2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
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カメラ雑文


[440] 2003年08月16日(土)
「MINOLTA FLASHMETER VI」


先日、新型単体露出計「MINOLTA FLASHMETER VI」を購入した。
事前にインターネット上にて情報を探したものの、参考になるサイトが見付からず、購入すべきかどうかさんざん迷い、半ば衝動買いにも似た状態に自分を追い込んで購入に至った。
そのため、自分のサイトでこの露出計についての情報を発信しようと思う。


●購入に至る経緯

購入を考えるようになった経緯としては、露出計代わりに使っているデジタルカメラ「OLYMPUS CAMEDIA C-700UZ」がそろそろ使用限界に近付いているからである。地面に落下させたり物にぶつけたり、その外観は痛々しい。いつ機能を停止させてもおかしくない。

デジタルカメラを露出計代わりにすることは以前にも書いた(参考:雑文347雑文348雑文349)。
デジタルカメラの液晶画面にて適正露出を視覚的に得る方法は、一見無謀な試みにも思える。しかし、CCDのラチチュードの狭さや、液晶画面の画像表示のクセを知れば、露出の山は簡単に掴むことが出来、むしろ安心感を以て撮影することに貢献する。
実際、デジタルカメラを露出計として使うと、露出の失敗がほとんど無くなった。
しかもデジタルカメラでの撮影により、露出情報や日時などの撮影データが確実に得られるという副次的効果もある。

そのため、C-700UZの後継とする別のデジタルカメラの購入を考えた。
ウェブ上やヨドバシカメラ店頭で色々と調べ回った。要求仕様としては、マニュアル露出可能でコンパクトな起動の早いカメラ。しかしそれがなかなか見付からない。いつの間にかハイエンドなデジタルカメラを検討していたりしてハッと我に返る。
それでも幾つかの候補は決まった。その中には、マニュアル露出不可能な機種も含まれているが、それは露出情報が撮影時に確認出来るため露出計として活用出来ると考えたからだ。

ヨドバシカメラで実機を手に取った後、帰宅して検討段階に入った。どのデジタルカメラを買うか?
それにしても、こんな小さなカメラに7〜8万円も出すのは財布に痛いな。カメラを趣味としない一般人にもデジタルカメラが売れているというではないか。よくこんな出費をするな。
そこでふと、思った。
「デジタルカメラにこれほど注ぎ込むならば、新型の単体露出計を買ったほうが安いんじゃないか・・・?」

単体露出計は既に3台ほど所有している。だが、デジタルカメラのような直感的使い易さは無い。しかも入射光式オンリーでは対応出来ない撮影シーンもある。
ところがミノルタから新しく発売された「フラッシュメーター VI」は、受光角1度のスポット測光が可能で、しかもフィルムのラチチュード内でどのように表現されるかをモニタリング出来ると言う。
我輩所有の「フラッシュメーター V」でもモニタリングは可能であるが、受光球をビューファインダーに交換するなど手間が掛かり、表示もあまり洗練されていない。
調べてみると、新型の「フラッシュメーターVI」は、フジヤカメラで\47,600(税抜)で販売されていることを知った。これで、購入計画は一気に単体露出計のほうに傾いた。

そもそも、デジタルカメラは便利ではあるものの、起動時間がやたらに長いことや、ポケットに入らないこと、電池消費が早い、故障要素が多い、など不満点も幾つもある。それらの問題点を軽減させるために後継機を探していたのであるが、露出のモニタリングが可能ならばデジタルカメラで無くとも良い。
問題は、新型の「フラッシュメーターVI」が本当に役に立つのかどうか。

購入前にインターネット上で情報を得ようとしてみたが、特に参考になるサイトは見付からない。メーカーサイトも閲覧したが、やはり個人運営サイトにあるような生の声でないと分からない。
結局、漠然とした商品知識しか無いまま、電話でフジヤカメラに在庫を確認し、そのまま衝動買いのように「フラッシュメーターVI」を購入してしまった。


●購入直後

フジヤカメラのある中野から帰宅途中、電車内で取扱説明書を読んでみた。
まず第一に、今までのフラッシュメーターよりも説明書のサイズが小さくなったことに気付いた。
また、一つ前の「フラッシュメーターV」もそうなのだが、単体露出計を使いこなすためのカラー冊子も付いていない。「フラッシュメーターIV」を購入した時には、豪華なカラー冊子が付いており、単体露出計を活用するのに非常に役に立ったものだが。

VI型(最新型) V型 IV型
(特徴)
スポット測光機能・露出モニター機能・アナライズ機能・露出記憶数10点
(定価\70,000)
(特徴)
ストロボマルチ発光測定機能・露出モニター機能・アナライズ機能・絞り優先設定機能・露出記憶数8点
(定価\86,000)
(特徴)
ストロボマルチ発光測定機能・アナライズ機能・絞り優先設定機能・ミノルタα-9000データ送信機能・露出記憶数2点
(定価\86,000)

他のフラッシュメーターと並べてみると、今回の「フラッシュメーターVI」は一番背が高いことが判る。しかも細身であるから持ち易さは格別。持った感じは無線機や受信機のようであった。個人的にはなかなか良いと思う。


●液晶パネル

まず、液晶パネルが従来のものと変わり縦長になった。
今までのメーターに慣れていると、初めは違和感を覚える。しかし気持ちが前向きであれば、逆にそれが使い易く感ずるようになる。

縦長の液晶パネルとなり、それに伴い、アナログドットケールも縦に配置された。

フィルムのラチチュードをドットで示し、スポット測光の測定値がフィルム上でどれくらいの明るさで表現されるのかをモニター出来る。

測光値のメモリーは10点までに増えた。

しかしながら、コストを下げるためか液晶パネルは非常に安っぽい。
恐らく液晶パネルのガラス基盤の厚みが大きいのであろうが、液晶表示の影が深いため、見る角度によって表示がダブって見える。しかも液晶自体が淡い。
さらには、反射板の色が緑となり、そのために液晶とのコントラストが低くなっている。
つまり、視認性は最悪となった。

しかもバックライトが廃止されたようで、暗い環境では液晶表示が読み取りにくい。
暗い場所では測光しないだろうと考えているならば大間違い。いくら暗い場所であろうとも、スポットメーターが内蔵されているのであれば明るい場所に向かって測光することはあろう。
ちなみに、「フラッシュメーターV」のバックライトはEL(エレクトロ・ルミネッセンス)、「フラッシュメーターIV」はLED(発光ダイオード)であった。

VI型(最新型)

コストを抑えるため安価な液晶パネルを採用。反射板は完全な緑色で液晶とのコントラストは低い。
V型

視認性は良いほうだが、反射板はやや緑色に着色されている。ELの照明は反射板を透過させる必要があるため、EL素子の色が透けて見えるのであろう。
IV型

視認性良好。反射板も明るいグレーで液晶とのコントラストは高い。LEDの照明はサイドから照らすため、反射板には透過性は求められず反射に徹していれば良いからだ。


●操作部

操作部については、我輩所有の3機種ともそれぞれに個性がある。それはつまり、ミノルタが使い易さを模索して揺れ動いているということでもある。しかも今回の「フラッシュメーターVI」では、コスト低減のために色々と手を尽くしていることが、使用者の操作感としてダイレクトに伝わってくる。

基本的には3機種共、押しボタンはゴム製。
ただし測光ボタンはさすがにプラスチック製。クリック感は「フラッシュメーターIV」がマイクロスイッチそのものの音"カチッカチッ"という音がするのに対し、「フラッシュメーターV」と「フラッシュメーターVI」では"カクッカクッ"という感触に変わっている。最近のデジタルカメラのシャッターボタンと同じような感触で、少し上品な印象となった。

数値のアップダウンについては、「フラッシュメーターIV」がスライドレバーであるのに対し、「フラッシュメーターV」と「フラッシュメーターVI」では電子ダイヤル方式となっている。
ただし同じ電子ダイヤル方式であっても、「フラッシュメーターV」と「フラッシュメーターVI」では感触が全く違う。
「フラッシュメーターV」では"チキチキッ"と小気味良いクリック感で軽快な操作が可能である。しかもダイヤル部がゴムで覆われているため指に優しい。
ところが新型であるはずの「フラッシュメーターVI」では、クリック感が弱く"カタカタッ"という感じ。しかもトルクが重いため軽快な操作感とは言い難い。ダイヤル部もプラスチックが剥き出しでソフトではない。液晶表示部と共に、まさにコストダウンの影響をモロに感ずる部分である。

VI型(最新型)

電子ダイヤル採用だが、コストを抑えるため、クリック感はあまり無く、ダイヤル部は剥き出しのプラスチックのまま。トルクはやや重い。
V型

電子ダイヤル採用で、"チキチキッ"とクリックがハッキリしている。ダイヤル部はゴムで覆われており手触りがソフト。トルクはやや軽い。
IV型

スライドスイッチのため操作性は最悪。数値の移動量が大きい場合には、何度もスライドさせるか、一定時間スライドしたままにすることになる。しかしスライドしたままの場合、行き過ぎることもある。


●省略された機能について

メーカー側では「フラッシュメーターVI」ではコストを下げて買い易くするという開発意図があったと言う。しかしそのために省略された機能が幾つかあるため、ここで明確にしておきたい。この内容はカタログには触れていないので重要である。我輩も購入して初めて知った。

(1)
まず、フラッシュ光積算測定モードが無くなった。これは、ストロボを複数回発光させ光を蓄積させる撮影にて使われる。ストロボ光が弱い場合、シャッターを開きっぱなしにして何度もストロボを発光させれば、強い光を発光させたのと同様の効果が得られる。その際の積算測定を露出計側で簡単に行う機能である。

(2)
次に、今までは絞り優先設定が可能だったのだが、今回の「フラッシュメーターVI」ではその機能が省略されてしまった。

(3)
また、「フラッシュメーターV」では自動切り替えであったストロボのコード/ノンコードが、「フラッシュメーターVI」では手動切り替えに戻っている。

(4)
そして小さなことかも知れないが、今までの機種では裏面に付いていた三脚穴が、今回廃止された。
しかしストロボのノンコード測定では、露出計を置いたままストロボ側で発光させることになるため、三脚穴の無い露出計では固定が面倒になる。

(5)
さらに些細なことだが、「フラッシュメーターV」ではノンコードストロボ測定でストロボ光を検知すると"ピッ"と電子音がしたのだが、今回の「フラッシュメーターVI」では電子音は一切無い。


●マルチスポット測光について

一般的に入射光式単体露出計というものは、基本的に被写体の場所で測光するわけであるが、いつもその方法で測光出来るとは限らない。シチュエーションにより、反射光式露出計でなければならない場合もある。

今まで我輩は、反射光式露出計としてNikon F3の内蔵露出計を活用してきた。
F3の露出計は若干、部分測光としての傾向があるのだが、我輩はF3のファインダー見ながら画面を振り、連続的に変化する測光値を見ることにより、輝度分布を把握した。もちろん正確に把握するわけではなく、「何となく」というレベルである。(参考:雑文239

ところが、中判カメラには露出計が付いていない場合が多い。そういう場合は必然的に単体露出計が必要となる。Nikon F3があればそれを露出計代わりにすることも出来ようが、中判と35mm判を同時に使うというシーンはあまり想像出来ない。

単体露出計での反射光測光は、一般的なカメラの内蔵露出計と同じようには使えない。なぜならば、カメラ内蔵露出計では交換レンズの画角に応じて受光角も自ずと変化する(一眼レフ形式の場合)。ところが、単体露出計では一般的に受光角が固定されており、下手に受光角が大きければ画面範囲外にある光すら測光してしまいかねない。

そういうわけで、単体露出計を使い意志を以て反射光を測定するには、何処を測っているのかということを明確にする必要がある。そのためスポット測光によって狭い範囲に絞ることになる。

今回購入した「フラッシュメーターVI」では、受光角1度のスポット露出計が内蔵されている。
幾つかのスポット(点)を測光し、最大10点までを記憶させる「マルチスポット測光」が可能。そしてワンタッチで各点の平均値を算出させることも出来る。
それはつまり、「フィルム上で表現したい重要な部分を撮影者が決める」ということでもある。他に言い換えれば、「手動の分割測光(評価測光)」と言うところか。

以前、雑文にて「Canon T-90」や「OLYMPUS OM-3/OM-4」のマルチ測光について書いたが、それらはそれぞれのカメラに属した機能である。そのカメラを使わねばその機能は利用することが出来ない。
しかし単体露出計にその機能が組み込まれるならば、どのカメラを使おうとも、等しくマルチ測光機能が利用出来る。

しかもこの「フラッシュメーターVI」は、連続的にスポット測光させることにより、記憶させた測光値を基準にしたプラスマイナスの値を見ることが出来る。それは、我輩がNikon F3で用いた輝度分布読み取りの手法そのものである。


●実際の測光と結果

我輩自身、スポット測光の経験はあまり無い。
それまで使っていた「フラッシュメーターV」では、「スポット測光用ビューファインダー(受光角5度)」も揃えてはいたが、着脱が面倒でしかも大柄になるため、積極的に活用していなかった。
しかし今回導入した「フラッシュメーターVI」では、コンパクトなうえスポット測光がスイッチ一つで切り替え可能と不自由が無い。

実際にマルチスポット測光を使ってみたところ、記憶させるポイントが10点に届くことは無かった。必要な箇所を幾つもピックアップしようとも、せいぜい5〜6点で足りる。それ以上やろうとしても、他に測光する点を探すのが難しいくらいだった。
最大記憶10点というのは、かなり十分と言える。

肝心の撮影結果だが、我輩がマルチスポット測光初体験というせいもあり、成功率70パーセントといったところか。失敗した写真の全ては0.5EV〜1.0EVのアンダーであったため、傾向が掴めれば改善出来ると考える。少なくとも現状の我輩ではオーバー側に段階露出しておけば間違いが無い。


スポット測光のビューファインダーの様子。クリアで見易い。


(2007.10.16追記)
現在、我輩は「フラッシュメーターV」を売却し、新型の「フラッシュメーターVI」のみを使っている。
もしカメラの場合であれば複数持っているとそれなりに利用法が広がるのだが、単体露出計の場合は複数持っていても無駄である。もちろん、我輩はセコニックのポケットサイズの単体露出計「L-308」も持っており、大きさの違いで使い分けている。しかし「フラッシュメーターV」と「フラッシュメーターVI」は同じような大きさと同じような性能である。自ずとどちらか一方しか使わなくなるのだ。
結局のところ、新型「フラッシュメーターVI」のマルチスポット測光機能の存在は決定的であった。いくら安っぽい露出計であろうとも、最終的には機能で選ぶことになった。逆に、いくら見易い液晶パネルや使い易い電子ダイヤルであっても、自分に必要な機能が無ければ意味が無い。
我輩の場合、滅多に使わないストロボマルチ発光測定機能や液晶パネルバックライト機能よりも、毎回使うマルチスポット測光機能のほうが重要である。
ちなみに「フラッシュメーターVI」は、ミノルタのカメラ分野撤退に伴い販売終了となったが、実質的には「フラッシュメーターVI」と同等のケンコー「フラッシュメーターKFM-2100」がOEM販売されており、入手に不都合は無い。
中古などで旧型「フラッシュメーターIV」及び「フラッシュメーターV」を安く買うくらいならば、少し奮発して「フラッシュメーターVI」か「フラッシュメーターKFM-2100」を買うほうが良かろう。単純に安い露出計が欲しいのであればもっと安いものがあるし、高機能が欲しいのであれば新型を買うほうが目的に適う。中途半端な選択をするならば、結局は自分の目的を果たせないだろう。