2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[703] 2010年10月06日(水)
「2010年夏 九州帰省日記(3日目)」−8月8日(日)


「自然を大切に」
例えばこのような言葉を聞いた時、真っ先に思い浮かぶのが"緑"である。つまり、樹木のような植生を中心とした生態系のことである。
だが、自然というのは多様な形態があることを忘れてはならぬ。

雨が1滴も降らぬ砂漠にも、地下数百メートルもの岩盤の中にも、数百気圧もの深海底にも、それぞれに立派な生態系が形成されている。
(※特に地下岩盤中の生命圏は、過去の隕石衝突によって地上が高温の岩石蒸気で包まれた時にも、命の糸を現代まで繋ぐ重要な役割を果たした。)

もちろん、自然というものは生物の営みだけの話ではない。
無生物の世界でも、その営みはとても興味深い。見えない風を風紋を通して見るかの如く、見えない自然法則をそこに見ることは重要となる。

我輩は、豚児には自然について深く考えるための素材に多く触れさせたいと思っている。
山(里山)・川・海に近い環境で育った我輩とは違い、豚児は都会暮らしである。「自然とはこういうものだ」と一方的に話しても、それを実感し納得すること出来まい。まずは、自然の様々な形態(パターン)を多く見せることで、自然について考えるための素材を持たせておくのだ。

自然地形を見せることは同時に、自然のスケール(縮尺率)を補正するための材料にもなる。
テレビや本、そしてインターネットなどのメディアからの知識は、それぞれのメディアの表現サイズに収まるようデフォルメされる。
例えば、広角レンズで広い場所を1枚の写真に収めることは、ともすればスケール感を失わせ箱庭のように見せてしまう。テレビ番組にしても、限られた放映時間の中でテンポ良く見せる編集によって気軽に秘境へ行けそうな気分にさせる。
実際にその場に行って見たり触れたりすることは、そういうデフォルメをデフォルメとして認識し、補正するための定規を作ることに役立つのだ。

今回我輩は、自然の1つの形態として石灰岩台地「平尾台」を選び、豚児を連れて行くことにした。
ここは、去年行きそびれた地でもある。

<位置関係>

平尾台は、祖母の住む京都郡(みやこぐん)の実家に近い。
だから、京都郡の実家を拠点にして平尾台へ行けば一番良いのだろうが、この日は「わっしょい百万夏祭り」の2日目があるため、小倉に戻る必要がある。
だが、小倉の1DKの狭いマンションで3連泊するのも大変だと思ったので、祭の花火を観た後は、少々遅くなるものの京都郡の実家に行って泊まる予定。

それにしても、快晴続きで暑さが心配になる。前回も暑さで断念した平尾台行きだっただけに、あまり無理な行程は避けねばならぬ。

この日は、9時過ぎにヘナチョコ妻と豚児と我輩の3人で出発。
小倉から南下し、九十九折りの山道を登り、1時間弱で吹上峠駐車場に到着。

いつもならば道向かいにある「大平山(おおへらやま)」まで登って平尾台全体を見渡すのだが、子供連れでは大変であろうと考え、駐車場脇にある低い「馬ノ背台」のほうに登ることにした。この山の向こうには石灰石を採掘する鉱山があり、山を登る途中で立入り禁止のフェンスに行き当たるのだが、そこからでも大平山の眺めだけでなく麓の町が見下ろせるので景色は悪くない。

<麓の町を見下ろす>
麓の町を見下ろす
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:01

一般観光客は来ないような場所だが、ノンビリと草や虫を観察するための手始めとしてはちょうど良い。
我輩は豚児に、植物の葉の裏に何かの虫の卵が無数に産み付けられているのを示し、「注意深く見ることで、同じ景色でも世界が変わる」ということを体験させてみた。

<馬ノ背台への道>
馬ノ背台への道
[New MAMIYA-6/50mm/Kodak E100G] 2010/08/08 09:58

立入り禁止フェンスまで到達し一息ついたところで、今度は地面の話をしよう。
赤土の間から顔を覗かせている白い岩石を指差し、ここら一帯がこのような白い石で形成されていることを豚児に説明した。周囲の赤土は、白い石が溶けたり崩れたりして作られたということも。
豚児は「ふーん」という感じで明らかに興味が無さそうだったが、それはそれで良い。

<馬ノ背台>
馬ノ背台
[New MAMIYA-6/50mm/Kodak E100G] 2010/08/08 10:09

豚児に、「洞窟に行ってみるか?」と訊いてみたところ、「行きたい!」と言ったので、鍾乳洞に連れて行くことにした。
だが、どこに連れて行こう?

「千仏鍾乳洞(せんぶつしょうにゅうどう)」は、我輩だけでも大変だったことを思うと、とても今回連れて行く気にはなれない(参考:雑文294)。
あそこは距離が長いだけでなく、入場者が多いせいで気が休まらない。後ろからはせっつかれるし、狭い場所ではスレ違いもつらい。場合によっては対向の相手を待たせて歩くこともあり、とても自分のペースで歩くのは不可能(たまたまその時その時間そうだっただけという可能性もあるが)。
そもそも、夏休みはクルマの列が出来ているほどであるから、鍾乳洞に入る前から気が滅入るだろう。

「目白洞」というのもあったが、入り口脇に展示してある鉱山ダンプカーのタイヤが物々しく、千仏鍾乳洞ほどではないにせよ、何か大変そうな印象を受ける。
しかしこれはあくまでも印象の問題であるから、思い切って行ってみるか。

クルマに乗って目白洞を目指すが、ちょっと行くと「牡鹿洞(おじかどう)」の看板が見えた。
「そういえばそういう洞窟もあったな、少々マイナーな存在だと思ったが・・・。」
クルマの速度を少し落としてちょっと考えたが、方向を変えて牡鹿洞のほうに行くことに決めた。マイナーな洞窟のほうが、狭い空間で他者に惑わされることなくマイペースに満喫出来よう。

駐車場と思われる原っぱには、何台かクルマが停まっている。それなりに入洞者が来ているものと思った。
しかしどうも変だ。クルマを停めてよく見ると、いわゆるノスタルジックカー(レトロカーとまでは言えない微妙な年代のクルマ)に分類されるものばかり。入洞者のクルマではないのだろうか。

クルマを降りて、入り口と思われる建物のほうへ向かう。
洞窟の中はストロボ無しでは撮影不可能であるし、ストロボを使ったとしてもフィルム撮影は露出設定が面倒。ここはフィルム撮影はスッパリと諦め、フルオートで撮れるデジタル撮影1本で臨むことにした。光の届かぬ奥のほうでも、パソコンレタッチでどうにでもなろう。

歩いて行くと建物の端のほうに入洞券売り場があり、そこで券を買って下り階段を降りて行く。
最初は分らなかったが、周囲の景色を見ているとどうやら大きなドリーネの中に入って行くらしい。

<牡鹿洞入口>
牡鹿洞入口
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:32

しばらく下ると、ドリーネの底と思われる場所に行き着いた。
そこから上を見上げると、まさにスリ鉢状になっているのが分った。
近くに、ポッカリと口を開けた洞窟入り口が見えている。覗き込むと、穴は垂直に開いており、底のほうまでビルの非常階段のような簡易な鉄階段が伸びていた。
高さで少々身がすくむが、階段の手摺りが高いので、どう間違っても転落することはあるまい。

階段を降り始めるとすぐに肌寒くなり、豚児とヘナチョコ妻は急いで上着を着た。まだ陽の差す場所なのにこの冷たい空気には驚いた。縦穴洞窟の特徴なのだろうか。

<この時点でもう空気が冷たい>
この時点でもう空気が冷たい
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:38

下に降りる途中で1組の入洞者と擦れ違ったが、穴の底には誰もいなかった。
底から見上げると、見事な縦穴であることが分る。

<底から見上げる>
底から見上げる
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:41

見回すと、そこから小さな洞窟が斜め下に続いている。足元は階段が作られており上り下りし易くなっていた。

しばらく階段を下りていったが、あまり変化が無い。水流でもあれば面白いのだが、まあ、途中で引き返すか。
しかしなかなか引き返そうと思うきっかけが掴めず、「あと少し、もうちょっと先」と進んで行くうちに、水の流れる音が聞こえてきたので、さらに降りていくと、ついに水流に行き当たった。
ただし水流とは言っても、千仏鍾乳洞のように通路全体が水に浸っているのではなく、道の脇に用水路が通っているかのようになっていた。
豚児には、「このような水流が洞窟を作ったんだ」というもっともらしい説明をしておいた。
それにしても、誰も人がいないな・・・。

<水流が脇を流れる>
水流が脇を流れる
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:53

さて、水流に行き当たったことにより、これまでの単調さに変化が加わり、もう少し先へ行ってみる気になった。
しばらく行くと、急な下り階段に行き当たった。どこまで下るのか分らないので、もうここら辺で引き返そうかと思っていると、1組の中年夫婦らしき入洞者が上がってきた。どうやら何かを見てきたようだったので、我々も降りてみることにした。

<急な下り階段>
急な下り階段
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:54

降りていくと、間もなく別の比較的大きな水流に行き当たった。
その様子は、ちょっとした探検隊気分が味わえる雰囲気。その先はまだ続いているように見えるが、もはや人間が入れる坑ではない。

<ここで行き止まり>
ここで行き止まり
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:57

その後は来た道を引き返し、途中にあった分岐点を行ってみたり、動物の骨が見付かったと言われる窪みにも行ったりして、最初に降りた縦穴の鉄階段を上った。

階段を上がって行くと、ムッとした蒸し暑い重い空気に触れた。見ると、カメラのレンズが思いきり曇っていた。これでは撮影出来ないので、ティッシュペーパーで拭いてみたが、すぐまた曇る。レンズの温度が低いから、湿った空気が触れると結露するのだ。
ならば、レンズの温度を上げるしかない。
我輩はティッシュペーパーをレンズに当てたまま、手の温度をレンズに伝えてみた。確かに、レンズがヒンヤリ冷たい。しばらく暖めてみたが、撮影に支障無いくらいになるまでにはしばらくかかった。

駐車場に戻ったのは11時半頃。
そろそろ食事するところを探そうと思い、クルマに乗ってカーナビゲーションシステムの検索機能から付近のレストランを探してみた。すると意外にもすぐ近くにあるようだったが、そこまでクルマを出してみると、普通の住居のような、しかしメニューの看板は出ているし、どうしたものかと判断を迷い、結局は通り過ぎてしまった。

まあ、食事するところがどこにも無ければ、最近出来た「平尾台自然の郷」という観光施設のレストランへ行けば良かろう。ただ、この施設はイナカにあるくせに駐車場が有料なのが唯一の難点・・・。

我輩の頼りない記憶では、確か、「平尾台自然観察センター」のそばに大衆食堂があったように思う。その店のチェックを兼ねて、センターのほうへ行ってみることにした。
駐車場はクルマで満杯状態だったが、1台分の空きを見付けて素早く停めた。クルマを降りてみると、奥のほうにも広い駐車場があったのが見えた。そう言えば、以前1人で来た時はそっちのほうにクルマを停めたことを思い出した。

<平尾台自然観察センター> (※出てきた時に撮影)
平尾台自然観察センター
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 12:53

さて、センター近くの店だが、見ると食堂ではなくただの商店だった。我輩の記憶違いのようだ。
仕方無いので、センターへ入ってトイレ休憩。ここは小ぢんまりとした中庭があって面白い。

トイレに行った後、平尾台に関する展示ルームへ行った。ここは観覧無料なので気楽に入れる。もっとも、展示物は小規模ではある。
ちなみに、入り口近くにはキノコに関する写真がたくさん展示されていた。以前来た時は昆虫の写真だったような気がする。これは企画展示のようなものか。
その後、中庭の見えるところに戻り、自然に関する図書コーナーで本を読んでしばらく過ごした。

<自然に関する図書コーナー> (※トリミング)
自然に関する図書コーナー
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 12:47

そろそろ腹も減ったので、「平尾台自然の郷」へ行こうということになった。
そこはクルマで5分程度の場所。最初に訪れた「馬ノ背台」の方向で、近くには石灰石の鉱山がある。少々坂を登ったところにあり、平尾台一帯が見渡せる眺めの良い立地である。駐車場代は1回300円のようだ。

この施設内へ入る際には回転式ゲートがあり、脇にはチケット販売所のようなところも見えたが、入場無料という貼り紙があった。もしかしたら、開設当初は有料だったのかも知れない。
見取り図からレストランの位置を確認。こういう観光地的な施設のレストランは、恐らく値段ばかり高くて美味くないはず。やはり先ほどの普通の住居のレストランにすれば良かったかと少し思った。

<平尾台自然の郷>
平尾台自然の郷
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 13:08

レストランは、好きなものを取って盛るという、いわゆるバイキング形式となっていた。1グラム1.5円の量り売りなっているのが面白い。
問題は料理の内容だが、これがまた、素朴で堅実な料理が多く、見るからに美味そう。この文章を書いている今でも、思い出すだけで唾液が出てくるほど。あれもこれも食べたい。しかし一度に喰える量は限られているので、なるべく少量多品種になるよう盛りつけた。

そして、レジで電子計量器に載せて重さを量ってもらい、重さが金額に変換される。当然ではあるが、トレーの重さは除外されるようになっているとのこと。

<派手なメニューは無いが味は格別>
派手なメニューは無いが味は格別
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 13:13
派手なメニューは無いが味は格別
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 13:23

食後、満腹にはなったが、それでもまだまだ食べたい気持ちが治まらない。派手なメニューが無いのにこれほどまで美味いバイキングも初めて。好みの問題もあろうが、我輩はこの料理のためだけに次の帰省時にもまた平尾台へ来ても良いと思った。
次に来る時、今回と同じレベルの料理が出ることを願うばかり。

14時前、レストランを出て辺りを見渡すと、「キタポッポ」という汽車に似せた連結車両がやってきた。
歩く速度と大差無いので、別に乗る必要など無いと思ったのだが、豚児が妙に乗りたがったので、仕方無く乗ることにした。運賃は1人100円。まあ、それくらいの値段なら、一回りして戻って来るには良いか。

<キタポッポ> (※帰り際に撮影)
キタポッポ
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 15:02

直射日光が暑いので、そういう意味では日よけ代わりにこの乗り物は良い。
しばらく乗って折り返し地点に到着した時、豚児が「ここで降りたい」と言い出した。見ると、先のほうにアスレチック的な遊び場が見えた。そこに行きたいとのこと。
ここで降りてしまうと、帰りに「キタポッポ」に乗る時にまた1人100円かかってしまう。それだけあればソフトクリームが買えてしまう。
どうせヘナチョコだからアスレチック的な遊び場など無理だろうと思ったのだが、豚児はどうしてもアスレチックに行きたいようで、結局そこで途中下車することになった。

この暑い中、豚児は走って遊び場へ行く。
子供が元気なのはあるべき姿だとは思うが、やはり夏の暑さは殺人的で少々心配になる。
ちなみに、今年の夏は例年を越える異常な暑さだというが、我輩の感覚では例年の夏でも暑さの限界を越えているため、その違いを認識出来ない。

アスレチックの近くには、平尾台を一望出来る展望所があったので、我輩はそこからパノラマ的にデジタル写真を撮ってみた。大平山も良く見える。麓から見るとすぐに登れそうな山だが、横から見るとピークまでの距離が意外に長く感ずる。
(下に掲載した写真では、左側が吹上峠駐車場の方角となる。吹上峠から見ると手前側のふくらみしか見えない。)

<展望所から望む大平山(おおへらやま)>
展望所から望む大平山(おおへらやま)
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 14:22

見ると、千仏鍾乳洞へ続く道にクルマが列をなしているのが見えた。2001年に千仏鍾乳洞に行った時にもあのような状態だったが、いまだにその人気は衰えていないようだ。
しかしこんな田舎でこれほど渋滞となるのは信じられん。
何にせよ、千仏鍾乳洞ではなく牡鹿洞のほうにしておいて良かった。

<千仏鍾乳洞へ続く道>
千仏鍾乳洞へ続く道
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 14:23

また東側に目を移すと、山の間に市街地が見えたので、120mm側目一杯に拡大して撮影した。
景観案内掲示によれば、そこは行橋市街らしい。思ったよりも間近に見えるのが驚く。


<行橋市街が見えた> (※トリミング)
行橋市街が見えた
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 14:23

後日、写真を拡大して見ていったところ、3年前に祖父が入院していた病院(参考:雑文608)や、航空自衛隊築城基地の滑走路や格納庫なども確認出来た。ちなみに、ここからは見えないが基地滑走路の延長線上には実家があるはず。そして海の向こうに見えるのは、大分県の国東半島の根本部分だと判った。
全てが近くに見えることに、あらためて驚かされた。

これは、遠景ほど圧縮して見える、いわゆる"圧縮効果"と呼ばれる遠近感の成せる業。
遠近感というものは、相対的な距離の関係で表現されるものであるから、レンズの焦点距離で変わることは無い(参考:雑文267「年の差」)。その証拠に、トリミングをすれば、120mmで撮ったものでも上に掲載した写真のように超望遠レンズの圧縮効果が得られる。


15時半、暑さで疲れたこともあり、もうそろそろクルマに戻っても良い頃だと思った。
豚児は結構元気に遊びまわっていたが、「小倉んばあちゃんちに戻って祭と花火を見らんとな」と説得した。
「キタポッポ」はまだ来ていなかったし、金ももったいないので、歩いて戻ることにした。浮いた金でソフトクリームを食べたいということもある。ソフトクリームの一般的な相場は250円くらいか。

アスレチック近くの売店に行ってみるとソフトクリームの看板があったが、値段が300円なので諦めた。レストラン近くに戻れば、250円くらいのものがあるはず。もしそこでも同じように300円ならばジュースにしよう。
我々はテクテクと歩いて戻った。日差しが強いので、それほど距離が離れていないにも関わらず疲れた。
果たして我輩の予想通り、そこには250円のソフトクリームがあったので、さっそくそれを買って休憩所で食べた。

その後駐車場に戻り、「平尾台自然の郷」を後にした。
本来ならば、行橋方面へ出て、距離の近い祖母のいる京都郡の実家へ戻りたいところ。しかし小倉の「わっしょい百万夏祭り」は夏のイベントとしては大きなもの。豚児の夏の想い出に、「九州に来たんだぞ」という強い体験をさせる意味では極めて重要。

小倉の母親のマンション近くのコインパーキングへ到着したのは、およそ1時間後の16時半。
振り返ると、ちょうど平尾台の採石場が見えていた。左は住友セメントの採掘場、そして右は三菱マテリアル採掘場となっている(参考:雑文293)。
これも、遠景の圧縮効果が効いている。

<小倉から見る平尾台の採石場> (※トリミング)
小倉から見る平尾台の採石場
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 16:30

ちなみに、この写真の左端から撮った写真が、本雑文の1枚目に掲載した写真ということになる。
また逆に、その1枚目の写真を見れば、地平線の右端のほうに小倉市街地が写っている。

さて、まだ花火大会には間があるが、マンションに戻って食事をし、テレビを観ながら花火が打ち上がるのを待っていた。

花火の打ち上げはマンションに隣接する勝山公園で行なわれるため、この一帯は人の出入りが出来なくなる。まさに戒厳令が布(し)かれた状態になるのだ。
だから我々は、マンションのベランダから花火を眺めることとした。

20時半頃、花火の炸裂音が聞こえ始めたのでベランダに出た。
せっかくなので、花火を写真に撮っておこう。あまり花火を撮る機会も無いのでどのように撮れば良いか分からないが、普通に考えればスローシャッターというところだろう。デジタルカメラでは、画面を見ながら露出の微調整をすれば失敗せずに撮れるのが良い。
ベランダからは、花火が打ち上がる公園も見えるので、スローシャッターで撮影すると、光跡の一部始終が1フレーム中に写り込むのが面白い。


<マンションのベランダから見る花火>
マンションのベランダから見る花火
[Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/08 20:55

ただ、三脚が無いのでカメラの固定には難儀した。とは言っても、もし三脚があったとしても手スリから離れてしまうので使い所は無かったろう。手スリや天井が写り込まないようにするには、手スリの上に乗せるようにして撮らねばならない。ただ、手スリ部分はコンクリートなのでカメラにキズが付かないかが気になる。

当初は「Nikon D700」で撮影していたのだが、数枚撮っていたらバッテリーが切れてしまった。スペアバッテリーはクルマのトランクに置いてきていたのでどうにもならぬ。
急いで「Panasonic DMC-GF1」に替え、撮影を続行した。


最近の花火はコンピュータ制御で打ち上げをコントロールしていると聞くが、確かにそれくらいでなければこれほど立て続けに打ち上げも難しかろう。
確かに、ここから見ると打ち上げの現場には人影が全く確認出来ない。安全な場所に退避しているのだろうか。

花火が派手に打ち上がる時には、観客のいる方向から歓声が上がるのが聞こえる。下界からだと、ビルの合間やその上に花火が上がっているのが見えていることだろう。祭の雰囲気の中、大勢で観る花火もまた趣があろうが、ゆったりと間近で見上げる花火は、優越感があってそれはそれでまた良い。
ただしこの優越感も、今回が最後。来年にはマンションが取り壊されることが決まっている。

ふと見れば、眼下のビル屋上には、ワイシャツ姿の会社員と見られる者が数人出てきて花火を見物していた。他のマンションを見れば、それぞれにベランダから花火を観ていた。

<花火を鑑賞する近隣住民>
花火を鑑賞する近隣住民
[Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 20:33-20:38

こういう風景を写真に撮れれば面白いだろう。出来るならば見物人と花火とを同フレームで撮りたいものだが、「GF1」の広角では入りきれないので撮りようが無い。

花火は、21時頃に終了した。30分間というところ。
こうやってみると時間は短いようにも思うが、連続打ち上げや同時打ち上げの迫力で時間を忘れさせられ、体感的には1時間くらい観ていたような気持ちだった。

さて、これから京都郡の実家へ帰る予定なのだが、やはり時間も遅いし、祭が終わった後の混雑も予想されるので、ここはもう1泊、小倉に泊まることとした。
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イラスト提供:シェト・プロダクション