれている。
そしてその看板の向こうの道路には大きなホイールローダーが2台、交互に行き来して砂利を運んでいるのが見える。やはり工事中か。

<金比羅火口散策路入り口>
金比羅火口散策路入り口
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 10:36

しかしそれにしては「大型車両通行止」と、大型車両でなければ通っても良いような書き方が引っかかる。フットパスに認定されているので本来ならば行って良いとは思うが・・・。

まあ、もしダメなら何か言われるだろう。我輩はその看板の先を歩いて行った。 すると、向こうからまたホイールローダーが現れ、我輩の姿を認めると停車した。そして運転手が車内に架かっているマイクを口元に持っていった。「ここは立ち入り禁止です」などと警告するのだろうか。

しかし特に声は聞こえず、どうやらどこかに無線連絡しているようであった。
我輩はそのホイールローダーの脇を抜け、その先の曲がり角を抜けた。するとそこにはもう1台のホイールローダーが脇道に退避していた。様子を見ながらその前を通り過ぎると、そのホイールローダーは再び作業を再開した。
この様子からすると、特に我輩が通行することに問題は無かったようだ。
道路の状況からして、どうやらホイールローダーは昨日の雨でぬかるんだ道に砂利を敷いて整える作業をしているらしい。

そこからしばらく歩いていくと、ガイドに紹介されているゴミ焼却施設の遺構が見えてきた。ここも噴火活動によって隆起し、建物の土台が分断されたため使用不能になったという。

<ゴミ焼却施設の遺構>
ゴミ焼却施設の遺構
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 10:46

道は緑に囲まれ、天気も良いせいでハイキングにはもってこいの場所だと思う。ただ、ちょっと暑くなってきたので木陰があると逃げ込んだ。
ふと上を見ると、真っ赤な実を付けた木に気が付いた。青い空に見事に映える色合いが、故郷の景色を思い出させた。日差しが暑いとは言っても、風は秋の涼しさ。枝葉が揺れて擦れる音がカサカサ聞こえ、それがより一層秋らしい。
ああ、子供の頃に見た風景そのままだ。

<故郷の景色を思い出した>
(※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
故郷の景色を思い出した
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 10:48

昔の記憶は、ともすればモノクロや色褪せた景色が思い浮かぶものだが、本当は、今見上げている風景のように鮮やかな天然色であったことに気が付いた。
子供の頃がつい昨日のように感ずる。いや、昨日、一昨日、・・・と辿って行けば辿り着くという意味では、昨日の風景と違うところは無い。特に自然風景では。

さて、しばらく涼んだ後再び歩いて行くと、やがて道が開けて金比羅火口の1つ「有くん火口」が見えてきた。

<有くん火口が見えてきた>
有くん火口が見えてきた
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 10:51

こちらの方向から見ると、昨日は見えなかった砂防ダムがあった。礫(れき)が鉄格子の中に詰められた面白い構造で興味をそそる。
緑の中に突然現れた構造物、見れば見るほど異様だな。

<砂防ダム>
砂防ダム
砂防ダム
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 10:52

さて、昨日とは逆方向のルートのため、火口へは下り坂となる。前日とは違ってこの日はトレッキングシューズなので、ガシガシ歩いて行ける。
そして「有くん火口」の火口壁を登り、昨日見た同じ光景を改めて快晴の下で目にした。

<有くん火口>
有くん火口
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:03

火口壁が少し影がかかっており、少々時間が早かったかと思ったが、何時になれば満足出来る状態になるのかも分からないので撮影は進めた。
今回もまた同じく、パノラマ用の分割撮影を行った。

<昨日と同じく14枚に分けて撮影した画像を横に合成>
(※画像クリックで横1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
昨日と同じく14枚に分けて撮影した画像を横に合成
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 11:04

発色が良さそうなので、銀塩中判カメラでの撮影も行った。レンズは広角35mm(換算21mm)であるが、さすがにこの近距離では両端が大きくハミ出すが仕方無い。後ほど改めて、金比羅火口展望台の上から全体像を撮影しようと思う。

さてジオガイドによれば、植生が回復しつつある点について、興味深いことが書いてあった。
2000年噴火当時、火口付近は噴出物が堆積したため植生は全く見られなかったという。しかし、元々の地表部分と堆積した部分の境目に植物の種子があったらしく、そこから植生が回復しつつあるとのこと。
火口壁を見ると、確かに植生が点々とライン状に生えているように見える。

<有くん火口の火口壁> (※赤矢印で示すラインが元々の地表面)
有くん火口の火口壁
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:05

火口対岸には大きく目立つコブがあり、我輩は「偶然出来た形状か?」と思っていたのだが、ジオガイドによるとこれは昔の潜在ドームであるという。つまり、有珠山が出来た時に、ここでは地下から盛り上がったマグマが顔を出すことなく固まり、そして今回の噴火活動で顔を出したものだという。

<有珠火山生成時代の潜在ドーム> (※赤矢印で示した岩)
有珠火山生成時代の潜在ドーム
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:06

しかしそれにしても、ここでの観察ポイントは今立っている1点のみ。規制されているため、火口周辺をちょっと歩いてみることも出来ない。だから、全体の撮影と興味のある部分を望遠撮影すれば、一通りの撮影が終わってしまう。少々角度を変えて見たいところがあってもダメなのだ。

そういうわけで、もう少しそこに居たい気持ちもあったものの撮影も済んでしまったので、今度は隣の「珠ちゃん火口」に行ってみる。
こちらは前日には葦に阻まれて近付けなかった火口であるが、この日は何とか挑戦出来ないものかと思った。しかし、生い茂る葦にたじろいでしまう。

<葦の生い茂った「珠ちゃん火口」>
葦の生い茂った「珠ちゃん火口」
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:06

我輩はカメラをいったんバッグに収め、葦の合間を狙って突っ込んで行った。最初は分け入る感じで進んだものの、葦は奥のほうまでかなり深く、途中からヤケクソ気味に足で踏み倒しながら強引に前に進んだ。これならば両手を使う必要が無い。
そうやってしばらく進むと、頑張った甲斐もありようやく視界が開けてきた。

<「珠ちゃん火口」>
(※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
「珠ちゃん火口」
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:17

見ると、ここはプライベートビーチなのか水鳥一家がノンビリと泳いでいた。我輩がバサバサと葦を押し倒す物音など、全く気にしていない様子。

<水鳥のプライベートビーチ>
水鳥のプライベートビーチ
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:17

ここでも先ほどの「有くん火口」と同様、元々の地表部分と堆積した部分の境目にラインが見られる。植生だけでなく、土の色も違って見える。

<珠ちゃん火口の火口壁> (※赤矢印で示すラインが元々の地表面)
珠ちゃん火口の火口壁
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:20

しばらく撮影した後、戻ろうかと思い後ろを向いたところ、葦が中途半端に倒れて我輩のほうに頭を向けていた。
こうなると逆方向への踏み倒しは出来ず、両手を使って葦を左右に分けながら進むしか無い。とは言ってもこちら向きに傾いている葦ではやはり難儀した。

葦の原を突破した直後、洞爺湖方面から人の声が聞こえた。見ると50代くらいの男女である。
我輩は来た道を戻り、砂防ダムが見えるところまで来て振り返った。すると「有くん火口」のほうに先ほどの2人が登っているのが見えた。我輩はとっさにカメラを構えた。これはちょうど良いスケール(サイズ比較)になる。

<スケール代わりに撮影した2人>
スケール代わりに撮影した2人
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:30

よく見ると、2人はロープの外側で活動していた。まあ、この程度ならば別段問題視することも無いだろうが、我輩自身がキッチリとロープを越えぬようにしていただけに自分がバカらしく感ずる。

さて、次は展望台から火口を眺めることにしたい。
道を戻る前にポータブルナビの画面を見ると、ここで歩いた軌跡が表示されていた。国土地理院2万5千分の1地図表示に切り替えると、2つの火口がハッキリ図示されており足取りが分かり易い。半透過液晶のため、直射日光に当てるとクッキリ浮かび上がった。

<ポータブルナビの画面>
ポータブルナビの画面
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 11:34

道を戻り、例の「大型車両通行止」の看板の辺りまで来たところ、前方から2人乗り小型4輪駆動車が走ってきた。そして「大型車両通行止」の看板の横をすり抜けて道を登っていった。躊躇無く当たり前のように走行していたので、やはり普通車ならば通行可ということか。しかし途中に勾配の急なところがあったので、砂利道では4輪駆動車のほうが無難ではあろう。

我輩はクルマに戻り、トレッキングシューズと厚手の靴下を脱いだ。天気が良いせいで、車内は温室状態。
少し休もうかと思ったが、展望台へはクルマで行くわけであるし、その後は昼食としたいのでその時に休もう。

今度はさすがにゲートは開いており、料金徴収係のオイちゃんに千円を渡して通った。3年前もそうだったが、今回も展望台は我輩1人しかいなかった。

<金比羅火口展望台>
金比羅火口展望台
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 12:17

上から火口を眺めると全景が良く見えた。それは3年前と変わるところではない。しかし前回は細かいところは見えなかったが、今回は先ほど間近で見てきたので、上からでも様子がありありと見えてくるようだ。

<展望台から見下ろす「有くん火口」>
(※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
展望台から見下ろす「有くん火口」
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 12:13

ふと気付くと、火口縁に2人連れが見えた。先程の2人とは違うようだが、もしかして、戻り時にすれ違った4輪駆動車に乗っていた2人か?
それにしても、よく見ればこの2人もロープを越えていた。まったくどいつもこいつも・・・。

<ロープは意味無し> (トリミング)
ロープは意味無し
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 12:15

気を取り直し、展望台から色々と望遠撮影してみることにした。先程は影がかかっていた火口壁も陽が当たっている。ちょっと待てば良かったのか。
一番興味を惹かれたのは、やはり侵食・堆積の模式図的地形であった。

<侵食・堆積の模式図的地形>
侵食・堆積の模式図的地形
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 12:27

ところで、洞爺湖の方向に目を向けると、そこに面白い小島があった。
それはいわゆる"トンボロ"と呼ばれる陸繋島(りくけいとう)で、前回3年前に来た時にも気になっていた島であった。よく見れば、そこに誰かいて写真でも撮っているように思ったが、1,600万画素ではよく見えない。しかし我輩だけでなく誰もが興味を持つ島であろうかと思う。時間があれば現場に行ってみようか。

<洞爺湖にあるトンボロ>
洞爺湖にあるトンボロ
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 12:18

他にも、面白い地形や人工物など色々とあったが、ここでは長くなるので省くこととし、昼も過ぎてきたので下に降りて昼食としたい。
予定では、午後は有珠山の火口を見に行くことにしているので、そちら方向にあるコンビニエンスストア「セイコーマート」に行って牛丼弁当を食べた。値段も約300円とまあまあ。

食後はすぐさまクルマを出して昭和新山駐車場へ停めた。

<昭和新山駐車場>
昭和新山駐車場
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 13:13

そこでひとまず昭和新山を撮影した後、改めて有珠山ロープウェイの乗り場に近い場所までクルマで移動し、トレッキングシューズを履いた。
前回ここに来た時、外輪山コースへのゲートには「装備の無い方は、ロープウェイでお戻り下さい」と警告があった。そのため外輪山コースは諦めたのだが、今回はトレッキングシューズを履いて行く。

準備万端に思えたが、ロープウェイ割引券が見当たらない。Webからプリント出力したものがどこかにあるはずなのだが、車内のどこかに埋もれて見付からない。
13時半を回ったところだが、もう夕方を感じさせる陽の光。割引券を探すのに時間を浪費するよりも、諦めてロープウェイに急ぐこととした。

ロープウェイ乗り場ではジジババ団体客が後から押し寄せ列に並んだが、我輩は最後尾になるのも納得出来ないので彼らの中に混ざる形で並んだ。

ロープウェイ頂上駅に着くと、ジジババたちは展望スペースで昭和新山を背景に記念写真などを撮り始めた。我輩は昭和新山はすでに前回撮っているので目もくれず、とにかく有珠山外輪山コースに急いだ。山を見ると、陽が横から当たって夕方の雰囲気。これでまだ14時前なのだから参る。

<もう夕方の光>
もう夕方の光
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2012/10/04 13:55

まず展望台まで長い階段を登ることになるが、これがまた焦って登ると息が切れる。しかし後から考えると、これはまだ大したものではなかった。
そして展望台の一角にある外輪山コースへ降りるゲートがあり、そこから木製の階段を降りて行った。
写真では分からないかも知れないが、これがまた急な階段で、しかもかなり下まで延びており、ちょっとでも気を抜くと転落しそうで怖い。

<外輪山コースへ降りる階段>
外輪山コースへ降りる階段
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 14:08

「これは、下まで降りてから見上げるとすごい光景になるな」と思った。そして同時に、「上がるときは大変だぞ」という心配も湧き上がった。

とにかく頑張って降り切り、振り返ってカメラを構えシャッターを切った。
構えたカメラを降ろすと、一般人が階段を降りてくるのが見えた。見れば、普通のジャケットを着た、普通の人間であった。あの格好では、トレッキングシューズはおろか、スニーカーさえ履いてないかも知れない。

<一般人が降りてくる>
一般人が降りてくる
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 14:13

おいおいおい・・・とは思いながらも、我輩は追い付かれぬよう先を急いだ。
「まあ、ちょっと降りてみようというだけなのだろう。途中で引き返すに違いない。」
ところが、振り返り振り返り歩いていると、その一般人はずっと後ろを歩いてくる。そればかりか、家族と思われるオバちゃん連中4〜5人もガヤガヤと階段を下りて来て、最初の一般人と合流したではないか。そして我輩の後ろ100メートルくらいを付いてくる。

「こ、ここは選ばれた者のみ入ることを許された神聖な土地やぞ!」
そう思ったものの、ここはペースを上げて奴らを引き離そう。撮影は歩きながらでも出来る。シャッターを切る瞬間に大きくゆっくり足を出し、切り終えた瞬間に足を地面に着く。そうすればブレない。

しばらく歩いていくと、小さな広場に着いた。アップダウンがあるのに加え、追われているという意識で息が切れたので少々休むことにする。
幸い、後ろには人影は無い。「ようやく諦めたか」とホッと一息ついた。

<広場>
広場
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 14:28

そこからは「銀沼火口」と呼ばれる火口がポッカリと見えていた。雄大な風景だがそこへは降りられないので、望遠撮影で距離を詰めて観察する。ここは、数十年前の噴火以前には森と湖のある憩いの場だったらしい。今の姿からはとても想像出来ない。

<銀沼火口>
(※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
銀沼火口
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 14:41

ふと後ろを見ると、なんと、奴らがやってくるのが見えた。先頭の一般人は汗が出たのかジャケットを脱いで肩に掛けてエッチラオッチラ登ってくる。何をそんなに頑張る必要があるんだ?
我輩は再び追われるように先を急いだ。

しばらく坂を登って振り返ると、奴らも我輩が休憩していた広場で休もうとしているところだった。
オバちゃん連中は「やっと着いたね〜」と言っている。100メートルくらい離れているが、静寂に包まれた場所なのでここまで声が聞こえてくる。記念写真などを撮っている様子も見えた。
奴らもこれでようやく満足したか。少なくともオバちゃん連中はこれで引き返すに違いない。そうなれば先頭を歩いていた一般人も戻るだろう。

ところがしばらくすると先頭の一般人がまた歩いて来るのが見えた。オバちゃん連中もその後を歩いて来る。
くそ、こうなったら折り返し地点までガンガン進み、そして戻りながら撮影するか。それにしても奴ら、ここで体力を消耗して、戻りの長い階段をどうするつもりなんだ?

結局、折り返し地点には15時ちょっと前に着いた。
しばらくそこで撮影などをして奴らが来るかを見ていたところ、やはりここまでやって来た。ただし、50メートルくらい手前のベンチのところで休んでいる。「やっと着いたぁ〜」とオバちゃんが言っているのが聞こえた。そして、オバちゃんたちはすぐに元来た道を戻って行った。

我輩も同様に戻ろうと歩き出したが、先頭を歩いていた一般人はこちらのほうに歩いて来て我輩とすれ違った。我輩は時々振り返りながら戻ったのだが、一般人は戻ってくる気配が無い。今さら単独行動か? 終始、意図が分からない。
前を歩くオバちゃんたちは、下り坂のせいか特に止まることなく歩いていたが、我輩はジオガイドに示される撮影スポットを見付けては撮影していたので、段々距離が離れてきた。

火口壁を見ると、陽が傾き影が深くなったおかげで存在が目立ってきたものがある。それはジオガイドによれば「オガリ山」と呼ばれる潜在ドームで、ゴツゴツした大きな岩が壁から顔を出していた。
こういうものが土の中で生成され、あるきっかけで地上に出てくるというのは興味深い話であるし、地質的な時間スケールを感じて感銘を受ける。何より、それを今目の前にしているという感覚は重要であろう。同じ映像を見るにしても、本やテレビで見るのと目の前で見るのとでは印象は全く異なる。

<顔を出した潜在ドーム>
顔を出した潜在ドーム
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 15:10

しばらく歩くと、展望台に戻る階段を上っていく人影が見えた。先程のオバちゃん連中であった。
かなり苦労しているようでヒーコラ言っているのが風に乗って聞こえてくるが、意外と頑張って上っていく。我輩のようにカメラ機材などの荷物が無いとはいえ、大したもの。

<展望台に戻る階段>
展望台に戻る階段
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 15:10

それにしても先程の一般人は戻ってくる様子が無い。どうしたのか?
少々気になりながらも、我輩も階段を上り始めた。見上げるだけで気が重くなるような階段。しかし1歩ずつ、急がず、焦らず、自分のペースで上れば大したことはないのだ。山登ラー(登山家とまでは言えない)として見せてやろう、上りきっても息が切れぬその姿を。

3分の2ほど上って「ふう」と一息ついた。全く順調だ。脚もまだ大丈夫。「どれくらいの高さになったか?」と後ろを振り返ると、あの一般人が階段を上り始めるのが見えた。
我輩はビックリして再び階段を上り始めた。さすがに一般人に追い抜かれるわけにはいくまい。動揺が脚を重くする。急がず、焦らず、自分のペースという言葉はどこかへ吹っ飛んでしまった。

途中、脚はガクガクして息も切れぎれとなり、何度も後ろを振り返った。追われるのはキツイ。
最後は、スタート位置の違いもあり大差を付けて上り切り、何とかメンツを保った。

時間は15時45分。疲れたので早くクルマに戻って休みたい。
ロープウェイの駅までは下り階段。その先に先程のオバちゃん連中が歩いているのが見える。やっと追い付いた。

ロープウェイ駅に行くと、下りロープウェイの時刻は16時とのこと。10分ほど時間があったので、駐車場方向の写真を撮って我輩のクルマを探したり、売店の中を見て回るなどした。

<駐車場方向>
駐車場方向
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO200] 2012/10/04 15:53

売店では、豚児向けにキーホルダーくらいは買ってもいいかと思った。ところがキーホルダーの近くに何種類かの書籍が置いてあるのが目に留まった。
それらは昭和新山に関するもので、著者はすべて、昭和新山の調査・研究を行った三松正夫氏であった。こういう本は書店で出会うことは無いので、ここで買っておくしか無かろう。全部で3冊、3,400円と結構な出費だったが、それこそ有珠山から飛び降りるような思いで購入した。

<購入書籍>
購入書籍

これから生活時間に入る。
確か、ここから近いところに銭湯「ゆーあいの湯」があるはずだが、場所をチェックするのを忘れていた。自宅に電話してヘナチョコ妻に「ゆーあいの湯」の電話番号を調べてもらい、それをポータブルナビに入力して検索。無事に現場に到着した。

<銭湯「ゆーあいの湯」>
銭湯「ゆーあいの湯」
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO400] 2012/10/04 17:12

ここは公民館のような建物で、値段は390円と少々安い。
ただ、普通の湯と熱い湯の2種類があった。試しに熱い湯のほうに入ってみたが、大した温度では無かった。

夕食は、昼食と同じく「セイコーマート」で調達。
この辺りはスーパーが見当たらないのでコンビニエンスストアを使わざるを得ず、全般的に食費が少々高めになっている。
栄養の偏りも心配になってきており、野菜でも買おうかと思った。都合の良いことに、見切り品50円の格安の千切りキャベツを見付けた。

<夕食>
夕食
[OLYMPUS OM-D E-M5/14-140mm/ISO400] 2012/10/04 18:14

洞爺湖温泉駐車場に戻って食事をする。野菜はモシャモシャと草食動物になったような気分だったが、何とか胃に流し込んだ。

食後はのんびりゴロ寝などしながら、爪を切ったり耳かきをしたりした。
以前、旅先で爪が伸びたり耳の中が痒くて気になったことがあり自宅に戻るまで落ち着かなかったが、今回は爪切りと耳かき棒を生活用品の中に入れておいたのが役立った。これで、あと1週間でも車中泊は出来そうだ。

20時近くになり、ちょっと撮影でもしようかと外に出た。前の晩、居酒屋などを色々見掛けて写真に残したいと思ったからだ。
外は意外に寒かった。いや、これが本来の10月の気温かも知れない。

夜の道を歩いていると、昨日の花火大会の会場が見えてきた。提灯がたくさん灯っている。
「花火大会が終わったのにまだ何か祭りがあるのか?」
近付いてみると、洞爺湖中島遊覧船の発着場に「花火鑑賞船運航中」という看板があるのに気が付いた。なるほど、花火は観光として毎日やっているようだ。てっきり、秋祭りの最後を飾るものとして打上げたのかと思った。

<花火鑑賞船>
花火鑑賞船
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO400] 2012/10/04 19:51

見れば、花火は20時45分から始まるらしい。どうせならばもう一度観てみたい。それまであと1時間弱の間、付近の居酒屋撮影をして時間を潰すことにする。

我輩は酒はあまり飲まぬし、店屋に1人で入ることはしないのでこれらの居酒屋に入ってみたりはしないが、寂しい町に灯る明かりは何とも言えぬ情緒を感ずるものである。

<洞爺湖温泉の夜に灯る明かり>
(※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
洞爺湖温泉の夜に灯る明かり
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO400] 2012/10/04 20:06-20:43

町は小さく、居酒屋巡りとは言っても1時間弱の時間潰しには少々不足があった。この日は寒かったので、少し早足で歩くことで身体の発熱を促そうとしたことも影響したかも知れない。
仕方無いので旅館などの明かりも撮影したりもした。
後から考えると、こういう時こそ足湯に浸かれば良かったのだが、自分1人の行動ではなかなか他の発想が出てこないようだ。

その後ようやく花火開始の時間となり、洞爺湖の遊覧船乗り場まで行った。
見ると、遊覧船は出港しており、その先には小さな舟が明かりを灯しながらエンジン音の唸りを上げていた。これが花火打上げ舟であろう。

花火は、ある場所で何発か打上げると、他の場所に移動し、そしてまたそこでしばらく打上げる。それを4〜5回ほど繰り返す。湖上には月が浮かんでおり、その明かりが花火と共に水面に映っていた。

<2度目の船上花火鑑賞>
2度目の船上花火鑑賞
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO400] 2012/10/04 20:57

花火が上がっている最中、湖岸には中国人観光客が大勢集まっていた。何かのツアーなのだろう。
そして近くのホテルでは、修学旅行と思われる高校生たちが窓際から花火を眺めながら歓声を上げていた。
1日の最後を飾る美しい湖上の花火は、彼らの思い出に花を添えたに違いない。我輩も、この旅の終わりが近付いていることを感じ、この地での思い出を花火の映像にパッケージさせた。

<この日の行動地図>
この日の行動地図
この日の行動地図