モルディブ共和国は赤道直下の約1200もの小さな島々からなる国で、我輩は行ったことが無いが珊瑚礁に囲まれた美しいところだそうだ。
しかし、モルディブの平均海抜は2メートル、最高でも2.5メートルと低く、近年の温室効果による温暖化が引き起こした海面上昇のため、21世紀の終わりまでに国土の80パーセントを失うと予測されている。現時点でも、ちょっとした高波で島全体が海水に浸かる被害が起こっている。
真っ先に温暖化の影響を受ける国の1つ、それがモルディブである。
モルディブに住む人々には切迫した事態となる海面上昇であるが、我々日本に住む者には今のところ緊迫感は無い。日本は島国であるが、モルディブほど海抜が低くはなく、「海に沈む順番としてはまだ先であろう」という気持ちがどこかにあると言える。人間、自分に関係無いことは割と鈍感になる・・・。
カメラの新製品が出ると、我輩も関心を持って見る。新しモノ好きであるがゆえ、店頭にあれば必ず手に取っていじり回す。
我輩が真っ先に調べるのは、シンクロソケット(ストロボをコードで繋ぐための接点)があるかどうか。
最近のカメラはコストダウンのためか、しばしばシンクロソケットが省略されることがある。
特にAFカメラの時代になってからは、シンクロソケットの付いているカメラは高級機以外見られなくなった。我輩が信頼を置く数少ないAFカメラ「Canon EOS630」でさえも、シンクロソケットが無いためにメインカメラとして使えない。
「我輩とは妙なヤツだ。それならば専用ケーブルを買い求めれば済むことだろう。」
このように思われるかも知れない。それも尤もな意見だと言えよう。だがしかし、我輩は専用ストロボなどあまり使わない。その理由は我輩側の
事情であるので特にここで詳しく書かかないが、とにかく我輩のニーズとして汎用ストロボをカメラから離して使うことが多い。だから、カメラ側にシンクロソケットが無くてはならない。
現在、クリップオン・ストロボはカメラの機能と共に進化を極め、専用化されてしまった。同じメーカーのストロボであっても、特定の機種でしか使えないものさえある。
専用ストロボでは、シンクロソケットに繋いで単に発光させるということはもはや意味を持たない。カメラとストロボ相互の情報をやり取りし緻密な制御を行うのが現代のクリップオン・ストロボである。レンズをズーミングするとストロボ発光部も自動的にズーミングしたり、シャッターボタン半押しで自動的にストロボのチャージが始まるというのは、専用ストロボならではの機能である。
最新カメラに於いて、汎用ストロボの使用など前提に無い。
今の時代、100人中99人までが必要としないシンクロソケット。それは、日常生活ではあまり接点の無いモルディブのような存在に過ぎぬ。モルディブが海に沈みかけていても、他国の者にはあまり関係無い。シンクロソケットなど廃止されようが、ほとんどの者は困らない。
だが我輩はまさにモルディブに住む人間の如く、シンクロソケットの有り無しに大きな影響を受ける。
コストという海面が上昇すれば真っ先に水没するシンクロソケットである。
「ああ、また新製品にはシンクロソケットは付いていなかった。」
他の皆が新製品に心を躍らせている中で、我輩だけが素直に喜べない。自分だけが海面に沈む気分を味わう・・・。