2000/04/05
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カメラ雑文

[708] 2010年09月16日(木)
「デブを見て安心するな」


ある程度の年齢になると、腹が気になってくる。
最近はメタボリックシンドローム、略して"メタボ"なとど呼ばれているが、当初は内臓脂肪のことを言うものだと思っていたが、巷では単なる「デブ」を柔らかく言い換えたものとして使われるようになった。 まあ、呼び方はどうであろうとも、脂肪はあまり健康には良くない。危機感は持つべきであろう。

ところが、人間の心理として、似たような体型の者を見つけて「俺だけじゃない」と安心したくなるものだ。
そうなると気が緩み、ダイエットの必要性も感じなくなる。

デブは、デブを見て安心するなかれ・・・。


さて今回、デジタル一眼レフカメラの話をしたい。
特に、フルサイズデジタル一眼レフカメラのことを。

フルサイズデジタル一眼レフカメラというのは、何に対して「フルサイズ」なのか。
それは言うまでも無く、「35mm判フィルムカメラ」である。

歴史的な経緯として、デジタル一眼レフカメラのルーツは既存の35mmフィルム一眼レフカメラの流用であった。
当時はまだアナログ記録の「スチルビデオカメラ(SV)」という形態で、新聞記事に使う写真を電送する目的で業務用に開発された。それがデジタル化された後も既存35mmフィルム一眼レフカメラシステムとの繋がりは継承された。

既存のシステムを流用することは、非常に理に適っている。開発コストを抑えるためだけでなく、既存システムとのラインナップ両立を可能とし、ユーザーにも移行に対する敷居を低くさせる。

初期の段階では、ボディさえも既存フィルムカメラ製品の流用だった。
「Nikon F5」をベースとした「Nikon D1」は有名だが、それ以前の「Kodak DCS-100」などは、「Nikon F3」のボディをほぼ無改造で裏ブタ交換によってデジタルカメラ化していた。同様な例は、MINOLTAにも幾つかある。

だがそのうち、デジタルカメラ専用にボディが開発されるようになった。その一番の特徴として、フィルムパトローネを入れる左肩のフィルム室が不要になったことだ。
だから、デジタル一眼レフカメラは総じて左肩が小さくなっている。

ただそうは言っても、基本的には35mm判一眼レフカメラの規格を踏襲していることから、マウント形状やフランジバック、電子接点の信号内容などは変わることがない。
これは制約であることは間違い無い。
どんなに小型化を努力しようとも、マウントを小さくすることは出来ないし、奥行きを狭めてフランジバックを短縮することも出来ない。絶対にそれ以下には出来ないというサイズの限界点があるのは確かなことだ。

だから、フルサイズデジタル一眼レフカメラは大きいのだ。仕方無い。
それよりも小型カメラが必要ならば、APSサイズカメラを選べば良い。問題無い。
さらに小さなものが欲しければ、デジタル用に最適化された規格のフォーサーズを使えば良い。素晴らしい。

・・・本当か?
一見、もっともな理屈にも聞こえるが、本当にそれで納得出来るのか・・・?

我々は忘れてはいないだろうか。
フルサイズでありながらも、コンパクトで手のひらに入るほどの「PENTAX MX」や「OLYMPUS OM一桁シリーズ」という存在を。

かつてフィルムカメラが、MF(マニュアルフォーカス)からAF(オートフォーカス)へと主流が移った時、AFカメラの肥大化が問題視されたことがあった。
エルゴノミクスデザインとか、人間工学に基づくデザインなどという言い訳も聞かされたが、MFカメラと並べた時の大きさの違いには心底あきれたものだ。

<同じフォーマットサイズのカメラとは思えない>
同じフォーマットサイズのカメラとは思えない

残念なことに、AFフィルムカメラのダイエットが実施される前にデジタルカメラが登場し、そちらが主流となってしまった。
そうなると、デジタル一眼レフカメラの比較対象はAFフィルムカメラとなってしまう。それはすり替えによる錯覚であり、「フルサイズなのだから仕方無い」と感ずる要因ともなった。

我輩はここで言いたい。
「デブ同士を比較して何の意味があるのか」
フルサイズデジタル一眼レフは、AFフィルムカメラのデブ具合を見て安心せずに、もっとダイエットに励むべきだ。

フルサイズがダイエットすれば、APSサイズデジタル一眼レフカメラと同じくらいにはなろう。
そうなると今度は、APSサイズデジタル一眼レフカメラの大きさが問題になる。フルサイズカメラと同じ大きさでどんな言い訳が出来ることか。
フォーサーズカメラのほうも、小さいとは言えなくなる。ただでさえ35mm判と変わらぬレンズの大きさであるから、マイクロフォーサーズへと一本化せざるを得なくなろう。

今はまだ、フルサイズ=プロ&ハイアマチュア用という図式が成り立つせいで、堅牢性や高性能化による肥大化が必然なのは理解出来る。
しかし、これからはフルサイズも一般庶民が使えるほどに降りてきて、フルサイズならではの表現力(要するに、被写界深度のコントロール)を楽しめるようになってこなくてはならない。

まさか、フルサイズデジタル一眼レフカメラの価格を高止まりにさせようとして、最初から一般アマチュア用にフルサイズカメラを作る気も無い?
もしそうであるならば、ますます写真趣味の奥深さが失われることになろう。そんなことはあってはならぬ。

メーカーは、今すぐ作れなくとも小型のデジタル一眼レフカメラの開発に着手しろ。
あの大きさを正当化出来る理屈は、1つたりとも無い。
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イラスト提供:シェト・プロダクション