2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[449] 2003年10月28日(火)
「双眼鏡」

前回の雑文では、日露戦争日本海海戦について書いた。
その時に「東郷は、当時日本に2個しか無いドイツ・ツァイス社製12倍双眼鏡を持っており、砲弾の着弾を正確に確認していた。」と書いた。
我輩はその記述から双眼鏡について興味を持ち、観艦式には双眼鏡を携行しようと考えた。
そこで、とりあえず情報収集を兼ねてオークションやネットショップにて双眼鏡の種類を見てみた。するとそこには無数の製品が表示された。
オーソドックスな見慣れた形のものや、コンパクトでスタイリッシュなもの、高倍率やズーム搭載のもの、ルビーコーティング(IRコート)と呼ばれる赤い対物レンズのもの、デジタルカメラ搭載のもの・・・。
「な、なんて数だ。双眼鏡に無知な我輩にはどうやって選べば良いか分からんぞ。」

自分の知らない分野の製品を購入する時、多くの製品の中から選択するための判断材料を探そうとするが、何を重視して選べば良いか分からず迷うことがある。
例えば炊飯器を買おうとした時、我輩は炊飯器マニアではないのでどのようなものを買えば良いか分からなかった。炊飯器と言えば米を炊くもの。それ以外にどんな違いがあるのかなど全く知らない。

もし炊飯器マニアであれば、「これは遠赤外線を使っているから云々」とか「こちらは米の量を自動的に判別して炊き方を変える」というような知識を持っているだろう。また、用途に応じて4〜5台の炊飯器を所有し使い分けていても不思議ではない。
中には「飯を炊くならシンプルな飯ごうで炊くべきだ」と鼻息を荒げ、"飯ごうでご飯を炊きなサイ!"というサイトを立ち上げる者もいるかも知れない。

しかし、今まで炊飯器のことなど考えたことの無かった者にとって、ポリシーを以て炊飯器を選ぶことはなかなか出来ることではない。事実上、カタログスペックや店員のお薦め、そして根拠の無いフィーリングによって選ぶことになる。
特に、通信販売やインターネットによる買い物が増えると、その製品について熟知していなければスペック数値とデザインで選ぶしかない。

我輩はもちろん、店頭で実際に手に取って双眼鏡を選びたかったが、どこに行けば店頭にあるのか分からない。カメラ量販店に行っても、我輩の行く範囲の店舗にはそれほど多くの展示品は無い。
試しにヨドバシカメラのサイトで双眼鏡を見てみたが、どれもこれも"お取り寄せ"と表示されている。店頭で選ぶことなど出来ない。
しかも観艦式まであと数日であるのに、そんなに待てるものか。

どこに行けば双眼鏡が置いてあるんだ?
カメラはカメラ屋。眼鏡は眼鏡屋。では、双眼鏡は双眼鏡屋か・・・?
何だか面倒になってきたので、インターネットで在庫のある店を検索し、そこから買うことにしようと思う。まあ、マニアックなことを要求しなければ、双眼鏡などどれも同じようなもの。

だがインターネットで購入するということになれば、すぐにでも注文しなければ観艦式まで間に合わない。急げ!
早速双眼鏡を検索してみた。案の定、膨大な数がヒットした。
その中で目を引いたのは、スケルトンタイプ(※)のコンパクトな双眼鏡だった。中身は金属の骨格が透けており、遮光性には問題無さそうに見える。値段も3千円程度と安い。
双眼鏡マニアではない我輩は、双眼鏡ごときに金をかけるつもりは無かった。遠くが見えればそれで良い。そして、どうせなら無骨でないオシャレなものであれば、ヘナチョコ妻が使う時にも抵抗感は無いだろう。
そういう意味で、この双眼鏡はパーフェクトだと言える。
(※「スケルトン」とは、英語では"骨格"という意味だが、外来語としては"透明"という意味となる。)


OEMのためメーカー不明:7x18

念のため、この双眼鏡についての情報を得ようとインターネット上を検索した。
すると「小学生の娘がこの双眼鏡をコンサートに持って行ったが、非常に良く見えたと言っていた」という記述を発見した。
普段ならば、「小学生の判断であるからあてにならぬ」と無視するのであろうが、この時は購入するための理屈付けをするために探した情報であるから、その記述を見た時は「おお、そうかそうか。」としか思わなかった。

先日のコンパクトジャケットの時のように間に合わないと困るため、直ちに送付してもらえる代金引換にて注文した。
数日後、会社から帰宅すると例の双眼鏡が届いていた。見事なスケルトンである。
可動部はグリスが利いているようにネットリと滑らかで、安物感は特に無い。これで3千円とはお買い得だった。
倍率は7倍と少し低いかと思っていたが、覗いてみるとそれほどでもない。なかなか良く見える。ただ、接眼部のゴムまでスケルトンで遮光されない。そのため手で接眼部を覆うようにして覗く必要がある。まあ、それも愛嬌か。

次の日、勤務地(出向先は新橋である)の近くにキムラヤがあったのでそこに寄ってみた。そこには幾つかの双眼鏡が展示されていた。Nikon製、PENTAX製、MINOLTA製、Kenko製のものだった。
それらは光学機器メーカーとして有名であり、先入観として高価なイメージがある。ところが値札を見ると、それほどべらぼうな値段でもない。数千円のものから、高くとも2〜3万円。なんだ、それならばスケルトン双眼鏡が特別安いということでは無いんだな。
見ると、Kenko製の双眼鏡は40倍までのズームが付いている。それで数千円か。ウーム、早まったか?

我輩はその双眼鏡を手に取り覗いてみた。
「・・・何も見えん。」
ズームレバーが40倍になっていたので、12倍に戻した。ようやく何か見えるようになった。しかし手ブレが激しく、何が何だかよく見えない。しかも視野が非常に狭く見難い。まるで長いパイプを覗いているみたいだ。
「何だこりゃ、観光地のみやげ品か?!」
こんな双眼鏡では全く役に立たない。これならば、我輩のスケルトン双眼鏡のほうが40倍もマシだ。Kenkoはそこそこの光学機器メーカーだと思っていたが、これは一体どういうことか?

まさかと思い、今度はNikon製のものを覗いてみた。
Nikonはフィルムスキャナで裏切ってくれたから、今度も心配だった。
だが、こちらは視野も広く良く見える。我輩のスケルトン双眼鏡よりもよく見える。立体感が素晴らしく、空中像の良さが活かされているような感じだ。
PENTAXのほうもなかなか良かった。
ただし、シロウトにはその見え方が最高なのか標準的なのかは判断つかないのだが。

「うーん、簡単に双眼鏡とは言うものの、モノによってまったく別物だな・・・。」
その時初めて、双眼鏡を選ぶことを意識した。
そしてその夜、再びインターネットで双眼鏡について研究した。中でも、双眼鏡愛好会というサイトは非常に参考になった。

数時間後、我輩は双眼鏡についての視野が開けた。どれも同じように見えた双眼鏡が、違って見えるようになった。体験を伴った知識ではないが、最低限のものは見えてくる。
改めてキムラヤに置いてあった双眼鏡を考えてみたが、よく見えてコンパクトで安価でスタイリッシュなもの無かった。
店頭にあるものから選ぶと選択肢が限られるから、やはりインターネット上で在庫のある店から選ぶしかない。

我輩はいろいろと吟味し、OLYMPUS製の双眼鏡を注文した。
性能的には良くもなく悪くもない。コンパクトサイズで値段も5千円。スタイルも問題無い。これが、今回我輩の求める性能と判断した。


OLYMPUS:8x21 DPC I

これは届くまでに非常に早く、何とか観鑑式の前日に届き、当日使うことが出来た。
まず、コンパクトなのが良い。見え具合はまあまあ。当然だが、スケルトンのものより視野も広く、隅までクッキリ良く見える。立体感もあり、護衛艦のディテールが伝わってくる。そもそも空中像は、一眼レフカメラの望遠レンズで見るのとは全く違う。
日本海海戦で東郷は12倍の双眼鏡を使っていたと言うが、8倍でもなかなか良い。手ブレを考えるならば、これくらいがシロウトには良い。

それにしても、Kenkoは倍率に関しては異常だな。検索すると倍率100倍のコンパクト双眼鏡すら発売しておる。
昔、カメラの世界でもコンパクトカメラのズーム比率競争があったが、そんなレベルを超えている。デジタルカメラの画素数競争などかわいく見える。
8倍の双眼鏡でも結構なものであるのに、100倍双眼鏡とは消費者をナメ切っているな。何も知らない者は、良心の無いメーカーの餌食だ。

我輩も、つい最近までは双眼鏡のことは何も知らなかった。インターネットなどの情報源が無ければ、もしかしたらズーム付き100倍双眼鏡を買っていたかも知れん。貧乏性であるが故に、その可能性は高い。
きっと、カメラを買おうとする一般人も、このような感覚なんだろうな・・・。

カメラメーカーよ、売れるからと言う理由だけでヘンな製品ばかり作っていると、そのうちKenkoのような三流に成り下がるぞ。
ユーザーも無知な者しか集まらず市場が閉塞するぞ。