2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[442] 2003年09月07日(日)
「GPS」


撮影場所の分からない写真がある。

それは何気ない写真ではあるが、我輩にしか理解出来ぬ魅力がある。
(「我輩にしか理解出来ぬ」というのは、我輩個人の体験に拠る部分が強く影響しているという意味である。)

真っ直ぐな並木道、低いアパート、人通りの少ない雰囲気。
それに出会ったのは偶然であった。

今となっては場所が判らぬ故、もはや二度とそこの写真を撮ることは出来ない・・・。


以前、近くの町の養護学校で、修理した自転車を格安で販売するという催しがあった。
我輩はそれを松戸市の広報誌で知ったのだが、ちょうどその頃、自転車の購入を考えていたため、そこで安く手に入れることにした。

その町へ行くには、JR常磐線から新京成線に乗り換えねばならない。同じ市内であろうとも、乗り換えがあると小一時間は掛かる。しかも新京成線などほとんど利用する機会が無いため、その町は我輩にとって全く未知の土地であった。

その場所へ行くには広報誌に掲載された案内図を参考にした。そのため、特に迷うこと無く現地に着き、そして無事に6千円の自転車を購入した。

さて、帰りはもちろんその自転車で帰る。鉄道路線では遠いが、直線距離では4.5kmと近い。
未知の土地ではあるが、車の流れや陽の具合などの雰囲気によって、何となく家までの方向は分かる。とにかく水戸街道(6号線)にさえ行き当たれば、どうにか帰ることは出来る。

その催しでは自転車の数に限りがあるとのことで朝早くから出掛けたせいもあり、帰りはのんびりと帰ることにした。
何時間掛かろうとも、いつかは帰り着く自信があった。
そうやって何気なく通り掛かった住宅地。そこはもちろん知らぬ場所。だが、我輩の心を惹き付けるものがあった。それが冒頭の写真である。

我輩は、Nikon F3L(緑)のシャッターを切った。
冬の木立が寒々として良い。これが緑萌ゆる風景に変われば、これもまた良し。
その場所は判らぬが、自宅には1/25,000の地図があるため、帰宅後に地図上で道を辿れば場所はすぐに特定出来よう。

ところが、帰りは色々な道を無駄に回ったせいもあり、自宅で地図を眺めても経路が全く分からない。安易に考え過ぎていた。
写真を現像後、ルーペで丹念に写真を舐めてみたが、それにも手掛かりになるものは何も無かった。
写真に写っている商店の電話番号を手掛かりにしようかと思ったのだが、看板に書かれている電話番号には局番が無い。
店名をインターネット上で検索してみたが、どの店も引っかからない。

それにしても、似たような風景は他に幾つもありそうなのだが、この場所ほど我輩のツボにハマるものが無いのが残念・・・。


それから数年後、我輩はある商品を知った。
「ハンディタイプのパーソナルGPS」。
GPSとは、言うまでもなく「全地球衛星測位システム(Global Positioning System)」と呼ばれる人工衛星ナビゲーションシステムのことである。

調べてみると、それはかなり役に立つ道具であると分かってきた。あの時、これさえあったならば、場所がすぐに特定出来たに違いない。そう思うと歯痒かった。
購入の検討を始めたのは、その直後である。

まず最初に検討したパーソナルGPSは、コンパスで世界的に有名なメーカーSILVAの「GPSマルチナビゲーター(42,800円)」だった。
これは業務用と言うだけあり、GPS機能に加え、高度計、気圧計、温度計、電子コンパス、水準計、天気予測機能等が搭載されている。さらに-25℃〜70℃の動作保証があり、防水・防爆構造も頼もしい。

しかし、これは地図データが表示出来ない。液晶ディスプレイはセグメント表示方式で、デジタル数字と矢印のみでナビゲートする仕組みである。恐らく、温度変化に弱い液晶を少しでも無理をさせないために、細密なドットマトリクスよりも余裕のあるセグメントにしたのではないか。しかも業務用ならば、紙の地図と併せて使うことは大前提。機能よりも確実性と高精度を敢えて選んだと思われる。

我輩は基本的にドットマトリクス液晶よりもセグメント液晶のほうが好みであるが、やはり地図データが表示されるもののほうが素人目には解り易い。

もし、サバイバル用として購入するGPSならば、迷わずこれを選んだだろう。だが今回の用途としては手軽さが第一。

次に検討したのが、エンペックス製「ポケナビGPS65EX(32,000円)」だった。
日本全国図搭載であるのが良い。

しかし厚みがかなりあり、デザイン的にも家電のリモコンのようで、外で使うには気が引ける。大柄であろうとも、前述のSILVAのようにある程度薄ければ携帯性も良くスマートに見るのだが。

それに、地図が搭載されているとは言うものの、Web上で得られる情報の中に詳しい記述は無く、どれほどの情報量のある地図なのかが分からない。
個人運営サイトにも、この機種のレポートはあまり出てこないため、マイナーな製品なのだろうかと感じた。


さて、Web検索で一番良くヒットするパーソナルGPSは、米GARMIN(ガーミン)社のeTrexシリーズという製品である。
この製品のシリーズは、地図無しのものと地図有りのものに大別される。大まかに言うと、地図無しのものは2万円からと安価であり電池の保ちが良い。一方地図有りのものは標準で1/200,000地図がビルトインされるなど高機能であるが、それ故に5万円以上で電池の消耗が比較的早い。

デザインは全シリーズ共通で、ボディ色が違う。厚みがあるものの、パーソナルGPSとしては最もコンパクトで、"ちょっと大きめな携帯電話"という感じである。
見たところ、操作ボタンが少ないように思えるが、前面にカーソル操作のスティックがあり、ほとんどの操作をこれで行うとのこと。メニューが深いものの、機能に不足は無い。

製品は英語版と日本語版があるが、日本語版は単に言語が日本語に対応したというだけでなく、幾つかの機能が強化されている。特に、別売りの1/25,000日本詳細地図をインストール出来るのは、日本語版のハードウェアのみ。

eTrexシリーズは、とにかくユーザー発信のWeb情報が多い。これがマイナーな製品や歴史の浅い製品ならば、先日雑文に書いた「MINOLTA FLASHMETER VI」のように、ユーザー発信の情報などほとんど無いものである。
eTrexシリーズの場合、登山、フィッシング、サイクリング、その他アウトドア系の趣味を持つ者たちが実際に使った感想を自身のホームページで紹介している。我輩はそれらを食い入るように見て研究した。



数日後、我輩は「eTrex Legend 日本語版」をSPAから購入した。
元々は(株)いいよねっとが日本語化し販売するものであるが、SPAからでも、いいよねっとが日本語化したeTrex Legendを入手出来る。しかもこちらのほうがシークレット価格ということで8,000円ほど安い。さらにパソコンとの接続ケーブルも純正より5,000円ほど安いカスタムケーブルが買える。

「米GARMIN製 eTrex Legend 日本語版」。
例によって、キズが付く前に外観写真の撮影をした。画面には、前日に営業の者と待ち合わせした千駄ヶ谷周辺の地図が表示されているのが見える。

電池は単三型2本使用。電池との比較により、コンパクトさが判る。

標準で入っている地図データは1/200,000のものであり少し大ざっぱであるため(実用には問題無いレベルではある)、より情報量の多い1/25,000の詳細地図をパソコン経由でインストールすることした。
詳細地図は等高線有りのものと無しのものがあるが、等高線有りのものではデータ量が増えるため、我輩は等高線無しのバージョンを購入した。だが、それでも容量の関係で、GPS本体には日本全国の1/5しかインストール出来ない。

とりあえず使ってみたところ、なかなか面白く活用出来そうだと感じた。
まず勤務先までの道のりで使ってみたが、このGPSを使うと道を歩くのが疲れない。あと何メートルというのが数字でカウントダウンされ、それが励みになる。

ただし、電車や駅の中、高いビルに囲まれた場所などは、GPS衛星の電波が拾えないため機能が停止する。空が見えたとしても、GPSの特性上、衛星が3つ以上捕まらなければ位置決めをすることが不可能。そのため、ある程度開けた場所が必要となる。

ここではGPSの機能について詳しく述べることはしない。以下にキャプチャー画面を幾つか掲載し、雰囲気を伝えるに留める。

地図表示画面。表示設定により、情報を間引くことが可能。
地図の拡大画面。何段階にもズーム出来る。
ナビゲーションモードにより、進むべき方位と距離がリアルタイムに示される。
行き先設定は自分で設定出来るほか、あらかじめ33万ポイントがジャンルごとに登録されている。
今居る場所を登録する場合は、ボタン一つで簡単に行える。
日本語の入力も可能。漢字変換は1文字単位となる。ただし、通常はパソコン上でデータを作り、それをGPS本体に流すほうが効率的。
その他のアプリケーションも搭載されている。
GPS衛星からの電波状態を示す画面。

ところで、このeTrexはパソコンとの連携により、「カシミール3D」という地図ソフトにGPSデータを重ねることが出来る。このソフトは高機能ながらもフリーソフトで、誰でも簡単にダウンロードして使えるのが素晴らしい。
地図データは別途入手する必要があるが、国土地理院の数値地図25,000のCD-ROM(1地域7,500円)を使えば、相当な情報量が得られる。
しかも、eTrexのデータを地図に重ね合わせることで、自分の移動したルートを見ることが出来、なかなか楽しい。

「カシミール3D」による50mメッシュ標高データのみの表示例。

標高データに1/50,000地図を重ねた状態。

3Dレンダリングによって俯瞰図を描いた状態。

そこで、デジタルカメラを持って自転車で町内を回ってみることにした。
適当に走り、適当な場所で撮影する。その撮影場所でポイント登録し、後でどこで撮影したかが地図上で判るようにした。もちろん、eTrexを使えばその場所へナビゲートすることも可能。

知らない道に入り、わざと道に迷うようにしていたが、どうしても太陽の位置などから帰るべき方向が判ってしまう。それでも、eTrexを使うことによって自信を持って知らない道を進むことが出来た。

最初はeTrexを首から提げていたが、自分自身がGPS衛星の陰になり受信が途切れたため、自転車の前方に置くことにした。

実際に移動しながらの使い方としては、次の目標となるような交差点などで一旦止まり、そこであらためて次のポイントを探すほうが良い。自転車を走らせながらeTrexを操作したり液晶画面を注視するのは非常に危ない。

停車中にeTrexを操作する姿は、携帯電話を操作する場合とさほど変わらない。実際、我輩がeTrexを操作中には、誰一人不思議そうな目で見る者はいなかった。
それは、通勤時の電車内でも同じであった。

さて帰宅後、早速GPSデータをパソコンに取り込み、カシミール3Dにて表示させてみた。

「カシミール3D」にGPSデータを転送してみた。地図データは1/50,000を使用。

デジタルカメラの画像ファイルを地図上のポイントにドラッグすると、カメラアイコンが生成され、それをクリックすれば画像が開くようになる。

俯瞰図。撮影毎にポイント登録したため、その場所にポールが立っている。この町は坂が多いが山地ほどの高低差が無いため、起伏を若干強調して表示させてみた。

便利であることは確かだが、それ以前に非常に楽しく、撮影そのものの苦労が軽減される。
今まで我輩は撮影のための移動は"苦労"としか捉えていなかったが、これからは楽しみに変わりそうな予感がある。
見知らぬ場所への道案内として導入したパーソナルGPSではあったが、思わぬ副産物であった。
もはや撮影には欠かせぬアイテムである。