2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[783] 2012年12月13日(木)
「一眼レフカメラでないことの利点」


一眼レフカメラ。それは、存在自体が特別なものである。

我々カメラマン(プロ・アマ問わず)ではあまり意識しないことであるが、一般人にとっての一眼レフカメラは、オーラを放つ別次元のカメラという位置付けである。
と言うのも、カメラに詳しくない者であっても「一眼レフ」という言葉には過剰な反応を示す。それほどに「一眼レフ」という言葉の一般認知度は高く、また思い込みも大きい。

そもそも一眼レフカメラは、ファインダープリズムの三角屋根が特徴的なシルエットを持つため外見的に分かり易い。
黎明期にはその独特な形状に対する抵抗感を和らげるため、その三角屋根が目立たぬよう両肩を上げたデザインをしたり(Nikkorex auto35等)、ミラーを使って巧みに三角屋根を無くしたり(FOCAFLEX等)と、今見ると大変おかしなカメラが登場している。
今では反対に、一眼レフカメラを模してダミーの三角屋根を付けたカメラ(Panasonic LUMIX DMC-FZ10など)や、おもちゃのカメラでさえ三角屋根を付けたりしている。
それだけの存在感を持つ一眼レフカメラであるから、使用シーンは適切に選ばねばならぬ。

昔、女友達を都庁をバックに「Nikon F3」で撮影しようとしたところ、警備員に「商業撮影は許可無くしては出来ない」と言われたことがあった。周囲を見ると、コンパクトカメラで記念撮影しているカップルなど観光客は多くいたが、彼らに対しては特に警告する様子は無かった。

それとは逆のケースとして、ショッピングモール内で豚児と歩いていると、店員に「着ぐるみキャラクターとの記念撮影を撮りませんか」と勧められたことがあった。「えっ?」と思って見れば、カメラ付携帯電話やコンパクトカメラを手に撮影待ちをしている家族が並んでいた。本来、施設内は撮影禁止のはずだが。

要するに、撮影を咎められるかどうかのボーダーラインは、実は曖昧であると言える。施設として撮影禁止の規則があったとしても、運営側の判断と裁量でコントロールされる部分がある。推測するに、私的利用のための写真かどうかというところを見ているのだろう。そしてその判断は、見た目によるいわゆる"印象"で切り分けたものに他ならない。その印象を決める要素は幾つかあろうと思うが、その1つとして「一眼レフカメラかどうか(※)」というところが大きく影響しているであろう。
(※それがミラーレスカメラであろうと形状が一眼レフ的であれば該当する。)

もちろん、コンパクトカメラであろうと記念撮影であろうと例外が認められず厳密に撮影が制限される施設もある。
以前、商談のため某企業の工場施設内に入ったことがあったが、守衛所にて携帯電話カメラのレンズ部分に特殊な貼り直し不可能なシールを貼られた。そして帰り際に、シールが剥がされた跡が無いかをチェックされるのだ。
こうした場所では、撮影するためには申請書が必要で、正当な理由無くしては許可は下りない。許可が下りた場合には撮影許可の腕章が支給され、撮影中はその腕章を外してはならない。
だがここまで厳正な運用は日常生活ではあまり見られないはずだ。

また逆に、こういうこともあった。
某自動車メーカー本社ビルのロビー内ショールームにて展示車を見ていた時、コンパクトデジタルカメラや携帯電話で展示車両の写真を撮っている者も何人かいたので我輩も撮ってみたくなり、当時愛用していたNikonのクールピクスをカバンから取り出した。しかし本社ビルにあるショールームなので一応確認しておこうと、近くにいた案内嬢に「展示車を撮っていいですかね?」と気軽な気持ちで訊いてみた。ところがその質問は想定外だったらしく案内嬢は戸惑い、「しょ、少々お待ちください」と言って5分ほど待たされた後、ようやく戻ってきて「撮影はご遠慮下さい」と言われてしまった。恐らく上司に確認しに行ったものの撮影についての規定が無く、色々確認したり考えたりしたが、「断っておいたほうが無難だろう」という結論になったのではないか。
別の日に同じショールームを再訪したところ、やはり普通に展示車を撮っている者は多くいた。

このケースでは我輩も良くなかった。相手にYesかNoかの判断を迫ったのだから、相手はそれなりに決断せざるを得なくなった。もし撮影についての規定が無ければ、担当者は安全を見て撮影拒否の返答をするのは当然のこと。それが自分にとって無難な判断である。ヘタに自分の判断で許可して後で社内で何か言われてはたまらない。撮影行為は同じであっても、「勝手に撮っている者がいたが、特に撮影の規定が無かったので見過ごした」というのと、「撮影の許可を求めてきたので自分の判断で許可して撮影させた」というのとでは、責任の所在が全く違ってくる。
我輩はこの場合、そのショールームではヘタに許可を求めず皆と同じように勝手に撮れば良かったのだ。

しかしながら、もしここで一眼レフカメラ(あるいは一眼レフに見えるカメラ)を使ったらどうなったろう。
一眼レフカメラというのは、その存在自体が特別であることは冒頭にも述べた。そしてその存在自体が「特別な意図を持った撮影である」ということを示す記号(象徴)となるため、無言で撮っていても相手にYesかNoかの判断を迫る行為となりかねない。

カメラマンは、撮影のためならば周囲の目を気にせぬ者も少なくない。もちろん多少の図々しさが無ければ良い写真が撮れないことも事実であるが、しかし逆に、空気が読めぬことが結果的に自分の首を絞めることに繋がることも知っておかねばなるまい。

我輩は、日常メモ撮影用途としてコンパクトカメラを使いたいと思う。
それは、持ち運びの利便性を求めるからではなく、その場の空気を刺激せず、撮影する際の障壁を避けるためである。多少の操作のしにくさや画質の悪さがあろうとも、日常メモ撮影用途としては非一眼レフであることの利点は大きい。

出来れば、一眼レフカメラと同等な写りをするコンパクトカメラがあればそれに越したことは無い。