2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[385] 2002年12月01日(日)
「Kiev 6C」

そのメールは、意外に早くやってきた。
2ヶ月くらいは待たされるであろうと予想されたロシア製カメラ「Kiev(キエフ)6C」の入荷通知が、予約して僅か1ヶ月で到着した。

本来ならば嬉しいはずの入荷通知、訳あって素直には喜べぬ。
前回、ブロニカSQ用交換レンズ「PS 35mm F3.5 フィッシュアイ」を家計に借金して手に入れた直後であり、持ち金もほとんど残されていなかったからである。
とてもこの状態で「金を貸してくれ」などと言えるはずもない。

現在我輩は、カメラを増やさぬように努力している。1台入れば1台出す。理想的にはこのようにありたい。
今回、やはりカメラを1台入れることになるのだから、ここは手持ちのカメラを売却し、その売却金によってKiev購入代金に充てようと考えた。
一つの行為によって二つの効果を得る。人はそれを「一挙両得」と言う。

売却したカメラの話はまた後日雑文にて触れることとして、今回はKievの話から逸らさぬよう進める。

届いた「Kiev 6C」は、不格好な皮ケースに収められており、その皮の匂いが少しカメラにも移っている。もはやこの皮ケースは二度と使われることは無かろう。

カメラ自体、少し手垢が付いている様子。手に持って操作していると、指が汚れるような感触があった。古本屋で色々と物色しているうちに指に妙な粘りを感ずることがあるのだが、このカメラの場合もちょうどそんな感じである。
気持ちが悪いので、石鹸水を浸した雑巾でシボ皮を拭った。幾分マシになった。



さて、持った時の第一印象であるが、図体が異様にデカく感ずる。
だが、持った感じは重くない。比較するならコーワ6のほうが密度が上。「Nikon F3モータードライブ付き」や「Nikon F5」などを使っている者であれば普通に持てる。
ただし、この「Kiev 6C」は左レリーズボタンなのでホールディングにはそれぞれの工夫が必要ではある。我輩の場合、色々試した結果、左親指でレリーズするような格好でカメラをホールドするようにした。これが一番軽く感ずる。

巻き上げについては、色々な前情報がインターネットから得られていた。
いったん始めた巻き上げ動作は途中で止めることをしてはならない。さもなくばレバーが戻らなくなったりフィルムのコマが重なったりするらしい。
そういう前情報があると、実際に製品を手にして巻き上げようとする時にはかなり緊張する。

まず、しっかりと両手でホールドし、右手親指を巻き上げレバーに当てる。途中で巻き上げを止めないよう、間違っても指が滑ってはならない。キリキリキリ・・・とゆっくり確実に巻き上げる。
だが見ると、レバーの中心軸と思っていた部分が、なんと巻き上げ動作によってどんどんズレていくではないか。このまま巻き上げてもいいのか?! だが巻き上げ動作を中断するなという話であるから巻き上続行するほか無い。
結局、巻き上げそのものは特に問題は無かった。どうやら本当の軸の位置は違うらしい。それにしても紛らわしい。
何回か巻き上げているうちに、普通の速さで巻き上げても支障無いことが判った。ただ、巻き上げを途中で止めたりすると、スプールとシャッターチャージのズレが発生しているのが見える。裏ブタを開けて観察するとハッキリする。この状態でフィルムが入っていればコマズレは確実。

ファインダーは交換式で、左右の着脱ボタンを押しながら上方へ抜く。ボタンなどは頑丈に出来ているので破損は無さそうではあるが、造りが雑で引っかかることが多い。
TTLファインダーは35mmカメラと同じ感覚で使えるので良いのだが、大きなプリズムが入っているので重くなる。
近視の我輩には視度が外れているのは当然ではあるが、おかしなことに眼鏡を掛けて覗いてもやはりボヤけて見える。接眼部(アイピース)を見ると、どうも必要なレンズが外されているような気がした。
仕方無く、Nikon F3HP用視度補正レンズを-2と-3を2枚強引にハメ込んで使うようにした。とりあえずは具合が良い。

早速、いつものテスト撮影を行う。

Kiev 6C + zodiak 30mm F3.5
先日手に入れた「zodiak 30mm F3.5」を使ってみた。曇り空での撮影であるから、多少コントラストが低いのは仕方無い。
しかしそれにしても、苦労して手に入れた「ブロニカPS 35mm F3.5 フィッシュアイ」の描写力にも匹敵するのには驚いた。
レンズとカメラボディのどちらか一方に問題があればこのような写真は得られまい。
もちろん、強い逆光などの厳しい撮影条件や露出精度(絞り羽根の機械精度)などは未知数ではあるが、上手に使えばそれなりに使える。
さて心配されたコマズレについては、少し狭いながらも重なりは無かった。マウントにハメるリバーサルフィルムでは特に問題は無かろう。

このカメラ、失敗を許せる撮影で気軽に使うことにしたい。安価であるため、故障や消耗を気にせず気軽に魚眼撮影に用いることが出来る。


以前、我輩は雑文325にてコピー製品のリスクについて書いた。
しかしこのカメラを見ると、想像したほど"変な機械"でも無い。幾つかの「やってはいけないこと」さえ守れば、我輩自作の魚眼カメラのように想像力を働かせながら操作する必要も無く、実に快適に安心して撮影出来る。
この「Kiev 6C」は東欧の「PENTACON 6」をコピーしたカメラだとされているが、コピー元の「PENTACON 6」がまた造りが悪いとのこと。さすがにそんなカメラをそのままコピー出来なかったのだろう。新たに図面を引き直し、少なくとも「PENTACON 6」よりはマシなカメラを造った。

ただし、製造技術や品質管理の甘さはどうしようも無く、やはりロシア製カメラはリスキーであり一般の日本国民が使うようなカメラではないという定説を覆すには至らない。
ロシアカメラを楽しむには、そのカメラよりも性能の安定した通常のカメラも同時に所有している必要がある。それによって初めて、ロシアカメラに対する寛容さが生まれる。
唯一のカメラがロシアカメラならば、そのカメラの具合によって一喜一憂させられ精神衛生上よろしくない。