2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[723] 2011年03月19日(土)
「メモ撮影にクオリティを求める真の理由」


坂本龍馬は、日本に黒船が来航した時に大変な衝撃を受けた。
黒船のような巨船を建造・運用出来る大国アメリカに逆らえば、日本はアメリカに占領されて国を失うだろう。
どうすれば日本を異国から守ることが出来るのか。龍馬は真剣に悩んだ。

当時、龍馬は千葉定吉が運営する千葉道場に通っており、剣術の修行に励んでいた。
しかし黒船の威容を目の当たりにした龍馬は、文字通り刀では太刀打ち出来ないと悟り、剣術の修行に身が入らなくなってしまった。

千葉定吉は、そんな龍馬の心の迷いを鋭く指摘し、「刀とは、武士の心の拠り所であるぞ」と諭した。
「どんな苦難に直面しようとも、刀を構えるおまえには武士としての誇りがあるはずだ。その心を以て苦難に立ち向かえ。」

龍馬は千葉の言葉にハッとした。
武士は、誇りのためならば死をも厭わぬ。自分が自分であることを、この刀は教えてくれるのだ。

それ以来、龍馬は大きな局面に臨むたび、静かに刀を抜いて構えるのであった・・・。

<刀を構える坂本龍馬>
刀を構える坂本龍馬

さて、我輩は大学受験で「島根大学」と「茨城大学」の2校を受験し、2年目にしてようやく同時合格を果たした。
最終的には「島根大学」のほうを選んだのだが、大震災の恐れのある関東地域を避けたというのが主な理由だった。

しかしながら大学4年の間には関東地方で大きな地震は発生せず、結局のところ就職で関東地方に出ざるを得なかった。残念ながら、希望する業種は関東が主要地域だったためである。

関東に移り住んでまず最初にやったことは、防災用品を買い込むことだった。
水、缶詰、救急箱、ラジオ、懐中電灯、電池、ロウソク、ライター、ブルーシート、携帯レインコート・・・。

聞くところによれば、関東人は地震に慣れ過ぎていて、備えもほとんどしないらしい。
関東人は、「その時はその時だよ」と言う。
まあ、その時になって買い占めなどしなければ、それもまた一つの生き方なのかも知れない。

だが、地震の無い地域から出てきた我輩にとって、関東で定住するということは不発弾の上に住むのと同義であった。
いつ、不発弾が炸裂するだろうか? そしてその時、我輩は生き残ることが出来るだろうか?

そんなことを考えると、心穏やかではいられない。
しかし、そんな我輩の心の拠り所となったのが、カメラであった。かつて坂本龍馬が刀に心の拠り所を求めたのと同じように。

我輩は、カメラマンである。
その誇りがあれば、何を恐れることがあろう。
戦場カメラマンはカメラを構えれば恐怖が消えるという。恐らく、我輩と同様にカメラを心の拠り所とし、カメラマンであることの誇りを強く持つことが出来るからだろう。
映像を伝えねばならぬという使命感。その象徴が、カメラなのだ。

我輩は、防災用品の中にカメラとフィルムを加えた。
当時は既にAFカメラの時代であったが、電池が無くとも絶対に動くよう、メカニカルカメラの「Canon FTb」とした。

それ以来、我輩の震災に対する気持ちは変わった。
死を恐れる気持ちは変わらぬが、ただ死にたくないというだけの気持ちではなく、震災の様子を克明に記録するまでは死ねないという、ある種の使命感のようなものが沸き起こったのである。
我輩が常にカメラを携帯するのは、この心の変化が出発点となっている。

我輩が通勤カバンにデジタルカメラを常備していることは以前から書いていることだが、せっかく自分が撮る写真ならば、やはり画質の良いものを残したい。そしてそれこそが、この我輩が震災写真を撮ることの意味であると言えよう。

何しろ、テレビや新聞で報道される災害画像は画質が良くない。テレビはジックリ見せないし、新聞は紙質と網点が粗いのだ。
インターネットの時代になっても、災害記事では写真が極端に小さく、詳細は何も伝わってこないし、ましてや遺体も写っていない。本当に人が死んでいるのか?
やはり、写真は自分で撮らねばならぬ。

我輩の写真画質向上については、先日の雑文にも書いたように、小型のデジタル一眼レフ「PENTAX K-x」の導入により解決を図った。
これが、我輩の新しい刀。このカメラが手元にあれば、怖いものは無い。
坂本龍馬も、名刀「肥前忠広」を手に入れた時にはこういう気持ちではなかったろうか。

ただし、震災のためだけに出動を待っていると立派なカメラが錆び付くので(物理的に錆びるという意味ではない)、当面は火事や交通事故などの身近なハプニングについて、我輩による、目撃者の立場としての撮影にて活用したい。

<この刀があれば>
この刀があれば


※本雑文に書いた坂本龍馬のエピソードについては、去年NHK大河ドラマで放映された「龍馬伝」によるものである。そのため、このエピソードが史実に基づかないドラマの演出である可能性もあるので注意。
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イラスト提供:シェト・プロダクション