2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
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カメラ雑文

[610] 2007年12月14日(金)
「運動会での撮影」

中判カメラで望遠撮影をするのは大変な苦労がある。

7〜8年くらい前、我輩がBRONICA用の250mmF5.6を購入した時だが、このレンズを使って上野動物園で試し撮りをした。その結果は、一脚を使用したにも関わらず、ほとんど全てのカットに微小なブレが認められた。
せっかく購入した機材で最初からこのような結果になるとショックが大きい。

確かに、動物園内は木々が茂っているため多少暗く、F5.6の状態でもシャッタースピードが1/60〜1/125秒くらいしか使えなかった(感度100フィルムにて)。しかしそれでも、一脚を使用しながら慎重にシャッターを切ったはず。まさに予想外の結果だった。

このような結果が出てしまうと、この250mm望遠レンズというのは実用外にも思えてくる。実用するならば、よほど強固な三脚にガッチリと固定し、ミラーアップ状態でケーブルレリーズを使うしか無いのか?
そうなると、一眼レフであることのメリットが失われるばかりか、そもそも撮影対象がかなり限定されよう。使える場面が思い付かない。

元々、我輩は望遠撮影はあまり好まぬ。写真の情報量を第一目的としているため、パンフォーカス写真を常に目指しているからだ。
情報量を重視する意味で中判を選択した我輩だったが、中判では被写界深度が浅くなりがちで、より広角なレンズを求めねばならない。そういう意味では望遠レンズというのは、我輩の用途としては真逆に位置することになる。

それならば、なぜこの250mm望遠レンズを購入したのか? これは、目的無きいわゆる"衝動買い"というやつか?

いや、このレンズを手に入れようとした大きな動機が実は存在する。
それは、豚児写真である。

我輩は、豚児撮影用として66判の中判を「制式写真」と位置付けている。これより小さなフォーマットはもちろん、大きなフォーマットでも制式から外れることになる。
以前、成り行き上67判で撮影せねばならなかったことがあるが(参考:雑文503「夏の帰省日記(1)」)、この時には現像後に67サイズのポジを66サイズに断裁した。それほどのこだわりがあるからこそ、"制式"たりうる。

この位置付けは、豚児が生まれる数年前からのものであり、決して、生まれた後に気まぐれで決めたものではない。だからこそ、当時としては必要も無い中判用の望遠レンズを購入した。もしそうでなければ、望遠撮影ならば迷わず35mm判を選択したはず。

それにしても、冒頭にも書いたとおり、中判用望遠レンズ250mmの撮影結果は芳(かんば)しくなかった。そのため、「たとえ運動会のためであろうとも、我輩の技術ではこの望遠レンズを活用出来まい。」という印象を持った。広角レンズを使いフットワークで被写体に迫るほうが、失敗も少なく臨場感も出よう。

このような理由で、中判用250mm望遠レンズは完全に無駄な機材となった。ただし、手放すことは無い。機材をストックするという行為は、何割かの無駄は覚悟の上でなければならぬ。いつかふと、必要になる機材が発生した時に備えて、必要無い物まで含めて買い込むのが本当のストックなのだ。

そういうわけで、購入からずっとこのレンズを使うこと無く機材庫にしまいっぱなしにしてあった。雑文462「10年目」にも、このレンズについては「想定される用途は無いが、とりあえず所有」と記載した。

月日は過ぎ、2007年の今年。いつの間にか運動会の日が現実になってきた。
ある日、床屋で幼稚園の運動会の話になった。
「運動会、場所取りで並ぶんスか?」
このように訊かれ、我輩は一瞬絶句した。
「そ、そう言えば、そんなことをテレビや雑誌などで聞いたことがある。前日から泊り込むツワモノもいるとかいないとか・・・。」

我輩は、床屋帰りに考えながら歩いた。
かけっこなどでは、良いポジションを確保しなければ見応えのある写真はなかなか撮れまい。しかし、いくら何でも幼稚園の運動会ごときで場所取りのために並ぶのは馬鹿げている。ましてや前日から並ぶなど・・・。

我輩は、これまで漠然と「こういう撮影ではフットワークを駆使して広角スナップでいこう」と思っていたのだが、いざ現実を前にして考えるとなかなか難しい。
考えてみれば当然なのだが、運動会の案内を読むと撮影場所は制限されている。遠くから望遠で引き寄せることも必要となろう。いや、もしかしたらそれが唯一の撮影法となるかも知れぬ。

我輩としては、豚児だけでなくその友達も同じフレーム内に納めたいと思う。それが我輩の求める写真の情報量である。
よく、「写真というのは引き算だ」と言われる。これは、余計なものをフレームからどんどん外していき、必要最低限の構成物だけで写真を組み立てろという意味である。しかしこれは写真を作品として扱う場合の話であり、我輩のような用途では「写真というのは掛け算だ」と言い切る。色々と写り込んだものがそれぞれに情報を持っている。そういう写真というのは、ジックリ観れば観るほど情報が湧いてくるのだ。
(もし、写真の情報量についての重要性を実感出来ぬならば、古い写真を観てみるがいい。写真を隅々まで観ている自分に気付くだろう。)

我輩は、状況さえ許せば広角レンズでスナップを行うこととするが、距離の離れた撮影のために望遠レンズも持って行くことにした。ただ、中判用望遠レンズは我輩の中では成功例が無いため、今回の運用は賭けに近い。事前に、「どういう条件であればブレにくいか」という研究はしておくべきだったと悔やんだが、もうその時間は無かった。
全ては、当日に答えが出る。


運動会当日、朝から良い天気だった。
これならば比較的速いシャッタースピードが使えよう。しかし成功事例の無い望遠レンズについての不安は消えぬ。我輩の広角専用スキルでは、仮に最高速1/500秒でシャッターが切れる条件であろうとも、望遠撮影ではブレる危険性は高かろう。
とりあえず、ほどほどの望遠として180mm中望遠レンズも用意した。250mmレンズが手に負えないようであれば、180mmに切り替えるつもり。


朝から快晴(露出計代わりのRICOH GR-Dで撮影)

快晴となれば陰が強くなるため、ストロボでの日中シンクロは必須。これを欠くと、人物撮影では帽子を被った顔が暗くなり過ぎる。
確かに、日中シンクロを手動カメラで撮影するには調節が面倒。距離に応じたマニュアル発光量を設定する「フラッシュマチック」での撮影をせねばならぬ。動きのある被写体ではシャッターチャンスを逃すだろうが他に方法が無い。まさかレフ板を使うわけにはゆくまい。
また、幼稚園とは言っても一応は運動会での撮影あるからスポーツ写真には違いない。そのため、撮影レスポンスを向上させるためにモータードライブを装着した。作動音も大きいことから、子供の目線を引く意味でも効果があろう。

運動場を見渡すと、競技中の様子を写すには父兄席の後ろから距離を空けて撮る以外に無い。そうなるとやはり望遠レンズでの撮影が主体となろうか。試しに、250mmレンズを装着してファインダーを覗いてみたが、これでもまだ引き寄せが足りないように思った。

以前、ネットオークションで定価100万円もするブロニカの500mmレンズが出品されているのを見かけたが、最低落札価格10万円でも誰も手を出さなかった。その時はよほど我輩が落札しようかと迷っていたが、安いとは言っても我輩にとっては高かったし、250mmレンズさえ使いこなせない状態で500mmレンズなど実用に足るとは思えず断念したのである。しかし、ここまで望遠が足りない現実を前にして、やはり無理にでも500mmレンズを手に入れるべきだったかと少し後悔した。

だが、手持ちで状態で覗いた250mmのファインダー像は揺れており、これが500mmとなればその揺れもさらに大きくなろう。ここは、拡大率が足らず作画的に中途半端になろうとも、周囲の状況が写り込み情報量が増えるのだと前向きに考えることにしたい。

ただそれでも、競技中でなければ豚児に接近する機会は幾つかある。その一つが、入場門で次の出番を待っている場面である。そういう時には広角レンズで接近して撮影する。
この時、なるべく友達を一緒に写すように努めた。なぜならば、豚児だけを撮ってもそれは単なるポートレートでしかないからだ。そういう写真ならば休日にでも公園で撮れば済む話。友達と一緒に写った写真が後に大切な思い出となることは、我輩自身の経験からも明らかである。

露出はいつものようにデジタルカメラ「RICOH GR-D」で測るのだが、日差しが強いために液晶画面が見づらく露出決定に自信が持てない。広角専用カメラのため、部分を拡大して撮影することも出来ない。また、最近はピント合わせにも自信が無いために、可能な限り何枚も同じシーンでシャッターを切った。
もちろん、日中シンクロも忘れてはならない。


日中シンクロ(BRONICA 広角40mm)



半逆光で日中シンクロ(BRONICA 広角40mm)



日中シンクロ(BRONICA 広角40mm)

日中シンクロの場合、陰を明るく照らすということばかり意識し過ぎると、写真全体としての不自然さに繋がり易い。やはり、陰は陰として表現したい。

これが自動化された35mm一眼レフカメラやデジタル一眼レフカメラならば、そのような状況でも専用ストロボを組み合わせることによって最適な発光量を自動調節してくれるだろう。しかし我輩のカメラは単純機能の中判カメラである。そのような高度な自動撮影は不可能。フラッシュマチックで算出した値からマイナス補正を加えるしか方法が無い。

それにしても、フィルム撮影は現像してみるまでは結果が分からないため、撮影中は「本当にこの設定で良いのか」という不安はつきまとう。デジタルカメラで露出を確認しようにも、GR-Dは広角専用機であるから、ピンポイントで露出を確認したい箇所は小さく写るため確認困難。
結局のところ、子供相手のため撮影距離が刻々と変わることもあり、計算通りにはいかなかったカットもそれなりに多かった。

さて、競技中は望遠撮影となるわけだが、やはりこれは難しい。
現像結果から言うと、やはりブレはそれなりにあったが、ピンボケ写真も多い。かけっこのような競技ではマニュアルフォーカスでの追随が難しいのである。ブレを気にしてしっかりホールドするとピント合わせがスムーズではなくなるし、ピントに神経を集中させるとブレが出てしまう。
しかしどちらかと言えば、快晴の直射日光が最高速シャッタースピードの使用を許してくれるため、ピント合わせのほうに多くの努力を注ぎ込むほうが良いかも知れない。


半逆光で日中シンクロ(BRONICA 望遠250mm)

ところで、ふと幼稚園指定業者のカメラマンが使っているカメラが気になった。
見ると、2台体制で撮影しているようだった。遠くからでは分からないため250mm望遠レンズで覗いてみたところ、どうもNikon製カメラのように思えた。だが機種までは判らない。
「2台のカメラを使わずとも、いまどきならば高倍率ズーム1本で済むだろうに」
しかしふと、以前のイベントで業者カメラマンが「MINOLTA α-9」を使っていたのを思い出した。それは別のカメラマンだったが、同じ業者に属しているに違いない。ということは、この業者はフィルムを使って撮影しているのだろうか? だからカメラも2台必要(フィルム装填のタイムラグをカバーするため)なのだろうか?
そうやって見ると、今回のカメラマンが使っているカメラが「Nikon F6」に見えてきた。MINOLTAがカメラ撤退したためNikonに切替えたのかも知れない。

まあ、他人のカメラを気にするのはこの辺にしておく。
それにしても、モータードライブ撮影というのは忙しい。もちろん、巻き上げは自動なので楽だが、フィルム換装のほうは手動でやるしかない。12枚撮りの120フィルムではすぐにコマが尽きる。いつぞやの撮影会の時のように220フィルムを使えば24枚撮りになるだろうが、室内スタジオの撮影でさえ光がカブったことがあるから、直射日光の強い屋外で裏紙の無い220フィルムを使うのは自殺行為である。

そういうわけでモータードライブで120フィルムを使い、午前中にはフィルム7本を消費した。うまく撮れているか分からない撮影というのは、とにかくコマを消費してしまう。このままでは午後に使うフィルムが足らない。仕方無いので、いったん自宅に戻りフィルムを補充することにした。ただし、10本だけである。多めにあっても良いかと思ったが、あまりにたくさん撮っても大変であるから、上限を設ける意味で10本だけとした。

結果的にフィルムの浪費が抑えられ、フィルムが底をついたのは閉会間際であった。
今回は、午前中7本、午後10本撮影したことになる。
合計17本(204枚)撮影したうち、採用分99枚。ほぼ5割となる。ちなみに250mm望遠撮影の採用は40枚ほどであった。やはり強い光に助けられてブレ写真が少なかった。
一方、失敗の原因はピンボケと露出過不足である。プリズムファインダーは倍率が低いためピントが合っているかどうかが分かりづらい。もし倍率の高いウェストレベルファインダーを使ったならば改善されたのかも知れないが、モデル撮影と同様に子供の目線をこちらへ引くには都合が悪い。どう考えても、下を向いた人間(ウェストレベルファインダー)とこちらを向いた人間(プリズムファインダー)とではアピール度は異なる。

それにしても、豚児のリレー競争で若干後ピンだったのが悔やまれる。
ルーペで拡大して確認すると、背後の観客席にピントがバッチリ合っておりブレも全く無い。それだけに無念である。いつもならば「目のかすみか?」と思えるような微妙なピンボケですら採用しないのだが、今回は迷いに迷った。走っているカットはそれ以外に無いのだ。
「くそ、AFカメラならばこの程度でピントを外すことは無かったはず・・・。」
悔やんでもどうしようも無い、結局、我輩は信念を曲げることにした。苦渋の中での採用である。ここは、唯一の例外ということで自分を納得させるしかなかった。

このようにして今年の運動会は、成果も多く残したが、大きな後悔も残す結果となった。
来年は、何としてでもこの後悔を挽回せねば気が収まらぬ。