四季は、自然のサイクルがもっともよく目に映る現象である。特に日本では、それぞれの季節の違いが風景にハッキリと現れる。
そのため、日本人は季節に敏感と言われている。
それにしてもあらためて考えると、季節による景色の違いは、主に植物の営みに大きく関わっていることが分かる。例えば、紅葉や落葉などは目に見える大きな変化であり、それが季節を感じさせるいわば"写真的季語"と言える。
我輩は身近な風景の季節の移り変わりを感ずるたび、季節ごとの違いをジックリ眺めてみたいと思っていた。普段見慣れている風景の、どこにどんな違いがあるのか。それを写真で比較することによって、あらためて季節というものを実感したい。
これはつまり「定点撮影」なのであるが、以前
雑文293「定点撮影」で掲載した写真では、一方方向に変化し続ける風景を見た。しかし今回は、植物の営みを季節ごとに見ることによって毎年繰り返す季節のサイクルを追うのである。
今回のポイントとしては、「身近な風景であること」、「植物は風景の脇役であること」、「写真に情報量を多く持つこと」である。
身近な風景であることは、季節を生活の中で感ずるために必要である。そのために、近所の住宅地にある桜の並木道を選んだ。
また植物は風景の一部であり、風景そのものではない。季語のみでは俳句が詠めないのと同様に、植物のみで風景を撮っても意味が無い。
そして、短時間鑑賞して終わるというものではなくジックリ眺めることが目的であるため、中判サイズを用い、画角も広くする。
実際には一ヶ所での撮影ではなく、複数の地点での撮影を行っている。中には、ビル建設が始まってしまい木立が隠れてしまうという地点もあったが、元々そういうハプニングを考慮して複数撮影しているので問題は無い。
また、ここで掲載したのは4種類の季節だが、実際にはもっと細かく刻んでいる。大きな変化の中点を見ると、季節の変化を更に動的に感ずる。
新しいフィルムスキャナも導入し、高解像度でスキャンした画像を画面上で比較してみると、変化がなかなか面白い。葉の一枚一枚までハッキリ写っているため、その一枚の葉だけに注目して追跡して眺めるなど、楽しみかたも色々とある。
また自動車も写っているため、後々それが
時代のインデックスとして機能してくれることを期待している。
気長に撮れば何もテクニックは要らないこの撮影。葉の落ちた季節から撮るためには、今から始めるのがおすすめ。