2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
 AE-1P
 AE-1
 newF-1

PENTAX
 K1000
 KX
 KM
 LX
 MX
 MZ-5
 MZ-3
 MZ-M

OLYMPUS
 OM-3Ti
 OM-4Ti
 OM-2000

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 ST
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MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[739] 2012年01月23日(月)
「正月の買い物(テスト撮影と実戦投入)」


前回の雑文で書いた「Panasonic LUMIX DMC-GF3」について、テスト撮影と実戦投入を行ったので、時系列で書くことにしたい。

(1)フルハイビジョン試写及びスチル撮影ノイズ比較
正月休みのうちに届いた新しいデジタルカメラ「Panasonic LUMIX DMC-GF3」。
「PENTAX Q」が買えずに少々冷静になって購入したはずではあるが、「何かを正月買いしたい」という動機そのものは冷静なものとは言い難く、やはりどこかしら勢いで購入したということになろう。
それ故に、今回の「GF3」購入は果たして正解であったろうかということが真っ先に気になり、早く試し撮りをしようと思った。

ただそうは言っても、まずはバッテリーを充電せねば使えず、届いてすぐに出かけるというわけにもいかない。せっかく朝届いても、出発は昼食後となってしまった。
この季節、暗くなるのは早い。あまり遠出すると正味の撮影時間が短くなるため、近場の自然観察園に行くことにした。
近場とは言ってもクルマで小一時間はかかる。到着は14時で、すでに夕方の雰囲気があった。
暗くなる前にテスト撮影を済ませなければと気が焦る。

<ビデオ撮影について>
今回、フルハイビジョンでの撮影については期待値がかなり高い。これまで使っていた「GF1」では、ハイビジョンと言いながらも少々解像度の低い簡易タイプのハイビジョンだった。しかし今回導入した「GF3」のフルハイビジョンはそのままビデオカメラで撮ったフォーマットとして使える。

ビデオというのは、撮影したものはあくまでも素材であり、それを編集することで初めて鑑賞対象となる。これまでは、ハイビジョンビデオカメラで撮影した映像と「GF1」で撮影した映像は解像度が異なるため編集で繋いでしまうと違和感があったが、これからは「GF3」の映像を混在させて編集しても違和感が無くなる。

さて撮影にあたり、雑文721でも紹介したベルボン製「ポールポッド」を用いた。
ビデオの手持ち撮影では、画面が揺れたり無駄なパン(横振り)があると非常に見辛くなる。場合によっては、鑑賞時に酔って気分が悪くなることさえある。かと言って三脚を使うと、持ち運びと取り回しの面倒さや撮影時の占有面積の問題があるのだ。
「ポールポッド」は全体としてマイクスタンドのような外見で、ピラー部分を伸ばすと安定度が低下する。そういう時は脚の部分を踏んでおくと、パンをしても不意に傾くことが無い。

使用レンズは雑文712雑文713で紹介した10倍ズーム「14-140mm F4.0-5.8(35mm判換算28-280mm)」で、AFや絞り動作がビデオ撮影に対応している。そのおかげで、AFは滑らかにゆっくりと合い、明るさの変化にも連続的に調整してくれる。

ただしズーム操作は手動回転式のため、ズーミングの滑らな動きは撮影者のスキルに依存してしまう。電動ズームならば良かったのだが、そもそもあまり高倍率なズーミングシーンを入れ過ぎるのもかったるいので、この10倍ズームならカット編集で構成したほうが良いだろう。そういう使い方ならば、手動で一気にズーム操作出来るのが却って良いのかも知れない。

<一般的な撮影テスト>
画像クリックするとYouTubeの画面が別ウィンドウで開く。
フルハイビジョン画質を観るには、YouTubeにて品質を「1080HD」、かつ「全画面」を選択する必要がある。

また、ポールポッドにカメラを据えた状態で持ち上げると、高所撮影が可能となる。新鮮なアングルが面白い。
そしてそのまま下に降ろしたり、木道を外れて水面の上のほうまで伸ばしたりすると、まるでクレーンを使ったビデオ撮影のようなダイナミックな映像が得られる。
今回は14-140mmの少々重いズームレンズを付けているのでスムーズな上げ下げは筋力的に難しかったが、軽量なレンズであればもっと滑らかに動かせたであろう。

<ポールポッドを使った撮影テスト>
画像クリックするとYouTubeの画面が別ウィンドウで開く。
フルハイビジョン画質を観るには、YouTubeにて品質を「1080HD」、かつ「全画面」を選択する必要がある。

<スチル撮影について>
元々、14-140mmレンズは「GF1」で使っていたのだが、当初からAFが速く、一般的なデジタル一眼レフカメラの速度を上回っていた。
そして今回の「GF3」で使ってみるとその速さは更に向上しており、まさに瞬速AFとなっている。もはや、コントラストAFが遅いという常識は存在しない。寧ろ、この速さに勝てる位相差AFは無かろう。

我輩が思うに、この速さについてはコントラストAFだからという理由ではなく、恐らくはマイクロフォーサーズというシステムだから出来たことではないかと思うのだが、どうだろう?
通常の一眼レフカメラではマイクロフォーサーズに比べてAF駆動するレンズエレメントの重量が大きく、AF速度の限界が来ているのではと思える。
あまり小さ過ぎるカメラでも精度を確保したりモーターのパワーに限界があるだろうから、現状を見る限りにおいてはマイクロフォーサーズカメラがAFの最速システムなのではないか?
まあ、あまり根拠の無いことを言っても仕方無いが、それだけ速いAF速度には驚きを隠せない。

ところで我輩の隣で「GF1」を使って撮影している豚児は、しきりに「何回撮ってもブレてるなぁー」と言っている。「ん?小さな液晶画面でよくブレが判るな?」と思ったが、よく考えると「GF1」のほうは撮影直後のオートレビューが拡大表示設定になっていた。これは、撮影直後に表示される撮影画像が自動的に拡大されるものである。これによって、ピントチェックのためにいちいち再生画面に切り替えて拡大操作する必要も無い。自動的に拡大表示が出るので、撮影毎にピントチェック出来るのだ。

そう言えば、「GF3」ではその機能が無い。
「GF1」と「GF3」のカスタムメニューを見比べてみたが、どうやら意図的に機能を省いたようだ。その機能が欲しければ上級機を買えということらしい。いやらしいな。
ブレ易いカメラなのだから、こういう機能は削るべきではないだろう? 何の意図があるのか分からぬが、Panasonicはこういう機能はファームウェアで追加しろ。そうでなければ「ナショナルのカメラ」と呼ぶぞ。

さて、ノイズ比較の件については、比較カメラとして「Nikon D700」、「PENTAX K-x」、「GF1」の3機種を用いた。RAWでの撮影である。
ここではそれらのうち「GF3」と「D700」の比較を行ってみた。下の画像をクリックすると、等倍切り出し画像のPNGファイルが別ウィンドウで開く。

<機種別原寸切り出し画像>
LUMIX DMC-GF3
Nikon D700
<我輩の判定>
常用ISO200まで
緊急時ISO400まで
<我輩の判定>
常用ISO800まで
緊急時ISO1600まで

少々ピントの悪いカットが混ざっているのであくまでもノイズだけを見たいと思うが、印象としては、ISO200での比較は双方に目立った違いは見られない。
ISO400で比較してみると、「GF3」では暗部でのノイズが目立ってくるように感ずる。
そしてISO800では、比較するまでもなく明らかにノイズが多くなる。
この傾向は「GF1」と同様で、「GF3」の運用でもISO200を常用感度とし、緊急時にはISO400までを上限としたい。
ただ、夜景などの暗いシーンの撮影もテストしておく必要はあろう。それは後日チェックするつもり。

ちなみに帰り道、クルマに据えて走行中にビデオ撮影してみた。

<走行ビデオ>
画像クリックするとYouTubeの画面が別ウィンドウで開く。
フルハイビジョン画質を観るには、YouTubeにて品質を「1080HD」、かつ「全画面」を選択する必要がある。

これは、普通に撮影したものをビデオ編集ソフト「VideoStudio Pro X4」を使い4倍速に加工したものである。
また素材集のBGMを入れてみたが、なかなかセンス良く仕上がったのではないかと思う。デジタルカメラでこういうハイビジョン映像がごく簡単に撮れるのだから面白い。

(2)内蔵ストロボを使ったバウンス撮影テスト
室内でのストロボ撮影では、我輩は天井や壁でのバウンスを行うことが多い。特に、デジタルカメラを使った撮影では色かぶりの補正が簡単であるため、必ずしも壁紙が白色でなくともバウンス撮影は可能である。
「GF1」ではホットシューが備わっており一般的な外付けストロボが使用可能だった。ところが「GF3」ではホットシューが省かれ、小さなポップアップ式内蔵ストロボしか無い。

この内蔵ストロボは、他の多くのデジタルカメラと同様にプレ発光式で露出を測定した後に本番発光をする仕様になっており、通常のスレーブユニットを使っても本番撮影時のタイミングが合わない。
「GF3」のカスタムメニュー画面からプレ発光機能をキャンセル出来ないかと探してみたが、それらしいものは無かった。

プレ発光対応のスレーブユニットを買えば良いのだが、通常のものよりも高く6千円近くする。
まあ、このカメラで外部ストロボを使う機会はあるまい。そういう撮影では「D700」を使えば良いのだ。

ちなみに内蔵ストロボは、ポップアップすると畳まれたアームが伸びるタイプで、伸びた状態でアームを後ろに倒すと発光部がちょうど上を向く。

<内蔵ストロボを指で倒す>
内蔵ストロボを指で倒す

試しにその状態でバウンス撮影してみると、うまく写る時もあるのだが、大抵は露出不足になってしまう。バウンスするには絶対的な光量が足りないのだろうか。
こういう場合は感度設定を上げるか明るいレンズを使うかしか無いようだ。しかしISO800では画面がノイズで粗れてしまう(下記作例は縮小しているためノイズが目立たないが)。

<内蔵ストロボでバウンス撮影>
(ISO800・1/160sec・F5.0)
内蔵ストロボでバウンス撮影

ちなみに、内蔵ストロボの直当て照明と蛍光灯照明にて撮影した写真は以下のようになる。バウンス撮影とは違い、不自然な感じになる。

<比較写真2つ>
比較写真2つ

このように、この内蔵ストロボを使ったバウンス撮影は緊急避難的に使える可能性があると言える。

(3)業務撮影での実戦投入
我輩は現在、安全衛生に関わる公益社団法人の運営役員を任命されており、他社からの役員と共に活動している。この活動は月に1〜2回の会合やイベント・行事で、本業の合間に行うものである。

その活動の1つに「機関紙の編集・発行」があるのだが、我輩は機関紙に掲載するための写真を撮る役目を負っている。そして、今年最初の撮影業務として1月6日に「安全祈願祭」及び「交歓会」の様子を撮ることになった。神社に各社からの役員が集まり安全祈願を行う行事らしい。
それが終わった後、各社の交流を深める懇親会が行われるとのこと。

いつもならば「Nikon D700」を使うのだが、今回は安全衛生大会のような大規模なイベントではないため、まだテスト撮影の段階ながらも「GF3」を投入してみたい。
しかし、機関紙の新年号を飾る写真であるから失敗が許されないこともあり、一応のメインカメラを「PENTAX K-x」として確実なところは押さえておき、その間を埋める撮影で「GF3」を使うこととした。
もしこれで問題無ければ、大規模イベントの撮影についても機材の軽量化が図れる可能性がある。

当日、「K-x」の設定感度はISO400としたが、「GF3」はどうするか少々迷った。
「GF3」の場合、確かに我輩の運用ガイドラインとしてはISO200が常用感度ではあるが、神社拝殿の中での撮影となるため低照度下での撮影となろう。行事の性格上、ストロボの使用が許されるのかは分からないので、ストロボが使えない前提で考えたほうが良い。そうなると「GF3」では撮影は無理かも知れないが、一応のところ上限のISO400にセットしておいた。

まず、御祓いを受ける代表(部会長レベル)の集合写真を撮ることになったが、その次に祈願祭が始まるのでモタモタ出来ない。ここはストロボを装着した「K-x」を使う。
出来ればバウンス撮影によって強い影を消したかったが、天井を見るとそれは難しそうだったので素直にダイレクト照射した。背景が真っ暗になっては困るのでスローシンクロとし、手早くテスト撮影して背景とのバランスを調整。
この写真は機関紙の表紙を飾るので失敗はマズイのだが、液晶画面で見る限りはうまく撮れた。

続いて祈願祭であるが、この場面での撮影では「祝詞をあげている最中は撮影しないように」との注意があったのでそれに従い、参加者が順番に拍手(かしわで)を打つ場面で撮影をした。
前に回りこんで撮影するスペースは無く、参加者の背中越しに何枚か「K-x」で撮ったのだが、ストロボが使える雰囲気ではなさそうであるし、使ったとしても手前の参加者が照らされるだけだと思ったのでストロボ無しとした。

ISO400では暗すぎるのでISO800にセットしたが、それでも1/8秒のスローシャッターになってしまう。液晶画面で拡大してみたところ、被写体ブレはあったが、少なくとも手ブレは無い。さすがにファインダーを覗いて顔に当てた状態でシッカリとホールドしていれば当然だろう。

そこで試しに「GF3」で撮ってみたところ、こちらはブレが頻発した。ISO400をISO800に変えてみたがブレは無くならず、使い物になる写真が全く得られない。
確かにこちらは17mmパンケーキレンズで手ブレ防止機能は付いていないが、開放F値2.8と明るいのでシャッタースピードも1/15秒と、F3.5のズームレンズを装着した「K-x」よりも1段速くなっている。やはり、背面液晶でのライブビューでの撮影のため、ホールドが安定しないのが原因か。

祈願祭が終わり、控え室で各参加者におフダを配る場面があったので、これを「GF3」を使って撮ることにした。
控え室は狭く、普通にカメラを構えると人垣があってうまく撮れない。そこで、「GF3」を持った手を上げて見下ろすアングルで撮影してみた。
結果は上出来である。拝殿内に比べると蛍光灯の明るい照明に助けられ、ノーストロボでキレイに撮れた。

<手伸ばし・ノーストロボ撮影>
(ISO800・1/100sec・F2.8)
手伸ばし・ノーストロボ撮影

次は、場所を移して交歓会である。会場のホテルに移動して乾杯から始まった。
立食形式で自由に歩き回り、食事をしながら各々名刺交換など行っている。我輩もその中に溶け込んで撮影するため、「K-x」はカバンにしまい込み「GF3」のみで撮影に臨む。背広の内ポケットに「GF3」を入れておけば、撮影時にサッと取り出すという使い方が可能。
人が多いため、基本的に先ほどと同じく手を上に伸ばしてノーストロボで撮影した。

液晶表示で見るとブレは無いのだが、何となく濁って見える。よくよく見ると、それはノイズのせいだった。
失敗が怖いからと敢えてISO800まで上げていたが、「GF3」はISO400の時点で既に無理をした状態であり、さらにISO800まで上げるのはさすがに無理があったか。
やはりISO400に下げるとブレが頻発したが、それでも何枚も撮っておくとブレ無く撮れているものもある。デジタルカメラの低ランニングコスト特性を活かし、数を稼いでカバーすることにした。

<ISO400で手伸ばし・ノーストロボ撮影>
(ISO400・1/50sec・F2.8)
ISO400で手伸ばし・ノーストロボ撮影

帰宅後、撮影した写真をパソコンでチェックしてみると、やはりISO800のノイズは酷い。ISO400とISO800の間には大きな壁があるかのような違いだった。
途中でISO400に変更しておいて良かった。

しかし手ブレはISO400に変更した直後から大幅に増えている。
「GF3」にはボディ内手ブレ防止機能が付いておらず、レンズのほうに手ブレ防止機能を必要とする。今回は手ブレ防止機能のあるレンズではなかったが、もし手ブレ防止機能のあるレンズだったならばどれくらい成功率が上がっただろうか。

さて、この撮影業務では機関紙掲載のための写真としては何とか役目を果たしたが、「GF3」による撮影の限界を感じたことも確かだった。早急に、手ブレ防止機能付きのコンパクトなレンズが必要である。
その要求に該当するものとして、「14-42mm F3.5-5.6 POWER O.I.S. 」の導入を検討することにした。

このレンズはOLYMPUSの14-42mmと同様に沈胴式のため、非使用時はマウント面から26mm長と非常にコンパクトである。しかも電動ズーム搭載により、沈胴操作はカメラのメインスイッチに連動していて面倒が無い。
それから、ズームであることも利点の一つ。今回の撮影で使ったパンケーキレンズ17mmは単焦点レンズゆえに必要以上に動き回らねばならなかった。少しでも広く、少しでも大きく、という用途にはズームレンズは絶対に便利。
そして言うまでも無く、手ブレ防止機能が付いている。

ただし、新しい製品とのことで中古が出ていない。新品だと最安値でも3万5千円。金が足りないと言うよりも、全く無い。
換金出来る物が無いかと探し回ったが、少なくとも銀塩カメラ系は値段が付かない。結局、利用頻度の低い「PENTAX DA 70mmF2.4 Limited」を選んだ。これならば、ちょうど必要な金額で売れよう。

結果的に何とか取引が成立し、「14-42mm F3.5-5.6 POWER O.I.S. 」も手に入れることが出来た。

<「14-42mm F3.5-5.6 POWER O.I.S. 」を装着した「GF3」>
「14-42mm F3.5-5.6 POWER O.I.S. 」を装着した「GF3」

レンズ筐体の色は黒と銀が用意されているが、実売最安値では銀のほうが若干安かったことによりこちらを選んだ。結果としては偶然の組合せだが、ホワイトボディの「GF3」とのマッチングは良い。

それにしても、このレンズは確かにコンパクトであった。
OLYMPUS製の同じ焦点距離のレンズと比べてみたが、このコンパクトさはちょっと信じられない。

<所有レンズの比較>
所有レンズの比較

沈胴の動作も見てみたが、レンズが伸びる動作は早く、それほど待たされる感じは無い。少なくとも手動操作のものに比べると断然面倒が無い。
レンズの伸びは沈胴時の2倍近くにもなりビックリするが、元々がコンパクトであるからそれだけに伸びた時が目立つのだろう。ここを非難するのは少々酷かと思う。

<沈胴の様子>
沈胴の様子

ただ、このコンパクト化による画質面での弊害は無いのだろうかという心配はある。それは今後の撮影を通じて確かめたい。

ところで考えてみると、電動ズームの交換レンズ購入は初めての経験である。
その昔、銀塩全盛の時代にもパワーズームが各社から発売されたことがあったが、その評価は芳しくなかった。これといった利点が無いわりに、モタつく、ちょうど良いポイントで止めにくい、電池がすぐ無くなる、など欠点ばかりが目に付いた。

しかし今の時代は、フルハイビジョンビデオの撮影が可能な世の中。
10倍ズーム14-140mmレンズもビデオ撮影対応だったが、ズーミングは手動のため速度を一定にすることが難しいのが難点であった。余程事前練習しておかないと、ズームリングを掴んだ手が無理な角度に回って引きつってしまうのだ。

今回手に入れたレンズでは、ズーミング時の音も静かで(全くの無音ではなく、静かな場所ではわずかに擦れるような音が聞こえる)、レバーの動かし方でズーム速度が変わるし、設定によってビデオ撮影時とスチル撮影時の速度も個別に変えられる・・・はずだったが、なぜか設定画面が無い。これには少々焦った。

調べてみると、我輩の「GF3」のファームウェアが最新ではないようで、Webダウンロードによりファームウェアを最新のものにしたところ、設定画面にパワーズームの項目が追加された。
そしてズーミング中に焦点距離数字が表示されるようになった。これは便利。

それにしても、コンパクトな「GF3」にこのコンパクトなズームレンズは最適な組合せである。てのひらにスッポリと収まる感じをあらためて味わった。

<てのひらにスッポリと収まる感じ>
てのひらにスッポリと収まる感じ

恐らく、電動ズームでなければここまでコンパクトには出来なかったろう。まさに、レンズ交換出来るコンパクトカメラ。
いや、それはあくまでも羊の皮である。
コンパクトカメラよりも遥かに大きなイメージセンサーを持つ狼が、羊の皮を被っているのだ。

(4)14-42mmレンズのテスト及びビデオ撮影
新規購入した14ー42mmレンズは1月7日の夕方に届き、翌8日に早速テスト撮影を行った。気分としては、まだ正月休みの続きというところ。

このテスト撮影で確かめたいことは、「14-42mmレンズの手ブレ防止の効果」、「収差の程度」、そして「電動ズーミングの使い勝手」である。

テスト風景についての記述は割愛するが、結果としてはおおむね良好であった。
驚いたのは、普通のズームレンズならば周辺に出るはずの色収差による色ズレがほとんど無いことだった。信じられない。コンパクトゆえに収差でシワ寄せが出るのではないかと思っていたのだが裏切られた。
これまでの写真では、RAW現像で1枚1枚調整する手間があったが、それを軽減してくれるのは有難い。

手ブレ防止に関しては、以前から使っている10倍ズーム14-140mmの強力な手ブレ防止機能に慣れているせいか、この14-42mmではあまり効いていないような印象。もっとも、低感度設定で気軽に片手撮りしたせいであろう。さすがにこんな撮り方ではブレは防げないということか。
神は、自ら助く者を助く。
レンズが助けてくれるからと手抜き撮影ではダメだという当たり前のことを再確認させられた。
そういうわけで手ブレ防止機能については、本当に暗いシーンでシッカリとホールドした撮影でどうなるかを後日テストしたい。

電動ズームの使い勝手については、親指が自然にかかるマニュアルフォーカスレバーのほうを間違えて操作することが多かった。我輩の手が比較的大きいせいかも知れない。
ズーミングの動きについては、やはりビデオ撮影では効力を発揮する。

<電動ズームを使った撮影テスト>
画像クリックするとYouTubeの画面が別ウィンドウで開く。
フルハイビジョン画質を観るには、YouTubeにて品質を「1080HD」、かつ「全画面」を選択する必要がある。

ただ、今回のテストで新たに判明したことは、高速移動する被写体に対して動体歪みが発生するということである。
これは、ビデオカメラでしかビデオを撮ってこなかった我輩にとって初めての問題なのだが、CMOSを使ったイメージセンサーでは信号の読み出しのタイミングの問題で発生するものであるらしい。

<動体歪みの例>
画像クリックするとYouTubeの画面が別ウィンドウで開く。
フルハイビジョン画質を観るには、YouTubeにて品質を「1080HD」、かつ「全画面」を選択する必要がある。

これをどう評価すべきか悩むところだが、苦手なシーンとして認識しておくことは今後の使用において役に立つだろう。

(5)夜景撮影テスト
夜景の撮影では、低照度における「AFの動作」、「画質(ノイズ)」、そして「14-42mmレンズの手ブレ防止の効果」を見てみたい。

低照度の撮影シーンではあるが、ISO200以上に感度を上げるつもりは無い。これは、ISO200を常用することがどこまで可能かというテストでもある。
もっとも、銀塩写真ではISO200はやや高感度の部類に入るので、ISO200が夜景で使えないはずが無い。もしそんなことがあるとすれば、カメラ機材ではなく人間のほうに問題があると考えるのが普通である。

まず1枚目は、手ブレ防止機能をオフにした状態で普通に構えて撮影してみた。目の前30cmの距離でライブビューの画像を見ながら、ゆっくり慎重にシャッターを切る。

2枚目は、手ブレ防止機能はオフのまま、今度はカメラを顔に当てて接眼ファインダーを覗くような状態で撮る。もちろんこのカメラには接眼ファインダーは無いので、近過ぎる液晶画面がぼやけて見えるだけだが、しっかりとホールドするために敢えてこのように構えた。

3枚目は、手ブレ防止機能をオンにし、再び1枚目と同じ構え方で撮影した。

<1枚目> ライブビュー手持ち撮影/手ブレ補正無し (ISO200・1/13sec・F3.5)
ライブビュー手持ち撮影/手ブレ補正無し
<2枚目> 接眼ファインダー覗き手持ち撮影/手ブレ補正無し (ISO200・1/13sec・F3.5)
接眼ファインダー覗き手持ち撮影/手ブレ補正無し
<3枚目> ライブビュー手持ち撮影/手ブレ補正有り (ISO200・1/13sec・F3.5)
ライブビュー手持ち撮影/手ブレ補正有り

撮影結果を見ると、縮小画像ではどれも違いは見られないものの、200パーセント表示(等倍を2倍拡大)にすると手ブレ防止機能が働いていることが確認出来た。
また、カメラを顔に当てて撮影する方法もそれなりにブレを抑える効果があることが分かった。接眼ファインダーの無いカメラでは少々難しい構え方ではあるが、近過ぎてボケる液晶画面でも撮影範囲くらいは確認出来るもの。悪条件での撮影の下、少しでもブレを抑えたい時にシャッタースピード1段分くらいの効果はあろうかと思う。

ちなみにこの作例では分かりにくいかも知れないが、ISO200で撮っているおかげでノイズはほとんど気にならない。
だが、この状態から暗い部分をムリヤリ明るく持ち上げたりすれば、それなりにノイズは出る。それは結局増感と同じようなものであるから、このカメラだけの問題ではない。・・・とは言うものの、フルサイズD700に比べるとノイズは多めに出てくるので、明るくしたいならば撮影時に露出不足にならぬよう気を付けるべき。
ただし、暗いシーンを暗く写すのは写真としては自然なことでもあるので、あまり明るく写すことにこだわる必要も無いという考え方もあろう。この点は、撮影の目的や意図にもよる。

それから低照度でのAF動作について、コントラストAFの「GF3」は苦戦するだろうかと思ったが、街灯などの点光源があるせいか特に問題は無かった。
ならば点光源の無い一様に暗いシーンではどうかと言うと、試してみると位相差の「D700」相手に健闘した。これは意外である。
もっとも、「D700」の低照度でのAF能力が一般的な一眼レフカメラと比べてどれほどのものかは分からぬが。

(6)タッチ式移動フォーカスポイントのテスト
「GF3」は背面液晶がタッチパネル式になっており、タッチした部分にフォーカスポイントを移動させることが出来る。
我輩は当初、この機能をオフにしていた。液晶画面が大きいゆえ、ヘタに指が当たるとフォーカスポイントが変なところへ移動してしまうからである。

ところがビデオ撮影に於いては、このタッチパネルによるフォーカスポイント移動が大変有効であることが分かった。一般的なビデオカメラに比べると背景ボカし映像を撮り易いこの種のカメラでは、フォーカスポイントを画面上で簡単に指定出来る利点は大きい。

<タッチパネル操作によるフォーカスポイント移動のテスト>
画像クリックするとYouTubeの画面が別ウィンドウで開く。
フルハイビジョン画質を観るには、YouTubeにて品質を「1080HD」、かつ「全画面」を選択する必要がある。

ただしコントラストAFはアウトフォーカスの方向を検知出来ないため、一番手前の物体にピントを合わせる時でもいったん無限遠まで移動して戻ってくるのが難点。
タッチの仕方(※)でピント方向をマニュアル指定出来れば良いのだが・・・。
(※例えば、タッチしたあと上に弾くようにすれば無限遠方向に、タッチしたあと下に弾くようにすれば近接方向に、というふうに強制的に方向指示出来れば嬉しい。この程度ならばファームウェアレベルの改訂で問題が解決するのではないかと思う。)

(7)外部ストロボを使ったバウンス撮影テスト
我輩は職場で証明写真の撮影を依頼されることが時々ある。
そういう時は職場にある機材保管庫の「PENTAX K10D」を使って撮影すれば良いのだが、カメラを置いている機材保管庫はカギがかかっており、いちいちカギを借りに行くのは面倒である。
カギを借りて開錠してカメラを取り出し、すぐに施錠してカギを返しに行く。撮影が終わると、またカギを借りに行き、カメラを保管庫に入れたらまたカギを返しに行く・・・。
ある時など、「ちょっとの撮影だから」とカギを持っていたままでいたところ、ちょうど保管庫のノートパソコンを借りたい者がいたようで困らせてしまったことがあった。

そういうこともあり、これまでは通勤カバンに常備していた我輩所有の「PENTAX K-x」を使うことが多かった。
ところが今回、常備カメラを「GF3」に替えたことにより、証明写真のためのストロボ撮影が不可能になってしまった。当初は必要は無いかと思っていた外部ストロボシンクロ、やはり対応させたほうが良さそうだ。
ちなみに、職場にあるモノブロックストロボ(参考:雑文606)のほうは、保管庫ではなく通常のキャビネットに入れているため自由に出し入れが出来る。だから、カメラさえストロボシンクロ出来れば面倒は無い。

前にも書いたが、プレ発光対応のスレーブユニットは6千円近くもする。今月の小遣い1万円を半月早く前借りしていたのだが、それが4千円に減ってしまうのは痛い。
「待てよ、ヨドバシカメラならばポイントカードでいくらか補填出来るかも知れないな。」
帰宅時にヨドバシカメラへ寄り、ポイントを確認してもらったところ、300ポイント(300円分)くらいしか無かった。焼け石に水か。最近はカメラ機材もインターネットで最安値を探しているから、ヨドバシカメラで買うことも少なくなったせいだ。
結局、その300ポイント分を引いてもらい購入した。

購入したスレーブユニットは、確かにうまくシンクロした。ただ、スレーブユニットとしては少々感度的に鈍いようで、少しでもセンサーに光が当たらないと反応しない。
撮影時は「GF3」の内蔵ストロボをトリガーとして使うわけだが、これが被写体の照明に影響を与えては困る。直接被写体に光が当たらぬよう内蔵ストロボを上に向けて撮影したかったのだが、それでは光が弱くなり過ぎてスレーブユニットがシンクロしないのだ。
仕方無いので、シンクロコードを繋いだスレーブユニットを「GF3」の内蔵ストロボ発光部の前にかざして使うことにした。ちなみにこのスレーブユニットにはシンクロコネクタが無いため、シンクロコードを繋ぐには別のアダプタとの併用となる。

<プレ発光対応のスレーブユニット(下)>
プレ発光対応のスレーブユニット(下)

このテスト撮影ではクリップオンストロボをスレーブユニットに直接接続しバウンス撮影を行ったが、うまい具合に撮れていると思う。

<スレーブユニットによる外部ストロボ撮影テスト>
(ISO200・1/100sec・F13)
スレーブユニットによる外部ストロボ撮影テスト

後日、職場のモノブロックストロボで試したところ、こちらもうまくシンクロしてくれた。ただ、このモノブロックストロボ自身にもスレーブ機能が搭載されているため、スレーブスイッチを切り忘れているとプレ発光に反応してしまう危険性があることを注意しておかねばならない。

予備バッテリーの必要性について
もし1回の撮影でバッテリー容量が保つのであれば予備のバッテリーは必要無いかと考えたのだが、現実にはそういう単純な理屈は通らない。
携帯電話のような「減った分だけ追加充電する」という運用をすると、バッテリーの寿命を縮めることになるのだ。リチウムイオン電池はメモリー効果は少ないとされるが、それでも充電回数に比例して劣化するのは変わらない。だから、なるべく使い切るまでは充電したくない。そうなると、撮影中にバッテリー切れを起こすことになり、必然的に予備バッテリーが必要になる。

仕方無いので予備バッテリーを追加購入しようと思ったが、純正品は5,000円前後と驚くほど高く、少々悩んだが中国ROWA製互換バッテリーのものを1,500円ほどで購入。
最近は、互換バッテリー対策された機器で使おうとすると残量が表示されなかったり、いちいち警告メッセージが出てキャンセルする手間があるなどと色々不都合があるが、今回は特に何も無く純正と同じように使えているので安心した。

<純正バッテリー(左)と互換バッテリー(右)>
純正バッテリー(左)と互換バッテリー(右)


おわりに:これは何のためのテストか
以上、長々と「GF3」についてのテストを行ったが、等倍をさらに2倍に拡大するなど、他サイトでは見られないような強引な検証をした。
しかしそれは、あらを探すためのものでは決して無い。

我輩は去年まで、「PENTAX K-x」を通勤カバンに入れて持ち歩いていた。
最初はそれでも良かったが、3月11日の震災以降で少々事情が変わってきた。

震災によって帰宅難民となった時、携帯電話のバッテリー問題には大きく悩まされ、複数のACアダプタ、複数のバッテリー、乾電池仕様の給電器の必要性を感じた(参考:雑文724)。
また、あの時は幸運にもクルマを使うことが出来たが、同僚の中には徒歩で帰宅した者も多かったという。我輩の場合は通勤距離が長いため、徒歩で帰宅するような事態に備え、ポータブルナビを持つようになった。
それから基本であるが、FM/AMラジオも入れている。

このように、カバン常備アイテムが増えせいでスペース的に「K-x」の場所が無くなってきたのである。けれども代替カメラが無いのでカバンはいつもパンパン。そんな時、超小型ミラーレス一眼カメラ「PENTAX Q」が登場した。
ただ、このカメラはあくまでもコンパクトカメラがレンズ交換式になったもので、一眼レフカメラからミラーが無くなったというものではないと悟った。

そこで小型のマイクロフォーサーズ「GF3」に目を付けたのだが、最低でも「K-x」くらいの画質は確保したい。だから、今回のテストによってその能力があるかを見極めようと思った。
もちろん、全ての条件で最高画質を確保するのは無理というのは最初から分かっていた。限定条件で画質が確保出来るならば、その条件で頑張ろう。その頑張りに応えてくれるカメラなのか、あるいはどう頑張ろうと無駄なのか。

購入動機は"正月買い"であったが、我輩は今後、この「GF3」と「14-42mm F3.5-5.6」を常備カメラとしてカバンに常に入れておくこととした。
それが、我輩の答である。