2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[805] 2013年12月16日(月)
「レイヤーの活用」


先日テレビを観ていると、ある植物園の新しい試みについて紹介していた。
その植物園では入場者数の減少に悩み、思い切った策に出た。それがレイヤーへの開放だという。

"レイヤー"というのはコスプレイヤーのことで、平たく言えば仮装者である。映画やアニメなどのキャラクターに扮し、その世界観に浸ることを楽しむものだ。我輩はコスプレはしないが、その気持ちは分かる。例えば映画「ダイハード」を観てモデルガンのベレッタM92Fを手に入れたことはあるのだが、それを手にすることによって映画の世界に入り込んだような気分になれるのはコスプレと共通した感覚と言える。

20年近く前、女友達に誘われてコミックマーケットに行ったことがあった。
巨大会場で各自ブースを設けて自作のマンガなどを売る、ある意味バザーとも言うべき場所で、所々にレイヤー達がおり、互いに撮影をしていた。そこでの撮影はあくまでもイベントに参加した記念撮影でオマケ的行為であった。

ところが最近では、イベント参加ではなく撮影のためにコスプレをするレイヤーも多いらしい。
そういう撮影ではシチュエーションが重要となるのは言うまでもない。せっかく西洋剣士に扮したところで畳の間で写せば雰囲気は台無し。イベント会場ならば「イベントに参加しましたよ」というメッセージが写真に込められるので、シチュエーションは気にしないでも済むが、写真撮影が主体となればそうはいかなくなる。

インターネットで検索してみると、コスプレ撮影に適したスタジオも増えてきたようだが、やはり屋外の気軽さやオープンスペースの解放感が好まれることも多い。我輩自宅近所の自然公園では、時々レイヤーたちが100人くらい訪れ、それぞれに分かれて撮影をしているのを見掛ける。特定の日に集まるようなので、公園側でレイヤー向けの案内をしているのかも知れない。

そんな時に、植物園のレイヤー開放の話題を知った。
テレビによれば、コスプレする際に必要な着替え室を提供したり、植物園内撮影おすすめポイントの案内などほか、ボイラー室などのシチュエーションでの撮影も可能という。
植物園職員もコスプレ的なアクセサリを装着するなど、レイヤーとの温度差を感じさせない工夫を凝らしているのが面白いし気が利いている。

最近はデジタル一眼レフカメラも廉価・軽量となり、写真撮影の裾野も大きく広がっているように見受けられる。
デジタルカメラの低ランニングコストと手間の少なさは撮影の機会を増やすこととなり、コスプレ撮影もより一般的になったのではないだろうか。

「コスプレしたから撮影もしたい」という動機に加え、「写真に撮りたいからコスプレしたい」という動機もあろう。いずれにせよ、コスプレ撮影したいというレイヤーは多いと思われる。
だが、景色が良いからと言って所構わずコスプレ撮影するわけにもいかない。場所を占有しなければならない問題のほか、コスプレそのものの理解も得られないことも多いだろう。
そういった撮影に受け皿を用意した植物園の対応は、共存共栄を狙ったものとして面白い試みと言える。

デジタルカメラの普及により写真撮影の敷居が下がり、これまで思ってみなかったような分野での撮影が広がる可能性はあろうかと想像する。そもそも写真撮影は、写真だけを唯一の趣味とすることは出来ない。撮影対象となる別の趣味を持っているからこそ、撮影という行為が成立するのだ(参考:雑文129)。
しかし「カメラはあるが撮影するのに色々と解決が必要」というケースも多かろう。コスプレ撮影の場所の問題もその一つだった。

以前、カメラメーカーに対して「写真文化を育てることを考えろ」と言ったが(参考:雑文517)、写真以外の斜陽産業が積極的に写真文化に関わることで相乗効果を生み、新たな写真文化を発展させる可能性もある。それが、今回のレイヤー活用で感じたことだった。

我輩も、いつかそのような異なる文化同士の橋渡しに関れるようになってみたいものだ。