2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[323] 2001年12月08日(土)
「恥知らず企業ニコン」

我輩は現在、印刷営業をやっている。
主に部品カタログなどの少部数印刷を担当し、「印刷スケジュール管理」、「原稿・校正のやり取り」、「納品」と非常に忙しい。部数が少ない代わりに種類が多く、間違いが起きないように常にチェックが欠かせない。

特に納品時は、最終段階であるために時間的余裕が無く気を遣う。
制作現場から届けられた印刷物の部数をチェックし、納品書を作って客先へ納入するのであるが、その場になって不具合に気付く時がある(滅多に無いが)。
例えば先月は、1冊だけ表紙のコーティングにキズがあった。いくら中身に問題無いとは言っても、商品であるからこのようなものを納品する訳にもいかぬ。営業判断というよりも常識的判断である。
幸い、控え分として余分に1冊あったのでそれと差替えたのだが、もし控え分が無かったら危ないところであった・・・。

仕事というのは、それぞれにプライドを持つべきだと我輩は思う。
今の時代、「プライド」などと言うと「唯我独尊」という意味に取られるらしく、以前、他の営業の人間と話した時に我輩がプライドについて触れると、ソイツは「客商売にはプライドは邪魔になる」という意味の言葉を言っていた。
ソイツの言っている「プライド」と我輩の言っている「プライド」とは明らかに意味が違うのであるが、文脈から判断しても取り違えられるほどに「プライド」という言葉は安っぽくなったのかと思った。

仕事にプライドを持つというのは、自分の仕事を自慢するというのでは無い。自分の仕事にプロ意識を持ち、こだわりを以て仕事を為すことである。
もしかしたら、顧客は「あぁ、この程度のキズなら別にいいよ」と言ってくれるかも知れない。だが、そんなことに甘えるようではプロとは言えぬ。そもそも自分が気付くべき不具合を客に指摘されることになれば恥である。
「プライドを持たぬ」というのは、即ち「恥を知らぬ」ということなのだ。


先日、我輩の主力機「Nikon F3/T」をヨドバシカメラ上野店経由で修理に出したという話をした。それが昨日、やっと修理が上がってきた。
手元には修理票があるが、今回で4枚目となった。これらは差戻し修理の結果である。

1回目は普通の修理に思えた。
F3のAEロックボタンが取れたために修理に出したのだが、修理完了したものを見ると、巻き戻し部分が落下破損していた。クランク部分はメリ込み、固い地面に叩き付けられたかのように金属部が削られていたのである。ウラブタさえ開かぬ。

2回目の修理は当然、その落下破損の差戻し修理である。その際、オーバーホールを希望したが、ニコン側はそれは必要無いと判断したようで動作確認のみでお茶を濁していた。巻き戻し部にはガラス基板の「金属薄膜抵抗体(FRE)」が入っているので、ひび割れ(クラック)などによって後々断線など起こりはしないかと不安が残った。

3回目は半年後である。
急に露出計の表示がおかしくなった。修理に出すと正常に戻った。明細書には「FRE基板を交換」との記載があった。

4回目はその翌日である。
3回目の修理で全快したと思われた露出計の表示が、再び元の不具合に戻っていた。修理に出すと「電子部品基板部交換」と記載されて戻ってきた。

ところが今回、4回目の修理を受け取りにヨドバシカメラ上野店に出向いたところ、シャッターダイヤル部分にキズが付いているのに気が付いた。シャッタースピードを刻印表示している金属板の部分である。
最初、それは汚れか何かだと思った。なぜならば金属色が見えなかったからだ。しかしよく見ると、まるで黒マジックペンで塗りつぶしたかのようにそこの黒だけ違う色になっていた。まさか、修理中にキズを付けてしまい、ごまかすために塗りつぶしたか・・・?

ヨドバシカメラ店員は、すまなさそうに我輩に謝罪した。我輩はその店員の姿勢に恐縮し、「悪いのはヨドバシカメラではなくニコンである」と言った。そして、「機能上支障が無いのであるから、もうこれは諦める」と伝えた。
金にもならぬ仕事に対してヨドバシカメラはよくやってくれている。他の店ならば「最初から付いてたキズじゃないんですか」などと言われたかも知れぬ。だから我輩はクレーマーにならぬよう気を付けたのだ。
ヨドバシカメラ店員はそれでも、「もし気になるようでしたら、修理票に一筆書いておきますので、いつでもお持ち下さい」と言ってくれた。
我輩はその言葉に感謝し、店頭を去りながらニコンに対して拳(こぶし)を握った。

もし我輩がサービスセンターに直接持ち込んで修理を依頼したならば(時間的には無理だが)、単刀直入に苦情をぶつけることも出来たろう。しかし前にも書いたように、サービスセンターでは接客は二の次である。再修理となっても、無償対応ということで許される。何度修理しようが、最終的に機能すればそれで良い。小さなキズのことを言っても、「動くじゃないですか」の一言で終わろう。「多重露出レバーが使えなくても支障無いでしょう?」などと言うくらいである。キズなどは技術的に不具合には入らない。プロカメラマン相手ならばそれで良い。

だが我輩は、一般客のチャネルを選択し、ヨドバシカメラ経由で修理を依頼した。だから、ニコンは外観にも気を遣うべきである。いくら機能が戻ろうとも、一般客向けならば外観がボロボロになって良い訳は無い。ましてや、再修理に再修理を重ねた挙げ句、客にキズを指摘されるというのは、プライド無しの恥知らずという他無い。

前回雑文で落下破損の件を書いた時、読者のひとりからニコンの修理についての別のケースについて報告頂いた(修理票の画像も添付)。それによると、やはり修理から返ってくると他の部分が不具合を起こしていたらしい。しかもその時のニコンの対応は、とても一般客相手とは思えないものであり、まさに「再修理すれば文句無かろう」と言うような、全く納得いかないという話だったという。
逆に我輩は、「まさに恥知らずの企業らしい対応だ」と納得した。

昔はよく世話になったニコンであり、心の中では見上げていたものだった。しかし、今は全く違う。足で踏みつけてもまだ足りぬ。
恥を知らぬ企業に未来は無し。

ニコンよ、恥を知れっ!


(2006.05.28追記)
先日メールにて、ガラス基板の「金属薄膜抵抗体(FRE)」というのはガラスエポキシ基板のことでガラスクロス(布)を重ねたものにエポキシ樹脂を含浸させたものであるから割れることはないという指摘を受けた。
しかしそれはFPC(フレキシブルプリント基板)のほうの話である。
FREは透明な円盤状のガラス板で、その上に銀色の細かいパターンがプリント配線されている。
F3オーナーの我輩が言うのだから、これ以上確かなことは無いというものだ。
(後日写真掲載する予定)


(2006.05.29追記)
FREはプラスチックで保護されているため、厚さ1mmとはいえどもそう簡単に割れるわけではない。