2000/04/05
OPEN

表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
 AE-1P
 AE-1
 newF-1

PENTAX
 K1000
 KX
 KM
 LX
 MX
 MZ-5
 MZ-3
 MZ-M

OLYMPUS
 OM-3Ti
 OM-4Ti
 OM-2000

CONTAX
 ST
 RTS III
 Aria
 RX
 S2

MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[795] 2013年05月29日(水)
「ポタ赤ガイド撮影(その1)」


我輩が初めて天体写真を撮ったのは、三脚固定設置で撮影する星夜写真で、オリオン座の日周運動を捉えたものであった。
使用したのは「Konica C35EF(ピッカリコニカ)」というコンパクトカメラで、シャッターは単速レンズシャッターではあったが、レンズ後端に位置するシャッター羽根を指で広げてセロハンテープで開きっ放しにし、その状態でフィルムを装填して強引にバルブ撮影した。

もちろん、バルブ撮影が済めばシャッター羽根を固定したセロハンテープを剥がさねばならないが、そのためにはフィルムをいったん巻き戻す必要がある。そしてフィルム再装填時には撮影済み分の終わりまで巻き上げるわけだが、手違いで1コマダブってしまい、オリオン座に飼い猫の写真が被ってしまった。まあ、2枚撮影したうちの1枚なので問題無かったが。

<オリオン座に飼い猫が被ってしまった (※心霊写真ではない)>
オリオン座に飼い猫が被ってしまった (※心霊写真ではない)
[Konica C35EF(ピッカリコニカ)/恐らくASA100] 1980年前後?

その後、貯金して一眼レフカメラ「Canon AE-1」中古ボディの入手を果たしたものの、しばらくは交換レンズを買う金を工面出来なかった。当然、一眼レフではボディのみでの撮影は出来ないわけだが、当時たまたまVixen製6cm屈折天体望遠鏡を持っていたので、望遠鏡ドロチューブ部に「AE-1」を紐で縛りつけて惑星など撮ったりした。露出はVixenのガイドブックを参考にした。
しかしその天体望遠鏡の台座は、上下左右にしか動かせない「経緯台」であり、回転動作によって天体の日周運動を打ち消す「赤道儀」ではなかった。そのためスローシャッターになると天体の動きを追い切れずブレ写真となった。

北極星を軸とした天体の日周運動に同調させながらバルブ露光にて撮影することを「ガイド撮影」と言うが、ガイド撮影には赤道儀の他に「モータードライブ」という電動駆動装置も必要になる。もちろん手動でも動かすことは出来るのだが、その場合は望遠鏡で見ながら微動ハンドルを回す必要がある。しかしそうなると、撮影用の望遠鏡とは別に、ターゲットが外れないよう目で捉え続けるガイド用の望遠鏡も必要になる。なぜならば、バルブ露光中は一眼レフカメラのファインダーはブラックアウトして何も見えなくなってしまうからだ。

<星の日周運動に合わせて極軸を中心に回転する赤道儀>
星の日周運動に合わせて極軸を中心に回転する赤道儀

要するに、ガイド撮影を実現するにはまとまった出費が避けられないということである。当時小中学生だった我輩にはまず不可能な話だった。
小遣いやお年玉を貯めてはいたものの、その貯金の目的は、当時喉から手が出るほど欲しかったスーパーカメラ「Nikon F3HP」を買うためのものであり、とても赤道儀までは回らない。今から思えば、この貯金で「Nikon F3HP」の購入が果たせなかったことを考えると、赤道儀購入は夢のまた夢であった・・・。


さて、今年のゴールデンウィークでは一人旅をすることを考えていたが、また同時に家族旅行もしたいと思った。まあ、今年は10連休になるので、日程的には余裕だろう。
しかしながら、豚児は学校があくまでもカレンダー通りの休日となる。今年のカレンダーによれば休日は前半と後半に分かれ、前半は4月27日(土)〜4月29日(月)の3連休、後半は5月3日(金)〜5月6日(月)の4連休となっている。つまり、間に3日間の平日を挟んでいる。

我輩としては、前半に家族旅行に行き、2日ほど休んだ後、車中泊一人旅に旅立とうと考えた。むしろ、渋滞のことを考えると、前半の連休が終わった後の平日に出発するほうが得策であろう。

そこで問題となるのは、一人旅の行先。
去年のゴールデンウィークは自宅千葉県から島根県まで運転した。今考えると、よくやったものだと感心する。しかし今年は家族旅行をした後の日程である。あまり遠くへは行けまい。体力的にももちろん、金銭的にも負担が大きい。

そうかと言って近場で済ませるにはせっかくのゴールデンウィークがもったいない。近場ならば通常の週末、あるいは有給休暇などを1日をくっつけて3連休などで事足る。
遠過ぎず、近過ぎず、微妙なところを考えながら地図を眺め、自宅を中心とした円を頭の中に描いてみる。

一人旅の目的としては主に、「地質巡検」、「一般観光」、「生活行動」の3点である。

「地質巡検」とは、火山・温泉、そして河川・海岸地形などの地質的特徴を巡るもの。
これは地質的な意味合いが大きいため、写真的な美しさや驚きなどはあまり重要視しない。見た目が地味な、例えば一見するとただの崖でしかないような場所であっても、地質的な意味合いが深ければ数百km旅する価値はある。

「一般観光」とは、一般人が観光として楽しむルートを辿るもの。
これは主に旅情を感ずるためのもので、自宅を遠く離れたことを実感するためでもある。

「生活行動」とは、その地域の一住民として生活するもの。
新しい街に引っ越してきた時の新鮮な気持ちを疑似体験することにより、帰宅した後も普段見慣れた光景を新しい目で見ようとするものである。観光地であっても一般的なスーパーで買い物をしたり、路地を歩いたり、映画館に入ったりする。
これは観光が一通り終わった後の滞在最終日に行うことが多い。

これら3点を満たす適当な地域を考えるのはなかなか難しい。
例によって旅行計画は2転3転し、最終的には福島辺りということになりつつあった。福島は浄土平での登山で何度か訪れている地ではあるが、他に検討する時間も無くなり、無難な選択として落ち着いた。
ただ、これまでの福島行きは日帰りが主で車中泊はあまり経験が無く、今回改めて宿営地と銭湯の調査をせねばならない。

当初、道の駅で車中泊するいつものパターンを検討していたが、ふと、「浄土平駐車場ではどうか?」と思い至った。
ここならば広いしトイレもあるので車中泊には問題無い。そして車中泊なので火山の巡検では時間に追われることも無かろう。ジックリと時間をかけた巡検により新たな発見もあるかと期待する。

<浄土平>
浄土平
[MINOLTA α-707si] 2007/05/29

そしてさらに、ここが天体観測に適した地であることも思い出した。車中泊するならば、星野写真も撮ってみるのも面白い。
そこでふと、思った。「星野写真を撮る・・・? 一体どうやって?」
普通に三脚にカメラをセットして撮影しようにも、ある程度シャッターを開けておくと日周運動が写ってしまう。それでは小中学時代の写真と大差無いではないか。素晴らしい星空が期待出来るならば、ガイド撮影で星雲など写し込みたい。

望遠鏡に接続しないカメラ単体のガイド撮影ならば、「ポータブル赤道儀」、通称「ポタ赤」というカテゴリの製品を求めれば良い。これは望遠鏡ではなくカメラを載せるだけに特化したコンパクトな赤道儀で、価格も割安。
検討した製品は、昔から気になっていた、逆に言うと昔からあった「Vixen GPガイドパック」及び「Kenko スカイメモ」であった。
しかしながらいくら割安だとは言っても、それは赤道儀付き天体望遠鏡と比較した場合の話。これらは6〜7万円くらいする。天体写真が第一の趣味というならばまだしも、少なくとも現時点での我輩の趣味としては優先度が低い。そもそも今回は、車中泊のついでに撮る星野写真。せめて4万円以下でなければ厳しい。

まず考えたのが中古品。
ネットオークション等で調べてみたのだが、キーワードを色々と変えたりして検索したがなかなかヒットしない。たまたま出物が無いタイミングだったか?
そんな時にある製品が検索ヒットした。
見るとそれはVixen製で、ポタ赤の中でも更に超コンパクトな、雲台形態の「ポラリエ」というものであった。

「ポラリエ」は手のひらサイズで、既存のカメラ用三脚の上に載せて使う。
仕様表によれば、単三電池2本駆動で2時間動作すると記載されている。最大荷重は雲台含めて2kgで、星野写真としては一般的な広角レンズを使うことを前提とした製品とのこと。
価格は約4万円と、「Vixen GPガイドパック」等の一般的ポタ赤に比べると確かに安価ではあるが、広角前提の精度というのは少々物足りない。出来ればそれなりに望遠レンズを装着して星雲なども撮ってみたいのだ。

探してみると、他にもオルゴールタイプのポタ赤というのがあるようで、これはネジを巻くと回転が始まるとのこと。電池が必要無いというのがメリットだが、驚くことに動作中は本当にオルゴールの音楽、しかも「きらきら星」のメロディーが流れるというのだから最初は冗談かと思った。ウェブ上のユーザーレビューを読むと、「ガイド撮影中、オルゴールの音が鳴るのが恥ずかしい」というものがあって笑える。

それ以外にも、「TOAST-Pro」という比較的精度の高いポタ赤が見付かった。これは100mmレンズ装着カメラでガイド可能とのことで、「ポラリエ」よりは精度が高い。
しかし精度が高いためか価格が約9万円と、このカテゴリの製品としては高価。もしこれだけの金を出すのであれば、むしろ通常の赤道儀に準ずるポタ赤「Vixen GPガイドパック」のほうが良いのではないかとも思える。どのみちクルマ移動なので、無理にコンパクトでなくとも良い。

そんな時にちょうど、ネットオークションで「TOAST」の初期型というものが即決価格4万円にて出品された。
初期型という説明は少し引っかかったが、それでも「ポラリエ」よりは精度は高かろうと勝手に想像した。それが4万円とはかなり魅力的な値段である。よし、これを落札することに決めた。
ところが、改めて中古価格の相場や初期型の性能を調べたりしている隙に他の者に落札されてしまい、残念ながら入手は果たせなかった・・・。

しかし、せっかく固まった購入意志が解消するわけではない。何が何でもポタ赤を買うという気持ちとなり、その後、必死になってネットオークションや天文関係のネットショップで探し始めた。
それでもなかなか該当する製品は出てこない。たまに5万円弱の「Vixen GPガイドパック」の型落ち品がヒットすることがあったが、実際は品切れでガッカリ。

毎晩毎晩、色々と検索キーワードを変えながら探していたところ、ある製品が目に止まった。
それは「如意設計工房」という個人業者が製造した「Higlasi」というポタ赤で、外観は「TOAST-Pro」に似ている。価格も4万円台とちょうど良いではないか。
当初は、「個人製造でそのような精巧なものが作れるのだろうか?」と疑問に思ったのだが、開発経緯を綴ったブログを読んでいくうち、我輩は「これだ」と膝を叩いた。

カメラの分野でも、個人製造の「安原製作所」が有名である。ただし設計は自分でやっても実際の製造は中国メーカーへの委託。
ところが「如意設計工房」では、ブログを読むと分かる通り、パーツ単位での外注業者発注をしているものの、製品としての組立や調整まで行っている。

また、精度追及の姿勢は商売の枠を超えており、常に新たな方策が練られ、製品としての着実なバージョンアップに反映されているようだ。
現時点では「Higlasi-2A」が最新の製品とのことで、最大荷重3.5kg、そして300mmレンズまで対応出来るというから驚く。この精度については、機械的な精密さはもちろんのこと、日周運動に同調させるための赤道儀の回転軸、いわゆる「極軸」が精密に合わせられることが前提であることは言うまでも無い。

通常の赤道儀では、極軸合わせは北極星をターゲットとして極軸に小さな望遠鏡(極軸望遠鏡)を仕込んで十字線に合わせる方式が一般的。しかし超小型のポタ赤の場合、筐体が小さいため極軸望遠鏡が設置出来ないものが多く、そういったものは素通しの覗き穴を通して北極星を導入することになる。そうなると当然、極軸合わせは大雑把にならざるを得ない。
ところが「Higlasi」の場合、覗き穴を通して北極星を導入するまでは同じだが、その後は「カーチス・デジカメ法(DPPA)」という手法を使い、理屈としては限りなく正確に極軸を合わせることが可能である。

この「カーチス・デジカメ法」とは、デジタルカメラの即時性を活かした手法で、雲台を早回しすることで短時間に回転軌跡をデジタルカメラで写し込み、赤道儀の回転中心が現在どこに向いているのかを知る仕組みだ。その結果、もし回転中心が北極星からズレているのであれば(極軸ズレ)、そのズレを改めて微調整して、再度軌跡を写し込んでチェックを行えば良い。それを何度か繰り返して極軸ズレを追い込んでいけば精度も上がることになる。
実際の撮影レンズを用いて調整する関係上、極軸ズレにシビアな望遠レンズでも望遠の分だけ像が拡大され、注意深く調整さえすれば、理屈上ズレはほとんど無くせることになる(※)。
(※日周運動の回転軸は正確には北極星の位置とは一致していないので、もし極限的な精度を狙うならば真の極軸に合わせることが必要。)

<カーチス・デジカメ法のイメージ>
カーチス・デジカメ法のイメージ

ちなみに、「カーチス・デジカメ法」での早回し動作時、「Higlasi」本体とカメラをリモートケーブルで繋いでおけば、回転スタートのタイミングで自動的にシャッターが開き、回転終了時には自動的にシャッターが閉じる。そのため手動操作が不要となり手間が省ける。
このリモートケーブルはカメラごとに種類が違うわけだが、市販のリモートケーブルを「Higlasi」に合うよう有償で加工してくれるとのことで、我輩は「Higlasi-2A」注文時に「OLYMPUS OM-D E-M5」用のものを加工お願いした。

注文時期はゴールデンウィークの1週間前。ちょっとギリギリかと思ったが、3日後には手元に届いた。
開封して手に取ってみると、個人業者の製品とは思えぬ立派な仕上がりのポタ赤で、思わず笑みがこぼれる。

<ポタ赤 「Higlasi-2A」>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
ポタ赤 「Higlasi-2A」

セッティングにはカメラ用の三脚が必要になるが、これまでは重量級のため主に室内でしか使っていなかった「Velbonフィールドエース」を使うことにした。
この三脚の剛性感は大したものだが、3段階に開く脚によって地面スレスレにまで重心を下げることも出来るので、安定性を重視するガイド撮影には最適であろう。
また、「カーチス・デジカメ法」を行うにあたり、微動調整するための雲台として「低重心ガイドマウント」(9千円)も天文ショップで調達し、赤道儀と三脚との間にセットした。

<カメラをセットした状態>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
カメラをセットした状態

以上で機材は揃った。
ところが肝心の天気について、予報によればゴールデンウィーク中は安定せず、晴れたとしても雲が多くなるというではないか。天体撮影では雲1つ無い快晴を要求するから、困ったことになった。
浄土平は標高が高いため、下界では曇っていたとしても浄土平では晴れているという現象もあるかも知れないが、時間と費用をかけて行くことを考えれば、そのような不確定要素を前提とした計画を立てるのは難しい。

またそれだけでなく、浄土平facebookを見ているとまだまだ残雪があるようだ。いや、残雪というレベルではない。日によってはいまだに吹雪もあるらしい。
そもそも、夜間は浄土平へ通ずる「磐梯吾妻スカイライン」が路面凍結のため通行禁止となっているとのこと。もし行くならば、日中のうちに現地に到着しておかねばならぬ。
これは、当初考えもしなかったことであった。ゴールデンウィークでこのような状態になっているとは・・・。

もちろん車中泊ついでの天体撮影のつもりではあったが、せっかく機材を調達したこともあり、最初から天体撮影が不可能であると知りながら出発することには抵抗がある。
色々と計画を練り直したりしたが、考えているうちに時間オーバーとなり、結局今回の車中泊は取りやめとなってしまった。

そこで改めて、クルマで1〜2時間くらいの範囲にて撮影場所を求めることにした。それくらいの距離ならば、仮に曇ってきて撮影が不可能となっても、そのまま自宅へ帰って寝れば良いだけの話。時間的にも費用的にも、そして心理的にもダメージは少なかろう。
ただし近場ということは光害、つまり街明かりが避けられないということでもあるが、いくら観測条件が良くても初めてのガイド撮影でいきなり100点満点の結果は得られまい。今回はあくまでもテスト撮影という位置付けで臨むこととする。

撮影予定地はウェブ検索でアタリをつけることとし、その結果幾つかの候補を得た。
それらのうち、クルマで1時間程度の距離にある某河川敷とすることにした。そこは某天体撮影ブログに紹介されていた河川敷であるが、他人様の開拓地を我輩が勝手に宣伝するのも問題があろうかと思うので具体的地名は伏せておく。
ちなみに、その河川敷から少し先に行くと昔の街並みの残る観光地があるので、その観光地に行くついでに河川敷へ寄る計画とした。我ながらムダが無い。

テレビ報道を見てみると、ゴールデンウィークの渋滞は激しいようだ。自宅近くの幹線道路は年中渋滞気味なので、それに輪をかけた渋滞があるわけか。家を出るならば、ヘタに午前中に出るよりも午後くらいのほうが渋滞も落ち着くのではないかと考えた。

そういうわけで、当日は昼近くに出発した。
だがやはり幹線道路に出ると流れが滞り、いつもならば5分程度の距離が30分くらいかかっている。途中で引き返して家に帰ろうかと何度も思った。しかし1時間くらいノロノロ走っていると、やがて流れが良くなってきて、川沿いの道に入った途端にほぼノンストップ状態となった。
途中、撮影予定地にさしかかったので、ロケーション確認のため立ち寄った。
そこは広々として開放的な場所であった。そこそこ整備されており夜間も開放されている場所には思えないのだが?

<某河川敷>
某河川敷
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2013/05/03 12:45

いずれにせよ、ここまで来たらウェブ情報を信ずるしか無い。
とりあえずそこを出て、日中の目的地である観光地へ行き、夕方になって再び河川敷へ戻ってきた。駐車場に停めた後、途中のコンビニエンスストアで買った弁当を食べながら空を見上げた。
これから天体写真を撮ろうとするにしては雲が多くなってきた気がする。
もしこのままの状態であれば撮影は断念せざるを得ないが、西の空は雲が切れており、そちらのほうから晴れてくれることを祈りたい。

<この雲が払われねば撮影は断念せざるを得ない>
この雲が払われねば撮影は断念せざるを得ない
[Nikon D600/12-24mm/ISO400] 2013/05/03 18:42

陽が暮れるにつれ、河川敷にいた他のクルマが次々に出て行く。
我輩の知っている河川敷では、夕方17〜18時くらいに門限となり夜間はクルマの出入りが出来ない。しかし時計を見ると19時に近い。この時点でクルマの出入りが可能ということは、やはりここでは門限が無いということだ。

暗くなると河川敷にはほとんどクルマがいなくなったが、それでも遠くに数台いるようで、時々バイクやクルマが目の前を往復して行く。ヘッドライトが撮影の妨げになるので、もしこういう状態が続くようならば駐車場付近での撮影は難しいだろう。

空を見上げると、雲は段々と払われてきた。このまま待っていれば完全に晴れることは間違いない。
また同時に、寒さを感ずるようになってきた。後部座席はトランクスルー状態にして布団を敷いてあるので、毛布に潜って寒さをしのぐ。

20時を越えると空は夕方の赤みが無くなったのだが、地表近くには薄明かりが残ったまま。しばらく様子を見ていたが、これ以上は暗くならないと判断して撮影に取りかかることとした。雲はもはや全く無くなった。

<雲は見事に払われた>
雲は見事に払われた
[Nikon D600/12-24mm/ISO400] 2013/05/03 20:17

気温が徐々に下がって寒くなってきた。日中は暖かかったので上着などは持ってきておらず、少し後悔した。しかし凍えるほどではないので何とかなろう。
三脚と「Higlasi」一式、そしてカメラを担いで河川敷のフィールドのほうへ移動。空は期待したほど暗くは無いものの地面は真っ暗。もし穴があっても気付かずハマッてしまうだろう。

適当な場所に三脚を設置し、その上に「Higlasi」を載せてネジ穴に固定。
カメラは「Higlasi」用のリモートケーブルのある「OLYMPUS OM-D E-M5」を載せたのだが、スイッチを入れるとライブビュー画面が妙に眩しい。それに星空相手にAFは不可能なので、MFにて無限遠のピントを出そうとしたがこれがかなり難しい。拡大ビューにしても星が見えない。

結局、今回は「E-M5」を諦めて一眼レフ機の「Nikon D600」に換えることにした。
これならばファインダー像は実映像そのままなので、さすがに画面が眩しいということは無く、星もそ幾つか見えた。
とりあえず、交換レンズは星野写真らしく魚眼レンズを使うことにした。シグマ製15mmの対角線魚眼を装着してMFにてピントを合わせた。しかしファインダースクリーンに映る星の点がアウトフォーカスでも小さい状態なので、何度かシャッターを切って像を確認しながらピントを追い込んだ。

その後、「Higlasi」の極軸合わせを行う。
最初のセッティング時には覗き穴から北極星を導入して極軸を大ざっぱに合わせておいたのだが、例の「カーチス・デジカメ法」で更に精度を上げておこう。
北極星が入るようにカメラを北天に向け、感度をISO6400にまで上げる。なぜならば、「Higlasi」が10秒程度で早回りするためその時間の露光で写るよう感度を上げねばならぬからだ。

「Higlasi」の「DPPAモード」で動作させると、400倍速の回転が始まる。そのタイミングでリモートケーブルを使ってシャッターを開ける。軽い作動音を出しながらカメラがゆっくりと回転していくが、44度回ったところで回転が停止するので、そこでシャッターを閉じる(改造リモートケーブルがあれば、シャッターの制御も「Higlasi」がやってくれる)。

今回は早く本番撮影にとりかかりたいという気持ちから、大体合っているなという程度で調整を終えた。

<400倍速の早回しで極軸を確認するカーチスデジカメ法>
400倍速の早回しで極軸を確認するカーチスデジカメ法
[Nikon D600/SIGMA-FISHEYE15mm/ISO6400] 2013/05/03 20:41

まず「D600」の撮影モードを「Mモード」にしようと思い、軍艦部液晶の照明を点灯させたのだが、軍艦部液晶には撮影モードが表示されないので困った。仕方無いので背面液晶画面をinfo表示させたところモード表示は出ているが、背面液晶画面は暗闇では眩しいし、モードダイヤルは暗くて見えないので回す方向は手探り状態。
やっと「Mモード」にセットすることが出来たものの、どうも納得がいかない。「Nikon D700」では少なくとも軍艦部液晶にはモード表示があったものだが、なぜに「D600」には無い?

さて、特にターゲットとする天体は考えていないので、適当に写りの良さそうな方向にカメラを向けて撮影を開始した。ステッピングモーターの、刻むような動作音が小さく聞こえる。
魚眼レンズなので、撮影を始めたら自分が写角に入らないよう気を付けねばならぬ。

<Nikon D600にてガイド撮影中>
Nikon D600にてガイド撮影中
[OLYMPUS OM-D E-M5/7-14mm/ISO200] 2013/05/03 21:03

露出値が分からないので結果を見ながらの調整であるが、やはり空が明るいせいで露光を与え過ぎると画面が白くなってしまい、結果的に暗い星が写らない。そうなるとそれほど長時間露光とはならないわけで、わざわざガイド撮影せずとも、固定撮影でも同じ結果が出せそうにも感ずる。
しかしせっかくのポタ赤であるし、そもそも今回はガイド撮影のテストを兼ねているので、ここは敢えて絞り込み、30秒〜5分程度の長時間露光となるよう調整してガイド撮影とした。

<魚眼レンズにてガイド露光 (30秒露光)>
魚眼レンズにてガイド露光
[Nikon D600/SIGMA-FISHEYE15mm/ISO1250] 2013/05/03 20:56

小さな画像では分かりにくいが、拡大すると風景が僅かに流れて写っているのが分かる。そしてその風景とは対照的に、星の点像は流れること無く点として写っている。これは紛れもなくガイド撮影の証。
赤道儀を持たぬこれまでの我輩には撮れなかったガイド撮影。それが今、撮れるようになったのである。まさに革命的と言っても言い過ぎではない。

<景色が流れ、星が静止しているのはガイド撮影の証 (158秒露光 トリミング)>
(※画像クリックでより広範囲な画像が別ウィンドウで開く)
景色が流れて星が静止しているのはガイド撮影の証
[Nikon D600/SIGMA-FISHEYE15mm/ISO1250] 2013/05/03 21:16

最終的に、今回の撮影総数は約20枚となった。うち、数枚は120mm望遠レンズで撮影したものだったが、ピント合わせに難儀してボケてしまった。三脚を安定性重視で低くセッティングしたため、ファインダーが覗きにくかったのが原因の1つかと思う。とは言うものの、注意深くピントを合わせる方法があったはずだが、気温が更に下がって大変寒く、とても落ち着いて調整出来るような状況では無かった。
またそれから、やはり寒さのせいで撮影機材に露が付き始め、撮影するたびにレンズ面を拭かざるを得なくなり、結局は1時間ちょっとの撮影で撤退を余儀なくされた。

しかしそれでも、ガイド撮影についてはそれなりの手応えは得られた。もっとロケーションが良く、そして慎重にセッティングをし、目的の天体を絞って根気強く撮影すれば、カメラやポタ赤などの機材はそれに応えて結果を出してくれるに違いない。
今回、その確信が得られたという意味では良かった。

さて、次回のガイド撮影の予定はまだ立っていないが、今回の雑文タイトルは(その1)としておき、次回の(その2)へ続くよう期待を込めたい。