2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[374] 2002年09月22日(日)
「金属ボディ」

数日前、いつものように帰宅途中にヨドバシカメラに立ち寄り展示カメラをいじっていた。
その中に、あるメーカーのフラッグシップカメラがあった。このカメラはマグネシウム合金を使った外装で、表向きは「金属ボディであるから堅牢である」とされている。

「マグネシウム」と言うと、中学時代によく理科室でマグネシウムリボンで遊んでいたことを想い出す。非常に柔らかい金属で、酸化しやすいために表面は白く曇っていた。それをちぎってマッチで火を着けると、眩しい光と白い煙を発して燃え出す。
しかし、マグネシウムにアルミニウムや亜鉛などを添加して合金にすると、剛性が向上し利用価値の高い金属素材となる。特に、軽量であるということから、持ち運ぶ用途のノートパソコンやカメラの外装に使われ始めた様子。

しかしながら、我輩がヨドバシカメラ店頭にて手に取ったそのカメラには、落下したと見られるペンタ部に亀裂を伴う陥没があった。重量級のフラッグシップカメラであるから、どんなに強度のある材料であろうとも無傷では済まないだろうとは想像する。しかし、亀裂部分から覗いた電子部品が非常に痛々しい。
よく見ると、金属の破断面は結晶粒が見え、それは金属光沢ではなく岩を割ったようなゴツゴツした断面であった。見るからに脆(もろ)い。
破断面でむきだしになっていた結晶粒は、その材料が鋳造品であることを示している。鍛造ではあのような断面は見られない。
しかも肉厚がかなり厚い。薄ければ全く強度が足りないからだ。

鋳造品の場合、融けた金属を鋳型に流し込んで冷やして固める。その冷える過程にて、金属が多結晶となる。その1つ1つの結晶の境界面(粒界面)では応力を受けた時に破断のきっかけとなり、それが全体としての強度に影響を与える。

鋳造による多結晶金属

融けた金属を型に流し込む鋳造ではなく、圧延やプレスによる鍛造を行えば金属の結晶が繊維状に引き延ばされメタルフロー(鍛流線)が得られる。
これは、メタルフローの無い鋳造品やメタルフローの切断された削出し品以上の強度を持つということを意味する。

では、マグネシウム合金でも同じように鍛造をすれば良いじゃないかと思ってしまうのだが、どうやらマグネシウム合金の利用自体が最近始まったことらしく、鍛造については技術的困難があるとのこと。コストさえ掛ければカメラの外装にも鍛造マグネシウム合金が使えるのかも知れないが、それならばいっそチタニウムを使ってしまったほうが良いかも知れない。

なぜ今さらマグネシウム合金などという新素材を使ってカメラを外装するのか。昔のようにプレスした真鍮では作れないのか?
もしかしたら、設計思想としてクラッシャブルな構造で衝撃を吸収しようということなのかも知れないが、我輩としてはヘコんで衝撃を吸収する従来の真鍮のほうが愛嬌があって好きになれる。

それにしても、雑誌等の記事にはハッキリと「マグネシウム合金採用により強度が向上」などというウソが書かれているのには驚く。このような書き方ならば、一般人はコロリと騙されてしまうだろう。何しろ、今までプラスチックばかりで食傷気味だった消費者である。「金属」と言われれば、多少聞き慣れぬマグネシウム合金だとしても、「現代風の新素材金属であろう」と良い意味に取ってしまいかねない。

鋳造マグネシウム合金。
それは単に、金属カメラという称号と、コスト削減を両立しただけのメーカー都合の新素材。鍛造技術が確立されぬ状態で鋳造にて間に合わせをするのは・・・やはり期待通り、あのメーカーだったな。


(2002.09.24追記)
本日、もう一度ヨドバシカメラで陥没カメラを確かめてみたら、銀塩カメラのほうではなくデジタル一眼レフカメラのほうだった。まあ、どちらでもマグネシウム合金なのは同じだが。