2000/04/05
OPEN

表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
 AE-1P
 AE-1
 newF-1

PENTAX
 K1000
 KX
 KM
 LX
 MX
 MZ-5
 MZ-3
 MZ-M

OLYMPUS
 OM-3Ti
 OM-4Ti
 OM-2000

CONTAX
 ST
 RTS III
 Aria
 RX
 S2

MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[421] 2003年04月23日(水)
「意味の置き換え」

我輩は大学時代に島根県松江市に住んでいた。
松江市は茶と菓子の街として知られ、博覧会ブームの時には「菓子博覧会」も開催された。
そういう縁によるものか、我輩も裏千家茶道のサークルに所属し、アルバイトも和菓子店で和三盆糖(高級和菓子の材料)の練り作業をやっていた。

大学全体の比率こそ関西の人間が多かったが、松江の大学だったため茶道のサークルはさすがに地元の人間が多く、独特な方言をよく耳にした。
「来らん(来ない)」「あげ(あれ)」「さげ(それ)」などはかなり違和感を覚えたが、聞き慣れない言葉であるから、意味さえ分かれば混乱は消える。
だが、「えらい」には混乱させられた。以下の会話はその一例である。

「夏休みの茶道の合宿、3日間みっちりと練習させられるらしいわ。」
「うわ、エライなあ。」
「?・・・偉い?誰が?」
「誰がって、3日間もエライだろ?」
「・・・何言っとるん?」

その後すぐに分かったのだが、「えらい」というのは「疲れる」あるいは「大変な」という意味だった(九州の南部では「こわい」と言うらしいが、これもまた混乱しそうな方言だ)。
なぜこの言葉がそんなに混乱を招くのかと言えば、標準語と同じ単語でありながら意味が違うからである。あらかじめその方言を知っていたとしても、とっさに言われると取り違えてしまう。

また関西でも、相手のことを「自分」と言ったり、面倒なことを「邪魔くさい」と言ったりするのを聞く。
予備知識があったとしても、出し抜けに「邪魔くさい」などと言われれば他の意味と取り違えてビックリする。


そう言えば、パソコンの分野でも同じようなことがある。
ある時、職場の同僚がパソコンの調子が悪いと言ってきた。

「なんか、ハードの動きが怪しいんだ。」
「ハードってどれのことか?」
「どれってメーカー名を知りたいのか?確か、IBMかな。」
「いや、パソコンでも色々な機器があるだろう?」
「だから、ハードだって。」
「ハード・・・もしかしてハードディスクのことか?」
「だからさっきから言ってるだろ。」

普通、パソコンの分野で「ハード」と言えば「ハードウェア(機器)」のことを指す。もしハードディスクをハードと呼ぶならば、それは商標侵害と言える。最初にハードを名乗ったのはハードウェアのほう。後から来た者が何を言うか。
だがハード派の人間の多くは、ハードと呼んでも意味は通るとして譲らない。「文章全体から容易に推測出来る」と。
驚くことに、情報処理1種その他資格を所有しSOHO活動している我輩の母親でさえも、完璧なハード派である。もはや現代用語に於いて、「ハード」という用語には「ハードウェア」の意味は無いのか?

もしそんなことになれば、「ソフト」が「ソフトウェア」では無く「ソフトクリーム」となっても不思議ではなくなる。
現在は「ソフトを落とした」と言えば「ソフトウェアをダウンロードした」という意味だが、それが「ソフトクリームをキーボードに落としてしまった」という意味に変わるわけか。立派なコンピュータ用語だ。


さて、写真の分野でも同じような悩みがある。
よく聞くのが「露出」という言葉。
以前、知人と写真の話になった。その知人は最近写真を始めた人間で、色々とスナップしているようだった。

「ブレることが多いんだけど、これってシャッタースピードを上げればいいのか?」
「おお、分かってるじゃないか。」
「シャッターを上げたら、その分、露出を開ければいいんだろ?」
「ん?いや、露出は一定にさせなきゃ。そのために絞りを開けないと。」
「露出を一定にしたら光が足らなくなるんじゃないのか?」
「・・・はい?(語尾上げ)」

良く聞けば、彼の言う「露出」とは「絞り」のことだった。
最初から全く意味不明ならばまだしも、意味が通りそうで通らないので混乱を招く。前述の「エライ」や「ハード」と同じような状態。

これは初心者による用語違いであろうかと思うのだが、身近では頻繁に聞こえてくる。もしかしたら、これは写真分野の方言として既に確立された用語なのであろうか?

今はまだ初心者の間で使われるのみだが、デジタルカメラの台頭により初心者層が広がり、露出派が絞り派を上回ることになるかも知れぬ。
それがどんな世界なのか想像するのは辛いが、恐らく、他の用語も同様に荒され別の意味に置き換えられていることだろう。

言葉は時代と共に変わるものというのは理解出来る。だが、既存の言葉を置き換え新しい意味を持たせるのは余計な混乱を招き、小さな疲労を蓄積させていく。
例えその場で意味が分かったとしても、そういう危機感から、素直に納得して会話を進める気持ちにならない。