2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[351] 2002年05月08日(水)
「印象」

先週、臨時収入を得た。
そこで、7日19時頃、露出計代わりに使う小型軽量なデジタルカメラを得るためにヨドバシカメラ上野店に立ち寄った。
店内には、雨の日にも関わらず我輩と同じような会社帰りの人間が多くいた。

我輩は1階カメラ売場のデジカメコーナーに行き、お目当てのオリンパス「CAMEDIA C-700 Ultra Zoom」の店頭展示品を手に取って調べ始めた。
我輩の背後にもデジタルカメラが展示してあり、後ろから店員と客のやりとりが聞こえた。客は色々な質問をしているようで、店員はその客について質問に答えたりアドバイスをしていた。

我輩の調査項目は、「電源」、「ファインダー液晶表示の見え具合」、「付属品とオプション(特に外付けストロボ)」、「値段」だった。
その中の「ファインダー液晶」については、実際に手に取って確認した。だが、その他については店員に確認したほうが良さそうだ。
・・・と思ったが、近くに店員はいない。客が多いから仕方が無かろう。
だが、いつまで経っても店員が近くに来ない。買うと決めていれば引っ張ってくることも出来ようが、まだ買うかどうか決めていない段階であるので、こちらから呼び寄せるのは気が引ける。出来れば近くを通りかかった店員に声を掛けたいと思う。

背後にいたデジカメコーナーの店員は若い男女2人いたが、相変わらず2人とも接客中である。しかし男のほうを見ると、少しぞんざいな感じであり、コイツは避けたいと”何となく”思った。
15分くらいカメラをいじりながら様子を伺っていると、ちょっと和風な雰囲気の女性店員がそばを通りかかったので、電源のことについて質問してみた。
すると彼女は困った顔をして「詳しい者に代わりますので」と別の男性店員を連れてきた。それはあの「ぞんざいな店員」だった・・・。

女性店員はその男に「このカメラの電池は何ですか?」と訊いてくれた。男は何となく面倒臭そうにカウンターから出てくるとカメラを手に取り言った。
「リチウムパック電池ですね。」
「このカメラ、充電器は付属してます?」
「いや、このタイプのカメラだと別売りですね。」
ちょっと無愛想な感じの受け答えだったが、質問にはちゃんと答えているので問題は無い。
我輩が気にしすぎているのでそう感じるだけだな。

「バッテリーは単3電池タイプのやつですか?」
カタログには載っていたが、一応、確認のために訊いてみた。
男は無言でカウンターに戻り、別売品の充電器を取り出し、「ほらよ、見えるか」というような態度で見せた。男の顔は別のほうを向いており、まるで無駄な時間を使っているかのような態度だった。
我輩が気にしすぎているのでそう感じるだけだな。

「リチウム電池はどんなの?」
するとまた面倒臭そうにカウンターにリチウム電池を無言で置いた。顔は別のほうを向いているので、「いちいちうるせえ客だな」という態度のような気がする。
我輩が気にしすぎているのでそう感じるだけだな。

「電池の本数は?」
すると、1本入りと2本入りの二種類のリチウム電池をカウンターにドンと置き、「こっちは1本、こっちは2本」と答えた。ん?何かおかしな答えだな。
「単3の場合は4本ですか?」と訊いてみた。
「あーっ、あのカメラの電池の本数のことですかぁ。」
おいおい、今まであのカメラの話をしてなかったのか、と言いたかったが、我輩の質問の仕方が悪かったのだな。

外付けストロボの接続について、ブラケットが必要だというのは分かっていたので、そのブラケットの大きさがどれくらいかを訊いてみた。常用出来る大きさなのかが知りたい。 するとその男は、またもや無言で製品を取り出し、「いい加減決めろよ」とでも言いたそうな感じでカウンターに置いてよそを向いた。
我輩が気にしすぎているのでそう感じるだけだな。

まあ、比べてはいけないのだろうが、最初に我輩の背後で接客していた女性店員はハキハキと接客し、質問にも客がどんなことを求めているかということを酌み取った上でアドバイスをしていた。だが、この男は訊かれたこと以外は何も言葉を発することは無く、「答えたからいいだろ、もう解放してくれよ。」という態度が滲み出ている。
・・・これもまあ、我輩が気にしすぎているのでそう感じるだけだな。

だが、正直言ってこの男から買うのはイヤだと思った。いくら自分が神経質過ぎるとは言え、やはりそういう印象を抱いたのは事実である。イヤな思いをしてまで買い物をしたくないと思うのは当然のこと。 我輩がカメラのほうに戻ると、その男は別の場所に行ってしまった。恐らく、その男の勤務時間が終わったのだろう。それで接客がぞんざいだったのか。

仕方無く、我輩は帰ろうと思った。ただ、このデジタルカメラは使えそうだと判断したので、別の店で買おうと考えていた。だが、ふと見ると、別の店員が目に入った。基本的にヨドバシカメラ上野店は結構接客態度が良いと考えていたので、違う店員ならば問題無いだろうと声を掛けてみた。
すると、先ほどの男とは全く違う接客で、我輩は「ああ、これこそが接客というものだ」とあらためて感じた。
結局、そのデジタルカメラをその店員に対して購入した。


我輩も営業職となり、接客が何よりも重要であるということを思い知らされている。どんなに丁寧な言葉を使おうと、そこに気持ちが入っていなければ、言葉は相手に響かぬ。我輩が「気のせいだ」と思っていたものは、その「気持ち」の部分であった。
人はそれを、「印象」と呼ぶ。

今回、我輩はその「印象」のためにカメラをこの店で買うのを止めようとし、また同じく「印象」のためにこの店で買おうと決めた。

その店員は「雨はまだ降ってますか?じゃあ、厳重にしておきましょうね。」とビニール袋を二重に梱包してくれた。そして梱包の合間に「カメラの調子はどうですか?」と訊いてきた。最初は何のことだか分からなかったが、例のF3事件のことだと気付いた。あの時応対してくれた店員だった。
失礼ながら我輩はその店員を忘れており、そんな一人の客の半年前の出来事についてよく覚えていたと感心するばかりだ(まあ、特異な事件だったから印象に残っていたかも知れぬが)。もし我輩ならば、イヤな事件は忘れたフリをするだろう。あるいはカメラの調子を訊くにしても皮肉っぽく言うかも知れない。だが、その店員の言葉には気持ちが入っていた。多くの客をこなす店員と話しているというよりも、1対1で話しているという安心感があった。

ヨドバシカメラも、店員によってその印象を落とすこともあろう。だが、その印象を救う店員がいるのも事実である。
偉そうに採点するわけでは無いが、自分の抱く印象にウソをつくつもりは無い。ヨドバシカメラ上野店、今回は危うかったが、プラスマイナス・ゼロとしよう。
これが我輩の、今回の最終的な印象である。