2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
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カメラ雑文

[743] 2012年02月14日(火)
「ジオフォト伊豆の旅(その1)」


●我輩の写真に対するスタンス
以前から何度も書いていることだが、我輩は芸術家ではない(参考:雑文460「我輩は芸術家ではない」)。
そんな我輩も、かつては写真に対して芸術性を求めたこともあったが、ある時それが自分自身にとって表面的なものでしかないことに気付いた。それは結局のところ、写真を他人に見せることを前提とした写真で、「どうだキレイに撮れているだろう」と言うがための道具に過ぎなかったのだ。それは、自分のために撮る写真ではなかった。
(参考:雑文586雑文587雑文588

それでもフィルムでの撮影が主流だった時代では、キレイな写真を得るにはそれなりの技術や根性が不可欠であったため、写真の腕を自慢する意味は少なからずあったかも知れない。しかしデジタルカメラが発達してくると、キレイな写真が誰にも容易に撮れるようになってしまい(※)、写真の腕に対する有り難味もそれほど無くなってしまった。
(※デジタルカメラの容易さは、(1)トライ&エラーで見た目結果での調整が可能なこと、(2)パソコンによる後調整が可能なこと、(3)自在にISO感度が変えられること、(4)何枚も撮れることで取りこぼしが少ないこと、などが挙げられる。)

「写真を純粋に自分のために撮ろう」と思った我輩は、それ以降、被写体そのものを重視するスタンスに変わった。
風景を撮るにしても必ず地質的な興味が関わっているし、航空機を撮るにしても興味ある機体構造(例えばベータ風板など)に重点を置くようになったし、女を撮るにしても自分の女にしたくなるような女しか撮らない。

そして撮影にあたっては、被写体を極力そのまま写真化することを目標とする。
そのために我輩は、あたかも目の前に被写体が存在するかのように見せるためとして画素密度と色深度にこだわってリバーサルフィルムを、そして撮影者の気配を感じさせるものを出来る限り排除するためとして縦横を否定した正方形の66判フォーマットを選んだ。

あくまでも我輩は、被写体を持ち帰ることの"代償行為"を行っているのである。
出来ることならば被写体を持ち帰り自分の物にしたいが、それは様々な事情により叶わぬ。たとえ全てのものが所有出来るとしても、山や風景などは不動で持ち帰れぬし、動植物や岩石は置き場所や飼育の問題がある。女は老化が止められぬ。
だから我輩は、それらの姿を画像として固定するために写真という技術を利用しているのだ。

●ジオフォトツアー
伊豆半島には、地質的に興味深い場所が多くある。均整の取れた火山である大室山などはその代表であろう。
しかしながら千葉県に在住する我輩にとって、伊豆半島は遠い存在である。何しろ、都内を横断せねばならぬため、実際の距離よりも遥かに遠く感ずるのだ。

そんなある日、伊豆半島で地質関係のバスツアーが開催されることを知った。
見ると、「ジオフォトツアー」と題された企画で、地質写真家の白尾元理氏を招いて4箇所のジオサイト(地質的名所)での撮影ツアーを行うという。定員は先着40名とのこと。
「白尾元理」という名前はどこかで聞いたことがあるなと思ったら、7年くらい前に雑文490「写真をナメてるな」で書いた高価な地質写真集の写真家であった。

我輩は写真家を崇拝する気持ちは無いのだが、今回の「ジオフォト」という言葉を目にして、まさに白尾氏の写真がそれであると確信した。
「ジオフォト」か・・・。
初めて目にしたこの言葉、これまで我輩が撮ってきた写真にも当てはまるのではないか? 今までは「極めて偏った風景写真」としか表現出来なかった我輩の写真だったが、これからは「ジオフォト」という明快な言葉で言い表すことが出来るのかも知れない。

ただ単に地形の表面上の形の珍しさを写すのではなく、その成因や構造を考えながら写真に分かり易く写す、被写体主義の写真。
そんな「ジオフォト」の先駆者(?)たる白尾氏に実際に会うことは、何らかの示唆を得ることになるのではないか。

実を言うと、我輩はツアー開催日のちょうど1ヶ月前に熱海付近に家族旅行したところだった。だからまた伊豆方面へ行くということについての抵抗があったことも事実。何しろ家族旅行では、渋滞のため現地到着まで実に5時間もかかった。その気疲れが蘇ってくるのである。

しかし今回は白尾氏の件もあるし、ツアーそのものはモニター企画のため無料とのこと、しかも個人ではとても入れない採石場も巡るという。これは行く価値が十分にある。
我輩はこのバスツアーに参加することを決めた。

バスツアー実施は1月28日土曜日の10時。
我輩の計画としては、都内の渋滞を避けるため、そしてETC深夜割引を狙うため、前日金曜の夜のうちに移動して集合場所近くの道の駅で車中泊を行うこととしたい。
そしてどうせ車中泊の準備があるなら、ツアーが終わった後にもう1泊し、翌日の日曜日にも単独でジオフォト撮影を続けようと思う。念のため、月曜日は休暇を取ることにした。

●準備
1月27日金曜日、午後になると仕事が手に着かなかった。
やることは早めにやって実績を上げており後ろめたさは無いのであるが、気持ちは既に伊豆にあった。

それにしても、勤務地の川崎市からわざわざ千葉県に帰宅し、再び都内を横断して伊豆へ向かうのは気持ち的に割り切れなさを感ずる。
クルマで出勤してそこから帰宅せず直接伊豆に向かうことも考えたが、川崎での駐車料金がかかるうえ、金曜の出勤に間に合うよう調整するのが大変。遅刻はマズイので渋滞に巻き込まれないよう木曜の夜のうちに出発せねばならず、それこそ時間の無駄であろう。

我輩にしては珍しく、事前準備には1週間をかけた。だから自宅へ帰ればすぐにでも出発出来る。
実際は夕食をとったり風呂に入ったりする必要があるので、出発は22時としている。

カメラ機材の選定については、冒頭にも書いたようにフィルムであることは大前提。
この機会を逃せば二度と撮れないかも知れない場所に行くのであるから、とにかく最善の機材を投入するべきと考えた。これはまさに、被写体ありきの撮影である。
66判の「BRONICA SQ-Ai」と全景撮影用の「広角40mm」、そして足元の石コロ撮影用の「標準80mm」を選んだ。そして余裕があれば「対角線魚眼35mm」を持って行こう。

もちろん、フィルム撮影でのポイント間を埋める用途としてデジタルカメラも必要であろう。
当初は防寒着のポケットに入る「LUMIX DMC-GF3」を考えていたが、主催者からの情報によれば「全景を撮るならば20mm広角でも足りないだろう」ということで、急遽「Nikon D700」と「ナノクリスタル超広角ズーム14-24mm」を使うことにした。これは重い。

いくらバスツアーとは言え、駐車場から現場までは歩くことになる。持ち運び可能な範囲で機材をまとめねばならない。
そうなるとデジタルカメラで重量級となってしまったのだから66判機材を減らさねばならぬ。
しかも滝の撮影があるということで、三脚が必須となってしまった。そうなると、66判はウェストレベルファインダーで、レンズも40mm1本とせざるを得ないが仕方無い。

●出発
川崎市の勤務先から帰宅後、いつものように食事をして風呂に入った。
布団は1階にあるので、クルマへの積み込みは楽だ。と言うのも、福島原子力発電所事故による放射能汚染のため、ここ数ヶ月ほどは線量の高い2階(0.18μSv/h)から1階(0.13μSv/h)で寝ているからだ。

車中泊時に忘れがちなアイテムとしては、「石鹸」、「レジ袋」、「割りバシ」がある。
「石鹸」は銭湯で用いる。安い共同浴場などでは石鹸が用意されていない場合もある。我輩の場合、日頃から石鹸でシャンプーしているため、これ1つで事足る。
「レジ袋」はスーパーでの食料品買出しで用いる。地域によってはレジ袋がもらえないこともあるからだ。
「割りバシ」は惣菜を食べるのに必要である。スーパーでの買い物ではレジ袋と同様に割りバシも有料の場合を想定している。
これら3つのアイテムを最終確認し、予定通り22時に家を出た。

まず最初に、ガソリンを満タンとした。
これによりガソリン量をリセットし、この旅で使用したガソリン量を知るのだ。つまり、この最初の給油は旅の費用の中にいれず、帰宅直後の給油のほうを今回の費用にカウントすることになる。

金曜の夜であるからそれなりに混雑はあるかと予想したが、意外にもペースが落ちることは無く、首都高なりの気疲れもあったもののスムーズに東名高速道路まで繋がった。

<高速道路>
高速道路
[LUMIX DMC-GF3/14-42mm/ISO400] 2012/01/28 00:03

眠気も出てきたが、少し頑張って走らせていると午前1時には目的地の道の駅「伊豆のへそ」に到着出来た。予想よりも1時間早い。
ちなみに、この道の駅は1年間にも車中泊したことがある。

<道の駅「伊豆のへそ」>
道の駅「伊豆のへそ」
[Nikon D700/24-120mm/ISO800] 2012/01/28 01:07

ライトを消してエンジンを停めると、シーンとした空気が流れた。周囲にはキャンピングカーも停まっているが、それほど混んでいない。
我輩は歯を磨いて部屋着に着替え、後部座席のトランクスルーに敷いた布団に潜り込み、目覚まし時計をセットして眠りに入った。直前まで暖房を効かせて走行していたので、寝る時でも車内温度が28度で快適だった。

●ジオツアーの朝
朝、目覚ましアラームが鳴る前に目が覚めた。
かなり寒く、布団から出るのが億劫になる。着替えてクルマから出ると、ルーフに霜がおりていた。気温は恐らく氷点下であろう。

<ルーフに霜>
ルーフに霜
[LUMIX DMC-GF3/14-42mm/ISO200] 2012/01/28 07:56

ジオツアーは朝10時に伊豆市役所別館出発となっているが、常識的に考えて15〜30分くらい前には到着しておく必要があろう。
クルマで20分もあれば着く距離だが、その近くには修善寺温泉があり、そこには「独鈷(とっこ)の湯」と呼ばれる観光名所があるという。事前に写真で見るとなかなか風情があり、後世に遺しておきたいと思わせる。地質写真とは関係無いが、温泉風景も我輩の撮影テーマであるため、ツアー前に是非ともフィルムで撮っておこう。

8時半頃出発し、途中のコンビニエンスストアで朝食をとり、そして9時に修善寺温泉へ。
駐車場から川沿いを歩いたが、なかなか温泉街の雰囲気があってのんびりしたい気分になる。

<修善寺温泉独鈷の湯>
修善寺温泉独鈷の湯
[LUMIX DMC-GF3/14-42mm/ISO200] 2012/01/28 09:14

しかし時間を考えるとあまりのんびりはしていられず、手早く撮影を済ませてクルマに戻った。

ツアー集合場所の伊豆市役所別館へは9時45分に到着。もう少し早く着くはずだったが、曲がる道を間違えて5分余計にかかってしまった。

<ツアー集合場所>
ツアー集合場所
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 09:49

クルマを停めてカメラバッグを肩に掛けた。
重量はかなりのものだが、まあ重いのは良いとしても、バッグの中で機材がパンパンに張っているのが困った。これでは機材を取り出すだけでも難儀する。
仕方無く「D700」はバッグから出して手に持つことにした。三脚のほうは・・・どうする? 少々迷ったが、やはり三脚は嵩張るのでクルマに置いてこう。

受付で名前を言って名簿にチェックしてもらう。受付の横には白尾氏と思われる人物と、参加者たち数名が談笑していた。白尾氏は想像していたよりも高齢であった。
バスに乗り込んで空いている席に座る。バッグが大き過ぎて荷物棚には載らないので、ひざの上に載せた。かなり狭い。

10時出発のはずだったが、到着が遅れている参加者が数名いるとのことで、5分ほど待つことになった。その間にトイレに行きたい者たちがいったんバスから降りた。我輩はこのタイミングで三脚を取りに戻ろうかと迷った。
滝の撮影は1ヶ所である。そこだけ頑張って三脚を使った後は、バスの荷物棚に置いたままにしておけば良い。
急いでクルマに戻り、三脚を取ってきた。

バスは間も無く出発し、狭い道を走った。我輩はポータブルナビを見ながら、走行軌跡を追った。どうやら南下しているようだ。
10分後、第一目的地の「旭滝」近くの駐車スペースに到着した。意外に近い。

●旭滝
バスから降りて2班に分かれた。そして全員で旭滝のほうへ歩いて行く。班に分かれる意味は何だろう?
5分くらい歩いたところで、鎮守の森のようなところに着いた。そこにある旭滝の説明看板の前に皆が集まり、白尾氏の説明を聞いた。

<解説中の白尾氏>
解説中の白尾氏
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 10:26

要約すると、「(1)名所ではある程度の定番というのが決まってくるのでこのような看板写真は参考になる。」「(2)定番を押さえた上であらためて自分の撮影スタイルで撮ると良い」というものであった。

この説明は理に適っている。
名所では、長い間に定番のアングルが収斂(しゅうれん)される。それは絵ハガキ的な画ではあるが無駄が無い。そういう意味では、定番というのは先人たちによる財産であろう。
何度も訪れて自分なりの視点を見付けてゆくならばともかく、初めて訪れた人間がいきなり自分の視点を見付けるのは難しい。やはり最初に定番を押さえておくことは必要であろう。

下から見上げる滝の高さはかなりのもので、流れ落ちる表面は柱状節理の断面が見えている。説明によれば、この辺一帯が溶岩が固まった柱状節理となっており、周りを見渡すと同じような節理に囲まれていることが判った。

<柱状節理に囲まれた地形>
柱状節理に囲まれた地形
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 10:57

地質的な興味が無ければ、この滝は滝でしかない。
揺れる水のきらめきだとか、仰ぐようなダイナミックさとか、刻々と変わる光を読むだとか、写真にありがちな味付けにこだわり過ぎて表面的なものしか見ないのであれば、この滝の存在そのものについて思いを馳せることは難しい。

この滝を含めた一帯は、かつては熱く溶解したマグマであった。それが冷却固化する過程で節理を生じ、このような構造を持つに至った。そして地質学的変動によりこの場所で滝を落とすようになった。
我輩の基本姿勢は、被写体を写真で持ち帰ること。そして持ち帰った写真をゆっくり眺め、新たな発見を探す。
大きく重い不便なカメラを持ち出す理由は、唯一その目的のため。

さて、滝の撮影は11時頃に終わり、皆でバスへ戻った。
結局、2班に分かれた意味は分からなかった。

●下白岩
次の撮影地「下白岩」へはバスで20分ほど。
2万5千分の1地形図で確認すると、大きく「下白岩の大型有孔虫化石レピドシクリナの化石産地」と記述されている。

非常に狭い道を大型バスで入り込み道端で駐車した。そしてそこから少し歩いて小規模な崖のあるところに行った。
白尾氏の説明によれば、この崖の地層中には有孔虫の化石が見付かるとのこと。

<解説中の白尾氏>
解説中の白尾氏
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 11:30

崖は県指定の記念物ということで、崖を掘るような化石の採取は認められておらず、採取するとすれば崖の下にある土砂から探すことになる。

白尾氏は小さな砂粒から白い有孔虫の化石を拾って見せてくれた。
我々参加者も同じように探すが、最初はどれもただの砂粒に見えていたものの、眼が慣れてくると意外にも簡単に見付かる。そして一時的に化石採取大会のような状態になってしまった。

<採取した有孔虫の化石>
採取した有孔虫の化石
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 11:43

我輩としては、化石の写真はもちろんだが、化石が産出する地形そのものも記録しておこうと撮影しておいた。

<化石が産出する地層>
化石が産出する地層
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 11:37


●昼食
昼食は、バスで少し走ったところにある土産物店の休憩コーナーを借りて各自持参の弁当を食べた。
ここで、白尾氏の新しい写真集「地球全史」が紹介された。20冊限定で4,620円のところを4,000円で販売するとのこと。節約旅行のため、我輩は4,000円も出して買う気は無かったが、見本をペラペラとめくってみて気が変わり購入することにした。そして、見返し部分に白尾氏にサインしてもらった。少しミーハーかとは思ったが、地質関係の古本ではよく著者のサインがあったりするのでこれはこれで良かろう。

<写真集「地球全史」を紹介する白尾氏>
写真集「地球全史」を紹介する白尾氏
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 12:32

ちなみに、食事で隣に座った中年の女性(恐らく我輩と同年代)と話をしていたところ、彼女が以前住んでいたところが我輩の自宅に近いところだと判明して互いに驚いた。
今回は地質好きの父上と2人で参加したとのことで、本人はそれほど地質に詳しいわけではないらしい。
我輩が、車中泊をして城ヶ崎海岸へ行くという話をすると、城ヶ崎海岸に自宅があるので泊まってはどうかと誘われたが、さすがにこれはご辞退申し上げた。有難いとは思うものの、車中泊の気兼ねの無さは捨て難い。

●白鳥山採石場
昼食を終えて13時にバスで出発、そして20分ほど走って「白鳥山採石場」と呼ばれる場所へ着いた。看板を見ると「土屋建設株式会社」と書かれており、この会社の厚意により入場を許可されたのだ。
一般個人では入場許可の出ない貴重な場所での巡検となる。それだけにこの機会1回のみ、万全を期しての撮影である。

その風景は、急な坂を上った先にあった。
徐々に姿を現すその大きなスケールの岩塊。皆、思わず声を上げた。
それは、巨大な柱状節理の塊であった。

<白鳥山採石場の大スケール柱状節理>
白鳥山採石場の大スケール柱状節理
白鳥山採石場の大スケール柱状節理
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 13:39-13:41

この広大な光景ではとてもワンカットでは全景を撮ることが出来ない。
持参した66判広角40mm(35mm判換算24mm)レンズでは、完全に両側がハミ出す。
デジタルカメラ「D700」のほうも、"超"が付くほどの広角ズーム14-24mmながらもやはり全体が収まらない。
仕方無いので、デジタルカメラにて分割撮影しておいた。後でパソコンにてパノラマ合成しようと思った。

しかし後日パノラマ合成したところ、確かに全景が収まったものの、こぢんまりとした小山のようになり雄大さの欠片も無くなってしまった。これはこれで全景の分かる記録となろうが、見たままのスケール感が全く表現出来ていない。
肉眼でも全景を見渡すのが難しい大スケールであるから、全景を写すことが見たまま表さないのは当然なのかも知れぬ。

<パノラマ合成画像>
(※画像クリックで横1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
パノラマ合成画像
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 13:43

それから、柱状節理の立体感を表現することが難しい。
柱状節理そのものの規則的パターンはもとより、頭上空間に迫り出した迫力ある岩塊は、写真に撮って液晶画面に表示すると途端に立体感を失ってしまう。
安直な方法かとは思ったが、視差をつけて2枚撮りをし、ステレオ写真としてみた。この方法は、ともすればミニチュアに見せてしまうこともあるが、それでも岩の立体形状は記録出来るはず。資料としての価値はあるだろう。

結局のところ、スケール感については写真の一部をトリミングしたものが最も臨場感があることが分かった。視野に収まりきれないところが逆に岩塊の大きさを感じさせるのかも知れない。

●船原採石場
最後の目的地は「船原採石場」という場所で、「天城ドーム」というスポーツ施設が近くにある。その園内駐車場にバスを停め、そこから歩くことになった。
ここで再び2班に分かれたが、全員が歩いて長い列になっているだけであるから、特に班に分かれる必要も無かろうと思う。

歩きは10分くらいあったのでそこそこの距離があったということになる。
ここも、視界が開けると雄大な光景が広がった。

<船原採石場>
船原採石場
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 15:06

白尾氏の解説によれば、ここはかつて火山が噴出したスコリア(黒っぽい軽石)が降り積もった場所で、採掘した断面から地層の構造が確認出来るとのこと。
全体的に赤い土砂の壁面に、層状の筋が見える。このような堆積は数日から数週間の短時間での出来事であったという。

<解説中の白尾氏>
解説中の白尾氏
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 15:16

通常、地質的なものは数万年単位での話が多いだけにこのような話はにわかに信じ難く、それが却ってスケールの大きさを感じさせた。
「こんな大量の土砂があっという間に積もるとはな・・・。」

その後、希望者は上まで登れることになった。
我輩も当然参加する。

数日の間に雨でも降ったのか、足下が泥状にぬかるんでいる。それでも何とか登り、この堆積物の大きさを身体で味わった。

<上まで登る>
上まで登る
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 15:30

広角レンズで撮影したのはもちろんだが、やはりワンカットでは全景が収まりきれず、ここでも分割撮影を行った。こちらは先ほどの白鳥山採石場とは異なり、上から撮影しただけに魚眼レンズ的な広がりは描写出来たように思う。


<パノラマ合成画像>
(※画像クリックで横1500ドットの画像が別ウィンドウで開く)
パノラマ合成画像
[Nikon D700/14-24mm/ISO100] 2012/01/28 15:32

下りは少々足を滑らせながらで恐ろしかったが、カメラを岩にぶつけないよう頑張った。足元は泥だらけで重くなったので、雑草にこすり付けて落とした。
再び元来た道を10分ほど歩いてバスまで戻ったが、たまたま主催の方が近くにいたので話をしながら歩いた。

バスに戻った時はもう16時で、陽は傾き夕方の景色になっていた。
伊豆市役所別館へ戻るバスの車中では、白尾氏が1月31日締め切りの「ジオフォトコンテスト」への投稿を勧めていた。「コンテスト応募が写真上達の近道だ」と言う。
我輩としてはフォトコンテストの類は自分だけの写真が撮れないという意味で禁忌としているが、白尾氏が言うのならばと、ちょっと試しに応募してみようかとも思った。

伊豆市役所別館に戻ってバスを降りた後、皆で記念撮影を撮り解散となった。予定よりも30分遅れの16時半になっていた。
我輩は自分のクルマに戻った時、正直言って少しホッとした。
ツアーというのは、時間配分や手配など人任せ出来る気楽さがあるが、自分のペースで動けないという不自由さもある。最初こそ楽ではあったが、後半は少し疲れた。

<自分のクルマに戻って一息つく>
自分のクルマに戻って一息つく
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 16:34

●車中泊
さて、これからどこに行こう。
この日の宿泊地は伊東市の道の駅だが、その前に食事して風呂に入る必要がある。
まずはスーパーで惣菜の買出しをしたい。

ポータブルナビから伊東市のスーパーを検索して目標設定し、伊東市に向けてクルマを発進させた。夕方から夜に変わり、辺りも暗くなっていく。その暗さのせいか目的のスーパーの駐車場入口を見誤って入り損ねてしまい、別のスーパーに入って買い物と食事を済ませた。

<伊東市のスーパー>
伊東市のスーパー
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 17:30

その後、予め探しておいた銭湯「玖須美温泉会館」へ向かったが、市街で曲がる道を間違えて大回りしてしまったが何とか着くことが出来た。
駐車場はクルマが多く、たまたま空きがあったのが幸いだった。しかし我輩の後から来たクルマは停められず、空きスペースが出来るのを待つことになったようだ。

<玖須美温泉会館>
玖須美温泉会館
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 18:51

券売機でチケットを買い、番台に出す。料金は300円と安いほうである。事前の情報収集で石鹸やシャンプーの備付けは無いということは知っており、我輩は石鹸を持参した。石鹸シャンプー派は荷物が少なく済むのが利点。
湯温は少々熱めだったが、疲れを取るためにも少し我慢をして深く湯に浸かった。

風呂から出た後、身体が温かいうちに本日の宿営地である道の駅「伊東マリンタウン」へ向かう。
ここは海の近くにあり、暗い中でも海に浮かぶヨットのマストが揺れているのが見えた。到着時刻はちょうど19時であった。

<道の駅「伊東マリンタウン」>
道の駅「伊東マリンタウン」
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 19:01

駐車スペースは幾つかのエリアに分かれており、我輩はキャンピングカーが多く停まっているエリアに駐車した。
そして後部座席の布団に移り、遮光テントを張ってLEDランタンを点灯。この日撮影したデジタル写真や白尾氏の地質写真集などを眺めながらしばらくくつろいでいた。

<車中でくつろぐ> (※2枚目中央に写っているのは時計)
車中でくつろぐ
車中でくつろぐ
[Nikon D700/14-24mm/ISO800] 2012/01/28 19:18-21:52

しばらくしてそろそろ寝ようかと思ったところ、近くに白いミニバンが停まった。エンジンは掛けっぱなしで、電動ファンの「ブォーン」という唸りが10秒ごとに繰り返されるので、そのリズムが耳について仕方が無い。しばらく我慢していたが1時間ほど経っても状況が変わらなかったので、クルマを発進させて別のエリアに移動した。フロントガラスが水滴で曇っていたので発進前にはタオルで拭いたのだが、それでもキレイには拭ききれず視界は悪い。そのせいで最徐行での移動である。
しかし移動したおかげで気持ちが落ち着いた。先ほどよりも幹線道路に近いが、不思議なことに走行音ならば気にならなかった。

布団に入ったが、やけに寒い。いつもならば少し窓を下げて隙間を作っておくが、思い切って閉め切った。まさか酸欠にはなるまい。
ハーフ毛布を3枚持ってきて良かった。そのうち1枚は頭に被った。いつもと同じ布団。これでリラックス出来ぬはずが無い。

明日は伊豆高原の城ヶ崎海岸を歩いて回る予定。だが気ままに行動出来る単独行動なので、敢えて目覚ましアラームはセットせずに寝た。
(その2へ続く)