<逆光でも明るく写っている>
月面で撮影された写真では、強い逆光で撮られたものも多い。そしてそれらの写真では、陰の部分が明るく写っているため、補助照明があったのだという。
だがこの場合も、写真的に言えばごく当たり前のことにしか思えない。
望遠鏡で月を観察した者なら解ると思うが、月面はかなり明るい。言うなれば地面にレフ板を置いているようなもの。注目すべきは、地面に落ちた「影」と、人物の「陰」である。
雑文
「貧乏人のための商品撮影(第4段階)」に掲載した写真を見れば解ってもらえると思うが、下から当てるレフ照明は、陰を照らすが影は照らさない。だからこそ、影は真っ黒いままであるが、人物の陰は明るく照明されているということになる。何の矛盾も無い。
<倍速映像にすると自然な動きに見える>
ゆっくり緩慢に動くシーンでは、月の引力が小さいことを表現しているが、これを倍速再生すると、まるで地球上で撮影したかのように自然な動きになるという。
しかし倍速再生するということは、見かけ上重力加速度が大きく見えるということだから、別に不思議でも何でもなかろう。何が問題なのか?
倍速再生でどういうふうになれば納得するのかを逆に問いたい。
<写真に写し込まれた十字線が隠れている箇所がある>
宇宙で撮影されるハッセルブラッドによる写真には、10ミリの幅で25個のレゾークロスと呼ばれる十字線が写し込まれる。この十字線は常に画面に写り込んでいるはずなのだが、なぜか被写体の背後に隠れているものがあるらしい。これは、写真を合成した痕跡だという。
しかし、レゾークロスは極めて細い線であるため、背景が強いハイライトであれば飛んでしまうと思われる。現に、番組で紹介される「被写体に隠された十字線」を見ると、いずれも隠しているのはハイライトの部分となっている。これがもしグレーな部分で隠されているならば納得も出来ようが、これでは何とも判断出来ない。
そもそも番組ではレゾークロスのことを「カメラのフィルターに付けられた模様だと思われる」などとトボケたことを言っているが、フィルターの模様など写真にハッキリ写せないことは写真をやる我々には常識である。そんな単純なことすら理解しないということは、鋭い視点で写真の矛盾点を指摘出来ないということを意味する。つまり、そこから説得力など微塵も感じない。
以上、番組が指摘することについて考えてみたが、映像に関する限り矛盾するところは1つも無い。しかし、これを以て「やはり月面着陸は歴史的事実だ」などと言うつもりも無い。映像の検証と事実関係とはまた別の話である。映像の矛盾点は判断材料としての状況証拠に過ぎぬ。そこから断言出来る事実は極めて限られている。
それにしても情けないのが映像関係者。
番組では、映像のプロを自称する人間がコメントをしていたが、映像のプロというのはどこがどのようにプロなのか解らぬ。その人間がカメラや写真レンズを設計したようにも見えない。ただ単に「映像を扱う業者」と言うだけではないのか。まあ、それで生計を立てているのだから、確かにプロには違いないが。
しかし、
以前にも書いたように、画像の理解にはハードに対する理解は欠かせない。それに加えて自然法則についての理解も必要。写真を趣味としていれば、最低限のものは自然と身に付く。いや、必要とされる。
何が自然で何が不自然か、それすら解らぬ者がCG画像を作る時代である。それでプロを自称するのだから、ますますプロの言葉に信憑性が無くなる。
映像関係者は、普段映像を扱っている関係上、映像のことなら分からないことはないと思い込んでいる。それはあたかも、日頃から大量の現金を取り扱う銀行員が自分が金持ちになった気分になるようなもの。
だが、根本を理解していないと、低級な番組しか作れない。最近の「コマーシャル前後で内容がオーバーラップする中身の薄い番組」が増えてきたことからも、そのことが伺い知れる。
映像関係者ども、頼むから頑張って少しは勉強してくれ。見ているこちらが恥ずかしくなる。
(2002.02.13追記)
「月着陸がウソである」という意見に対する反論のページをNASAが作っていたのを見付けた。英語なので詳しくは読めないが、少なくともレゾークロスの件と星条旗がはためく件について我輩と同じように考えているようだ。
しかし繰り返すが、これを以て「月着陸は真実だ」と主張するつもりも無い。ここではあくまで映像についての検証を行ったに過ぎぬ。