ポートレートの場合、「モデル選びで作品の半分が完成する」という話がある。
モデルを選ぶということは、シャッタースピードや絞りを選ぶということと同じく重要な選択要素であるということだ。
もちろん、モデルを選ばず撮影者のテクニックだけで勝負するという思想もあろうかと思うが、被写体を吟味するということは、即ち作品全体の味を決める重要なるプロセスである。腕の良い料理人は、調理の技量だけではなく素材選びにも気を遣うものだ。
女性の写真だけではなく、自分のイメージに合った被写体に出会うということは、どの撮影分野に於いても重要である。そのために、風景写真家は野山を歩き回り、鉄道写真家は時刻表にチェックを入れ、スポーツ写真家は試合中のドラマを読む。
我輩の場合、スケールモデルを好み、今までにいくつかのオモチャを購入してきた。その中でも「ロータス・エスプリ」については雑文
「オモチャ」と
「オモチャ2」で取り上げた。今回は「BMW X5 3.0d」と「デロリアン」を手に入れ、それを被写体として撮影を行った。
これら2点は、前回のもの以上に手の込んだ仕上がりで、ドアーやボンネット等が全て開閉することはもちろん、ステアリング操作で前輪が左右に動く。またインテリアでも、カーペットに相当する部分には植毛仕上げが施されている。
通常、模型を撮影する場合は、手を抜いて作られた部分が写真に写り込まぬよう、上手く隠すように注意をはらう。
しかしこのモデルの場合、どこも隠す必要は無く、好きなアングルでの撮影を可能としている。撮影テクニックでのフォロー以前に、モデル選定に於いて成功している。
良いモノを見つけるということは、ブツ撮りにとっても重要。モデルの選定により、作品の半分が完成する。
写真撮影とは、写真以外の興味と研究を必要とする。だから、写真ほど良い趣味は他に無い。