2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
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10.アンケート
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カメラ雑文

[494] 2004年06月20日(日)
「蔵王のお釜(4)-2」

(前回雑文からの続き)

6月13日(日)、蔵王に行くことを断念したが、荷物はとりあえずそのままにしてある。別に意味は無い。荷物の出し入れが面倒なだけ。
しかし、「MINOLTA α-9xi」は気になって取り出した。
こうして見ると、このカメラはそれなりに重量がある。「軽いカメラなどカメとでも名乗っておけ」とは書いたものの、山へ行く時には少し軽いほうが助かる。この際、カメラではなくカメを持って行くことにしようか。
・・・とは言うものの、インテリジェントカードが使えるカメは持っていない。新たに買うしか無かろう。
手持ちの金は無いため、思い切って稼働率の低い「Kiev 6c」を売却した。得た金でカメを飼う・・・いや、カメを買うつもりである。
狙うはインテリジェントカードが使える機種。そうでなければマルチスポット測光が出来ない。

まず最初に、「α-8700i」を探した。しかし、ネットオークションや中古カメラ店のWeb情報を探したが、年式が古いためか程度の良い出物がほとんど無い。当然ながら「α-7700i」も状況は同じ。中には5,000円程度のものもあったが、安物買いの銭失いとなるのは目に見えていたため、とても手を出すことは出来なかった。
次に目を付けたのは「α-707si」。これは我輩としては避けたい機種。内蔵ストロボがあるため華奢に見える。しかしこれ以外に使えそうなものも無いため、結局これを購入することにした。


6月14日(月)、いつものとおりに出勤し仕事をした。
勤務地は新橋であるため、帰宅途中に大庭商会へ寄って707siを探してみた。しかし玉数が少なくそのまま帰宅した。まあ、しばらくは天気が悪い日が続くのだから、時間をかけてジックリと選ぶか。


6月15日(火)、いつものとおりに出勤し仕事をした。
午前中までは非常に忙しく、気が付くと昼休みになっていた。昼食はいつも蕎麦(ソバ)とノンシュガーのコーンフレークを食す。これならば1日あたりの食費は牛乳代を入れても計130円で済む。
蕎麦をすすりながらインターネットから週間天気予報を見てみた。すると、明日16日は「晴」となっていた。一日中、降水確率は0パーセント。衛星画像を見ると、東北地方には雲一つ無い。予想天気図では、高気圧が中心に居座っている。
我輩は、思わず蕎麦を吹き出しそうになってしまった。

「平日でこの予報かっ、これでは落ち着いて仕事が出来んわ・・・。」
休暇を取ろうかと考えたが、あまりに直前であるから言い出しにくい。しかし丁度雑談で休暇の話が出たため、思い切って課長に休暇を取りたい旨を伝えた。
「・・・ええで。」
課長は許可してくれた。

定時後、我輩は新宿へ行き、マップカメラ中古売り場へ直行。
ショーケースには6台くらいの707siが並んでいる。価格は17,000円のものと13,000円のもの2種類に分けられている。
見ると、グリップ部の電極センサーに青白いサビが浮いているものがある。ここは腐食し易いのか?
そう言われれば、2台ほど電極センサーがサンドペーパーなどで磨かれているものがある。どうやらサビを落とすためにやったと見える。
結局、このサビがイヤで17,000円のほうを選んだ。ほとんど無傷のカメだった。「Kiev 6c」がネットオークションで20,000円で売れたため、持ち出し金は無し。

帰宅後、早速707siと9xiを比べてみた。
さすがに707siはカメだけあって重量は軽い。いや9xiのほうが重いのか。どちらにせよ、山登りには丁度良い。
電子ダイヤルは9xiよりもクリックが重いのだが、ニコンAF機ほどではないので良しとする。
ウラブタ部の顔が当たる部分には白い跡が微妙に残っていた。化粧か?ティッシュで強く拭くと少し取れた。
恐らく前オーナーは女性かオカマだったのだろう。もしオカマであれば、蔵王のお釜撮影用として縁起が良い(?)。
さて、荷物は日曜日のままで置いてあり、準備はそれほど忙しくはなかった。それでも万全を期して色々とチェックしたり不足分を足したりした。
ヘナチョコ妻と豚児はその様子をポカーンと見ていた。


6月16日(水)早朝4時、目覚まし時計で起きた。
インターネットで天気予報を見たが、晴れの表示は変わらない。
朝食を摂り、着替えて荷物を背負って家を出た。前回のように夜中のように真っ暗ではなく、早朝の雰囲気だった。空には雲一つ無い。力が湧く。

上野駅に出てみどりの窓口で新幹線の指定席を取った。もちろん、時間が重要であるから山形新幹線は利用しない(皮肉)。
ビデオは上野駅のシーンから始まる。旅路をビデオ撮りすると、後々良い想い出になる。また意外なところで参考にもなる。

白石蔵王駅へ時間通り到着し、そこからいつものようにバスに乗る。運転手のオイちゃんは特にノリが良いわけではなかった。
時刻表上では遠刈田温泉まで行ってそこで刈田山頂行きに乗り換えることになっているが、前回と同じく今回も同じバスでそのまま山頂まで行った。

山頂へは時間通り10時半頃到着した。空を見上げると雲はほとんど無い。まるでPLフィルターでもかけたかのように、青色が深い。
これならば安心して撮影が出来る。雲が通り過ぎるまでの待ち時間も必要無い(雲に包まれると動くのは危険)。
まずレストハウスでトイレに行く。そしてお釜のほうへ向かった。

すぐに崖を下ってお釜のほうへ降りて行きたかったが、今回は初めてビデオ撮影を行うため、上から望むシーンから撮影したい。そうなると、お釜を囲むようにそびえる馬の背(外輪山)を伝って歩く必要がある。そうなると少なくとも1時間はここで費やされることになろう。
三脚をセットし、クイックシューを使ってビデオカメラとブロニカを交互に撮影。
写真撮影はすぐに済むのだが、ビデオの場合は滑らかな一定速度のパンニング(横振り)がなかなか難しく、同じシーンでも何度か撮らねばならなかった。

観光客の数は、平日にも関わらずそれほど少なくはなかった。ただし、どちらかというと整備された道がある刈田岳山頂のほうに多く、足場の悪いお釜に近い場所では少ない。
まあ、要するにヘナチョコが多いということだ。
時々すれ違う登山者は、チリンチリンと鈴の音をさせている。どうやら熊よけらしい。中にはラジオの音を響かせている登山者もいた。
少し肌寒く、まくり上げていた袖を伸ばした。
鼻水も出てきた。まあ、いざとなればフード付きのコンパクトジャケットがある。

MINOLTA α-707si/24-105mm

上からの撮影は一通り終了したため、下に降りる地点まで歩いて行った。時間は既に12時00分。
その途中、何人かの観光客がおり、会話が聞こえてきた。
「ここから下に落ちたら、ヘリ呼んで救助したりして大騒ぎだなぁ。」
・・・いや、垂直なこの崖の高さでは死亡すると思うぞ。

目的の地点へ着くと、三脚をザックに結わえ、カメラ類をタスキ掛けにして両手をフリーにして降りる準備をした。
そして柵を越えて崖を下った。
ここの崖は垂直ではないものの、さすがに降りながらのビデオ撮影は難しい。しかしポイントポイントで立ち止まり、ポケットから小型ビデオカメラを取り出して来た道・行く道を撮影したりした。降りて行くに従い、だんだんと静寂な世界が我輩を包む。
今回も、降りることについては全く不安は無かった。

降りた後、時計を見ると12時30分だった。ふと、「職場では今頃昼食時か」と考えたりした。
どうやらここには誰もいないらしい。シーンとした世界。真っ青な深い空が印象的である。足下は以前と同様に白くてフカフカしている。
この白い土壌はかつてお釜の底に堆積していた土砂らしい。酸性度の高いお釜の水によって金属成分が抜け、シリカ(珪素)だけになったものだという。それが活動期にお釜から噴出し、周囲に降り注いだのである。
しばらく周囲をビデオ撮影して回った。

さて、どこか落ち着ける場所で持参したサンドイッチを食べようかと考えたが、いつの間にか13時に近くなっていた。
最終バスの時間を考えると、14時30分にはもう帰り始めなければならない。そうなると、あと1時間30分か。
仕方無い、食事は帰りのバスの中で摂ろう。残り時間は無駄には出来ぬ。

我輩の興味は、お釜周辺の浸食具合と、お釜湖水の状況である。
典型的な浸食跡はお釜の頂上(五色岳頂上)付近にあるため、頂上に登るか、あるいは湖畔へ下るかの選択に悩んだ。残り時間を考えると、どちらか一方を選ぶしか無い。
結局、我輩は湖畔を選んだ。

今回は残雪があるため、雪解け水が五色川に集まり、それがお釜のデルタ(三角洲)から注ぎ込んでいる。その様子を是非とも調査したかった。
デルタを見渡せる所まで来ると、前回、お釜に別れを告げた時の光景が目の前に広がった。
しばらくそこで立ち止まった。

<デルタ側より望む>
BRONICA SQ-Ai/40mm

デルタへ出ると、そこには五色川が伏流することなくお釜に注ぎ込んでいた。上流を見れば、残雪が見える。やはりそこからの雪解けも流れに合流しているようだ。自然の営みを小さなスケールで見たような気がした。
お釜の水は上から見た時は淡い緑色に見えたが、湖畔から見ると光の角度のためかコバルトブルーに見える。
やはりここから見るお釜全景は圧倒されるくらいのスケール感である。とても上から見ただけでは分かるまい。ましてや写真など。

<湖に流入する五色川>
BRONICA SQ-Ai/40mm

湖水の縁に触れている岩石を見ると、まるで火星の岩石のように褐色に染まっている。
これは昭和8年以降の酸性度低下によって鉄イオンが析出し、それが水酸化コロイドとなって岩石に付着したものであるという。試しにその一つを手に取って砕いてみると、褐色なのは表面だけであることが判る。
一方、湖水は鉄イオンが抜けたことにより、かつてはコバルトブルーだった色が緑色となり現在に至っているそうだ。

<褐色の岩石>
BRONICA SQ-Ai/40mm

写真撮影では、α-707siのマルチスポットによる測光値を用いた。スポット測光する場所を慎重に選ばなければ意図した結果とはならないので気を使う。直前購入のα-707siは試し撮りが間に合わなかったが、いつも単体露出計でやっているような感覚でマルチスポット測光を行った。
念のため、前後0.5段の段階露出をする。
デジタルカメラを使えば露出は一目瞭然であり段階露出の必要性は無いのだが、レスポンスが鈍くバッテリー切ればかり起こすデジタルカメラは山には相応しくない。

MINOLTA α-707si/24-105mm

デルタでビデオ撮影や自分のセルフタイマー撮影、そして通常の撮影をやっていると、いつの間にか14時近くになっていた。あと30分か・・・。時間が過ぎるのが早く感ずる。
もはや残り時間でやれることも少ないため、デルタでの撮影を続けた。

14時30分、ついに時間が来てしまった。そろそろ戻らねばならない。
見上げると、まだまだ陽は高い。しかしそうは言ってもバスは止められない。どうにも仕方無い。元来た道を戻り、デルタを見渡せる地点で振り向きシャッターを切った。
そして、声をかけた。
「そのうち、また来る。」

崖の所まで来ると、人影が見えた。一人の登山者が降りてくるところだった。
我輩は一声かけた。
「こんちわー。」
するとその登山者も応えた。
「こんちわー。」
すれ違った後、しばらくして振り向いて登山者の写真を撮った。こういうことも珍しいから、記念のつもりである。

MINOLTA α-707si/24-105mm

崖登りは、いくら時間的余裕があるからといっても体力を使うことに変わりない。途中で何度も汗を拭った。
さっきまでの肌寒さなど吹き飛んでしまい、伸ばした袖を再びまくり上げた。
ようやく降下地点が見える所まで来ると、時間は15時05分。あと15分でバスに乗れば間に合う。

MINOLTA α-707si/24-105mm

バスに乗り込み、来る途中でコンビニエンス・ストアで買ったハムカツサンドとハンバーガーを食べた。ハンバーガーのパンは水分が抜けたのかポロポロと細かく砕けた。
座席に座ると、思い出したかのように疲労が襲った。もう来たくない心境だが、疲労が回復するとまた気持ちが戻るだろうか。

白石蔵王駅には17時くらいに到着した。
考えてみると、11時前にトイレに行った後は6時間くらいトイレに行っていない。不思議なものだ。


6月17日(木)、現像した写真を見てビックリした。
α-707siで撮影した写真のほとんどが周辺光量低下が著しい。これは20,000円で手に入れた24-105mmF3.5-4.5を使ったもので、ファインダーではその現象には気付かなかった。恐らくファインダー視野外での現象だろう。
ポジを見ると、周辺光量低下は光量ゼロにまで落ち込んでいるのが判る。
これはレンズの性能のせいか、まさか保護フィルターのケラレのせいか・・・?

MINOLTA α-707si/24-105mm

しかしよく考えると、フィルターよりも深い専用フードがあるのだからケラレとは考えにくい。
もっとも、ポジをマウントにハメてしまえば多少隠れて目立たなくなるが、もしこれがレンズの性能によるとすれば、これほどまで酷いものは見たことが無い。
メモカメラ程度の用途であるからショックは少ないが、やはり安価なズームなど本気で使うものではないと今更ながらに思う。


(2004.06.21追記)
今回撮影した写真の幾つかは、姉妹サイト「中判写真のサムネイル」内の"自然地"にて800x800ドットのサイズで公開中である。



(2004.08.06追記)
周辺光量低下を起こした24-105mmF3.5-4.5について、衝撃的事実が判明した。雑文501を参照のこと。