2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[562] 2006年01月23日(月)
「デートスタンプ」

元々我輩は、撮影した写真に日付を入れる必要性を感じなかった。それは、自分の撮る写真が芸術を目指しているという変な勘違いをしていたことによる。
この勘違いは、「写真を趣味として向上するということは、すなわち芸術写真を目指すことである」という誤った前提があったために生じた。
いわば、我輩の青臭い思い込みである。
(参考:雑文460「我輩は芸術家ではない」

写真というのは、元々は絵画から派生した技術であった(※)。
そのため、写真の担う役割も絵画のそれと同じと言える。それはつまり、「記録」と「芸術」である。
(※当時はレンズやピンホールを通して暗室や暗箱の壁面に投影された像をなぞって描いた。 そうすると、目の前の風景の相似形が苦労無く得られた。それまでのように絵筆を物差し代わりにして一つずつ測りながら描く必要が無くなったのである。)

写真に「記録」という役割があるのであれば、"撮影日"や"撮影場所"などの情報は大変重要であることは明らか。反対に、このような情報の無い写真というのは、価値が半減すると言っても言い過ぎではない。

さて、日付情報のみであれば、最近の35mmカメラでは画面内に日付を写し込むことは機能の一つとして用意されている。
しかし、日付情報を画面内に写し込むことについては、次のような欠点もある(ポジ写真前提)。

(1)

撮影カットによっては日付の写し込みが背景画像に溶け込んでしまい判読不能となる
(たとえ1文字だけが判読出来なくとも記録の用を成さぬ)
(2)

ルーペやイルミネータを使わなければ日付が見づらい
(たくさんのポジを取扱う際に不便であり非効率)
(3) 縦位置で撮影したカットでは日付表示も縦になってしまう
(4)

そもそも、画像を見る際に日付は目障りである
(トリミングする場合も日付が邪魔となる)
(5)

我輩の所有カメラはデート機能を持たないものが大半
(統一がとれない)

これらのうち、(1)〜(2)は致命的と考える。
そのため、我輩はポジマウント部分に「撮影日」、「撮影場所」、「フィルム」、「レンズ焦点距離」、「ストロボ使用の有無」、「増減感の有無」等を肉筆で書込むことにした。
これにより、上記問題のほとんどをクリアした。
(ただし35mm判の場合、記入スペースの関係上、縦横による位置不統一は避けられぬ)

しかしながら、肉筆にすることにより、新たな問題が発生したことも事実。
それは以下の通り。

(1) 安定した文字を書くのが困難
(狭いマウント枠にフィルムを汚さぬよう手を浮かせて記入するのは不安定。大抵の場合、文字が揺れてしまい見るに耐えない。フィルムをハメ込む前にあらかじめマウント枠に記入しておけば良いとも考えたが、事前に数を合わせて順番に並べておかねばならない。またスリーブをまとめて切り分けて次々にマウントにセットするということも出来なくなる。ちょっとでもバラけると収拾がつかなくなる。)
(2) 大量枚数の記入に手間がかかる
(コンスタントに枚数が増えるのであればそのたびに少しずつ記入すれば良いが、大抵の場合はイベントごと一度に大量のポジを得ることになる。それらの記入を迅速にやらないと、記入すべき情報を忘れてしまう。)
(3) 同じ情報を記入する作業が無駄
(同じ撮影情報のカットが数百枚ある時は頭が痛い。連続したシーンでは、代表カットのみに記入すれば良いとも思うが、1カットだけを抜き出して運用する状態を想定し、必ず1カット単位で完結した記録を徹底しているのである。つまり、同じような写真であっても、全てのコマに同じ情報を一つ一つ記入することになる。)

これらの問題もあり、我輩は以前から「スライドマウント部に文字を印刷出来ないものか?」と考えていた。
印刷可能であれば、同じ情報であればあるほど一気に作業が進み効率が上がる。そして、何より文字が見易いため読み違えも少なくなる。
つまり、安定した情報記録が可能となるのだ。

しかし、印刷はどう考えても不可能。マウントの厚みが有りすぎる。しかもプラスチック製マウントに印字するために耐水性の印刷を考慮せねばならない。
いや、仮に印字可能だとしても、もし印字位置がズレた場合にインクがフィルムに付着するというリスクもある。

そこで考えたのが、デートスタンプだった。日付をセットしたスタンプをポンポンポンと押していけるならば簡単。
ところが、市販しているものは「曜日」が無かったり、和暦あるいは2桁に省略された西暦を使っていたりする。

「曜日」は、写真の状況を理解する一助になるだけでなく、「日付」のエラー訂正のための冗長性としても有用。
つまり、「曜日」と「日付」との間に矛盾があるのであれば、何かが間違っているということが判明する。

また、「和暦」を使うと絶対的な時間的位置が解りづらい。もし途中で年号が変わると収拾がつかなくなる。
西暦にしても、省略された2桁での記述は和暦と混同することもあろう。今現在は良くとも、後世の人間に混乱を与えかねない。写真の内容などから年代を推測するということも可能だろうが、そもそもそんなことを必要とするならば何のための記録なのか?

要するに、我輩の必要としているデートスタンプは「2005.12.20(火)」という表現が可能なものである。少なくとも、既製品には存在しない。いや、あることはあるのだが、西暦は桁ごとに組み合わせるのではなく2001、2002、2003・・・などというひとまとまりの活字が並んでいるのみ。つまり、2015くらいまでしか活字が用意されていないのだ。

我輩は100年先200年先のことを考える人間である。そのようなスタンプを使うわけがない。
ただそうなると、これまでと同じように肉筆での記録が続くことになる。目の前に積まれたスライドマウントを前にして、我輩は腕組みをした・・・。

そんな時、ふと、スタンプの特注を受けているところはないかと考えた。
早速、インターネットで検索。幾つかヒットした。
我輩の要求する仕様として、油性インクが使えるものでなければならぬ。そういった条件で絞ると、(株)池永印章事業部門に行き当たった。

特注回転印の自動見積り画面で色々と試しながら自分に最適なデートスタンプを探った。
その結果、西暦を全ての桁に分解することはせず、上3桁を一つにまとめ、最後の桁を分けた。これでも上3桁は「198」〜「209」まで作ったため、100年近くは使えることになる。
一方、撮影レンズやフィルムなどの記録については、日付とは別のスタンプとした。
撮影場所の記述については、さすがにこれは手書きで対応するしか無い。


「万能スタンプ台」とは、油性の万能インクのスタンプ台のこと

気になる金額は、1つ8千円ほど。桁数や全角文字が増えると金額も増えるので、そういったことを考慮しなかったならば数万円にもなったろう。

早速マウントにスタンプしてみたが、Hama製マウントは表面が滑らかでスタンプが滑り易い。あまり強い力で押さえないほうが良さそう。
その他幾つかのコツを掴むまでうまくスタンプ出来なかったが、しばらく使っていると安定して使えるようになった。


66判Hama製プラスチックマウント


35mm判FUJI製プラスチックマウント

長く使うことを考え、書体はゴシック体とした。明朝体では細い部分が潰れ易いと考えたのである。いくら耐油ゴム製であっても、経年等の影響はあろう。
スタンプしたものを見ると、西暦が上3桁で別れているとは思えない。モノが届いてみるまでは、別れている部分が多少離れてしまうことを覚悟していたのだが、これならば違和感無い。

ただ、このようなスタンプの利用は、仕上がりの美しさを狙うのではなく誰の目にも読める文字情報を安定して記すことを狙っていることは言うまでも無い。