2000/04/05
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カメラ雑文

[375] 2002年09月28日(土)
「英語禁止ホール」

正月は退屈な番組が本当に多いが、学生時代は唯一「タモリ・さんま・たけしの新春ゴルフマッチ」が楽しみであった。
当時はまだ健在であった逸見アナウンサーが司会進行役を務め、タモリ、明石家さんま、ビートたけしの3人がお笑い系のゴルフマッチを繰り広げるのである。ホールごとに変なシューズを履かされたり、目を回した状態でショットさせられたり、とにかく普通に打つことが無い。そのバカさ加減がなかなか良かった。

その中でも我輩のお気に入りは、「英語禁止ホール」である。
そのホールでは、ひとことでも英語を喋るとペナルティを課せられる。特にさんまは脊髄反射で言葉を発するため非常に不利。


たけし >「ね、ね、穴まであとどれくらいの距離?」
タモリ >「・・・・。」
さんま >「せやなあ、何ヤードやろなー?」
逸 見 >「ヤード!はい、英語言いましたね。ワンペナルティ。」
さんま >「うぁー、あかんがな!これ以上ペナルティが増えたら・・・。」
逸 見 >「ペナルティも英語です!2ペナルティ!」
さんま >「ったく!喋られへんがな!なんちゅうルールやろ。」
逸 見 >「ルールって言いましたね?はい、3ペナ!」
タモリ >「クックック・・・、バカだねー。喋んなきゃ良いんだよ。」


何を言うかタモリ、喋らなければ面白く無いだろ。これはバラエティ番組だろうが。
まあその頃からタモリは面白く無かったが、明石家さんまとビートたけしはまだ面白い頃だった。

しかしあらためて想像すると、英語(外来語も含む)が禁止されるというのは意外にツライものがある。なぜなら、英語は日本の文化に深く浸透しているため、普段使っている言葉を禁止されることになり非常に不便を強いられるからだ。
回りくどい日本語を使うよりも、英語であっても皆が共通認識を持つ汎用的な表現のほうが便利と言える。例えば、「接吻」などと言うよりも「キス」と言うほうが通りが良く自然に聞こえる。


さてコンピュータの世界では、英語禁止ホールというわけではないが、それに似たような事件があった。
これは記憶に新しい事件であるが、画像フォーマットとして広く使われていたGIF(ジフ)がUNISYSのLZW画像圧縮法を用いているために特許使用料が発生した。つまり、GIF画像の特許を所有する者が「この画像フォーマットはタダで使うな」と主張したのだ。
これにより、ライセンス料を払わずGIF画像が作成可能なソフトの開発が違法となったばかりか、非ライセンスソフトを使いGIF画像を作成することも違法となってしまった。
英語禁止ホールのように、禁を破ればペナルティが課せられる。

UNISYSは当初、フリーソフトならば特許使用料を払う必要は無いとしていたのだが、GIFが一般に普及すると、一転してフリーソフトにも使用料を課すと言い出したのである。
このGIF画像問題は、一般に広く使われる画像フォーマットであるため、単純に「イヤなら使わなければ良い」と済ますことが難しい。それ故この戦法は世間の非難を浴びたのだが、アメリカの裁判で特許絡みの主張が通らぬはずも無く、GIFを使用する者全てから料金を徴収する体制となり、その結果GIF画像は衰退の方向へ進んでいる(JPEGやPNG、Flashなどへの移行)。
ただしGIF画像の特許は日本では2004年に期限が切れる見込みであるが、アメリカ発の特許であるため、法改正により延長されることも大いにあり得る。

ところが最近、今度はJPEG(ジェイペグ)画像の特許問題がわき上がってきた。
JPEGと言えばインターネット上の写真に使われる標準的画像フォーマットである。その圧縮率は非常に高く有用である。
また、JPEGはデジタルカメラの保存形式としても標準フォーマットであり、その大きな市場の中にあって重要な位置を占めている。
このように我々の生活に深く根付いたJPEGという画像フォーマットではあるが、ここに来て突然特許問題が浮上した。JPEGの特許を持つForgent Networks社が特許使用料を主張し始めたのである。まさに、UNISYSのGIF問題と同じような展開になってきた。

結局、コンピュータ関連の商品というのは、常に動向が不透明で気が抜けないものである。そこには様々なフォーマットが絡み合い、それらのうち1つの動向の変化のよっても我々に影響を与える。
件のGIF画像事件の時、全てのGIF画像をJPEG画像に変更するサイト運営者がいたと聞く。クオリティ低下もあるので、画質を比較しながらのフォーマット変換はかなりの手間だったろう。だがさすがに、JPEGさえも立ち退きを要求するとは思っていなかったに違いない。

今のところ、違法性を問われるのは画像の一般公開についてのみということのようだが、法律というのは思惑を以て改正されるものである。アメリカが自国だけの利益のために法律を改正することは容易に想像がつく。将来、非ライセンスソフトを使って生成したJPEG画像を、ただ所有しているだけで違法とされる時代がやってくるかも知れない。
あるいはそうならないとしても、少なくともGIF画像の時と同じように、JPEGを生成するもの(デジタルカメラやグラフィックソフト)の中で非ライセンスのものは違法とされる恐れがある。そうなれば、ライセンス料を払わないメーカーのデジタルカメラは使うことを許されない。
(現時点では、SONYがJPEG特許使用料20億円を支払っている。つまり、SONY製品にはその分が価格に上乗せされ我々ユーザーが負担することになる。)

今は著作権フリーと考えられている画像フォーマットであろうとも、将来どうなるかということまでは誰にも分からない。「PNGならば大丈夫」などとノンキに構えていたらいつか寝首をかかれるぞ。
最初は儲けを考えなかった者であったとしても、実際に自分の特許が広く使われるようになった現実を前にして欲を出さぬとも限らない。あるいは特許自体が第三者に移らぬとも限らない。

また、将来のビジネスが変われば法律も変わる。アメリカの財産を守ろうという愛国者の力によって、特許や著作権に関する法律強化が無制限に行われることは十分考えられる。時には、いったん特許使用料を徴収されても、また別の理由を付けて追加徴収して来ないとも限らない。あるいは一定期間ごとに使用料が発生するかもな。永久特許法などというものが強引に作られたりすれば、もはやお手上げ。
そうなれば、我々は鵜飼いの鵜のように、魚を飲み込めず上納させれるのだ。

そう考えると、常に安心して使える画像フォーマットなど存在しないように思える。人気があるフォーマットが常にビジネスのターゲットになるのだ。考えてみれば至極当然。
おいはぎから逃れて助けを求めれば、そこにはまた別のおいはぎしかいない。


・・・以上、あまりに極端な想定話ではあったが、今は笑い話でも将来は真面目な話になる可能性は十分ある。GIFやJPEGの件など、誰が事前に予想出来た?そもそも予想出来ればここまで普及はしなかったはず。
大切に保存していた子供の成長記録写真の画像が、気付かぬ間に違法となってしまい、もしそれが発覚すれば、違法となった時点まで遡り膨大な金額を請求されることになろう。
英語禁止ホールのように、普段使っていたものが突然禁止されるというのは非常に苦しく悔しいことだ。

「ほぉー、かわいいお子さんの写真ですな。しかし残念ながら、これらの画像データは我が社の所有物となりますので使用料を払って下さいね。プリントアウトする場合やフォーマット変換する場合も別途使用料金が必要ですのでお気を付け下さい。では、良い写真ライフを!」

こんな時代になってしまえばもうどうにもならぬ。その時になって銀塩に戻ろうとも、過去の写真がデジタルカメラで撮ったものならばもう遅い。誰かが考えた画像フォーマットに乗っかっている限り、その画像は純粋に自分の所有物ではないのである。相手が要求すればその通りに従う他無い。
しかし、デジタルカメラというのはただでさえカメラ自体が消耗品で金が掛かる。その上、データそのものに金が掛かるようになるとツライ。その時は、税金のようなものだと思って諦めるしか無いか。

まあ、タモリの言うように「喋らなきゃ良い」のかも知れないが・・・それは趣味としての写真を辞めるということである。それでは面白くも何ともない。