2000/04/05
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カメラ雑文

[796] 2013年07月12日(金)
「フィギュア」


最近、ニュースまとめサイトで表示されるamazon広告で「フィギュア」と呼ばれる人形がよく目に付く。
また、画像掲示板などでフィギュア購入者が自分たちの所有するフィギュアを撮った写真をアップロードしているものもよく目にする。
それらは、いわゆるアニメ顔の2次元マンガをそのまま3次元の立体物としたもので、目が慣れないと奇異な印象を受ける。

<ニュースまとめサイトのamazon広告>
ニュースまとめサイトのamazon広告

最初のうちは「こんなものを撮るようになったら終わりだな」などと思ったものだが、そんなフィギュアもよく見ればかなり精巧な造形・着色で驚かされた。もちろん、造形ならばいったん型が出来上がれば大量生産も可能だとは思うのだが、こんなに入り組んだ立体物では型に流し込んでも抜けるのだろうか? そして、着色に関してここまで細かく施すには大量生産ではどうやるのだろうか? ・・・などと不思議に思う。これほど細かい仕上がりならば1〜2万円くらいするのかと思いきや(実際、映画主人公の外国製リアルフィギュアは3万円以上する)、大部分は5千円前後と予想外の安さ。
元々我輩は精巧なミニチュアを好むので、この値段ならば試しに1つ買ってみようかと考えた。そしてテーブルトップスタジオを利用してフィギュアの撮影をするのも面白い。

もちろん、アニメ顔のフィギュアは抵抗があるので、もっとリアル顔のフィギュアが無いかと検索してみたが、これがなかなか見付からないし、あっても値段が高い。
そこで手っ取り早く、今手元にあるディズニーアニメ「ファイヤーボール」のフィギュアを使って撮影してみることにした。これは2次元アニメーションではなく3次元CGのアニメーションなので、フィギュアとして立体物になっても違和感が無い。
関節可動式アクション・フィギュアなので、DVD映像を参考にして決めポーズで撮ってみた。

<ディズニーアニメ「ファイヤーボール」のドロッセル嬢>
ディズニーアニメ「ファイヤーボール」のドロッセル嬢

我輩も子供の頃は超合金のヒーローロボットを持っていたが、このフィギュアほど可動域は広くなかった。良い時代になったものだとしみじみ思う。このポージングのおかげで、様々なシーンが作れる。
しかし、何か物足りない。被写体が小さいので光が柔らかく回り込み過ぎてメリハリが無くなったせいか・・・?
いや、そんな問題ではない。

フィギュアの撮影は、撮影環境としてはテーブルトップスタジオであるものの、仕上がりとしてはポートレートであって欲しい。つまり、少しくらいの色気は必要かと思う。そうでなければ、商品撮影の域を出ないのでつまらない。

そこで、少々セクシーなフィギュアを入手してみようと思った。
とりあえずamazonのウェブサイトで検索して探してみたのだが、やはりフィギュアと言えばほとんどがアニメ顔。商品点数が多いので何時間もWeb上をうろついていたところ、段々とアニメ顔にも目が慣れてきたのか、めぼしいものを1つ見付けた。

さて、どうするか。
一線を越えてしまうことへの躊躇(ためら)いがあって注文ボタンを押すか押すまいか悩んだのだが、値段は6千円と平均的なので思い切って買ってみることを決意した。

数日後、フィギュアが届いた。
座った体勢のため縮尺はハッキリしたことは言えないが、おおよそ1/6スケールというところか。実際に手に取ってみると、思っていたよりも小さく感ずる。
それでも塗装は大変細かく、指先の爪の色まで塗り分けられているのが驚く。

ともあれ、早速撮影してみた。

<アニメ顔のフィギュアを入手>
アニメ顔のフィギュアを入手

撮影自体はなかなか面白い。というのも、自分の求めるセクシーさが写真に表れているかどうかという観点なので、結果に対してはかなりシビアになる。ただ単に光が回ってキレイに撮れているということでは終わらない。
だから、そこから「ああでもない、こうでもない」と撮影に対するこだわりと追求が生まれる。

今回の場合、やはりアニメ顔特有の難しさを感じた。2次元のアニメ顔を立体に起こしたものであるから、アングルによっては少々不自然に感ずる。
2次元の原画は一枚絵として完成されたもの。それは、限定されたアングルから見たものだ。ところがフィギュアではあらゆる方向から眺めることが出来るので、全角度に対して完成形ということは難しい。
だから写真に撮ろうとしても、結局は原画(あるいはフィギュアのパッケージ写真)に近いアングルに落ち着いてしまう。

だが、たとえ撮影アングルが限定的になったとしても、それでもフィギュアには立体としてのメリットがある。それが「ライティング」と「背景」が調整出来るという点であろうかと思う。

我輩はこれまで、テーブルトップ撮影では背景として無地あるいはグラデーションのものしか使ったことが無い。
しかし今回、背景に柄(ガラ)を配置したく思い、むら染めハワイアンキルトを使ってみた。これはいわゆる「ムラバック」と呼ばれる背景として使える。フィギュア撮影用とするならば大きさも1x1メートル程度で足りよう。このサイズだと1種類あたり1,000円程度と手頃な値段。

撮影結果としては、「まあこんなものだろう」という程度には仕上がったと思う。
我輩自身使い慣れていないムラバックのため、今後の技術向上の必要性を感ずるものの、ムラバックによって場の雰囲気を表現するとフィギュアのキャラクターとしての存在感が増すことを実感出来た。これは1つの成果である。

<背景にムラバックを使用>
背景にムラバックを使用

だがそれにしてもフィギュアは小さく、ライティングでは難儀させられる。
元々2次元のアニメ顔は鼻が小さく目立たぬよう描かれており、フィギュアになっても鼻は小さな盛り上がりでしかない。ところが下手なライティングをしてしまうと鼻の陰が強調されてしまい、見た目がおかしなことになることもある。

まあ、これはこれでそのうち何とかしよう。今はまだフィギュア撮影の経験は浅く、いつかまた新しい工夫が出来るようになれば撮り直せば良い。

ただし今回は、もう少し縮尺の大きなフィギュアで撮影したい。やはり、顔はリアル路線。我輩は既に一線を越えているので、フィギュアに対して躊躇いは無くなった。

とは言っても、縮尺が大きくなると全身像ではテーブルトップ撮影の域を越えて手に負えなくなるので胸像のものとする。
細かい経緯は省くが、次なるモデルとしてのフィギュアを加えるに至った。

<リアル顔の胸像フィギュア>
リアル顔の胸像フィギュア

これは全身像ではないので縮尺はハッキリしたことは言えないが、おおよそ1/2スケールというところか。
髪型はアタッチメント式で交換が可能。髪型が違うと雰囲気もガラリと変わるので、撮影のバリエーションが増えるのが良い。

早速、ムラバックを使って撮ってみたのが以下の写真。

<ムラバックを使って撮影-その1>
ムラバックを使って撮影-その1

一応、顔面と眼球も交換式にはなっているが、現状では顔面は1種類しか無く、その顔面も青眼が似合わないので、実質的には交換の余地は無い。

<ムラバックを使って撮影-その2>
ムラバックを使って撮影-その2

今回のライティングには特段の演出があるわけではないが、表現として気を付けたところは"鼻の立体感"と"胸ポチ"の存在感である。どちらもこのフィギュアでは重要ポイントであり、その特徴を消すようなライティングは失敗と位置付けたい。

<ムラバックを使って撮影-その3>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
ムラバックを使って撮影-その3

従来、我輩がメインと位置付けている照明装置は1000W/Sのスタジオ用ストロボ(COMET製ダイナライトM1000)なのだが、これは大光量を用いて最小絞りでの撮影を可能とするための機材であり、中判カメラでの商品撮影を前提としたものであった。

しかし35mm判やAPS判のような小フォーマットではあまり絞り過ぎると回折の影響が大きくなるし、そもそも今回のようなポートレート的な撮影では絞りはなるべく開放絞りとしたいところ。
そうなると、スタジオ用ストロボでは出力が大き過ぎるので、ここではマニュアル調節の出来る小型のクリップオンストロボを用いた。

それぞれのクリップオンストロボにはスレーブユニットを付けてコードレス状態で配置。テーブルにゴロンと直置きしたり、ディフューザー(透過光拡散板)の上に載せたりしている。
スタジオストロボ用のアームが遊んでいるので、ディフューザーを天板とするための支えとして使った。
ちなみにディフューザーは乳白色の養生シート及びアクリルシート、レフ版は画用紙を何枚か用いている。

最初は1灯から始まり、色々と調整していくうち結果的に3灯に増えてしまったクリップオンストロボ。場当たり的に灯数を増やすのは我輩の美学に反するが、いずれはレフの配置を最適化し灯数を整理しようと思う。

<フィギュア撮影の様子>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
フィギュア撮影の様子

以上が、今回のフィギュア撮影についての話であったが、さすがにこれくらい縮尺の大きいフィギュアでは微妙なライティングの違いが反映されるので、ある意味、難しくもあるし面白くもある。
我輩にとってポートレートは慣れない分野だけに、試行錯誤の連続で時間ばかり経ってしまうが、フィギュア相手ならばどんなに時間がかかっても気にかける必要も無い。いや、いくらポートレート撮影に慣れていようとも、挑戦的、あるいは実験的なライティングはそうそう試す機会は無かろう。

今後、生身の人間相手のポートレート撮影の機会があれば、フィギュアでのライティング経験が役に立つであろうし、場合によっては事前のライティングシミュレーションとしても使えるのではと期待する。

そして最後に付け加えるが、撮影対象となるフィギュアそのものを愛すことも何より重要かと思う。もしそうでなくフィギュアをただの物として見るのであれば、ライティングを極めようとする気持ちも中途半端に終わってしまうに違いない。

なお、今回の胸像フィギュアはリアルとは言ってもディフォルメが全く無いわけではないので、多少不自然に思えるアングルがあるのは確か。
今後は、もう少し造形の凝ったものを対象とすべく手筈を整えたい。