2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[307] 2001年10月06日(土)
「幻影」

車の運転では、自動車についての知識など必ずしも必要ではない。教習所では自動車の構造について簡単なレクチャーを受けるが、実技を主体とする免許取得では、そんなものは記憶に残らぬ。
(もちろん、自動車の知識を持っている者も中にはいようが、それは各自それぞれに調達した知識であろう。まさか、教習所で初めて知ったというような知識ではあるまい。)

写真撮影もまた、車と同じくその行為自体に知識を必要としない。ボタンさえ押せば、それで良い。自分のイメージに沿った写真を狙い撃ちするのは無理だとしても、知識が無いためにかえってタブーを越えた興味深い写真を撮る場合さえある。


だが、近頃の心霊番組を見ていると、あまりにも映像関係の技術面がないがしろにされている印象を受ける。番組スタッフは最初にカメラメーカーなどに問い合わせるべきだが、なぜかそれを省いて霊能者にまず見せる。
(たまに映像専門家に見せる番組もあるが、アイツらは自称職業であるため、無責任なことを平気で言う。そもそも、ハードウェアの知識に乏しい。)

番組上、その写真が何かの間違いであるということが実証されると、せっかくの企画がツブれてしまうことになる。だから、期待した結果を出してくれる霊能者に傾いていくのである。
そう考えると確信犯(確信犯の誤用承知)とも言えるかも知れぬが、我輩が想像するに、これは未必の故意(危険性を積極的には回避しない遠回しの故意)の結果と考える。つまり、番組スタッフが自分自身を騙している。

・・・いや、話がズレた。まあ要するに、テレビ制作は「面白ければ良い」という意識があるということだ。それにより、検証が論理的でなくなる。

以前、心霊ライターと呼ばれる者が出演して心霊スポットを取材するという番組があった。
奇怪な現象が噂される廃屋にて、外から2階の窓をデジタルカメラで撮影。その窓に人の横顔らしきものが写ったと騒ぐ。
だがその窓には鉄格子(恐らくは防犯用)がはめられており、そこから覗く室内も荒れているために雑然とした画面であった。何よりデジタルカメラで撮影したというのが気にかかる。

知る者にとっては常識だが、デジタルカメラで撮影された画像は、一般的にはJPEG圧縮画像で記録される。JPEGは元の画像の100パーセントのクオリティには復元出来ない圧縮方式(不可逆圧縮)であり、圧縮率に応じた画像劣化が起こる。これはどんなに高画質記録であろうとも、JPEGファイルである限り必ずつきまとう問題である。普通に写真を眺めるぶんには何の問題も無いが、注視するとアラが見えてくる。

心霊写真の場合、写真を眺めるよりも一部分に注視することが多い。今回のケースでは、まさに2階の窓に視線が集中していた。そこには何者かの横顔が見えるという話であるが、我輩にはどう見てもJPEGファイル特有の圧縮ノイズが走っているようにしか見えぬ・・・。


写真撮影は、車の運転と同様に、カメラの仕組みを理解する必要は無い。
だが、そこに写った写真を評価するならば、カメラの仕組みを理解し、なぜそのような写真が得られたのかということを考えねばならぬ。
画像として残ったものだけを議論しても何の進展も無い。どのような仕組みによってその映像が得られたのか。それ無くして真実は語れまい。

目を凝らせば凝らすほど、真実から遠退き幻影をそこに見る。まさにこれ以上の皮肉も無かろう。