2000/04/05
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表紙

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2.用語集
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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[752] 2012年03月28日(水)
「ガイド本」


豚児が小学校の宿題で「自由学習」なるものをやっていることがある。
これは、自分で学習のテーマを決め、例えば日記や漢字の練習、あるいは掛け算・割り算などをノートに埋めていくものである。

ところが、本人に気付かれぬよう自由学習ノートを開いてみると、不自然なまでに文字を大きく書いたり、無意味な空白スペースを入れていたりしている。
どうも手抜きで嵩(かさ)上げをしているらしい。まあ、我輩も小学生の頃は同じようなことをしたことはあるのだが、豚児ほどにあからさまにやったことは無い。

我輩はこのような手抜きが我慢ならず、豚児をとっちめてやったのだが、本人に懲りた様子は見られない。いずれまた他の方法を考案し手を抜くことだろう。

それにしても、このような手抜き嵩上げが許せぬということには理由がある。
それは、最近のカメラガイド本の内容があまりにも手抜き嵩上げになっていると感ずるからだ。まさか豚児も同じことをやるとは。悪い大人の真似をしてはいかん。

これまで我輩は、カメラを導入するたびにその機種のガイド本を買っていた。それはほとんど習慣と言うか、自動行動であった。

<我輩所有のガイド本> ※ただしNikon Fは貰い物
我輩所有のガイド本

そして最近になって、何かおかしいと気付くようになってきた。
読後に何も残らないのである。
「使う時に参考になった」とか、「困った時にはここを読み返そう」とか、「読んで愛着が湧いた」とか、そういうことが全く無い。

最初は、インターネットで得た事前情報が多いためガイド本を読んでも既知のものが多いからではないかと思った。しかし、インターネットからダウンロードした情報(外観写真・作例画像・評価記事・取説PDF・カタログPDF等)を集めて整理したものは、いつ見ても参考になるし面白い。その情報そのものが飽きているわけではないように思う。
ところが最近のガイド本は、買った最初こそ見たりするものの、その後は全く活用する機会が無い。

そこで、昔のガイド本とどこが違うのかを比べてみた。
すると具体的には、「作例写真」、「カメラ内画像処理機能(エフェクト)紹介」、「カスタムメニュー解説」、「マウントアダプタによる他社レンズ活用」、「アイテム紹介」、「RAW現像とレタッチ処理解説」などが昔と比べて誌面の多くを占めていることが分かった。
以下、それらの掲載項目について見ていきたい。

●作例写真
作例写真は重要である。
重要ではあるが、無意味にダラダラと掲載するものでも無い。
最近のガイド本は作例写真に25ページくらいも費やしているものもあり、写真家も5〜6人登場するのもザラ。
もちろん作例写真が多いほど喜ぶアート志向の読者もいるだろうし、手っ取り早く誌面が埋まるので嵩上げには最適なのだろうが、誌面のバランスを考えれば一部分に特化した構成は良くない傾向だと言わざるを得ない。
どうせ作例写真を載せるのであれば、自我の強い写真家の登場は避け、純粋に撮影分野別に分けてそれぞれに基礎をきっちり押さえた解説を載せるべきであろう。もちろん、撮影には対象カメラとその周辺機材を使う。

●カメラ内画像処理機能(エフェクト)紹介
最近は「カスタムイメージ」や「アートエフェクト」などと呼ばれるカメラ内画像処理機能が好評で、それに応えるようにメーカー側もエフェクトの種類を増やしている。
自分の好むエフェクトを数多くの中から選ぶには、ガイド本に掲載された一覧を見るのは効率が良い。しかしエフェクトの数が今後も増え続けることを考えると、これらを1つ1つを網羅しようとするならば紙面の大部分を乗っ取られてしまうことになろう。

こういうエフェクトは、確かにデジタルカメラの機能の"ウリ"の1つではあるはずだが、決してこれが最大でもなく唯一でもない。
しかし紙面を大幅に割くことになれば、結果として比重が変わってしまいバランスが悪くなるだろう。最悪の場合、エフェクトガイド本になりかねない。

それに、こういうカメラ内処理エフェクトを一切使わぬ者(我輩を含む)にとってはそのページ全てが不要となり、ガイド本の実質的なボリュームが一気に少なくなってしまう。
そもそも、数多いエフェクトの中でも使う種類は限られてくるであろうし、常時使うものではないから、やはり誌面に占める割合はバランスを考えてもらわねば困る。

●カスタムメニュー解説
かつて、カメラの制御(主に露出制御)がコンデンサーに蓄えた電気量を測るアナログ処理からICを使ったデジタルに変わったのは、まさにマイコンブームの頃だったと思う。それでも使用者の要求に応じてカスタム設定が出来るようになったのはかなり遅く、AFカメラが出現してからであった。
その後デジタルカメラが登場してからは、カメラのあらゆる動作や機能でカスタム出来るようになり、設定項目もかなり増えてきた。それゆえガイド本でも、カスタムメニューの解説ページが昔に比べて大きな割合を占めているのだ。

これらのカスタム項目は、数が多くて確かに把握しづらい。カメラの取扱説明書でも説明されているのだが、少々取っつきにくいところもある。だから、ガイド本で解説されていれば解り易いとは思う。しかしだからと言ってメニュー画面付きで全てを解説するのはあまりに無駄。本によってはオールカラーで14ページも費やしているものすらあった。これが最大であると信じたい。

誌面での掲載については、設定画面1つ1つを事細かに載せるという安易な方法ではなく、カスタム項目の体系を示しながら簡便にしかも確実に説明する方法もあるのではないかと思う。そうでもしなければ、紙面に占める割合を減らすことは出来ない。
特にカスタム機能は、いったん設定してしまえばほとんど変更しないような項目も多く(もし毎度設定が必要なものばかりならば操作が大変)、カスタムメニューに紙面を多く割いたとしても役に立つのは最初だけとなろう。
やはり、重要度とページ割り当て量のバランスが悪い。

●マウントアダプタによる他社レンズ活用
マウントアダプタを介して他社製レンズやクラシックレンズを装着し楽しむという文化があることは確かである。もちろんそのことを否定する気持ちも無い。
しかし該当レンズの数が多過ぎるので、やろうと思えばいくらでも誌面が埋まってしまう。まさに際限が無い。

代表的なレンズは紹介しても良いとは思うが、ここでも作例を載せたり、写真家による意味も無いフォトエッセイを載せたりして、目的を履き違えているとしか思えない。そもそも、クラシックレンズを使おうと思う者はその描写など最初から知っていると思うのだが。

ここではマウントアダプタを全種類キッチリと載せ、造りや表面仕上げ、そして操作の具合(レンズロックボタンの操作感は各社大きく異なる)などを客観的に記述すれば済むのではないか。それだけでもかなり誌面は埋まるはず。
ただし、マウントアダプタを利用しない者にとっては全く不要のページとなるため、やはりここだけページを多く割くのは不公平。

●アイテム紹介
ここで言うアイテムとは、メーカーが用意するアクセサリのことではなく、そのカメラに似合う市販のカメラケースやストラップ、その他グッズ系の紹介のことを指す。
これらも真面目に紹介するとなれば柄違いなど際限が無い。例えば色違いの革貼り紹介に5ページも費やしているものもある。少々間延びしたレイアウトのため、少し詰めれば3ページくらいにはなろう。それをしないのは、やはり紙面を稼ぐためか。

●RAW現像とレタッチ処理解説
RAW現像やレタッチ処理などは、紙面に限りがあるためどんなに頑張っても専門のガイド本には遠く及ばない。しかしながら、ユーザーを導く役目として誌面を割くことの一定の価値はある。その際、あくまでもカメラガイドであることを忘れずその領分をわきまえていれば、何をどの程度解説すべきかは自ずと分かるはず。
現時点では特別目立つようなことは無いが、ページを嵩上げしようと思えばいくらでもやれる部分だけに、読者としてここは警戒すべきであろう。


さて今度は逆に、最近少なくなってしまった項目について書いてみたい。

●メカニズム・技術情報
全般的に、技術的な内容が少なくなった。機能の説明はあるものの、個々のデバイスについての情報は、イメージセンサー以外にはほとんど無い。
デジタル物は執筆者側も理解するのが難しいという事情もある。しかし過去のガイド本を見ると、メーカー側からの資料そのままの内容も多い。ということは、単純にメーカーから支給される資料に技術的な内容が無くなってきたということかも知れぬ。
デジタル機器について、ハードウェアに愛着を持たぬ者が増えているせいかも知れないが、出し渋るメーカーをつついて設計図の1つでも載せてみて欲しい。

●開発者インタビュー
開発の苦労話やエピソードなど、開発者インタビューでは興味深い内容は多い。しかし最近のガイド本ではあまり見掛けなくなってしまった。
ウェブ上ではよく見掛けるので、ネタとして無いわけではない。しかしガイド本としては採用されないようだ。
また、組立現場や修理工場での取材などは中古カメラブームのムック本ではよく見たものだが、これもなかなか面白いが最近見掛けない。

●歴代カメラ紹介
歴代のカメラを時系列で紹介したページは以前は当たり前のようにあったが、最近はめったに見られない。デジタルカメラの範囲ではまだ歴史が浅いせいかと思われる。
とは言っても、デジタルカメラは世代交代のサイクルが早いので、それなりに歴代カメラを並べられるくらいはあろう。
我輩は日本カメラ博物館刊「デジタルカメラヒストリー」を持っているが、デジタルカメラの黎明期からの代表的なカメラが並べられていてなかなか面白い。ガイド本ならば単一メーカーの範囲なので、もっと深く掘り下げて掲載出来るはず。ぜひやって欲しい。


以上色々と書いたが、全体を通して言えるのは、現状は掲載内容の比重についてバランスが悪過ぎるということ。
この原因として考えられることは、新型カメラの発売から1ヶ月以内でガイド本を出さねばならぬという掟があるらしく、「内容は二の次で締め切り厳守」ということになるようだ。
そのせいで、時間がかかるような企画はまず採用されない。誌面割りも「埋める」という意識ばかり働き、ネタが少ない部分は巧みなレイアウト処理で嵩上げが行われるのである。
そういうわけで、「LUMIX DMC-GF3」を買った時はガイド本は買わなかった。ここまで内容が無いと、買うのはバカらしい。

来る3月31日、OLYMPUSから新型マイクロフォーサーズカメラ「OM-D E-M5」が発売となる。そのガイド本もきっと1ヶ月以内には刊行されるだろう。
我輩はこのカメラを予約購入し発売日を待っているのだが(参考雑文745)、ガイド本にはほとんど期待していない。内容は大体想像がつく。
我輩の予想としては次のようなところ。

●口絵作例(作家別)(20ページ)
●OM-D E-M5のメカニズム・図解(4ページ)
●OM-D E-M5の使い方(10ページ)
●OM-D E-M5のメニュー解説(20ページ)
●ライバル機対決(6ページ)
●アートフィルターと作例(25ページ)
●RAW現像とレタッチ・印刷(5ページ)
●マウントアダプタで蘇る名玉(20ページ)
●おすすめのアイテム(10ページ)
計120ページ

我輩の希望としては、もっと多くの掲載項目と内容をギッチリ詰め込んで欲しい。多少レイアウトが野暮ったくとも構わぬ。
項目によっては全く興味無い者もいるだろうが、項目数が多く、ページ数も分散され特定の項目に偏っていなければ、もし不要な項目があったとしても無駄は最小限で済むはず。
以下は、我輩の望む内容の一例である。

●口絵作例(分野別)(10ページ)
●OM-D E-M5のメカニズム・図解(4ページ)
●OM-D E-M5の使い方(10ページ)
●フォーサーズ/マイクロフォーサーズの歴史(2ページ)
●フォーサーズ/マイクロフォーサーズの規格(2ページ)
●一眼レフとミラーレス一眼の構造対比(1ページ)
●マイクロフォーサーズ用レンズ紹介(10ページ)
●レンズの収差の種類(2ページ)
●分野別撮影ガイド
・ポートレート(4ページ)
・風景・山岳撮影(4ページ)
・スポーツ撮影(4ページ)
・静物撮影(4ページ)
・マクロ撮影(顕微鏡撮影)(4ページ)
・ストロボ撮影(4ページ)
・超望遠撮影(野鳥デジスコ)(4ページ)
・超広角撮影(魚眼含む)(4ページ)
・天体撮影(4ページ)
・水中撮影(ハウジング)(2ページ)
・動画撮影(編集の簡単なワークフロー含む)(4ページ)
●アートフィルター(6ページ)
●RAW現像とレタッチ・印刷(5ページ)
●OM-D E-M5アクセサリー紹介とその使い方(6ページ)
●開発者インタビュー(6ページ)
●OLYMPUSカメラ歴代一覧(4ページ)
●OM-D E-M5のメニュー解説(巻末モノクロ)(10ページ)
計120ページ

むしろ、我輩にこのカメラのガイド本を作らせてくれ。