2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[565] 2006年02月23日(木)
「月のライティング」

我輩は現在、コンピュータ関連のコンテンツ製作に関わる業務に就いている。
先日職場で、素材としての写真の話題が出た。

職場では、恐らく我輩以外のほとんどが写真を単なる素材としての認識しか持っていない。そのため、「パソコン(Mac)を使えば写真というものはどうにでも加工出来る」などという思い上がりが少なからずある。

ある者が言った。
「写真は構図が一番大切だよな。」

我輩が言った。
「確かに構図も大切だが、一番というほどでもない。写真はライティングが大切。なぜなら、ライティングというのはパソコンですら調整が利かない。」

それに対して、こう反論してきた。
「画像処理ソフト"フォトショップ"には"照明効果"というフィルターがあるから、それで擬似的にだがライティングの処理が出来る。」

この考えは、完璧に間違っている。
ライティングというのは、物の形を現すための作業である。ライティング無くして、物はその姿を現さない。

モノクロ写真をやったことの無い者には理解しづらいことだろうが、光の陰影は、物の形を現すための必要不可欠な要素である。
光があるからこそ、陰がある。陰があるからこそ、光を浮かび上がらせる。

夜空に浮かぶ月。
それを、望遠鏡で拡大して見るがいい。
もし真ん丸い満月であるならば、その表面はのっぺりとして滑らかに見える。
もし三日月や上弦・下弦の月であるならば、その表面は凸凹して痘痕面(あばたづら)に見える。
光の角度が違うだけで、物の形そのものが全く異なって現れるのだ。

確かにライティングは、写真の雰囲気を醸し出すためのテクニックとして使われたりもするが、そもそも基本として「物の形を写真として焼き付けるための大事な要素である」ということを忘れてはならぬ。
それを理解した上で画像処理ソフトの"照明効果"を使うのであれば、それはそれで結構。
ここで問題視しているのは、ライティングがパソコン上でどうにでもなると考えているその甘さだ。

そういう者たちは、恐らく満月の写真を加工して三日月に変えてしまうだろう。
のっぺりとした表面に月の海だけの三日月。そこに照明効果を付けて球体に見えるように加工するかも知れない。
しかし、このような不自然な映像が当たり前のようにメディアに溢れている今日、もはや何の違和感も無く受け入れられてしまう。

パソコンが普及し、どんな画像でも合成出来るようになったと言われるが、現実にあり得る画像は逆に少なくなった。
頭の中だけで考えた映像を現そうとするからそうなる。

画像処理の達人だと自負するのは別に構わん。
だが、写真を素材として扱うのであれば、もっと写真というものを勉強したらどうだ?