2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[446] 2003年10月04日(土)
「レタッチ」

10月より、我輩は某財団法人へ出向を命ぜられ、引継も慌ただしく新しい仕事に従事した。
ここでの業務は、国からの予算により行われるため、当然ながら省庁とのやりとりとなる。役所というのは夜型であるため、我輩もその影響により夜が遅くなると聞かされた。

今後、雑文の更新が今以上に遅くなろうか。


今までの仕事は、制作業務と営業業務の割合が2:8といったところだった。
営業としてはWebのシステム絡みの活動を任されていたわけだが、制作業務のほうは割と印刷用版下作成が多かった。なぜならば、以前は印刷営業だった関係上、その時に付き合いのあった客からの仕事が時々入ってくるためだ。

印刷物の内容としては、製品のパンフレットが多いが、客から支給される写真データはシロウトがデジタルカメラで撮影したものばかり。しかも、工場内やどこかの地べたに置いたものを蛍光灯の下で撮影している。
当然ながら色被(かぶ)りあり、手ブレあり、ピンボケあり、背景悪し・・・。

あまりにヒドイ写真の時は、製品そのものを借りて我輩が撮影し直す時もあった。しかし時には、「製品をトラックに装着した例」というような写真もあり、さすがにトラックは借り出すことは出来ない。
そのような時は仕方無く与えられた写真を使い、パソコン上で写真の背景を切り抜いたり、映り込みを消したり、歪みを矯正したりする。いわゆる"レタッチ"である。

クリエイターという立場で言うとすれば、レタッチというのはもう少しエフェクティブに視覚効果を狙った前向きでありたい。だがこの場合、アラを隠すためにレタッチを施し整形手術をする。
今までに行った作業の内容を挙げてみると以下のような感じか。

  1. 製品の汚れや映り込みを消す。平坦な部分の粒子の荒れを消す。色被りを消す。
  2. 遠近感による被写体の歪みを矯正する。
  3. 雑然とした背景を切り抜き、単純な背景と差し替え影を付ける。
  4. 被写界深度の浅い写真の場合、前面にはピントが合っていても後ろのほうにはピントが合っていない。後ろにピントを合わせると、今度は前面が合っていない。そんな写真が複数ある時に、それらのピントの合っている部分を合成して全体にピントが合っている写真を作り上げる。


泥臭い作業と言えばそうだが、最低な元写真をキレイに仕上げ製品パンフレットを作り上げるという意味では、なかなかやり甲斐のある作業だったとも言える。特に、客から「またお願いします」と言われれば、「また最低な写真を支給するつもりか」と一瞬思うものの、悪い気はしない。

ここでは一例として、基本的なレタッチである「背景の切り抜き」と「影の付加」の作業工程を掲載してみた。

(1)元画像

未加工の画像。蛍光灯の下で撮られた場合もあるが、その場合には色被りや一部ピンボケ(浅い被写界深度のため)などを併発させていることが多い。この写真では、床の色が被っている。
(2)切り抜き

フォトショップのなげなわツールを使い、背景を選択し切り抜く。背景と被写体との境界線は色が混じるピクセルがあるため、それを含んで切り抜くようにする。自動選択ツールを使うと直線が出ないことが多い。
(3)グラデーション背景

背景をグラデーションで塗り潰す。色のグラデーションでも問題無い。
(4)一次影付け

切り抜いた被写体の輪郭と同じ選択範囲で黒く塗り潰し、軽くボカシをかける。これは直接光源の一次影である。被写体の脚の高さを計算して影のズラし方を調整する。ただしこれだけでは被写体が浮いているように見える。
(5)二次影付け、最終調整

環境光からの影として柔らかい二次影を付加する。これは被写体の輪郭線をそのまま使うのではなく、影を落とす部分と地面との距離を考慮しながら範囲選択する。高い部分にあるパーツの影はより柔らかくする。同時に最終調整として、被写体のコントラストや明るさ、色被りを補正する。

言っておくが、これはデジタル画像での話。業務用ならば効率と効果が重視され、最終作品とは写真のような素材ではなくあくまでパンフレットである。極端な話、犬の写真を加工して猫に変えたとしても、パンフレット作成に役に立てば良い。

我輩の場合、ポジフィルムが最終作品であるため、レタッチの入り込む余地など無い。自ずと撮影時に全ての技術や労力を投入し作品を造らねばならぬ。少しでも失敗すれば、また撮り直す。
そういう潔癖さが、我輩の趣味に対するこだわりである。

画像の目が粗いながらも後からどんな調整も利くデジタル画像よりも、撮影時に苦労しながらも最終結果として緻密で深い画像のポジ作品を残すことを選ぶ。
従って雑文405で紹介したようなレタッチは、既に存在する最終作品を元にして二次使用した結果であり、言うなれば"遊び"と言えようか。ポジの最終作品という心の拠り所があるからこそ、安心して遊べる。
もしこれがデジタル画像ならば、どれを原版として位置付けるべきかを迷い、作品という定義から考え直さねばそのうち行き詰まるに違いない。

ただ、もし金があれば個人で印刷物でも作り、それを最終作品とすることが出来る。そうなれば、レタッチし放題だな。