2000/04/05
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カメラ雑文

[819] 2014年08月20日(水)
「屋外ストロボ撮影ガイド(1) 〜基本事項〜」


以前、屋外ストロボ撮影について書いた(参考雑文814)。
我輩は半年前にラジオシンクロシステム導入し、それによってワイヤレスストロボ撮影が可能となったわけだが、当初の目的はテーブルトップスタジオ撮影での効率化を図るためであった。

やがてその後、ラジオシンクロシステムが屋外での撮影にも役に立つことに気付いた。これまではシンクロコードの取り回しの面倒さと接触不良による不発の多さにより、屋外でのオフシューストロボ撮影はしていなかったわけだが、ラジオシンクロシステム導入後は、まるで羽が生えたかのように自由な運用が可能となった。
今では、植物撮影を中心に、屋外ではストロボ光が届く範囲におけるほとんどの撮影でストロボを使用している状況。

我輩の場合、屋外でのラジオシンクロ撮影は基本的にテーブルトップスタジオ撮影の手法を踏襲している。そのため、スタート時点からある程度の実用は始まっていた。
だだそうは言っても、屋外には屋外なりの事情により、努力(汗)や工夫(アイデア)、場合によっては妥協(諦め)を強いられることが多い。

テーブルトップスタジオ撮影のノウハウは立派な解説本などが多く出版されているので我輩がここで書くまでもないが、屋外ストロボについてはなかなか解説本が無い状況。あったとしても単純な日中シンクロとしての使い方でしかなく、補助光の域を出ていない。
以前雑文で書いた内容も参考になるかも知れないが、それはあくまでも屋外での積極的ライティングの有用性の紹介であった。だから今回、あらためて屋外ストロボ撮影のノウハウ的なことを書くことにした。これにより、少しでも屋外でのストロボ撮影の普及に繋がればと思っている。

そこでまず最初に、屋外ラジオシンクロ撮影の基本事項をまとめておく。
これらは我輩のライティング思想の実現を前提としたものだが、ある目的を達成するための1つのモデルには違いない。どんなライティング思想の立場であっても、必ずや参考になるであろう。
(※以下、絞り値をAv、シャッタースピードをTvと記述する。ちなみにAvは「Aperture Value」、Tvは「Time Value」の略称。)


●屋外でストロボライティングする狙い

(1)積極的ライティング
その場にある定常光だけに頼った受け身のライティングではなく、スタジオ撮影のようにストロボによる積極的なライティングを組み立てることを第一の目的とする。それにより、撮影者の表現を反映させる。
また、あえて不自然なライティングを狙い、横や下から照らすなどの非日常性を演出する。

(2)正しい発色を得る
ストロボ撮影により対象物の発色を良くする。例えば夕暮れ時であっても主要被写体には色カブリをせぬよう手当てすることは、撮影者たる我輩の確たる意志を示すものである。これは記録撮影の立場からも欠かせない。


●撮影における前提条件

(1)ストロボはマニュアル発光可能なものとする
マニュアル発光とは、固定した出力で発光可能なものである。フル発光を1とした場合、1/2、1/4、1/8・・・などと調節出来るものを言う。調節機能が無くとも、フル発光だけでも可能ならば一応使える。

<出来れば出力調節可能なものが良い>
出来れば出力調節可能なものが良い

一方、オートストロボは一見便利なようにも思えるが、露出の過不足を思い通りに調整するのはオートに頼っても無意味である。なぜならばオートは常に中庸を目指すので、ライティングを組み立てる撮影者側の思想を理解しないからだ。オートによる可変の値に手動の調整を加えるのは全く無意味。固定された値だからこそ手動調整に意味がある。
そもそもオートストロボは汎用のシンクロ接続が使えないので、異なるメーカーのカメラを混在させることは出来ない。最悪の場合、同じメーカーのカメラであっても機種によっては使えなかったりする。

(2)記録形式はRAWとする
今回の積極的ライティング撮影に限ったことではないが、屋外撮影では強い直射日光やその反射光などでハイライトが飛びがちになるため、出来るだけ余裕を持たせるようビット幅のあるRAWデータで保存しておきたい。
またRAWでの記録は、屋外撮影での失敗をある程度カバーしてくれる。何しろ屋外では、強い直射日光のせいで背面液晶での確認が困難な場合も多く、また撮り直しが利かない場面も多いからだ。

(3)カメラ側のホワイトバランス設定は「昼光」等に固定させる
「昼光」にこだわるわけではなく、撮影時の条件を固定させることが目的。撮影時のライティング環境が同じであれば、同条件で撮られたカットは全て同じ色合いとなる。色調補正が必要であれば、RAW現像時に最初の1枚目を中庸となるよう調整し、その補正量を他のカットにも一括適用すれば済む。
なお、ストロボは基本的に昼光用(デイライト)なので、カメラ側のホワイトバランス設定は特別な意図が無ければ「昼光」にするのが自然ではある。


●ストロボ設置の様々な方法

現在、我輩は屋外でのストロボの設置について下記の方法を使い分けている。

(1)ポールスタンド設置
概要: 三脚メーカーのベルボンとスリックからそれぞれ発売されているポールスタンドを利用し、その自由雲台の上にアクセサリシューアダプタを載せ、そこにストロボをセットする方法。
利点: 高さ調節が可能で自立出来ることから、屋外でジックリ撮るにはこの方法が一番使い易い。
欠点: 目立ち易く、それなりに場所を占有し、かつ撮影者が設置場所から少しでも離れることになるので、往来のある場所ではトラブルの種となりかねない。
また携行機材としてはそれなりに荷物となり、またセッティング時のワンテンポを考えると撮影の即応性にやや劣る。
ポールスタンド設置


(2)クリップ設置
概要: 洗濯バサミ状の頑丈なライトクリップ(LPL製など)を用い、自由雲台とアクセサリシューアダプタを載せ、そこにストロボをセットする方法。
利点: 現場の状況により、スタンドでは不可能なライティングが可能になることもある。また携行機材としては比較的コンパクト。
欠点: 現場の建造物や構造物に設置することになるので、現場の状況任せと言える。設置出来そうな箇所が見付からない場合のことも考えると、重要な撮影ならば事前のロケハンが必要。
クリップ設置


(3)手持ち
概要: 片手でストロボを持ちながら撮る方法。
利点: 携行機材が最小限で済み、機動性も高く、ゲリラ撮影には最適。またストロボの位置を自由に動かせるので、照射距離を前後させることで光量の微調整が簡単。
欠点: 基本的には手の届く範囲内のものを撮る時にしか使えない。また固定出来ないので1カットごとにライティングが微妙に変わってしまうこともある。
手持ち


(4)直置き
概要: ストロボを地面の上、あるいは物の上に載せるなどして使う。ストロボの筐体形状で置き方が制限されるので、発光部が動かせるものが良い。場合によっては木の枝などに引っ掛けることも有用。もし地面に置いた場合は迎角をつけてライトアップするような状態になる。
利点: 現地でクリップを挟むポイントが見付からない場合に有効で、携行機材も最小限で済む。手持ちよりも撮影範囲が広がる。
欠点: 発光部が可動出来ないストロボは思い通りの方向に照射することが困難な場合がある。また、ストロボが汚れたり傷付いたりするのは避けられない。
直置き


(5)クレーン的手持ち
概要: ポールスタンドや一脚に設置したストロボを手で保持してクレーン的に使う。
利点: 高い場所、あるいは花壇など立ち入れない方向からのライティングを可能とする。手持ちのため機動性も高く、照射距離を変えることで光量の微調整も自在。また、ポールを脇に抱えるなど工夫すれば、単純な手持ちよりも揺れは少ない。
欠点: 恐らく最も目立つ方法である。不審な動きと捉えられかねない。動植物採取を禁止する場所では、捕獲用具ではないかという誤解を与えかねないので注意が必要。撮影であることを示すためにカメラを使っていることが分かるよう振舞うほうが良い。
クレーン的手持ち



●日中屋外でのストロボ撮影ではディフューズは必ずしも必要ではない

まずテーブルトップスタジオ撮影についての確認だが、そこでは影(被写体の陰も同様)を和らげるために発光面積を大きくする。具体的には、トレーシングペーパーを透過させたり、白レフにバウンスさせたりしてディフューズ(拡散)させることになる。
それは、単純に光を回り込ませるという発想ではない。もしその発想で行くとすれば、究極的には影は無くなることになる。

ライティング組み立てにおいて、光源は1つしか無いということが前提としてある。そのための光源を主光(メイン)と呼ぶ。
この光源を設定することによって被写体を挟んで反対側に影が落ちるので、光の方向が定まる。

しかしその影はクッキリとした強い本影なので、その影に連続的に繋がる半影を作る必要がある。
「本影」とは光源が完全に遮られたことで発生する濃い影のこと、そして「半影」というのはある程度の面積を持った光源の場合に生ずる薄い影である。

ここで重要なのは、「半影」は部分的に光が遮られた影であるということ。ということは、弱い影でありながら、同時に弱い照明でもある。従って、半影が本影にかかった所は明るくなって本影を和らげることになる。

しかしながら、半影を作る目的で発光面積を無制限に大きくし過ぎて被写体をディフューズ面で囲んだ状態になってしまうと、光の方向が定まらず、ただの柔らかい写真になってしまう。これは半影によって本影が消えてしまったせいである。これではイメージスキャナで読み取ったものと変わらず、思想を反映したライティングとは言えない。
主光の存在を残しながらも、かつ影の強さを和らげるためには、主光はあくまでも強い光源とし、その光源を取り囲むようにディフューズが為されるべきである。

そしてこのライティングをベースとし、その上で、被写体の材質や形状表現のための補助光をサブ光源として追加することになる。
なお、これ以上の話はここでは余談でしかない。

一方、屋外ストロボ撮影については、現場のライティング設置の制限から発光面積を大きくすることはなかなか難しい。レフ板使用も場所を選ぶ。そうなると、ストロボ光は発光面積が小さいままの直照とせざるを得ず、半影が作れず本影がクッキリと出てしまう。もちろん被写体の陰も同様である。

そこで、定常光を利用して半影の代用とすることで影を柔らかくすることを考えた。
具体的な設定法は次項目にて述べるが、定常光の比率を変えることによってストロボの本影(陰)が柔らかくなる例を下に示す。言うまでも無いが、「どちらが美しいか」という話ではなく、ストロボの強い影(陰)を定常光調整で和らげる一例に過ぎない。

<定常光を利用しないストロボ撮影>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
定常光を利用しないストロボ撮影

<定常光を利用したストロボ撮影>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
定常光を利用したストロボ撮影



●ストロボ光を主光、太陽光を補助光とする

ストロボを主光(メイン)とすることは重要である。
そうでなければ積極的ライティングとしてストロボ撮影を行う意味が無い。もしストロボが補助光で良いと言うのであれば、従来通り真正面からのクリップオン照射で済む話。

ストロボを主光として使う意味は、光の角度を思い通りにコントロールするということもあるが、他にも、背景となる定常光のレベルを落として、ストロボ光の当たる主要被写体を浮かび上がらせる効果もまた重要である。

<被写体を浮かび上がらせる>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
被写体を浮かび上がらせる
被写体を浮かび上がらせる

何しろこれまでは、主要被写体を浮かび上がらせるには背景をボカす手法ばかりで、それゆえ背景がボケ易いフルサイズ判がもてはやされている風潮があった。
ただし背景ボケ写真は機材さえあれば誰にでも撮れるものだということも事実。今や、同じような写真が量産され過ぎて個性の無い表現法となってしまった。

しかしストロボを積極的にライティングとして使うことによりアプローチの異なる表現が可能となるわけで、少なくともストロボライティングには写真の基礎的な知識が最低限必要となる。そういう意味では、この表現での写真が安易に量産されることは無かろう。しかもライティングの組み立て方は無限にあり、個性を出す表現としては最適な手法と言える。

そこで、ストロボ光を主光として撮影者の思想を反映させ、太陽光などの定常光を補助光として影を和らげることに利用するのだ。


●露出設定と光量比調整

テーブルトップスタジオでは、基本的にマニュアルモードで撮る。なぜならば、ライティングを変えない限りは露出値は一定であるし、ライティングを変えるにしても増減調整なので、設定値が固定されるマニュアルモードのほうが都合が良いからだ。

それに対して屋外ライティングでは、その場の定常光が都度変わる。
定常光とストロボ光の光量比を調整するのであれば、刻々と変化する定常光の強さに応じてカメラのAv/Tvを調整せねばならない。

しかしストロボは瞬間光という特性上、フォーカルプレンシャッター搭載のカメラではTv設定範囲がX接点以下に限られるという制約がある。Tv設定の選択範囲が狭くなれば、その設定範囲外はAv変更で補わざるを得なくなるが、Avを変えるとストロボ露光量も変わるのでストロボ光量を変えねばならなくなる。

もちろん撮影条件が一定ならばマニュアルモードでやるのも良いが、場所や方向、そして時間帯によって刻々と変化する定常光に対応するには、やはりAEに頼ったほうが効率が良い。
ただし積極的ライティングとしてのストロボはカメラ任せには出来ないので、あくまでマニュアル発光とする。

そこで以下の2つの条件別で、AEを使った撮影法を提示する。

<条件(1):曇り空や半屋外等の比較的暗い場面>
その場の状況が比較的暗く、定常光での適正TvがX接点を超えないと思われる場合、絞り優先モードを使う。これは、ストロボ光に対応するAvを固定させる目的である。Tvのほうは定常光に応じてAE制御されるので面倒が無い。
また、定常光とストロボ光の光量比を調整をしたい場合には、カメラの露出補正機能を利用すれば良い。露出補正の操作をしてもAvのほうは固定なのでストロボ露光量が影響を受けることは無く、定常光のみが増減する。

<条件(2):快晴時の比較的明るい場面>
その場の状況が比較的明るく、定常光での適正TvがX接点を超えそうだと思われる場合、シャッタースピード優先モードを使う。これは、TvがX接点を超えないよう、固定させる目的である。Tvを固定する以上、AEによりAvのほうが変化するわけだが、Avの変化はストロボ露光量に影響を与えてしまう。だから、その時のAvに応じてストロボ発光量を調整せねばならなくなるが仕方無い。
ストロボ光の調整としてストロボの出力調整スイッチをいじるのも1つの方法だが、面倒であればストロボの照射距離を前後させればストロボ露光量は手軽に変えられる。
また、定常光とストロボ光の光量比を調整したい場合には、条件(1)と同様にカメラの露出補正機能を利用すれば良い。露出補正の操作はAvを変化させるが、露出補正しようがしまいがどのみちシャッタースピード優先AEではAvが変化するので、露出補正によって手間が特別増えるわけではない。

以上2つの条件を見比べると、なるべく条件(1)で撮れるほうが面倒が少ないことが分かる。そのためには曇りの日を選ぶことも有効だが、カメラもX接点の速いものを使うほうがその分条件(1)で撮れる範囲が広がる。
ちなみに我輩がメインで使っているマイクロフォーサーズカメラでは画面サイズが小さいせいか1/320秒と高速である。フルサイズカメラとなれば1/250秒くらいが限界。

なお、ストロボによっては、瞬間光でありながらフォーカルプレンシャッターの幕速より長く発光してX接点以上のTvが利用可能な「FP発光」と呼ばれる機能を持つものもある。これならばフォーカルプレンシャッターでも高速シャッター側に上限は無い。
ただし、シャッター幕速よりも長く発光を続けるうえ、高速シャッターでは定常光と共に減光されてしまい、実質的に利用出来るストロボ光が少なくなる(効率が悪い)。
そもそも、せっかくストロボが瞬間光ゆえに定常光と分けて光量比調節が可能であるのに、FP発光によって定常光の性質と同等になってしまうと、光量比調整が難しくなる。だから「FP発光」については、よほど絞りを開けたい時でない限り、ストロボとしてのメリットは無かろう。


●事前のイメージ

テーブルトップスタジオでも同様だが、ある程度の完成イメージを持っていなければ、無限にライティング調整が可能なだけに撮影現場で永遠なる試行錯誤に陥ることになる。
もちろん、初期段階では色々と試行錯誤を重ねる必要はあるが、自分に合うイメージは限られてくるので、そのうち目の前の風景に自分のイメージが浮かんでくるであろう。あとはそれが実際の写真として得られるよう努力・工夫するのみ。

なお次の雑文では、屋外ストロボの使用前・使用後の写真、及びその時のライティングの様子を紹介するが、これによって我輩のイメージが垣間見れるであろう。


(2014/09/24追記)
●手ブレへの注意

一般的なストロボ撮影では手ブレの問題はあまり無い。
しかし積極的ストロボライティングでは定常光の比率が高いので、手ブレの影響は無視出来ない。1/2秒などというスローシャッターであれば、わざわざ言われなくとも気を付けようが、1/30秒などという中途半端なシャッタースピードでは油断して手ブレとなることもあるので注意が必要。状況にもよるが、1/125秒でもブレることがあるので、ノンストロボ撮影と同じ意識でカメラを構えることが求められる。